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スタッドレスでも止まれなかった——北杜市チェーン装着中の死亡事故が突きつける現実

スタッドレスでも止まれない——雪に覆われた国道のシルエットとタイヤ痕のイラスト

| 読了時間:約9分

スタッドレスを履いていたのに——。
雪の国道で、チェーンを巻いていた22歳の命が奪われた。

 

2026年2月11日午前8時過ぎ、山梨県北杜市高根町清里の国道141号。
路肩に停めたトラックのタイヤにチェーンを装着していた男性に、後方から軽乗用車が滑り込んだ。

男性は病院に運ばれたが、死亡が確認された。

 

なぜ冬用タイヤを装着した車がスリップし、路肩の作業者に突っ込んだのか。

標高1300mを超える現場の条件と、路肩でのチェーン作業に潜む危険を読み解く。

 

 

 

 

 

北杜市・国道141号でチェーン装着作業中の22歳男性が死亡

2026年2月11日午前8時過ぎ、山梨県北杜市の国道141号で、チェーン装着中の22歳男性が軽乗用車にはねられ死亡した。

 

YBS山梨放送の報道によると、2月11日午前8時12分ごろ、北杜市高根町清里の国道141号の路肩で事故は起きた。

トラックのタイヤにチェーンを巻いていた長野県南箕輪村の会社員・登内唯翔さん22)に、南から走ってきた軽乗用車がぶつかった。

 

見落とせない事実

SBC信越放送によると、軽乗用車はスタッドレスタイヤを装着していた
ノーマルタイヤで雪道に突っ込んだ冬用タイヤを履いた車が、それでも雪で滑ったのだ。

 

産経ニュースによると、登内さんは頭を強く打ち、甲府市内の病院で死亡が確認された。

YBS山梨放送はさらに詳しい状況を伝えている。登内さんはトラックと軽自動車に全身を挟まれた。路肩でしゃがんで作業していたため、逃げる場所がなかった。

 

軽乗用車を運転していたのは韮崎市の会社員の男性(21)。

被害者は22歳、加害者は21歳。社会に出て間もない若者同士の事故だった。

 

テレ朝NEWSによれば、警察は軽乗用車がスリップして車線をはみ出したとみて調べている。

事故当時、路面には雪が数センチ積もっていた。UTYテレビ山梨も、路面に雪が残っておりスリップしたとみられると報じた。

 

安全のためにチェーンを巻こうとした行為そのものが、命を落とす状況をつくってしまった。

スタッドレスを履いていたのに、なぜ車は止まれなかったのか。現場の道路環境にその手がかりがある。

 

 

 

 

標高1300m超・清里の国道——スタッドレスでも滑る現場の条件とは

事故現場の北杜市高根町清里は標高約1300mに位置し、冬はセンターラインが雪に埋もれるほどの積雪が珍しくない。

 

事故が起きた北杜市高根町清里は、八ヶ岳の南ふもとに広がる高原地帯だ。

標高データによると、高根町清里の標高は1311m。東京スカイツリーの約2倍の高さにあたる。

 

清里といえば、夏の避暑地や牧場のイメージが強い。

ところが冬になると、この標高が牙をむく。

 

YBS山梨放送の報道では、事故現場は「ほぼ直線の緩やかな下り坂」だったとされる。

積雪によりセンターラインが見えなくなっていた。直線で緩やかな坂——一見すると走りやすそうに見える。だが雪が積もった下り坂では、ドライバーが思っている以上にスピードが出やすく、ブレーキを踏んでもタイヤが路面をつかめない。

 

 

 

 

⚠️ ここからは推測を含みます

気象学では、標高が100m上がるごとに気温は約0.6℃下がるとされる。

清里の標高約1300mと甲府盆地の約260mでは、およそ6℃の差が生まれる計算になる。甲府で雨が降っていても、清里では雪になっておかしくない。

2月7〜8日には関東で大雪があり、東京都心でも5cmの積雪を記録した。標高1300mの清里では、その影響がより大きく残っていたのだろう。センターラインが消えるほどの積雪は、スタッドレスタイヤだけでは対処しきれない水準だったのではないか。

 

SBC信越放送は「当時路面はセンターラインが見えないくらいに雪が積もっていた」と報じている。

スタッドレスは凍結した路面には強い。だが深く積もった新雪や、踏み固められた圧雪の上では、タイヤと路面のあいだに雪の層ができ、グリップ力が落ちる。これがスタッドレスの限界だ。

 

この場所は以前から冬の事故が起きている。

UTYテレビ山梨の2023年11月の報道によると、2023年11月にも同じ国道141号の高根町で正面衝突事故が起きていた。通称「清里ライン」と呼ばれるこの区間は、急カーブや坂が連続する山岳路線として知られる。

 

冬の清里は、観光地のイメージからは想像しにくい厳しさを持つ。

では、こうした条件の道でチェーンを巻かなければならないとき、どこで作業すれば安全なのか。

 

 

 

 

路肩でのチェーン装着は「死亡事故につながる」——NEXCOの警告と身を守る方法

NEXCO中日本は冬季ドライブガイドで「路肩での作業は死亡事故につながる」と警告している。一般道にはチェーン脱着場がない区間も多く、これが事故の構造的なリスクを生んでいる。

 

冬の山道でチェーンを巻いた経験がある人なら、路肩にしゃがみ込んで作業する不安を知っているだろう。

背後を車が通り過ぎるたびに風圧を感じる。雪が降っていれば視界も悪い。

 

NEXCO中日本は冬季ドライブガイドの中で、こう明記している。

「路肩での作業は、後続車に追突されるおそれがあり、大変危険です。死亡事故につながることがあります」

 

今回の事故は、この警告がそのまま現実になった形だ。

高速道路にはSAやPA、チェーン着脱場がある。だが一般道には、そうした設備がない区間のほうが多い。

 

国道141号の県境付近にはチェーン脱着所が設けられている。

だが、すべての区間にあるわけではない。雪が増してきてから装着しようとすると、脱着所まで走れず、やむを得ず路肩で作業せざるを得ない状況に追い込まれる。今回の事故も、そうした状況で起きたのだろう。

 

 

 

 

やむを得ず路肩で作業するときの安全対策

対策 具体的な行動
早めの装着 積雪が予想される区間に入る手前で巻く
脱着場の事前確認 目的地までのルート上にチェーン脱着場があるか出発前に調べる
存在を知らせる ハザードランプを点け、三角表示板や発煙筒を車の後方に置く
作業位置の選択 車の道路側ではなく、山側(路肩の奥側)で作業する
見通しの確保 カーブの途中や坂の頂上付近は避け、後続車から見える直線区間を選ぶ

 

今回の事故で改めて浮かび上がったのは、路肩でのチェーン作業には構造的な危険がつきまとうという事実だ。

スタッドレスを履いていても滑る条件がある。そしてその条件下で路肩に人がいれば、避けようがない。

 

チェーンを巻く場所は、命にかかわる選択になる。

 

 

 

 

まとめ

  • 2026年2月11日、山梨県北杜市の国道141号で、チェーン装着中の22歳男性が軽乗用車にはねられ死亡した
  • 軽乗用車はスタッドレスタイヤを装着していたが、センターラインが消えるほどの積雪でスリップした
  • 現場の清里は標高約1300m。気温は甲府盆地より約6℃低く、冬の積雪量は平地とまったく異なる
  • NEXCO中日本は路肩でのチェーン着脱について「死亡事故につながる」と警告している
  • チェーンを巻く場所は出発前に調べておく。やむを得ず路肩で作業するなら、ハザードランプ・三角表示板で存在を知らせ、車の山側で作業する

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 北杜市の国道141号で何が起きたのですか?

2026年2月11日朝、路肩でチェーンを装着中の22歳男性に軽乗用車がスリップして衝突し、男性が死亡しました。

Q2. スタッドレスタイヤでもスリップするのはなぜですか?

深い積雪や圧雪路面ではタイヤと路面の間に雪の層ができ、スタッドレスでもグリップ力が落ちるためです。

Q3. 事故現場の清里はどのくらいの標高ですか?

北杜市高根町清里の標高は約1311mで、東京スカイツリーの約2倍にあたります。

Q4. 路肩でチェーンを装着するのは危険ですか?

NEXCO中日本は「路肩での作業は死亡事故につながることがあります」と警告しています。

Q5. チェーンはどこで装着すればいいですか?

チェーン脱着場や駐車スペースのある場所で行います。やむを得ず路肩で作業する場合はハザードランプと三角表示板で存在を知らせてください。

Q6. 雪道でスリップして人をはねた場合の過失割合は?

追突事故では追突した側の過失割合が100となるのが基本です。雪道であっても同様に判断されます。

Q7. 国道141号は冬に事故が多い道路ですか?

2023年11月にも同じ高根町区間で正面衝突事故が起きており、冬季の事故リスクが高い区間です。

Q8. 山梨県の交通事故件数はどのくらいですか?

山梨県警によると2024年の県内交通事故件数は2013件で、前年より99件減少しました。

 

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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