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春節なのに半額──大阪のホテルが異例の値下げに追い込まれている。
中国政府の渡航自粛で中国人客が激減した。
宿泊料金を前年の5割に下げても部屋が埋まらない。
本日発表の最新統計と、業界の「脱中国」の動きを追った。
春節なのに半額──大阪ホテルを襲う「中国人客消失」の衝撃
読売新聞によると、大阪市内のあるホテルは宿泊料金を前年の5割に引き下げた。
昨年の春節では中国人観光客で賑わっていた同じホテルが、今年は閑散としている。
ホテル担当者のコメント
「大阪・関西万博後、宿泊需要が一段と高まると見ていたが、想定が甘かった」──あるホテル担当者(読売新聞)
万博を見越して外資系ブランドの開業ラッシュが続いた大阪。
部屋は増えたのに、最大の顧客だった中国人が消えた。
帝国ホテル大阪では中国人客が8割消えた
産経新聞の報道では、帝国ホテル大阪の中国人宿泊者数は前年同期比で約8割減少した。
万博で利用実績のあった約50カ国を念頭に、中国以外への営業を急いでいるという。
大阪観光局の推計も深刻さを裏付ける。
2025年に大阪を訪れた中国人客は522万5千人。
これが仮に半減すれば、約260万人が消える計算になる。
韓国人客1年分が消える規模
産経新聞によれば、この数字は昨年の韓国人来阪客274万4千人に匹敵する。つまり「韓国人客が丸ごと1年分消える」のと同じ規模の穴が空くことになる。
打撃は大阪にとどまらない。
テレビ朝日の取材では、京都市内の宿泊施設の31%以上が稼働率を上げるため値下げに踏み切った。
京都の着物レンタル店では月200万〜300万円の売上減が起きている。
朝日新聞によると、関西空港の1月の中国路線旅客数は前年同月比58%減の27万7千人。
空の便が減れば、ホテルに客は来ない。
中国への依存度がホテルの明暗を分けた
ただし、すべてのホテルが同じ打撃を受けたわけではない。
| ホテル | 影響 | 対応 |
|---|---|---|
| 帝国ホテル大阪 (依存度:高) |
中国人客8割減 | 50カ国への営業強化 |
| 蒲郡ホテル(愛知) (外国人客の9割が中国) |
最大3割減 | ─ |
| 星野リゾート(大阪・京都) (分散型) |
稼働率は前年並み | 韓国・台湾・国内客でカバー |
| 高山市内ホテル(岐阜) (中国人は全体の1割弱) |
影響は限定的 | 台湾・香港が下支え |
CBCテレビの取材によれば、蒲郡ホテルは「閑散期の2月は中国人に支えられていた」と語る。
一方、岐阜県高山市のホテルは「影響は限定的。台湾・香港が下支えしている」とした。
中国依存度が低いほど打撃は小さい。
この事実を、産経新聞の報道が端的に示している。
星野リゾートが大阪・京都で運営するホテルは、韓国や台湾、国内客が増えたことで中国人客の減少をカバーした。
稼働率は1月以降も前年並みで推移しているという。
予約サイトを開けば、大阪中心部の有名ホテルが昨年とは比べものにならない価格で並んでいるだろう。
では、なぜ中国人観光客はこれほど急に姿を消したのか。
高市発言から3カ月──「渡航自粛」が統計に表れた
本日2月18日、日本政府観光局(JNTO)が1月の訪日外客数を発表した。
結果は4年ぶりに前年を割り込んだ。
日経新聞によると、1月の訪日外国人客数は359万7500人で前年同月比4.9%減。
中国からは60.7%減の38万5300人だった。
前年1月の98万520人から、約60万人が消えた計算になる。
60万人消失の規模感
この60万人という消失数は、台湾からの訪日客のほぼ1年分に匹敵する。
たった1カ月で、ある国の1年分の旅行者が丸ごと消えたことになる。
発端は2025年11月7日の国会答弁
事態はわずか3カ月前に始まった。
① 11月7日:高市早苗首相が衆議院予算委員会で「台湾有事は存立危機事態になり得る」と答弁
② 11月8日:中国の薛剣・大阪総領事がXで「勝手に突っ込んできたその汚い首は斬ってやるしかない」と投稿
③ 11月14日:中国外務省が国民に日本への渡航自粛を呼びかけ
④ 12月:訪日中国人が前年同月比45%減の約33万人に急減
⑤ 2026年1月:60.7%減の38万5300人。減少幅がさらに拡大
経緯の詳細はWikipedia「高市早苗による台湾有事発言」にまとまっている。
中国政府はこの発言を「一つの中国」原則への違反と位置づけた。
渡航自粛だけでなく水産物の禁輸や日中韓首脳会談の見送りなど、複数の対抗措置をとっている。
それでも来日する中国人、しかし萎縮は隠せない
渡航自粛の中でも、個人旅行で来日する中国人は一定数いる。
テレビ朝日の取材に対し、ある中国人観光客は「個人的な選択だ」と話した。
ところが別の観光客は「声はいい。顔はダメ。今は異常な時期だから」とカメラへの顔出しを拒んだ。
FNNの取材でも「国の問題で答えられません」と口を閉ざす人がいた。
旅行会社は3カ月予約ゼロ
団体客を扱う福岡の旅行会社は、約3カ月にわたって予約がゼロの状態が続いている。FNNによると、代表は白紙の予定表を見つめながら「苦しいですよ」と語った。
訪日ラボによると、1月の国・地域別では韓国が117万6000人(前年同月比21.6%増)で史上初の単月110万人を突破した。
台湾も69万4500人(17.0%増)と大幅増だった。
中国
60.7%減
韓国
21.6%増
中国は激減したが、韓国と台湾は大きく伸びた。
訪日客全体では4.9%減にとどまっている。
中国一国の減少が全体を引き下げた構図が鮮明になった。
この「中国だけ減って他は増えている」という構図は、大阪の観光業界に別の問いを突きつけている。
「脱中国」は可能か──ホテル業界が迫られる客層転換
中国人客が消えた穴は、本当に埋められないのか。
答えはホテルによって異なる。
産経新聞によると、星野リゾートの星野佳路代表は「日本が観光立国となるには中国をはじめとするアジア客依存からの脱却が不可欠」と以前から発言してきた。
同社の大阪・京都のホテルは、韓国・台湾・国内客の増加で中国人客の減少を吸収した。
稼働率は1月以降、前年並みで推移しているという。
インスタが「脱中国」の武器になった
大丸心斎橋店は興味深い戦略をとっている。
中国政府のネット規制で中国本土からアクセスできないインスタグラムを、あえて情報発信の軸にしたのだ。
英語・韓国語に加え、台湾や香港で使われる繁体字の中国語で投稿を強化。
中国本土が遮断されているプラットフォームを選ぶことで、自然と「中国以外」のアジア客に届く仕組みを作った。
百貨店は1月売上が前年超え
産経新聞によると、阪急うめだ本店・高島屋大阪店・大丸心斎橋店は、2026年1月の売上高が前年同月を上回った。国内客が増えたことが寄与している。
テレビ朝日の取材では、京都のあるホテルが中国語の予約サイトを英語表記に切り替え、欧米向けへシフトした。
マネージャーは「ひとつのマーケットに集中しないことが大事だ」と語っている。
専門家は「チャンスに転化せよ」と指摘する
日本総合研究所 関西経済研究センターの藤山光雄氏は産経新聞の取材に対し、こう述べた。
「政治的な対立によって大きく増減するリスクを踏まえると、むしろ中国人以外を獲得するチャンスととらえるべきだ」
藤山氏は欧米からの長期滞在客を第一に挙げた。
さらに東南アジアなど経済成長が著しい新興国の開拓も欠かせないとしている。
中国人客への依存度を下げることが観光公害の解消にもつながるとの見方だ。
万博後の供給過剰と日中対立──二重の圧力
⚠️ ここからは推測を含みます
東洋経済の報道では、あるホテル経営者が「中国との関係悪化はいつか起きると思っていた。これは長引くはずだ」と語っている。
万博需要を見込んで増やした客室と、中国人客の激減が同時に来た大阪。
当面のあいだ値下げ圧力が続くだろう。
日中関係が改善すれば状況は変わり得る。
しかし高市政権は答弁を撤回していない。
中国側が自粛要請を解除する兆候も、今のところ見えていない。
一国に依存する観光モデルの脆さが、これほど明確に数字で示されたのは初めてだ。
コロナ禍のときは全世界が止まった。
今回は中国だけが止まり、他の国は増えている。
だからこそ「依存」の構造が鮮明に浮かび上がった。
星野リゾートのように脱中国に先手を打っていたホテルと、中国シフトを敷いたまま転換が間に合わなかったホテル。
その明暗は、すでに数字に表れている。
まとめ
- 大阪のホテルは春節にもかかわらず、前年比5割の値下げに追い込まれた。帝国ホテル大阪では中国人客が8割減少
- 発端は2025年11月の高市首相の国会答弁。中国政府が渡航自粛を要請し、1月の訪日中国人は60.7%減と激減。訪日客全体も4年ぶりの前年割れとなった
- 星野リゾートのように韓国・台湾・国内客で穴を埋めたホテルもある。中国依存度の低さが、いまリスク耐性の差として表れている
- 旅行者にとっては、大阪の有名ホテルに格安で泊まれるチャンス。業界にとっては「一国依存」からの転換を迫られる局面
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年の中国の春節休暇はいつですか?
2月15日から23日までの9連休です。春節当日は2月17日にあたります。
Q2. 中国から日本への航空便はどれくらい減っていますか?
関西空港の1月の中国路線旅客数は前年同月比58%減。日中便全体では約49%減少しました。
Q3. なぜ中国人観光客が急に減ったのですか?
2025年11月の高市首相の台湾有事発言に中国政府が反発し、国民に日本への渡航自粛を要請したためです。
Q4. 大阪のホテルはどれくらい値下がりしていますか?
あるホテルは前年春節比で宿泊料金を5割に引き下げました。帝国ホテル大阪では中国人客が8割減少しています。
Q5. 中国の渡航自粛はいつまで続きますか?
中国政府は解除時期を明示しておらず未確認です。高市政権が発言を撤回しない限り長期化するとの見方が強いです。
Q6. 中国人客が減った分は他の国の観光客で補えていますか?
星野リゾートは韓国・台湾・国内客で穴を埋め稼働率は前年並み。ただし中国依存度が高い施設は補いきれていません。
Q7. 1月の訪日外国人数は前年より減りましたか?
JNTOによると359万7500人で前年比4.9%減。4年ぶりの前年割れとなりました。中国が60.7%減で全体を押し下げています。
Q8. 大阪のホテルが安い状態はいつまで続きますか?
万博後の供給過剰と日中対立の長期化が重なり、当面は値下げ圧力が続くとみられます。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- 読売新聞「過度な『中国依存』はリスク、春節迎えてもホテルは閑散…」(2026年2月16日)
- 産経新聞「関西の百貨店、ホテルが〝脱中国〟の動き加速」(2026年2月15日)
- 日本経済新聞「1月の訪日客4.9%減、4年ぶり前年割れ」(2026年2月18日)
- テレビ朝日「95億人大移動の春節に異変」(2026年2月15日)
- FNN「春節始まるも…中国政府が渡航自粛呼びかけ」(2026年2月17日)
- Wikipedia「高市早苗による台湾有事発言」
- 訪日ラボ「1月の訪日外客数359.8万人、韓国が史上初の110万人超え」(2026年2月18日)
- 東洋経済「ホテル開業が相次ぐ中でくすぶる日中対立リスク」(2026年1月3日)
- CBCテレビ「中国の渡航自粛要請、影響をデータで見ると」(2026年2月17日)
- 朝日新聞「関空の中国便旅客、1月は6割減」(2026年2月9日)