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ミラノ五輪の誹謗中傷6万件超——22人+AIでも削除率0.3%の現実

ミラノ五輪SNS誹謗中傷6万件超、削除率0.3%を示すアイキャッチ画像

| 読了時間:約10分

約10秒に1件。
ミラノ五輪の開催中、選手のSNSにはそのペースで中傷が届いている。

JOCが2月13日の中間総括で公表した数字は6万2333件
削除できたのは198件だった。

なぜ、ここまで膨らんだのか。

 

 

 

6万2333件の衝撃——22人+AIでも消せたのは0.3%

JOCは12日までにSNS上で確認した誹謗中傷ひぼうちゅうしょう6万2333件と発表した。
削除申請は1055件、実際に削除が確認されたのはわずか198件だ。

📢 伊東秀仁団長の発言

日刊スポーツによると、伊東秀仁団長は「誹謗中傷は毎日、想定以上の件数への対応に追われている状況であります」と明かした。

JOCは今大会で、ミラノと日本に対策拠点を設けた。
海外の五輪で現地に拠点を構えるのは初めてだ。

スポーツ報知によると、体制はミラノ6人、日本16人の計22人。
時差8時間を生かし、24時間途切れなく監視する。

FNNの報道では、AIも導入し、言葉だけでなく画像や動画による中傷まで検知対象を広げている。

さらにJOCの公式発表では、LINEヤフーやMeta(インスタグラム運営元)との連携も発表された。


22人がAIを使い、大手プラットフォームとも手を組んだ。
これだけの態勢を敷けば、悪質な投稿はかなり抑えられそうに思える。

ところが、数字が示す現実は厳しい。

⚠ 削除の現実

確認された6万2333件のうち、削除申請できたのは1055件。
そこからさらに絞り込まれ、実際に消えたのは198件。
削除率にして0.3%だ。

仕組みはこうなっている。
まずAIが侮蔑的な表現を含む投稿を自動で抽出する。

次にスタッフが目視で悪質性を判断し、プラットフォームの管理者に削除を要請する。
管理者が応じて初めて、投稿が消える。

つまり三段階の「漏斗」を通るたびに件数が激減する。
最後の関門であるプラットフォーム側の判断で、8割以上がふるい落とされている。

段階 件数 割合
確認された中傷 6万2333件 100%
削除申請 1055件 1.7%
削除確認 198件 0.3%

6万2333件を大会の開幕日(2月6日)から12日までの7日間で割ると、1日あたり約8900件。
1時間に約370件。

およそ10秒に1件の中傷が、どこかで書き込まれている計算になる。

22人の専門チームは、高校1クラスにも満たない人数だ。
その22人が、10秒に1件のペースで押し寄せる中傷と向き合っている。

では、6万件超の中傷は具体的にどんな形で選手に届いているのか。

 

 

 

「辞退してくださいね」——選手に届いた言葉の中身

中傷は日本だけの話ではない。
ミラノ五輪では少なくとも4カ国の選手が被害を受けた。

近藤心音——2大会連続棄権に向けられた刃

フリースタイルスキー女子の近藤心音(22)は、5日の公式練習で転倒した。
救急車で搬送され、診断は左膝前十字靱帯ぜんじゅうじじんたいの再断裂、内側側副靱帯そくふくじんたいの損傷、骨挫傷、半月板損傷。

Number Webによれば、「通常なら歩くことができない状態」だった。

💬 近藤心音の言葉

サンスポによると、近藤は「追い討ちをかけるように、簡単に人を傷つけられる人たちがいろんな場所で鋭い刃を何度も刺してきますが、私の心は折れませんし、崩れません」と語った。

それでも予選当日の朝まで板を履き、コースに立ち続けた。
北京五輪でも右膝の前十字じん帯を断裂して棄権している。

両方の膝を五輪の舞台で失った22歳に、インスタグラムで届いた言葉がこれだ。

「もし選ばれても次は辞退してくださいね」

THE ANSWERによれば、近藤は「人生で初めてのアンチです」と怒りをにじませ、その投稿をストーリーズで晒した。
「枠を掴み取った私が決めること」と毅然と返している。

 

 

 

三浦佳生——優勝しても届くDM

フィギュアスケート男子の三浦佳生(20)は、1月の四大陸選手権で3年ぶりの優勝を果たした。
しかし韓国の選手に僅差で勝った直後から、主に海外のアカウントによるDM(ダイレクトメッセージ)が殺到する。

デイリースポーツによると、採点やスケート以外の内容に関する中傷で「通知がうるさかった」と明かしている。

三浦は1月下旬にXで誹謗中傷をやめるよう呼びかけ、「傷ついたり悲しんだりする人もいるので駄目なこと」と訴えた。


世界でも同時に起きている

東京スポーツによると、ポーランドのポーラ・ベルトフスカ(19)も標的になった。
スキージャンプ混合団体で失敗した後、本人だけでなく家族にまで攻撃が及んだ。

「信じられないくらいで怖い。こんなにも私に対して憎しみが向けられているとは想像もしていませんでした」

ポーランドのスキー連盟は「スポーツ批評の限界を超えている」と緊急声明を出した。

ショートトラックでも火種が広がった。
韓国選手が米国選手との接触で転倒した後、米国選手のインスタグラムに韓国語の中傷が殺到。
米国選手はコメント欄を閉鎖し、インスタの更新休止を宣言している。

📌 ポイント

日本の近藤と三浦、ポーランドのベルトフスカ、そして韓国と米国の対立——
誹謗中傷は特定の国の問題ではなく、「SNS+五輪」という構造が世界中で同時に生み出している現象だ。

選手 きっかけ 対応
近藤心音(22・日本) 2大会連続の棄権 インスタで「コメントさらし」
三浦佳生(20・日本) 四大陸選手権の僅差優勝 Xで中傷停止を呼びかけ
ベルトフスカ(19・ポーランド) 混合団体での失敗 連盟が緊急声明
米国選手(ショートトラック) 韓国選手との接触 コメント欄閉鎖+インスタ休止

ミラノ五輪の中傷件数は「想定以上」だと伊東団長は述べた。
では、過去の大会と比べてどれほど増えたのか。

 

 

 

パリ五輪の7.3倍——なぜここまで膨らんだのか

2024年パリ五輪で確認された誹謗中傷は8500件超だった。
ミラノ五輪は開幕からわずか1週間で6万2333件。約7.3倍に膨れ上がった。

パリ五輪(2024年夏)

8,500件超

大会全期間

ミラノ五輪(2026年冬)

6万2333件

開幕7日間のみ

ただし、この数字をそのまま「中傷が7倍に増えた」と読むのは早い。

⚠️ ここからは推測を含みます

パリ五輪の時点では、JOCは独自のAI監視体制を持っていなかった。
ミラノで初めて22人+AIの本格体制を敷いた結果、これまで見えていなかった中傷大量に可視化された面もあるだろう。

つまり、以前から中傷は膨大にあったが「検知できていなかった」のではないか。
7.3倍という数字は、中傷の増加と検知能力の向上の両方を映している。

FNNによれば、JOCは1月中旬の段階で約2000件、開幕前の2月3日時点でも約2000件の中傷をすでに確認していた。
大会が始まる前からこの数だ。

五輪の注目度が加わり、一気に膨張したという見方が妥当だろう。


もうひとつ見逃せないのが、中傷の手口の変化だ。
スポーツ報知によると、IOCは今大会でAIによる選手画像の加工——つまり「ディープフェイク」型の有害投稿への対策に力を入れている。

文字だけでなく画像や動画を使った中傷が広がりつつあることを示している。

📌 ポイント

6万2333件という数字は、中傷そのものの増加だけでなく、「これまで見えなかった氷山の水面下」が初めて可視化された結果でもある。
問題は、見えるようになったところで、消す手段がほとんどないことだ。

件数の多さと並んで、読者が最も気にしているのは「中傷した人は罰を受けるのか」だろう。

 

 

 

法的措置は機能するのか——侮辱罪「有罪104人、懲役0人」の現実

JOCの担当者は「名誉毀損、侮辱、脅迫等の行き過ぎた投稿については、警察に相談、法的措置も含めて適切に対応する」と述べた。

「法的措置」と聞くと強い抑止力を感じるかもしれない。
だが、現状の数字を見ると楽観はできない。

侮辱罪ぶじょくざい厳罰化の「成績表」

2022年7月、SNS上の誹謗中傷に対応するために侮辱罪が厳罰化された。
それまで「30日未満の拘留か1万円未満の科料」だった罰則に、「1年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が加わった。

では、厳罰化から3年が経った結果はどうか。

📊 法務省の検証結果

FNNによると、法務省の有識者検討会は2026年2月9日に報告書をまとめた。
厳罰化後の3年間で侮辱罪の有罪が確定したのは104人。8割が罰金刑で、懲役刑は0人だった。

3年で104人。年間にすると約35人だ。
その全員が罰金で済んでいる。懲役刑を受けた人はひとりもいない。

しかもこの検討会は、「さらなる法定刑の引き上げは必要ない」と結論づけた。
SNSのDMによる中傷を新たに犯罪とすることも見送られている。


厳罰化見送りの4日後に6万件

この報告書がまとまったのは2月9日。
そのわずか4日後の2月13日に、JOCが6万2333件の中傷を公表した。

法制度が「現状で十分」と判断した直後に、過去最大規模の中傷件数が明るみに出た形だ。

2024年のパリ五輪では、中国で卓球選手を中傷した女性が逮捕されている。
国によっては刑事罰に直結する。日本ではどうか。

項目 内容
侮辱罪の法定刑(2022年〜) 1年以下の懲役・30万円以下の罰金
3年間の有罪確定者 104人
うち懲役刑 0人
更なる厳罰化 見送り(2026年2月9日)
DM中傷の処罰 見送り

三浦佳生が被害を受けたのは、まさにDMだった。
公開の場での投稿ではなく、本人に直接届くメッセージ。現行法では、これを侮辱罪で裁くのは難しい。

法律の整備は進みつつある。
2025年5月には「情報流通プラットフォーム対処法」が施行され、プラットフォーム側の対応義務が強化された。

だが、削除率0.3%が示すとおり、制度と現実の間にはまだ大きな溝がある。

📌 ポイント

法的措置は「無力」ではないが、「万能」でもない。
22人の監視チーム、AI、法律——あらゆる手段を束ねても、10秒に1件のペースで増え続ける中傷を止めるには足りていない。

 

 

 

まとめ:ミラノ五輪の誹謗中傷問題——5つのポイント

  • 12日までの確認件数は6万2333件。削除できたのは198件、削除率0.3%
  • JOCはミラノ+日本の22人体制でAI監視を初導入。それでも追いつかない
  • 近藤心音、三浦佳生だけでなく、ポーランドや韓国⇔米国でも同時に発生
  • パリ五輪(8500件超)の約7.3倍。検知力の向上で「見えなかった中傷」も可視化された
  • 侮辱罪有罪は3年で104人、懲役0人。法的措置だけでは止まらない

6万2333件という数字は、選手だけの問題ではない。
SNSで意見を書き込む行為は、誰にとっても日常だ。

応援のつもりで書いた一言が、本人にどう届くかは分からない。

「誰もが発信者であり、誰もが加害者になりうる」——その自覚だけが、今のところ最も確実な抑止力だろう。

よくある質問(FAQ)

Q1. ミラノ五輪のSNS誹謗中傷は何件あった?

12日までの総確認数は6万2333件。削除申請は1055件、削除確認は198件で削除率は0.3%です。

Q2. JOCの誹謗中傷対策はどんな体制?

ミラノ6人+日本16人の計22人がAIと目視で24時間監視。LINEヤフーやMetaとも連携しています。

Q3. パリ五輪と比べて誹謗中傷は増えた?

パリ五輪は大会全期間で8500件超。ミラノ五輪は開幕7日間で6万2333件、約7.3倍です。

Q4. 誹謗中傷で逮捕されることはある?

侮辱罪厳罰化後3年で有罪104人ですが全員罰金刑で懲役は0人。パリ五輪では中国で逮捕者が出ています。

Q5. 近藤心音はどんな誹謗中傷を受けた?

2大会連続棄権後に「次は辞退してくださいね」とインスタグラムに投稿が届きました。

Q6. 三浦佳生への誹謗中傷の内容は?

四大陸選手権の僅差優勝後に海外から採点やスケート以外に関するDMが殺到しました。

Q7. SNSの誹謗中傷が多いのはどのプラットフォーム?

今大会ではインスタグラムのコメントやDM、X(旧Twitter)での投稿が確認されています。

Q8. 海外の選手も誹謗中傷を受けている?

ポーランドの19歳ジャンプ選手や韓国⇔米国のショートトラック選手にも中傷が殺到しました。

Q9. 侮辱罪のさらなる厳罰化はある?

法務省の有識者検討会が2026年2月9日にさらなる厳罰化は不要と結論づけました。

Q10. 誹謗中傷を受けたらどうすればいい?

証拠のスクリーンショットを保存し、各SNSの通報機能の利用や法務局の相談窓口への連絡が有効です。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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