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香港火災の被災マンション1736戸を1350億円で買い取りへ|1戸いくら?住民の本音は

香港火災の被災マンション1736戸を1350億円で買い取りへ|1戸いくら?住民の本音は

| 読了時間:約8分

香港政府が被災マンション1736戸を買い取る。
総額は約1350億円。
ただし住民全員が納得しているわけではない。

 

 

 

香港政府が被災マンション1736戸を総額1350億円で買い取りへ

2026年2月21日、香港政府は被災した宏福苑ワンフクコートの7棟・1736戸すべてを住民から買い取る方針を発表した。

📊 買い取りの規模

ロイター通信の報道によると、買い取りの総額は約68億香港ドル(約1350億円
うち公費は40億香港ドル、残りの28億香港ドルは市民からの寄付金で賄う想定だ。

「政府が丸ごと買い取る」と聞くと、税金による全額救済に思える。
しかし約41%は市民からの寄付金で成り立っている。

火災直後に集まった寄付金が、住宅買い取りの原資に回るかたちだ。


なぜ政府が介入するのか

RTHKの報道によると、副財政司司長ふくざいせいしししちょう黄偉綸(マイケル・ウォン)氏はこう述べた。

「政府が介入しなければ、住民が投じた資金はすべて無に帰す。いま、被災住宅の買い手を見つけられる市場メカニズムは存在しない」

宏福苑ワンフクコートは香港の「居屋」と呼ばれる制度の住宅だ。
政府の補助金で安く買える代わりに、転売には政府への追加支払いが要る。

焼けた住宅には買い手がつかず、住民は身動きが取れない。

政府はこの措置を「前例にはしない」と明言した。
あくまで168人が犠牲になった未曾有の災害への一回限りの対応だという。

 

 

 


住民に示された3つの選択肢と期限

AP通信の報道によれば、住民には3つの道が用意された。

 

選択肢 内容 最速スケジュール
現金買い取り 所有権を政府に売却し、自由に住居を探す 2026年Q3に代金支払い
住宅交換 政府の別の補助住宅と交換する 2026年9月から物件選択
指定住宅購入 買い取り金で政府指定の住宅を購入 九龍湾カオルーンベイの住宅に年末入居可

 

決断の期限は2026年8月末
5〜6月に仮契約を結び、第3四半期に代金が支払われる見通しだ。

7棟は最終的に解体される。
FNNの報道によると、跡地は公園や公共施設として整備される方向だ。

買い取り受け入れ検討

74%

現地再建を希望

9%

住民アンケートでは、74%が買い取りの受け入れを検討していると回答した。
一方、9%は現地での再建を望んでいる。

ただし政府は、現地再建には約10年を要すると説明している。

では、1戸あたりの買い取り価格はいくらなのか。
住民はこの条件に納得しているのだろうか。

 

 

 

1戸あたりの買い取り価格と住民の温度差

買い取り価格は1平方フィートあたり8000〜1万500香港ドル。
日本の感覚で言えば、1㎡あたり約15万〜20万円に相当する。

この価格には2つのパターンがある。
宏福苑ワンフクコートのような「居屋」には、転売時に政府に支払う「地価ちかプレミアム」と呼ばれる割増金の仕組みがあるためだ。

 

条件 価格(1sqft) 日本円換算(1㎡)
プレミアム未払い HK$8,000 約15万円
プレミアム支払い済み HK$10,500 約20万円

 

すでに割増金を支払っていた人には、その分が上乗せされる。
南華早報(SCMP)の報道によると、この価格は当初の見積もりより引き上げられたものだ。


当初の見積もりからどう変わったか

香港測量師学会が火災前の取引価格をもとに算出した当初の見積もりは、1平方フィートあたり6000〜8000香港ドルだった。
最終提示は8000〜1万500香港ドルへと引き上げられている。

 

  当初見積もり 最終提示
プレミアム未払い HK$6,000〜8,000/sqft HK$8,000/sqft
プレミアム済み HK$8,000/sqft HK$10,500/sqft

 

総額1350億円。数字だけを見れば、手厚い救済に映る。
約3か月のあいだ仮住まいを転々としてきた住民にとって、ようやく具体的な金額が示された。

ところが、すべての住民が歓迎しているわけではない。

 

 

 


「この条件では損をする」という声

香港フリープレス(HKFP)の取材に対し、ある住民のリーさんは語った。

「この買い取りでは100万香港ドル以上の損失になる」

市場価格を下回るという不満だ。

さらに問題を複雑にしているのが、保険の事情だ。
日本では火災保険への加入がほぼ常識だが、香港の事情はまるで違う。

日経新聞の報道によると、香港の住宅・火災保険の加入率はわずか16%程度にとどまる。
2021年の調査に基づく数値だ。

保険に入っていなければ、買い取り金額がそのまま「受け取れる全額」になる。
人生をかけたローンで手に入れた住宅が、火災で一瞬にして失われた。

買い取り金だけでは同等の住居を確保できないと感じる住民がいるのは、無理からぬ話だろう。

香港保険業連盟は、1戸あたり100万香港ドルの保険金が出るという噂を否定している。
保険での補填にも限界がある。

そもそも、なぜ政府はここまでの異例の措置に踏み切らざるを得なかったのか。
168人の命を奪った火災の背景を振り返る。

 

 

 

168人の命を奪った火災はなぜ起きたのか

竹の足場が燃えやすいから火が広がった主因は防護ネットと発泡スチロールだった。

「竹の足場が燃えやすいから火が広がった」。
そう思った人は多いのではないだろうか。

たしかに香港では伝統的に竹の足場が使われており、報道でも大きく取り上げられた。

💡 意外な事実

ウィキペディア中国語版に記載された香港の安全専門家の見解では、竹自体は簡単には燃えない
ライターや蝋燭で燃やしても「長時間かかってようやく着火する」程度だという。

問題はその外側を覆っていた素材にあった。


防護ネットと発泡スチロールが火を広げた

2025年11月26日14時51分、出火元となった宏昌閣の低層部で足場の防護ネットに火がついた。

BBCの報道によれば、宏福苑は1983年建設の築41〜42年。
全8棟1984戸に約4600人が暮らし、その約4割が65歳以上の高齢者だった。

🔥 延焼のメカニズム

Sinology Initiativeの報道によると、保安局局長の鄧炳強氏は「火は防護ネットから発泡スチロールに燃え移り、急速に上方へ拡大した。短時間で7棟に延焼した」と説明した。

AP通信によれば、基準を満たさない防護ネットと発泡スチロールの使用が、火災の急速な拡大を招いたと当局は結論づけている。

香港政府は当初、防護ネットは基準を満たしていると説明していた。
しかし12月1日になって、一部が基準不適合だったと訂正した。

 

 

 


煙突効果えんとつこうかが31階建てを一気に焼いた

なぜ低層部の火が31階建てのマンション7棟を飲み込んだのか。
建築防火の分野で「煙突効果」と呼ばれる現象が起きたとみられている。

外壁と足場のあいだにできた狭い空間が、煙突のように働く。
下から入った熱い空気が上昇気流を生み、火を一気に最上階まで押し上げる。

しかも全住戸の窓は、修繕工事のために発泡スチロール板でふさがれていた

🔗 延焼の連鎖

①防護ネットを伝って火が上昇 → ②窓の発泡スチロールに引火 → ③ガラスが割れて室内に侵入
この「外→窓→室内」の連鎖が、短時間で7棟にわたり同時に起きた。


住民に伝わらなかった危険性

興味深い事実がある。
修繕工事を担当した「宏業建築」が住民に出した通知文では、窓をふさぐ素材のことを英語の「Foam Board」とだけ記載していた。

中国語の「発泡膠板はっぽうこうばん」とは書かれていなかったという。

住民にとって、それが燃えやすい発泡スチロールだと認識しにくい書き方だった。
この通知のあり方も、事故の多層的な構造を示している。

火災では168人が犠牲となった。建設会社の取締役2名と工事顧問1名が誤殺容疑で逮捕されている。独立調査委員会が設置され、原因究明は今も続いている。

168人の犠牲と4600人の避難生活。
前例なき1350億円の買い取り措置は、この凄惨な火災の帰結にほかならない。

 

 

 

まとめ

  • 香港政府は被災した宏福苑7棟・1736戸を総額約68億香港ドル(約1350億円)で買い取る方針を発表した
  • 財源の約41%にあたる28億香港ドルは市民の寄付金。公費は40億香港ドル
  • 買い取り価格は1sqftあたりHK$8,000〜10,500。一部住民は「損をする」と反発
  • 7棟は解体され、跡地は公園や公共施設に。住宅の再建は行わない
  • 火災の主因は規格外の防護ネットと発泡スチロール。竹の足場そのものではない

住民の決断期限は2026年8月末。
74%が買い取り受け入れを検討する一方、9%は現地再建を望んでいる。

火災から約3か月を経てようやく示された長期再定住計画の行方は、これからが本番だ。

よくある質問(FAQ)

Q1. 香港の火災で何人亡くなりましたか?

2025年11月26日の宏福苑火災で168人が死亡しました。消防員1名の殉職を含みます。

Q2. 宏福苑の買い取り価格は1戸あたりいくらですか?

1平方フィートあたりHK$8,000〜10,500で、日本円では1㎡あたり約15万〜20万円に相当します。

Q3. 買い取りの財源はどこから出るのですか?

公費が40億香港ドル、市民の寄付金が28億香港ドルで、合計約68億香港ドル(約1350億円)です。

Q4. 宏福苑の跡地はどうなりますか?

7棟は解体され、跡地は公園や公共施設として整備される方針です。住宅の再建は行われません。

Q5. 香港火災の原因は竹の足場ですか?

竹自体は燃えにくく、主因は防火基準を満たさない防護ネットと窓を封鎖した発泡スチロールです。

Q6. 住民は買い取りに納得していますか?

74%が受け入れを検討する一方、9%は現地再建を希望。一部住民は損失を訴えています。

Q7. 香港の住宅の火災保険加入率はどのくらいですか?

2021年の調査で約16%程度とされ、日本と比べて大幅に低い水準です。

Q8. 買い取りの決断期限はいつですか?

2026年8月末までに決断する必要があり、代金の支払いは2026年第3四半期の見込みです。

Q9. 宏福苑とはどんな住宅ですか?

1983年建設の築41〜42年の政府補助住宅で、全8棟1984戸に約4600人が住んでいました。

Q10. 現地での再建にはどのくらいかかりますか?

香港政府は現地再建には約10年を要すると説明しており、技術的・経済的に困難としています。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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