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宇連ダム貯水率2.8%はいつまで続く?32年前の夏を冬が超えた異常事態

宇連ダムの貯水率2.8%を示すアイキャッチ画像。干上がったダム湖のシルエットと「貯水率2.8% 冬が夏を超えた」のテキスト

| 読了時間:約10分

ダムの底に沈んでいた橋の欄干が、水面の上に姿を現した。

2月19日、愛知県新城市の宇連うれダム。
東三河5市の水がめであるこのダムの貯水率は、わずか2.8%にまで下がった。

このまま雨が降らなければ3月中旬にもダムが枯渇する——そんな異常事態が、いま起きている。

 

 

 

宇連ダム貯水率2.8%——32年前の"夏"の渇水を"冬"が上回った

平年なら60%を超える宇連ダムの貯水率が、2.8%にまで落ち込んだ。

📺 CBCテレビの報道

CBCテレビの報道によると、2月19日午前0時時点で宇連ダムの水位は大きく低下。
岩肌がむき出しになり、ダムの底に沈んでいた橋の欄干が姿を現している。

500mlのペットボトルに例えると、残りは大さじ1杯弱。
それが今の宇連ダムだ。

渇水といえば、真夏の暑い日に起きるもの——そう思っている人は多いだろう。
実際、32年前の1994年に宇連ダムが深刻な渇水に陥ったのは、4月から9月にかけてまとまった雨が降らなかった"夏"のことだった。

ところが、32年前の夏の渇水ピーク(2.9%)を、まだ冬の今が下回っている
CBCテレビの比較報道では、1994年9月時点の貯水率2.9%と、現在の2.8%を比較。
0.1ポイントとはいえ、季節が夏から冬に逆転しているという事実は重い。

  1994年(32年前) 2026年(現在)
時期 夏(9月) 冬(2月)
宇連ダム貯水率 2.9% 2.8%
当時の対応 夜間断水・コンビニトイレ利用中止 節水対策(水道20%、農業・工業40%)

32年前は、夜間断水を実施し、コンビニのトイレが利用中止に追い込まれた。
当時を知るコンビニ店員は「5時間我慢するしかない」と語っている。

しかも危機は宇連ダムだけではない。
大島ダムの貯水率は20.9%、豊川用水全体でも12.4%まで低下している。

では、なぜ冬場にここまで水が減ったのか。
その答えは、"30年に1度"と呼ばれる異常な少雨にある。

 

 

 

名古屋1月降水量"ゼロ"——30年に1度の少雨と、200日超の節水

「最近急に水不足になった」と思っていないだろうか。
実は半年以上前から、じわじわと危機は進行していた。

降水量は平年の3分の1以下

テレビ愛知の報道によると、宇連ダム周辺の2025年11月から2026年1月までの3ヶ月間の降水量はわずか73mm
平年の3分の1以下だ。

名古屋市ではさらに深刻な数字が出ている。
1月の降水量は0.0mm。1891年の統計開始から135年で初めてのゼロを記録した。

📺 メ〜テレの報道

メ〜テレの報道では、雪が舞う日もあったが水量が0.5mm未満のため記録としてはゼロになったと伝えている。

気象庁はこの状況を「30年に1度」の記録的少雨と位置づけている。
東日本と西日本の太平洋側では、2025年11月中旬から低気圧の影響を受けにくい状態が続いている。

 

 

 

節水対策は5段階、200日超で"最長記録"

愛知県企業庁の公式発表豊川市の公式情報をもとに経緯を整理する。

📅 節水対策の経緯(5段階)

① 2025年8月29日 節水開始(農業・水道・工業すべて5%)

② 12月25日 節水率を10%に引き上げ

③ 2026年1月15日 さらに強化

④ 1月28日 農業・工業30%、水道17%に。愛知県企業庁が21年ぶりに渇水対策本部を設置

⑤ 2月10日 農業・工業40%、水道20%に。冬場にこの水準の節水は過去に例がない

2025年8月29日に始まった節水対策は、すでに200日を超えて最長を更新中だ。
中日新聞も「節水対策は200日を越して最長を更新」と報じている。

⚠️ 専門家の見解

水資源機構中部支社の馬場一博次長は「過去に、ここまで冬場に水が足りない状況になったことはない」と語った。
中部地方整備局も冬場では20年ぶりとなる渇水対策本部を設置している。

水がなければ、農業はどうなるのか。
4月の田植えシーズンを前に、東三河のコメ農家はすでに動き始めている。

 

 

 

コメ農家は"乾田直播"で対抗——行政は"豊川初"の底水活用を決めた

田植えに使う水がない。そのとき農家はどうするのか。

水を張らずにコメを育てる「乾田直播」

豊橋市で約50ヘクタールの農地を持つコメ農家・白井俊伸さんは、乾田直播かんでんちょくはの比率を引き上げた
CBCテレビの取材に対し、白井さんはこう答えている。

「乾いた田んぼに直接、種をまくという方式。去年までは7対3とか8対2くらいだった。ことしは6対4くらい」(白井さん)

乾田直播とは、水を張らない乾いた田んぼに直接種もみをまく農法だ。
ふつう田植え前には「しろかき」という作業で水を大量に使う。
乾田直播ならこの工程をまるごと省ける。

ただし万能ではない。
白井さんは「種をまいたとしても、芽が枯れてしまうとか、稲が生長しない」とも語る。
節水できても収穫できなければ意味がない——その葛藤がにじむ。

🌾 乾田直播の評価

農林水産省の資料によると、乾田直播は省力化だけでなく水資源の節約にも有効な技術として注目されている。
しかし出芽のバラつきや雑草の管理が課題で、大規模農地でないと導入が難しい面もある。
渇水をきっかけに比率を変えた白井さんの判断は、気候変動時代の稲作を先取りしたものといえそうだ。

農業以外にも影響は広がっている。
中京テレビの報道では、豊川市のキクラゲ農家・喚田恵子さんが井戸水の枯渇で栽培を止められている実態を伝えた。

延命治療で1日1回(バケツの)水につけている状態」(喚田さん)

ふだんはスプリンクラーで1日7回水をやるところを、バケツ1回に減らして菌を殺さないよう耐えている。

 

 

 

ダムの"底水"をポンプで吸い上げる——豊川初の緊急措置

行政も動いた。
2月19日、13年ぶりに豊川緊急渇水調整協議会が開かれた。

東海テレビの報道によると、豊橋市や豊川市など地元自治体の職員ら12人が参加。
中部地方整備局豊橋河川事務所の山路哲副所長は「今対策をしないと、3月中旬には非常に厳しい状況に」と述べた。

東愛知新聞の報道では、協議会で決まった緊急対策の詳細が報じられている。

対策 内容
自流の有効活用 川の下流で自然に流れている水を、環境に影響のない範囲で豊川用水に送り込む
利水者間の水融通 水を使う関係者同士で余った水を分け合う
底水の活用 ダムの取水口より下にたまった水をポンプで吸い上げる
既得水利権者への節水要請 すでに水を使う権利を持つ人にも追加の節水を求める

注目すべきは3つ目の「底水の活用」だ。
ダムの有効貯水量がゼロになっても、取水口より低い位置にはまだ水が残る。

宇連ダムに28万立方メートル、大島ダムに80万立方メートル。
25mプール約300杯分の「最後の水」だ。
これをポンプで吸い上げる。豊川用水では初の取り組みになる。

山路副所長は「これらの対策によって、3月下旬ぐらいまで延命を目指したい」と語った。
だが「延命」という言葉が示すとおり、根本的な解決ではない。

 

 

 

水不足はいつまで続くのか——「菜種梅雨」への期待と、食卓への影響

水資源機構の馬場次長の言葉は切実だった。

「4月から田んぼに水を入れないといけない。その時までに、この状況が回復しているかが非常に大きな関心。3月の菜種梅雨で、どれだけ降ってくれるか。降らないと非常に危機的な状況になると思う」

4月から田んぼに水を入れないといけない
この一言に危機の本質がある。
緊急対策で3月下旬まで持ちこたえたとしても、田植えの水が確保できなければコメの作付け自体が難しくなる。

天候の見通し

メ〜テレの報道によると、2月16日の渇水対策本部会議では「今後1ヶ月程度は降水量の少ない状態が続く」との情報が共有された。

⏰ 今後のカギ

少なくとも3月中旬ごろまでは雨に期待できない。
カギを握るのは3月下旬以降に訪れる「菜種梅雨なたねづゆ」だ。
この時期にまとまった雨が降れば、ダムの水位は一気に回復する。
降らなければ、32年前のような夜間断水に踏み切るシナリオも現実味を帯びてくる。

野菜やコメの価格にも影響が出始めている

すでに食卓への影響は出始めている。
メ〜テレの取材では、稲沢市の青果店主が「キャベツが大きく育たない。水分が大事な野菜だから」と話した。
小ぶりのまま出荷されるキャベツは、仕入れ値の高騰にもつながる。

⚠️ ここからは推測です

農業用水40%の節水は、作物に与えられる水がふだんの6割しかないことを意味する。
4月までに回復しなければ、2025年夏に起きたコメ不足の記憶がまだ新しいなか、2年連続でコメの供給に影響が出るおそれがある。
キャベツやブロッコリーなど全国有数の産地である東三河の出荷量が減れば、スーパーの棚に並ぶ野菜の値段にも波及するだろう。

ただし、菜種梅雨でまとまった降水があれば状況は大きく好転する。
悲観一色ではない。

💧 私たちにできること

蛇口をひねれば水が出る——その日常がいかに貴重か、宇連ダムの姿が教えてくれる。
東三河に住んでいなくても、節水への意識が水源の回復を早める。
小さな行動が、コメ農家の田植えを助け、食卓を守ることにつながる。

 

 

 

まとめ

  • 宇連ダムの貯水率は2月19日時点で2.8%。32年前(1994年)の夏の渇水ピーク2.9%を下回り、冬場としては前例のない危機にある
  • 2025年11月以降の「30年に1度」の記録的少雨が原因。名古屋市1月の降水量は135年で初めてゼロだった
  • コメ農家は水を使わない「乾田直播」への切り替えを進め、行政はダムの底水をポンプで吸い上げる豊川初の緊急措置に踏み切った
  • 3月下旬の菜種梅雨でまとまった雨が降るかどうかが、今後の分岐点になる
  • 水道水の節水率は20%。家庭での節水が、農業用水の確保と食卓の安定に直結する

よくある質問(FAQ)

Q1. 宇連ダムの貯水率は現在どのくらい?

2月19日午前0時時点で2.8%。平年は60%を超えるため、ほぼ枯渇に近い状態にある。

Q2. 愛知の水不足で断水はあるのか?

2026年2月時点で断水は実施されていない。ただし32年前(1994年)には夜間断水やコンビニのトイレ利用中止が起きた。

Q3. 豊川用水の節水はいつまで続く?

気象庁は今後1ヶ月程度は少雨が続く見通しを示しており、3月下旬の菜種梅雨がカギを握る。

Q4. 乾田直播(かんでんちょくは)とは何?

水を張らない乾いた田んぼに直接種もみをまく農法。代かきが不要になり大幅な節水ができる。

Q5. 宇連ダムが枯渇したらどうなる?

ダム取水口より下の「底水」をポンプで吸い上げる緊急措置が決定済み。豊川用水では初の対応となる。

Q6. なぜ冬なのに水不足になった?

2025年11月以降「30年に1度」の記録的少雨が続いたため。名古屋市では1月の降水量が135年で初の0mmを記録した。

Q7. 水不足でコメの値段は上がる?

4月の田植えまでに水源が回復しなければ作付けに影響が出るおそれがあり、米価に波及するだろう。

Q8. 名古屋も水不足の影響はある?

名古屋の水源である木曽川水系は現在のところ深刻ではないが、全国的な少雨傾向の中で注視が必要な状況にある。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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