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「孫に故郷を見せたい」——涙ながらに語る63歳の祖母は、帰れない。
ウクライナ全面侵攻から丸4年。
渋谷駅前で声を上げた避難民のうち、帰国を望む人はわずか2.6%だった。
定住を選び始めた約2000人の「今」と、支援が消えた現実を追う。
この記事でわかること
「孫に故郷見せたい」——渋谷に響いたウクライナ避難民の声
2026年2月24日の夜、渋谷駅前のハチ公前広場にウクライナの国旗が揺れた。
Stand With Ukraine Japanの呼びかけで集まった避難民たちが、黄色と青の旗を手に「ウクライナに平和を」と叫んだ。
「子どもたちに普通の子ども時代がない」。そんな声も上がった。
📰 毎日新聞の報道より
集会に参加した東部ハルキウ州出身のナタリヤ・カベリナさん(63)は、全面侵攻前から日本で暮らす娘のもとに身を寄せて1年余りになる。
羽織った国旗で涙を拭いながら犠牲者に黙とうを捧げ、「戦争中に生まれた2歳の孫に故郷を見せたいと思う日々です」と語った。
もし自分の親が異国に逃れ、孫を連れて故郷に帰ることすらかなわないとしたら——。
カベリナさんの言葉は、4年にわたる戦争が「祖母から孫に故郷を見せる」という当たり前の願いすら奪っている現実を突きつける。
同じ渋谷で、ロシア人も「反戦」を叫んでいた
ウクライナ問題はウクライナ人とロシア人の対立——。
そう映るのは自然なことだろう。
ところが、この渋谷で2日前にもう一つのデモが行われていた。
共同通信の報道によると、2月22日、在日ロシア人約15人が同じ渋谷駅前で反戦デモを行った。
掲げていたのは白地に青線だけの旗。
ロシア国旗の白・青・赤から「血を想起させる赤」を除いたものだ。
🗣 在日ロシア人の声
発起人でモスクワ出身の会社員ユリア・ヒトロワさん(29)は「ウクライナに平和を、ロシアに自由を」と声を上げ、「私たちはこの戦争に絶対に納得できない。反対の声を上げ続けなければ」と語った。
侵略した国の人と侵略された国の人は対立しているはず → 実際には同じ渋谷で双方が平和を訴えていた。
ほとんどのニュースはこの2つのデモを別々に伝えているが、並べてみると風景がまったく違って見える。
国旗を羽織り涙を流すカベリナさんが象徴するように、日本での避難生活はすでに4年目に入った。
では、約2000人の避難民はこの先どうなるのだろうか。
帰国希望はわずか2.6%——「一時避難」から「定住」へ変わった4年間
帰国を望む避難民は、ほとんどいない。
戦争が終われば避難民はウクライナに帰る——多くの人がそう思っているだろう。
4年前の侵攻開始時、「一時的な避難」として日本に来た人がほとんどだったのも事実だ。
📊 YMCAアンケート結果(2026年1月・約600人対象)
ところが、日本YMCA同盟が2026年1月に約600人を対象に行ったアンケートでは、「速やかに帰国する」と答えた避難民はわずか2.6%。
「日本に残り定住を試みる」が60.2%に達した。
100人の避難民のうち、帰りたいのは3人足らず。
残り35人は「しばらく様子を見る」、そして60人は日本に残ると答えている。
約2000人の避難民はどこにいるのか
出入国在留管理庁の公式データから、最新の全体像が見える。
| 項目 | 数値(2026年1月末) |
|---|---|
| 累計入国者数 | 2,868人 |
| 現在の在留者数 | 1,967人 |
| 女性 | 2,004人 |
| 男性 | 864人 |
| 18歳未満 | 385人 |
| 61歳以上 | 396人 |
女性が約7割を占める。
18歳未満の子どもが385人いるという数字は、渋谷のデモで響いた「子どもたちに普通の子ども時代がない」という叫びと重なる。
なぜ帰らないのか——「安全」と「時間」が生んだ変化
定住を望む理由の1位は「日本の方が安全だから」で87%。
国連によれば、4年間でウクライナの民間人死者は1万5000人を超えた。
故郷に帰りたくても、帰る場所が安全ではない。
ただし理由はそれだけではない。
産経新聞の報道によると、「日本に友人ができた」が40%、「日本で生計を立てていける目途がたった」が31%に上った。
💡 「一時避難」から「定住」への転換
4年という時間が、避難民の意識を「帰国」から「定住」へ変えた。
改正入管難民法で補完的保護対象者——難民に準じる保護を受けられる立場——に認定されれば、最長5年の在留が認められる。
「一時避難」を前提とした受け入れが、事実上の永住へとシフトしつつある。
では、定住を選んだ避難民の生活は成り立っているのか。
その答えは厳しい。
年100万円の支援が消えた——避難民の「自立」を阻む壁
避難民の7割以上が働いている。それでも生活は苦しい。
仕事をしているなら生活できるだろう——そう思うかもしれない。
ところが現実はまるで違う。
⚠ 厳しい収入の実態
産経新聞の報道によれば、YMCAのアンケートでフルタイムやパートタイムで就労している避難民は7割以上。
だが月収10万円以下が68%、5万円以下に至っては38%を占める。
年100万円の経済支援はすでに終了した。
日本財団が3年間にわたり避難民1人あたり年100万円を支給してきた制度が打ち切られた。
働いてはいるが、収入だけでは暮らしが成り立たない。
なぜ働いているのに収入が低いのか
⚠️ ここからは推測を含みます
壁になっているのは、日本語だろう。
移民の経済統合では「言語→資格→社会ネットワーク」の順に壁が立ちはだかるとされている。
ウクライナ避難民の中には高い学歴やスキルを持つ人も多いとみられるが、日本語が十分でなければ専門的な仕事に就くのは難しい。
結果として、言葉を必要としない単純労働に限られ、月収は低く抑えられるのではないか。
東京で月収10万円以下なら、家賃を払えば生活費はほとんど残らない。
支援が終わった今、この構造は深刻さを増しているといえそうだ。
🗣 支援者の声
日本YMCA同盟の横山由利亜さんは、「避難民は日本での就学や就労、母国に家族を残したまま日本に定住するかもしれない状況など、さまざまな不安と選択に迫られている。今後も継続したサポートが必要だ」と語っている。
「声を上げ続ける」という選択
渋谷のハチ公前で毎年行われるウクライナ避難民の集会。
2日前には在日ロシア人の反戦デモ。
さらに在日ウクライナ人は毎週日曜、新宿駅南口でスタンディングを続けているという。
一過性のイベントではない。
「忘れられること」に抗う声が、東京の街角で鳴り続けている。
まとめ
- 2026年2月24日、ウクライナ全面侵攻から4年。渋谷駅前で避難民らが集会を開き、2日前には在日ロシア人も同じ場所で反戦デモを行った
- 日本に暮らすウクライナ避難民は1,967人。うち60.2%が定住を希望し、「速やかに帰国する」と答えた人はわずか2.6%
- 日本財団による年100万円の支援は終了。就労率7割でも月収10万円以下が68%と、経済的自立には高い壁がある
- 避難民の受け入れは「一時的な支援」から「社会への統合」へと局面が変わりつつある
渋谷でカベリナさんが流した涙は、故郷を思うだけの涙ではない。
帰れない現実と、日本で生きていく覚悟のはざまで揺れる涙だ。
戦争が終わっても、この約2000人の暮らしは続いていく。
よくある質問(FAQ)
Q1. ウクライナ避難民は日本に何人いますか?
出入国在留管理庁によると2026年1月末時点で1,967人が日本で暮らしています。累計入国者数は2,868人です。
Q2. ウクライナ避難民は帰国するのですか?
日本YMCA同盟の調査で「速やかに帰国する」と答えた人は2.6%。60.2%が日本での定住を希望しています。
Q3. 渋谷のウクライナ関連デモはいつ行われましたか?
2026年2月24日夜に避難民らの集会が開かれました。2日前の22日には在日ロシア人約15人も反戦デモを行っています。
Q4. ウクライナ避難民への支援はどうなっていますか?
日本財団による1人あたり年100万円の経済支援は3年間で終了しました。月収10万円以下の避難民が68%を占めます。
Q5. ウクライナ侵攻はいつから始まりましたか?
2022年2月24日にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始しました。2026年2月24日で丸4年です。
Q6. 補完的保護対象者とは何ですか?
難民条約上の難民に当たらないが迫害のおそれがある人です。認定されると在留資格「定住者」で最長5年滞在できます。
Q7. ウクライナの民間人の犠牲者は何人ですか?
国連によると4年間で1万5,000人以上の民間人が殺害されました。2025年の死者数は侵攻後で最多です。
Q8. ウクライナの停戦交渉はどうなっていますか?
米トランプ大統領が仲介を試みていますが交渉は暗礁に乗り上げています。ロシア側に譲歩の兆しは見えません。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- 毎日新聞「『孫に故郷見せたい』渋谷駅前でウクライナ避難民らデモ 侵攻4年」(2026年2月24日)
- 出入国在留管理庁「ウクライナ避難民に関する情報」(2026年1月31日更新)
- 産経新聞「ウクライナ侵略4年 長期の避難生活で6割が『定住』希望」(2026年2月24日)
- 共同通信「『ウクライナに平和を、ロシアに自由を!』在日ロシア人も反戦訴え」(2026年2月22日)