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警察官がたり詐欺で80代が12億円被害 別の被害者開設口座を悪用

| 読了時間:約6分

愛媛県の80代女性が警察官かたり詐欺で約12億円を騙し取られた。警察庁によれば全国過去最高の被害額だ。

しかも、送金先の口座は大阪で同様の被害に遭った別の70代女性が開設したものだった。詐欺グループは「被害者」に口座を作らせ、それを別の詐欺の受け皿として悪用する——まさに「連鎖」する犯罪だった。

なぜ金融機関が通報したのに防げなかったのか。「別の被害者の口座」はどのように悪用されたのか。

本記事では12億円詐欺の全容と、「被害者が被害者を生む」異例の連鎖構造を詳しく解説する。


12億円被害の全容——なぜ「過去最悪」と呼ばれるのか

愛媛県内の80代女性が、警察官や検察官をかたる詐欺グループに約12億円をだまし取られた。この金額は警察庁が把握する特殊詐欺の被害額として全国で過去最高である。

事件の始まりは2025年10月30日ごろだった。
女性宅の固定電話に「薬局店員」を名乗る女から電話がかかる。「あなたの保険証が不正に使われている」——そう告げられた後、「警察につなぎます」と言われた。

電話は「石川県警の警察官」を名乗る男に引き継がれた。
さらに「検察官」を名乗る男らと、女性はSNSでやり取りをするようになる。
犯人は「あなたの口座で資金洗浄されている」「財産を調査する必要がある」と迫った。

女性は2025年12月から2026年2月にかけて、計8回にわたって約12億円を指定口座に振り込んだ
1回の振り込み額は1億1千万円から2億円。
振り込みの際、女性は金融機関の窓口で「土地を買うので現金を送らせてほしい」と説明していた。

警察庁2025年統計(産経新聞2026年2月12日記事より)

警察庁によると、2025年の特殊詐欺被害額は約1414億2千万円で過去最悪を記録した。
このうち「ニセ警察詐欺」の被害額は約985億4千万円と、特殊詐欺全体の約7割を占める。

この12億円という被害額の「異常さ」は統計を見れば明らかだ。
愛媛県内でも、記録の残る1989年以降で過去最高の被害額である。

12億円——これは東京都内のマンション約40~50戸分に相当する。
一般サラリーマンが約2000年働いても貯められない金額だ。

さらに女性は、別に約5000万円分の暗号資産も同様の手口で失ったとみられる
つまり実際の被害総額は12億円を超える可能性がある。


では、なぜこれほど大規模な被害が防げなかったのか。
実は金融機関は異変に気づき、警察に通報していた——それでも止められなかった。

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「警察も見抜けなかった」——防げなかった現場で何が起きていたか

多くの人はこう考えるだろう。「警察が事前に調査していたなら防げたはず」と。

しかし現実は違った。金融機関が詐欺の可能性を警察に通報し、警察が聞き取り調査まで実施したにもかかわらず、詐欺を止めることはできなかった。

多額の資金が動いたことで、金融機関の詐欺検知システムが作動した。
窓口で女性が「土地を買うため」と説明したものの、金融機関は不審に思い警察に通報した。

警察は女性に直接会って聞き取り調査を実施した。

しかし女性は犯人グループから徹底的に口止めされていた。
「絶対に誰にも話してはいけない」——そう言われていたため、警察に真実を話すことはなかった。

愛媛県警は「対応に不備があった点は認められないと考える」とコメントしている。
警察の公式見解は「詐欺とは判断できなかった」というものだ。

犯人は偽の土地建物売買契約書を事前に用意していた

ここで注目すべきは、犯人があらかじめ偽の「土地建物売買契約書」を用意していた点だ。
この契約書は大阪の別の被害者が作らされたものとみられる。
警察が調査に行っても、女性は「本当に土地を買うんです」と契約書を示す——犯人はそこまで計算していた。

現場で判断することの難しさが浮き彫りになる。
警察官が目の前に立っていても、被害者は「これは本当の手続きだ」と信じ込んでいる。
犯人はその心理的状態を巧みに利用した。


警察でさえ見抜けなかった詐欺の巧妙さ。
そしてこの事件にはもう一つ異例の要素がある——使われた口座は「別の被害者」のものだった。

口座悪用の連鎖——「別の被害者」が作らされた口座の正体

愛媛の被害者が送金した口座は、大阪府の70代女性が別の詐欺被害に遭った際に犯人の指示で開設した口座だった。

詐欺グループは一人の被害者を騙して口座を作らせ、その口座を別の詐欺の受け皿として悪用する——まさに「被害者が被害者を生む連鎖」が起きていた。

大阪府内の70代女性も、愛媛の80代女性と同様の警察官かたり詐欺で約3億円をだまし取られた。
犯人はこの女性に「身の潔白を示すため」と嘘をつき、複数の口座を開設させた。

その口座の一つが、愛媛の80代女性の送金先として使われたのだ。

さらに衝撃的なのは、大阪の被害者が「加害者的な役割」も担わされていた点だ。

犯人は大阪の女性に「動作確認」と称して、口座に入金された金を暗号資産(仮想通貨)に交換するよう指示した。
女性は愛媛から送金された約12億円を暗号資産に換え、詐欺グループに送金するマネーロンダリング資金洗浄の役割を担わされていた

つまり、この連鎖はこうだ。

  1. 詐欺グループが大阪の70代女性を騙し、口座を開設させる(被害額約3億円)
  2. その口座を愛媛の80代女性への送金先に指定
  3. 愛媛の女性から約12億円が大阪の女性の口座に振り込まれる
  4. 大阪の女性は「動作確認」と称して、その12億円を暗号資産に交換しグループに送金

警察の見解(読売テレビ2026年4月6日報道)

警察は2つの事件に同じ詐欺グループが関わっているとみて、マネーロンダリングされた金の流れなどを詳しく調べている。

大阪の女性は「騙された被害者」でありながら、「犯行の道具」として使われた。
騙されて加担させられたとはいえ、12億円もの資金移動に関与した事実は残る。


では、このように「知らずに犯行に加担させられた」被害者は、法的に罪に問われるのだろうか。
多くの読者が抱くこの疑問に答える。

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知らずに加担したら罪になるのか——「二重被害」の法的リスク

知らずに詐欺に加担してしまった場合でも、状況によっては共犯として処罰される可能性がある。

大阪の70代女性のように「騙された被害者」でありながら、マネーロンダリングに加担させられたケースは、法的に微妙な立場に立たされる。

知らずに詐欺に加担した場合でも、共同正犯や幇助犯ほうじょはんとして処罰される可能性があるという。

判断の分かれ目は「故意の有無」だ。
しかし「知らなかった」と主張しても、状況が「異常」であれば認識できたと判断されるリスクがある。

たとえば「お金を受け取るだけで5万円の報酬がもらえる」といった明らかに不自然な条件での依頼は、「犯罪性を認識できた」と判断されやすい。

大阪のケースは報酬目的ではなく心理的圧力によるもの

大阪の70代女性のケースは、この典型例とは少し異なる。
彼女は報酬目的ではなく、「身の潔白を証明するため」という心理的な圧力で加担させられた。
つまり「騙されて」マネロン役を担わされたのだ。
しかし、それでも12億円という巨額の資金移動に関与した事実は変わらない。

この事件の恐ろしさは「二重被害」にある。

第一の被害は「約3億円をだまし取られる」こと。第二の被害は「知らぬ間に12億円のマネロンに加担させられ、法的リスクを負う」こと。

 

警察は両事件の関連を調べている段階であり、大阪の女性がどのように扱われるかは現時点で不明だ。
しかし、この「連鎖」の構造を知っておくことは、自分や家族を同じ被害から守る第一歩になるだろう。


今回の記事のポイント

  • 被害規模:愛媛県の80代女性が警察官かたり詐欺で約12億円を騙し取られた。全国の特殊詐欺被害額として過去最高。
  • 防げなかった理由:金融機関が警察に通報し、警察が聞き取り調査を実施したが、犯人の口止めと偽の契約書により詐欺と判断できなかった。
  • 連鎖構造:送金先の口座は大阪の別の被害者が開設したものだった。詐欺グループは「被害者が被害者を生む連鎖」を仕組んでいた。
  • 法的リスク:騙されてマネロンに加担させられた場合でも、「知らなかった」では済まされない可能性がある。二重の被害に注意が必要だ。

あなたにできること:警察官を名乗る電話がかかってきたら、必ず一旦電話を切って自分で警察署の番号を調べ直すこと。
警察官がSNSで連絡を取ることは絶対にない。
この2つを覚えていれば、今回のような手口に騙されるリスクは大幅に減るだろう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 警察官かたり詐欺の見分け方は?

警察官がSNSで連絡することは絶対にない。一旦電話を切り、自分で警察署の番号を調べ直す。

Q2. なぜ金融機関は詐欺を見抜けなかったのか?

被害者が「土地を買う」と偽の契約書を示し、犯人の口止めで警察にも真実を話せなかったため。

Q3. 「別の被害者開設口座を悪用」とはどういう意味か?

大阪の被害者が詐欺で作らされた口座を、愛媛の被害者の送金先として詐欺グループが使用したこと。

Q4. マネーロンダリングに加担させられた被害者は罪になる?

知らなくても状況次第で共犯と判断される可能性がある。騙されても法的リスクを負う恐れがある。

Q5. 偽の土地建物売買契約書は何のために使われた?

金融機関の窓口で「土地購入のため」と説明する際の偽装書類。警察の聞き取りでも欺くために使われた。

Q6. 警察の事前調査があったのに防げなかったのはなぜ?

被害者が犯人の口止めで真実を話せず、偽の契約書を示したため、警察も詐欺と判断できなかった。

Q7. 今回の12億円は全国で過去最高なのか?

はい。警察庁によると特殊詐欺の被害額として全国過去最高。

愛媛県内でも1989年以降で最高額。

Q8. 大阪の被害者はなぜマネロンに加担させられたのか?

「身の潔白を示すため」と心理的に追い詰められ、「動作確認」と称して暗号資産への交換を指示された。

Q9. 同じ詐欺グループが両方の事件を起こしたのか?

警察は同じグループが関わっているとみて調べている。現時点で断定はされていない。

Q10. このような被害に遭わないためにできることは?

警察官を名乗る電話は必ず切り、自分で警察署に確認する。SNSでの連絡は全て詐欺と疑う。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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