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冬眠期にクマが出没する原因は、ドングリ不作だけではない。
人里の食料を学習した個体や、母グマを失い冬眠を知らない子グマなど、4つの要因が重なっている。
FNNプライムオンラインの報道によると、岩手大学の山内貴義准教授は「例年にはない異常な事態」と語った。
その裏には、駆除が生み出した新たな問題もある。
この記事でわかること
冬眠しないクマが増えている4つの原因——「穴持たず」から「孤児グマ」まで
原因はひとつではない。
冬眠期のクマ出没には、4つのタイプがある。
「冬になればクマは眠る。だから安全だ」。
そう信じている人は多い。
たしかに、例年のクマ目撃は12月に激減し、翌3月まで山は静かだった。
📊 出没件数の実態
読売新聞の報道によると、2025年11月の全国出没件数は1万245件。
過去最多だった2023年の約3倍にのぼる。
12月も1,721件で2023年の2倍を超え、冬に入っても出没は止まらなかった。
では、なぜ冬でもクマが現れるのか。
専門家の見解や報道をもとに整理すると、大きく4つの原因が浮かぶ。
ドングリ不作で眠れないクマ——「穴持たず」の正体
1つめは、昔から知られる原因だ。
秋のドングリが不作だと、クマは冬眠に必要な脂肪をたくわえられない。
FNNの福島テレビ報道で、福島県生活環境部の加藤竜氏はこう説明した。
「穴持ず」とは、冬眠しないクマを指す猟師言葉だという。
栄養が足りず寝床も見つけられないまま、冬も動き続ける。
2025年は東北を中心にドングリが不作だった。
そのため、この冬は「穴持たず」が例年より多いとみられている。
「仕方なく」ではなく「選んでいる」——人里の味を覚えたクマ
2つめの原因は、読者の予想を裏切るかもしれない。
ドングリが足りないから仕方なく人里に来る → 人里に食べ物があると学習し、冬眠せずに居座るクマがいる。
読売新聞がそう報じた。
新潟県十日町市では2025年12月、柿の木に登って実を食べ続けるクマが見つかった。
近づいても逃げず、人を気にする様子もなかったという。
💡 核心
つまり、人里のほうが効率よく食べられると学んだクマが、冬眠をやめている。
ドングリが豊作かどうかは、もはや関係ない。
母グマを失った子グマは冬眠の仕方を知らない
3つめは、2025年の大量駆除がもたらした「副作用」ともいえる原因だ。
クマの子は母グマと約1年半行動をともにする。
その間に、冬眠の場所選びや眠り方を学ぶ。
ところが母グマが駆除されると、子グマは冬眠の場所選びや眠り方を教わる機会を失う。
🗣 住民の証言
テレビ朝日の報道では、福島県喜多方市の住民がこう語った。
「猟友会の人たちの話だと、親グマが捕獲されて親がなくなって、子グマが寝ること(冬眠)を知らなくて」
行き場のない子グマは、住宅の床下や物置小屋にもぐりこむ。
石川県立大学の大井徹特任教授は「人里での生活に慣れて大胆になっているクマにとって、床下が安全で快適な場所に見える」と指摘した。
駆除すれば問題が減る、と単純にはいかない。
駆除が孤児グマを生み、孤児グマが冬の街に出没する。
この因果がいま、現実になっている。
暖冬で「想定より早く目覚める」
4つめは、気温の変化だ。
岩手大学の山内准教授はFNNの取材に「春が来るのが早くなると、我々の想定よりも早くクマが目覚めてしまう」と語った。
暖かい日が続くと、冬眠中のクマが途中で目を覚ます。
目覚めても、山にはまだ新芽が出ていない。
エサがない。だからクマは、食べ物を求めて人里に下りてくる。
| タイプ | 原因 | 出現時期 |
|---|---|---|
| 穴持たず | ドングリ不作で脂肪不足 | 12月〜1月 |
| 学習済み個体 | 人里の食料を覚えて居座る | 通年 |
| 孤児グマ | 母の駆除で冬眠を学べない | 12月〜2月 |
| 早期覚醒 | 暖冬で冬眠から早く目覚める | 2月〜3月 |
4つの原因は同時に進んでいる。
だから「ドングリが豊作なら安心」とはいえない。
では実際に、2026年の冬はどこで何が起きているのか。
2026年2月、石川から関東まで——「1993年以降初」の冬季人身被害も
冬季のクマ出没は、もう「珍しい出来事」ではない。
📊 年間出没件数
読売新聞によると、2025年4〜11月の全国のクマ出没件数は4万7,038件。
過去最多だった2023年度の2万4,348件を大きく上回った。
しかもこの勢いは、冬になっても衰えなかった。
11月に1万件を超えた出没は、12月も1,721件、そして年が明けても続いた。
日テレ岩手の報道によると、岩手県では2026年1月の出没が75件。
前年同月の約4.4倍だ。
花巻市で猟友会員が重傷——冬の人身被害は1993年以降初
2月13日午後1時すぎ、岩手県花巻市栃内。
住宅の農機具小屋にクマが入り込んだ。
IBC岩手放送の報道によると、猟友会に所属する70歳の男性が花火で追い払おうとした。
そのとき、林から飛び出してきたクマに襲われた。
頭と顔に重傷を負い、ドクターヘリで病院に搬送された。
⚠ 前例のない事態
日テレ岩手の報道によると、1993年以降初めて、1〜2月に人里での人身被害が出た。
クマ対処のベテランでさえ、冬のクマには対応しきれなかった。
石川・北海道・関東でも——広がる冬の出没
花巻市だけの話ではない。
石川県白山市では2月12日、雪山を歩くツキノワグマが目撃された。
FNNプライムオンラインによると、白山自然保護センターは「例年この地域でクマが目撃されるのは3月中旬から」と説明した。
1か月も早い。
北海道根室市の風蓮湖では2月24日、湖のほとりを歩くクマが撮影された。
HTB北海道ニュースの報道で、地元のロッジオーナーは「2月に出るのは初めての経験だ」と語った。
栃木県足利市の河川敷でも2月23日にクマの目撃が2件あった。
北海道から関東まで、冬のクマ出没は全国に広がっている。
📈 北海道ヒグマ捕獲数
2025年度の北海道ヒグマ捕獲数は1月末時点で2,013頭。
過去最多だった2023年度の1,804頭をすでに超え、前年度の約2倍にのぼる。
3度戻ってきた子グマ——「追い払い」が通じない
福島県喜多方市では、1頭の子グマが同じ住宅に繰り返し現れた。
テレビ朝日の報道によると、12月27日に小屋に侵入してリンゴを食べた。
12月29日にも自宅前に姿を見せた。
さらに大みそかには近くの牛小屋に入り込み、追い払われると住宅の床下にもぐりこんだ。
約2時間居座り、発煙筒でも動かなかった。
一度「ここにエサがある」と覚えたクマは、何度追い払っても戻ってくる。
🔔 福島県の対応
福島県はこの冬、県内全域にクマ出没注意報を4月15日まで発令した。
福島テレビの報道によると、冬季の全県発令は2021年度の運用開始以来、初めてだ。
こうした状況を受け、国も従来の方針を大きく変えつつある。
3月以降の危険と「保護から管理へ」——環境省が方針転換、私たちにできること
冬が終われば安心か。答えはノーだ。
岩手大学の山内准教授は日テレ岩手の取材で「3月中旬以降は要注意」と述べた。
2026年3月は平年より暖かい見込みで、冬眠中のクマの目覚めが早まるおそれがある。
⚠ 専門家の警告
読売新聞によると、山内准教授は「山にはまだ食べ物がなく、クマが人里に直行する」と警鐘を鳴らした。
「去年も盛岡市の材木町に出たのが4月上旬。ことしも十分ありうる」とも語っている。
冬眠明けのクマは空腹だ。
山に新芽が出る前に目覚めてしまえば、食べ物を求めて人里に向かう。
3〜4月はむしろ、冬以上に注意が必要な時期になる。
環境省が歴史的な方針転換——「保護」から「管理」へ
この事態に、国も動いた。
読売新聞によると、環境省はクマの管理計画にかかわるガイドラインの改定案をまとめた。
「保護」の色合いが強かった従来の方針から、「管理」へと大きくかじを切った内容だ。
改定案のポイントは2つある。
ひとつは、県境を越えた広域での個体群管理を強く推奨したこと。
生息数が600頭以上の個体群には捕獲の制限をなくす方針だ。
もうひとつは、ゾーニングの導入だ。
農林水産業が盛んな地域や市街地を「原則排除エリア」と位置づけ、出没したクマを排除する。
河川敷など市街地への侵入経路は「管理強化エリア」として、捕獲や駆除を積極的に行うとした。
なぜ「駆除すれば解決」とはいかないのか
ただし、駆除だけでは根本的な解決にならない。
ちくまウェブの書評記事で紹介されている研究によると、クマの分布域は1970年代以降ずっと拡大している。
その原因は3つ。里山の過疎化と高齢化、山林の利用形態の変化、そして狩猟者の減少だ。
💡 構造的な問題
かつて人とクマの緩衝地帯だった里山が緩衝地帯として機能しなくなった。
クマの行動圏と人の生活圏が重なり、「冬も安全でない時代」が構造的に生まれている。
狩猟者はピーク時の約50万人から20万人を切り、その7割が60歳以上だ。
クマの数が増え、人の側の対応力が落ちている。
この構造が変わらないかぎり、冬のクマ出没は繰り返されるだろう。
今日からできる4つの対策
構造的な問題はすぐに解決しない。
だが、個人でできることはある。
| 対策 | 理由 |
|---|---|
| 庭の柿やリンゴを放置しない | クマの高カロリー食料になる |
| 生ごみ・ペットフードを屋外に置かない | 一度覚えるとクマが繰り返し来る |
| 倉庫・車庫の扉を閉め施錠する | 子グマが入り込んで居座る事例がある |
| 山に入る際はクマスプレーを携帯 | 冬〜春先も冬眠明けのクマと遭遇しうる |
「冬だからクマはいない」。
その思い込みこそが、油断を生む。
庭の柿の木、倉庫の隙間——身の回りのクマの誘引物を取り除くことが、いまできる最も現実的な防御になる。
まとめ
- 冬眠期のクマ出没には4つの原因がある。ドングリ不作、人里の食料への学習、孤児グマの冬眠未経験、暖冬による早期覚醒
- 2025年11月〜2026年2月にかけて全国で出没が続き、岩手県では1993年以降初の冬季人身被害が発生
- 3月は平年より暖かく、冬眠明けのクマが空腹のまま人里に向かうおそれがある
- 環境省はクマ政策を「保護」から「管理」へ転換。里山の構造変化を踏まえた長期対策が始まる
- 個人レベルでは誘引物の除去と倉庫の施錠が最も現実的な対策
よくある質問(FAQ)
Q1. クマが冬眠しなくなった理由は何ですか?
ドングリ不作による脂肪不足、人里の食料への学習、母グマ駆除による孤児グマの増加、暖冬による早期覚醒の4つが重なっています。
Q2. 「穴持たず」とは何ですか?
冬眠しないクマを指す猟師言葉です。栄養不足で脂肪をたくわえられなかったり、寝床を見つけられなかったりした個体を指します。
Q3. 冬眠しないクマは日本にいますか?
すべてのクマは最終的に冬眠しますが、時期が大幅に遅れたり途中で目覚めたりする個体が近年急増しています。
Q4. 孤児グマはなぜ冬眠できないのですか?
クマの子は母グマと約1年半行動をともにし冬眠の仕方を学びます。母が駆除されるとその教育が途絶え、冬眠場所を見つけられなくなります。
Q5. 3月以降のクマの出没はどうなりますか?
2026年3月は平年より暖かい見込みで、冬眠明けが早まるおそれがあります。山にエサがない時期にクマが人里に向かう危険があります。
Q6. 環境省のクマ対策はどう変わりましたか?
「保護」重視から「管理」へ転換しました。600頭以上の個体群は捕獲制限をなくし、市街地は原則排除エリアとする改定案が公表されています。
Q7. 冬にクマに遭遇しないための対策は?
庭の果実や生ごみを放置しない、倉庫や車庫の扉を施錠する、山に入る際はクマスプレーを携帯することが有効です。
Q8. クマが出没しやすい季節はいつですか?
従来は4〜10月が中心でしたが、近年は11月以降も急増。2025年11月は過去最多の約3倍となる1万件超が記録されました。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- FNNプライムオンライン「『冬眠期に異常な事態』早くもクマの出没相次ぐ」(2026年2月27日)
- 読売新聞「『人里に食べ物』学習し居座りか、冬眠期なのにクマの出没相次ぐ」(2026年3月1日)
- FNNプライムオンライン(福島テレビ)「物置小屋で眠る熊も…冬眠しない"穴持たず"に注意!」(2026年1月15日)
- テレビ朝日「"冬眠しないクマ"出没相次ぐ なぜ?住宅床下や小屋に侵入」(2026年1月6日)
- IBC岩手放送(TBS NEWS DIG)「70代男性がクマに襲われヘリで病院搬送」(2026年2月13日)
- 日テレニュース(テレビ岩手)「冬クマに注意!冬眠時期のクマ目覚ます?」(2026年2月17日)
- HTB北海道ニュース「道東の風蓮湖でクマ撮影 2月の出没は異例」(2026年2月25日)
- ちくまウェブ(斎藤美奈子)「クマ被害が多発する原因はどこにある?」(2026年2月18日)
- 毎日新聞「クマ出没件数、捕獲数が過去最多 25年4~11月速報値」(2026年1月7日)