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カンボジア詐欺拠点の「遠隔幹部」をタイで拘束 渡航歴なしの実態

| 読了時間:約5分

カンボジアの詐欺拠点を率いた男は、一度もカンボジアに行っていなかった。

2026年6月、タイで日本人の男が現地の警察に拘束された。

カンボジア北西部にある特殊詐欺の拠点を動かしていた幹部だとされる。

なぜ一度も現場に行かずに組織を動かせたのか。

カンボジア詐欺拠点の「遠隔幹部」をタイで拘束 渡航歴なしの実態

バンコクで拘束された38歳の正体

被害額は 数十億円 。

だが男の容疑はタイの 入管法違反 だった。

タイ警察の タッチャイ副長官 は6月6日、 佐々木裕介容疑者 (38)を拘束したと発表した。

タッチャイ副長官

警察官を装った詐欺と 資金洗浄 (犯罪で得た金の出どころを隠す行為)に関与していた

佐々木容疑者は、2025年に かけ子 (被害者に電話をかける実行役) 29人 が摘発されたカンボジア北西部ポイペトの拠点で幹部だったとされる( khb東日本放送 )。

しかしこのポイペト拠点は、カンボジアで動いていた日本人の詐欺グループの一つにすぎなかった。


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摘発から1年で浮かんだ2つの組織

プノンペンとポイペト——カンボジアの 2つの都市に、別々の詐欺組織 があった。

先に摘発されたのはプノンペン系だ。
2023年9月、市内のビルを丸ごと借り切った拠点が急襲され、日本人 25人 が拘束された。

時事通信 によると、トップとされるのは 準暴力団 (暴力団に指定されていないが組織犯罪にかかわる集団)「関東連合」の元メンバー・ 山口哲哉容疑者 (46)だ。

被害額は 30億円 を超えるとされる。

一方のポイペト系は2025年5月、タイ国境に近い拠点がカンボジア当局に急襲された。

捜査は愛知県警を中心とする6県警の合同捜査本部が担い、プノンペン系を追う埼玉県警とは別の体制だ。

佐々木容疑者はこのポイペト系の幹部とされ、日本の警察が逮捕状を取得している。
6月中にも日本へ送還される方針だ。

2023年9月
25人を拘束

プノンペン系の拠点を急襲。

埼玉県警が捜査を担当

2025年5月
29人を拘束

ポイペト系の拠点を急襲。

愛知県警など6県警が合同で捜査

2026年6月
幹部を拘束

佐々木裕介容疑者をバンコクで拘束。
6月中に日本へ送還予定

2つのグループに組織的なつながりがあったかは、現時点の報道では明らかになっていない。

ただし同じカンボジアで日本人を使った同種の犯罪が並行していた。

何らかの情報共有があった可能性は否定できないだろう。

末端のかけ子が次々と逮捕される一方で、指示を出していた人物はどこにいたのか。


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一度も現地に行かなかった「遠隔幹部」

佐々木容疑者のパスポートに カンボジアの出入国記録はなかった

幹部なら現場にいるはず と思いがちだが、 実はまったく逆だった
TBS NEWS DIG によると、佐々木容疑者は バンコクの高級マンション で暮らしていた。

拠点を管理する中国人らと連携し、かけ子への指示を出していたとされる。

もう一つの役割がリクルートだ。

借金を抱えた日本人を勧誘し、カンボジアの拠点に送り込んでいたという。

「人を集めて送る係」と「現場に指示を出す係」を、タイにいたまま兼ねていた形になる。

この3か国にまたがる役割分担を整理すると、次のような構造が浮かぶ。

1
タイで人を集める
2
カンボジアで電話
3
日本から金を詐取

機能を国ごとに切り分ければ、1か国の捜査だけでは全体がつかめない壁が生まれる。

心理学に 「道徳的離脱」 という現象がある。

自分と被害の現場に距離があると、罪の意識が薄れやすいとされている。

カンボジアに一度も行かなかったのは、捕まりにくいだけではない。

現場を見ないことで罪の意識も薄れていたのではないか—— 「遠隔幹部」は仕組みと心理の両面から生まれていた

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バンコクで指示を出す幹部がいた一方で、指示を受けていたかけ子はまったく違う現実の中にいた。

月1200万円稼いで取り分は「数%」

拠点の収益は4か月で 14億円

かけ子の取り分は 数% だった。

中日新聞 によると、ポイペトの拠点は2025年2月から5月の4か月間で約 14億円 をだまし取っていた。

14億円 ÷ 4か月 ÷ 29人

= 1日あたり約 1170万円 、1人の月間ノルマは約 1200万円 相当

だがかけ子に渡る報酬は、だまし取った金額の 数%にすぎない

中国人の監視役に管理され、朝から晩まで日本に電話をかけ続ける毎日だった。

指示に従わない者には暴行が加えられた。
耳をライターで焼かれ、爪を剥がされた 者もいる。

渡航を後悔する容疑者もいたという。

加害者であると同時に被害者でもあるという二重の立場が、この拠点の中にはあった。

朝から晩まで電話をかけ続けたかけ子は、その電話口で何をしていたのか。


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30秒で切れるビデオ通話の裏側

壁で仕切った小部屋に、他人の顔が並ぶPC画面があった。

ポイペトの拠点には 「AIルーム」 と呼ばれる部屋があった。

かけ子はここでAI(人工知能)が作った 偽の顔画像 を使い、警察官になりすましてビデオ通話をかけていた。

映像は約 30秒 で切る。

偽の顔だと気づかれる前にカメラを止めるためだ。

警察手帳に貼る顔写真までAIで作り込んでいたとされる。

かけ子は制帽を模した帽子をかぶり、複数の偽の顔から選んで通話に臨んでいた。

時事通信 によると、佐々木容疑者も 「警察官を装っていた」 とタイ警察は認識している。

こうしたAIの悪用はポイペトだけでなく、ほかの海外拠点でも確認されている。

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こうした手口で狙われるのは電話を受ける側だけではない。

電話をかける側のかけ子は、どうやって集められたのか。

「海外で稼げる」に乗った先の現実

借金に困った人に「海外で稼げる」という誘いが届く。

オンラインゲームやSNSで知り合った相手から仕事を紹介され、渡航先で詐欺を強いられるケースが問題になっている。
時事通信 は、ポイペト事件でもかけ子が 借金や求職をきっかけに渡航していた 実態を伝えている。

問題はこの拠点だけにとどまらない。

カンボジア全体で 15万人 以上が特殊詐欺に従事しているとの推計もある。

拠点は一つ潰れても別の場所に移るだけだ。


あなたの周りに借金や仕事に困っている人がいたら、伝えてほしい。

知らない人から「海外で稼げる」と誘われても乗らないことだ。

そして 本物の警察がビデオ通話で連絡してくることはない

[Turn 5 完了]

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まとめ

  • 佐々木裕介容疑者(38)はバンコクの高級マンションに暮らし、カンボジアへの渡航記録が一切なかった——詐欺拠点の「遠隔幹部」という形態が浮かび上がった
  • ポイペト拠点の収益は4か月で約14億円、1人あたり月1200万円分を稼がされたかけ子の取り分は数%で、暴行つきの管理下にあった
  • 拠点の「AIルーム」ではAIで生成した偽の警察官の顔を使いビデオ通話をかけていた。映像はわずか30秒で切られていた
  • カンボジアにはプノンペン系(山口哲哉容疑者)とポイペト系(佐々木容疑者)の少なくとも2系統があり、別々の捜査本部が追っている

国をまたいで機能を切り分けた犯罪は、「現場に行かない幹部」を生み出し、捜査と罪の意識の両方に壁を作っていた。

よくある質問(FAQ)

Q1. カンボジアの詐欺拠点で逮捕された日本人は誰?

2026年6月にタイで拘束されたのは佐々木裕介容疑者(38)。

ポイペトの詐欺拠点の幹部とされ、入管法違反の疑いで拘束された。

Q2. カンボジア詐欺事件の被害額はいくら?

タイ警察のタッチャイ副長官は被害額が数十億円に上ると述べている。

ポイペト拠点だけで4か月間に約14億円がだまし取られていた。

Q3. 特殊詐欺のかけ子とは何をする人?

かけ子とは被害者に電話をかけて金をだまし取る実行役のこと。

ポイペト拠点では29人の日本人がかけ子として摘発された。

Q4. カンボジアの詐欺拠点ではどんな手口が使われていた?

AIで偽の警察官の顔を生成し、ビデオ通話で約30秒だけ映してすぐ切るという手口が使われていた。

拠点には「AIルーム」と呼ばれる専用の部屋があった。

Q5. なぜ日本人がカンボジアの詐欺拠点に送り込まれるのか?

借金や求職をきっかけに「海外で稼げる」と勧誘されて渡航するケースが報告されている。

SNSやオンラインゲーム経由の勧誘が問題になっている。

Q6. カンボジアの日本人詐欺グループは何系統あるのか?

少なくともプノンペン系(山口哲哉容疑者がトップとされる)とポイペト系(佐々木裕介容疑者が幹部とされる)の2系統が確認されている。

捜査本部も別々だ。

Q7. 佐々木裕介容疑者は今後どうなるのか?

日本の警察が詐欺容疑で逮捕状を取得しており、タイ当局は2026年6月中にも日本へ強制送還する方針を示している。

📚 参考文献

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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