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「臓器移植法を尊重し、違法行為とは無縁の支援体制をとっています」——そう書いたサイトが、1200万円超の違法あっせんの窓口だった。
2026年7月7日、警視庁は一般社団法人「国際医療相談室」の実質的な経営者ら3人を、臓器移植法違反(有償あっせん)の疑いで逮捕した。
主犯とされる菊池仁達(ひろみち)容疑者(66)は、かつて別の事件で実刑判決を受けた人物だ。
なぜ刑事罰を受けた人物が同じ手口を繰り返せたのか。
そして、1997年に施行された法律が2026年まで29年間も一度も使われなかったのはなぜか。
この記事でわかること

「違法と無縁」と書いたサイトで1200万円
「臓器移植法を尊重し、違法行為とは無縁の支援体制をとっています」——そのサイト上の言葉が、 1200万円 超の違法あっせんの入り口だった。
菊池仁達 容疑者(66)、 安藤貴樹 容疑者(66)、 菊池充 容疑者(42)の3人は、2026年7月7日に臓器移植法違反の疑いで逮捕された。
日本経済新聞 によると、法施行後 29年間 で有償あっせんの摘発はこれが初めてだ。
手口はシンプルだった。
ウェブサイトで腎臓移植を希望する患者を全国から募り、都内に住む70代の男性から計 1200万円 超を徴収した。
内訳は「事務手数料」名目で法人口座に 300万円 、「外科医謝礼金」名目で菊池容疑者個人名義の口座に約 930万円 だった。
男性は2026年1月、カンボジアの病院で、氏名不詳の女性から摘出された腎臓の移植手術を受けたとされる。
現地では、中国籍の医師とコーディネーターが対応していた。
読売新聞(Yahoo!ニュース転載) によると、腎臓を提供した女性の氏名は特定されておらず、その女性が自発的にドナーになったかどうかも明らかになっていないとされる。
⚠️ 「NPO・一般社団法人なら信頼できる」は思い込みかもしれない
NPOや一般社団法人という 法人格は誰でも取得できる 。
法令遵守を宣言する言葉と実態が正反対だったこの事件は、法人の看板だけで安心できない現実を示している。
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では、この菊池容疑者とはいったい何者なのか——実はこれが「初めての逮捕」ではない。
保釈中に新会社、懲役8月では足りなかった理由
実刑が確定した人物が、服役前の"空白期間"に新しい法人を立ち上げ、次の違法事業を始めていた。
菊池容疑者には前歴がある。
2021〜22年、 NPO法人「難病患者支援の会」 の理事長として東欧ベラルーシでの臓器移植を無許可であっせんし、患者2人から計 5150万円 を受け取った。
2023年2月に警視庁に逮捕され、懲役 8月 の実刑判決が一審・二審とも下った。
最高裁も上告を棄却し、刑が確定した。
時事通信 が伝えている。
問題はここからだ。
菊池容疑者は2023年7月に保釈された。
そして、実刑が確定したまま最高裁の判断を待つ期間中の2024年3月、 「国際医療相談室」 を新たに設立した。
ライブドア(TBS NEWS DIG)の報道 によると、同法人サイトでは「得意分野は情報の収集。
疾病で苦しむ国内外の患者に優位な医療機関を紹介している」とうたっていた。
菊池容疑者が収容されたのは2026年1月末のことだ。
保釈とは何か
身体の拘束(留置・拘置)を一時的に解くこと。
会社を作る・営業する・契約を結ぶといった行為を禁じる条件ではない 。
そのため、実刑確定前の保釈期間中に新法人を立ち上げ、次の違法事業を始めることは制度上「できてしまう」のではないか。
今回適用された「有償あっせん」違反の法定刑と、前回の「無許可あっせん」違反の法定刑を比べると、刑の重さには大きな差がある。
厚生労働省の法令資料 に条文が確認できる。
渡航先をベラルーシからカンボジアに変え、法人の種類をNPOから一般社団法人に変えた。
しかし手口の本質は同じだ。
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それほどのリスクを冒してまで、なぜ患者は違法業者を頼るのか。
答えは「 15年 」という数字にある。
腎臓を待つ人が1万4千人、ドナーは年100人ほど
14,883人 が腎臓移植を待っている。
しかし2024年度、脳死から提供された臓器は 131件 にとどまった——単純計算(131件×2腎=262腎)で 57年分の需要 が積み上がっている状態だ。
📊 需要の規模を計算する
待機者 14,883人 ÷ 年間移植可能数 262腎 (131件×2)= 約 56.8年分 の需要
日本臓器移植ネットワーク「移植希望者の現状」 によると、腎臓移植の平均待機期間は約 15年 だ。
これは比喩ではない。
2025年3月末時点で14,883人が登録し、そのうち成人は平均15年待つのが現実だ。
子どもが生まれてから成人するまでの年数、そのまま待ち続けることになる。
なぜ腎臓だけがこれほど長いのか。
心臓や肝臓の患者は、移植を受けなければ命に直接かかわる。
一方、腎臓が機能しなくなっても、透析(血液を機械で濾過する治療)で生命を維持できる。
透析があるから「死なずに待てる」 。
そのため医療資源の配分で後回しになりやすい構造なのだろう。
これが15年待ちという異常な数字を生んでいる。
この数字が、 違法業者の市場をつくっている 。
「数か月で手術を受けられる」という言葉は、15年待ちを知っている患者には劇薬のように響く。
あなたや家族がもし腎臓病の診断を受け、移植を検討するような状況になったとき、検索結果に「海外で早く受けられる」というサイトが出てくる可能性はゼロではない。
厚生労働省が参議院に提出した2024年度臓器移植状況の報告 でも、腎臓待機者数は 371人 増加し続けていることが確認されている。
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では、法律があるのになぜ29年間、業者を捕まえられなかったのか。
29年間、有償あっせんで捕まった人がいなかった
1997年に「有償あっせん禁止」の条文が生まれた。
しかし 2026年7月7日まで、その条文で逮捕された人間は一人もいない 。
日本経済新聞 と 読売新聞(Yahoo!ニュース転載) はともに「1997年10月の法施行後、有償あっせんの摘発は初めて」と伝えている。
「法律があれば防げる」 条文は執行されなければ紙と同じだ 。
さらに驚くべき事実がある。
今回の菊池容疑者は、前回の2023年事件でも「 海外移植の無許可あっせんとして全国初の立件 」だった。
つまり同一人物が、種類の異なる「初摘発」を 2度 重ねた主役になっている。
なぜ29年間、有償あっせんで誰も捕まらなかったのか。
「対価の存在」を立証することが捜査の難所になるという構造がある。
「医師謝礼」「事務手数料」という名目で費用を分散させると、その金がどこまでいっても「あっせんの対価」だと証明するのが難しい。
一方、摘発件数が少ない領域では捜査資源も優先されにくい——この2つが重なることで、 法律があっても執行が後回しになりやすい状態 が続いていたのだろう。
今回の逮捕を可能にしたのは、菊池容疑者自身の"詰めの甘さ"だったのではないかと考えられる。
「外科医謝礼金」約 930万円 が 菊池容疑者個人の口座に振り込まれていた という記録が、有償性の立証を容易にした。
費用を2つの口座に分けることで「手数料」と「謝礼」に見せようとしたはずが、逆にそれが証拠となった。
職場で話すなら一言でこうなる——「 自分の口座に謝礼金を受け取ったせいでバレた 」。
29年分の盲点が今回崩れた理由は、それだけかもしれない。
「 法律はあった。
ただ29年間使われなかった 」——この事実は、規制の存在と規制の機能が別物であることを示している。
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では、この事件を受けていま腎臓移植を希望している人や、家族に腎臓病がある人はどう考えればいいのか。
患者側に罪はあるか、正規のルートはどこか
違法業者に 1200万円 を振り込んだ70代の男性——その人自身は罪に問われるのか。
臓器移植法 第11条第2項は、「移植術に使用されるための臓器の提供を受けることの対価として財産上の利益を供与すること」を禁じている。
厚生労働省の法令資料 に条文が確認できる。
患者側も法律の対象に含まれている。
ただし、「あっせんの対価と知って払った」という認識(故意)の立証が要件となるとされる。
「医師謝礼・事務手数料」だと信じて払っていた場合、その立証は難しい。
当局の捜査は現在、あっせん側(業者)に集中しており、患者の立件については現時点では不明だ。
ℹ️ 正規のルートは明確に存在する
日本臓器移植ネットワーク(JOT) への登録が、国内で腎臓移植を待つ唯一の公的なルートだ。
待機期間が長い現実は変わらないが、適切な医療機関で近親者から腎臓の片方を提供してもらう「 生体腎移植 」という選択肢もある。
日本臓器移植ネットワーク「移植希望者の現状」 に登録することが、国内で腎臓移植を待つ唯一の公的なルートだ。
あなたや家族が腎臓病の診断を受けた際に「海外で早く受けられる」という情報に接したとき、今回の事件の構造を思い出してほしい。
「事務手数料」「医師謝礼」という名目で高額を請求し、 ドナーの身元が不明な海外渡航移植 は、今回の事件と同じ構造を持っている可能性がある。
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法律があっても 29年間 誰も捕まらなかったという事実は、規制の穴を業者が知り尽くしていたことと、ドナー不足という解消されない需要の歪みが組み合わさった結果であり、 その構造は今回の逮捕1件で消えるわけではない 。
まとめ
- 菊池仁達容疑者(66)は2023年のベラルーシ事件(無許可あっせん・計5150万円・初立件)に続き、今回のカンボジア事件(有償あっせん・計1200万円超・初立件)でも「初の摘発」の主役になった。同一人物が2種類の「全国初」を重ねるという異常な経緯だ。
- 有償あっせん違反の法定刑は最大5年の拘禁刑または500万円以下の罰金で、前回の無許可あっせん(最大1年の懲役・100万円の罰金)の5倍に相当する。今回の刑事的な重さは前回と次元が違う。
- 腎臓移植の待機者は14,883人、年間の脳死提供は131件。単純計算で57年分の需要が積み上がる現実が、違法業者の市場を生み続けている。
- 「外科医謝礼金」が菊池容疑者個人の口座に振り込まれていたという証拠が初摘発を可能にした。法律が29年間使われなかった背景には、費用の名目分散による「有償性の隠蔽」と捜査資源の優先順位という構造がある。
- 正規の移植待機はJOT(日本臓器移植ネットワーク)への登録が唯一の公的ルート。「早く・海外で」をうたう業者へのアクセスは、今回の事件と同じ構造に踏み込む入り口になりうる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 臓器移植法の有償あっせんとは何ですか?
臓器の提供者と患者をお金をもらって仲介する行為です。
臓器移植法第11条で禁じられており、違反すると最大5年の拘禁刑または500万円以下の罰金が科されます。
Q2. 有償あっせんと無許可あっせんは何が違いますか?
無許可あっせんは国(厚生労働省)の許可なしに仲介する行為で、最大1年の懲役か100万円の罰金です。
有償あっせんはお金をもらって仲介する行為で、最大5年の拘禁刑か500万円の罰金と、刑罰が5倍重くなります。
Q3. 日本で腎臓移植を受けるにはどのくらい待ちますか?
日本臓器移植ネットワークの公式データによると、平均待機期間は約15年です。
2025年3月末時点で1万4千人以上が登録しており、年間の脳死臓器提供は131件にとどまっています。
Q4. 保釈中に会社を作ったり営業したりできるのですか?
保釈は身体の拘束(留置・拘置)を一時的に解くことを意味します。
法人の設立や営業活動を禁じる条件ではないため、保釈中に新しい会社を作ること自体は制度上できてしまいます。
Q5. 違法業者に払った患者は罪に問われますか?
臓器移植法は対価を払って臓器提供を受けることも禁じています。
ただし「あっせんの対価と知って払った」という認識(故意)の立証が要件とされます。
今回の当局の捜査はあっせん側に集中しており、患者の立件については現時点では明らかになっていません。
Q6. 腎臓移植を正規に申し込むにはどうすればいいですか?
日本臓器移植ネットワーク(JOT)への登録が公的な唯一のルートです。
近親者から腎臓の片方を提供してもらう「生体腎移植」という選択肢もあり、こちらは適切な医療機関で手続きを行います。
Q7. 1997年から2026年まで有償あっせんで誰も逮捕されなかったのですか?
はい。
1997年の臓器移植法施行から2026年7月7日の今回の逮捕まで、有償あっせんの条文で逮捕された人間は一人もいませんでした。
法施行後29年間で初の摘発です。
📚 参考文献
- NHKニュース「カンボジアでの臓器移植あっせんし対価受け取ったか 3人逮捕」 (2026年7月7日)
- 日本経済新聞「カンボジアでの臓器移植、対価受け取りあっせんか 元NPO理事長逮捕」 (2026年7月7日)
- 読売新聞(Yahoo!ニュース転載)「カンボジアで臓器移植を有償あっせんの疑い、元NPO理事長ら逮捕」 (2026年7月7日)
- ライブドア(TBS NEWS DIG)「カンボジアの病院での腎臓移植をあっせんか 国際医療相談室 菊池仁達容疑者ら3人を逮捕 警視庁」 (2026年7月7日)
- 日本経済新聞「海外の臓器移植あっせん、NPO理事長に実刑判決 地裁」 (2023年11月28日)
- 時事通信「NPO理事長、実刑確定へ=無許可で臓器移植あっせん―最高裁」
- 日本臓器移植ネットワーク「移植希望者の現状」 (2025年3月31日現在)
- 厚生労働省「臓器移植法第11条違反事件について」
- GemMed「2024年度の臓器移植状況、希望者は心臓809名、肺627名などにのぼるが、提供者は131名にとどまる—厚労省」 (2025年6月)
リアルタイムニュースNAVI 編集部
reaitimenews.com
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