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自動車盗難なぜ4年連続増加?82分に1台を奪うCANインベーダーの手口

自動車盗難なぜ4年連続増加?82分に1台を奪うCANインベーダーの手口

| 読了時間:約10分

約82分に1台。
あなたの愛車が盗まれる番は、すでに回ってきているのかもしれない。

2025年の自動車盗難は6386件で4年連続の増加だった。
背景にはわずか2分で車を奪う最新機器と、犯罪集団トクリュウの影がある。

鍵も壊さずアラームも鳴らさない手口の実態から、盗まれた車が消える流通ルート、そして個人でできる防犯策まで全体像を解き明かす。

 

 

 

6386件、4年連続増——トクリュウ時代に自動車盗が止まらないわけ

2025年の自動車盗難は認知件数6386件
前年から306件増え、4年連続で右肩上がりが続いた。

1日あたり約17.5台、約82分に1台のペースで誰かの車が消えている計算だ。

読売新聞の報道によると、2025年の自動車盗の認知件数は6386件で、前年から306件増え4年連続の増加となった。

ピーク時の12分の1まで減ったのに、なぜ再び増えたのか

自動車盗難のピークは2003年の6万4223件だった。
警察庁の統計によると、そこから18年かけて2021年には5182件まで落ち込んだ。

ピーク時の12分の1。
「自動車盗難は過去の犯罪」2022年から4年連続で再び増加に転じた

しかもこの反転には、見逃せない特徴がある。

トクリュウ3本柱で唯一、自動車盗だけが増加

日テレの報道によると、警察庁がトクリュウ対策の柱に位置づける3つの組織的窃盗のうち、太陽光発電施設での金属ケーブル盗と大量万引きは2025年に前年より減少した。
対策が奏功して2つは減ったのに、自動車盗だけが増え続けている。

被害は特定の地域に集中している

被害の地域差は大きい。
警察庁の2024年統計では、愛知・埼玉・千葉・茨城・神奈川の上位5県だけで全体の56.8%を占めた。

順位 都道府県 認知件数
1位 愛知県 866件
2位 埼玉県 781件
3位 千葉県 706件
4位 茨城県 567件
5位 神奈川県 536件

警察白書によれば、トクリュウによる資金獲得犯罪の検挙人員508人のうち窃盗は103人。
SNSで実行犯を募る闇バイト経由の加担者が全体の30.5%を占めており、犯罪の「入口」が広がっていることがわかる。

では、犯人はどうやって鍵も壊さずに車を盗み出すのか。

 

 

 

2分で解錠、無音で始動——CANインベーダーの手口とトクリュウの分業

鍵は壊されていない。窓も割られていない。
アラームは鳴らない。なのに車だけが消えている。

これがCANインベーダーによる自動車盗の現実だ。

車を「だます」仕組み

CANインベーダーとは、車の制御システムに不正侵入して解錠・始動させる小型機器のこと。

車の内部には、ドアロックやエンジンなどを制御する「CAN通信」というネットワークがある。
人間の体でいえば神経系統にあたる部分だ。

犯人は車体の隙間から配線にアクセスし、この機器を接続する。
すると車のコンピュータは「正規のキーで操作された」と誤認する。

パソコンがハッキングされてデータを抜かれるのと同じ原理で、車そのものが乗っ取られるわけだ。

自動車盗難防止協会の石田修一代表理事によると、CANインベーダーを使えば車種によっては解錠からエンジン始動まで約2分しかかからない。

コンビニで飲み物を買っている間に、駐車場の愛車が動き出していてもおかしくない。

 

 

 

リレーアタックとは何が違うのか

スマートキーの電波を中継して盗む「リレーアタック」は以前から知られていた。
しかしCANインベーダーはそれとは根本的に異なる。

比較項目 リレーアタック CANインベーダー
仕組み キーの電波を延長 制御システムに直接侵入
キーの近接 必要 不要
個人での対策 電波遮断ケースで対応可 物理的な防護が必要
主な対象 スマートキー搭載車全般 トヨタ製高級車が中心

リレーアタックはスマートキーを電波遮断ケースに入れれば防げた。
CANインベーダーは車の配線そのものに侵入するため、キーの管理だけでは対処できない。

実際の犯行と新型機器の出現

2025年12月5日未明、千葉県浦安市の住宅街で時価約850万円のランドクルーザー300が盗まれた。
防犯カメラには、男が車体の配線に機器をつなぐ様子が映っていた。

読売新聞によると、警視庁と茨城県警は2026年2月にブラジル国籍の男3人を逮捕し、新型のCANインベーダーを押収している。

この機器はネット上で数十万〜数百万円で売られており、購入案内にはテレグラムの連絡先が記載されている。

2026年に新種が確認された

日テレの報道によると、2026年に入って警察が把握していない新種のCANインベーダーもあらたに確認された。

防犯企業Secualの分析では、犯行にかかる時間は機器接続から約60秒
ドアロック解除からエンジン始動まで無音で完了し、アラームも反応しないと報告されている。

盗難の手口はわかった。
では、奪われた車はどこへ消えるのか。全国に約3100カ所あるとされる「ヤード」がその舞台だ。

 

 

 

盗まれた車の5台に4台は戻らない——ヤードから海外へ消える流通ルート

盗まれた車が発見される確率は約24%。
オーナーの手元に戻る確率はわずか約19%だ。

日本損害保険協会の調査が示すこの数字は、「盗まれたら、ほぼ終わり」という現実を突きつけている。

盗難車が「車」でなくなるまで

車はなぜ戻ってこないのか。
その答えは、盗難から輸出までの流れにある。

盗難車が海外へ消えるまでの流れ

ターゲット選定・下見

CANインベーダーで窃盗(数分)

コインパーキングに仮置き(GPS追跡を警戒)

ヤードに搬入・解体

コンテナに部品を詰めて港へ

UAE(アラブ首長国連邦)などに不正輸出

名古屋テレビの報道によると、ヤードは2025年末時点で全国に約3100カ所が確認されている。
その多くは千葉・茨城・埼玉など関東圏に集中する。

鉄壁で囲まれた施設の中で車はバラバラに解体され、ドアやエンジンなどの部品に変わる。

読売新聞の報道では、警視庁が2025年11月に茨城県内のヤードから横浜港に送られたコンテナを捜索。
盗難された9台のトヨタ車を分解したパーツが発見された。
輸出先はUAEの予定だったという。

ヤードに持ち込まれた時点で車は原形を失う。
これが返還率19%の背景だ。

 

 

 

検挙率が物語る「盗み得」の構造

もうひとつ、車が戻らない理由がある。
犯人が捕まりにくいのだ。

警察庁の統計によると、2024年の自動車盗の検挙率は44.1%
半数以上の事件で犯人が捕まっていない。

殺人の検挙率

96.6%

自動車盗の検挙率

44.1%

他の重大犯罪と比べて圧倒的に低い。
この数字が犯罪組織にとって「盗み得」の構造を生んでいる。

reguit-shopの分析によると、都道府県別ではさらに差が開く。
愛知県の検挙率は14.8%、岐阜県15%、静岡県19%と、盗難件数が多い地域ほど検挙が追いついていない。

規制の動きは始まっている

ただし、流れを変えうる動きも出てきた。

読売新聞によると、警察庁は今後CANインベーダーなど解錠機器の所持規制を検討する方針だ。
現状ではこうした機器を持っているだけでは違法にならない。
正規の自動車整備にも使われる技術と同種であるため、一律の禁止が難しいのだろう。

ヤード規制法案が動き出した

stop-tounan.jpの報道によれば、国民民主党は2025年12月12日にヤード規制法案(盗難自動車等の処分の防止に関する法律案)を衆議院に提出した。
千葉県が2015年にヤード規制条例を全国初で制定して以降、同県の盗難認知件数は2023年の全国1位から2024年には3位に下がっている。

法規制が「出口」を封じれば、盗んでも売れない状況が生まれる。
では、規制が整うまでの間に個人でできることは何か。

 

 

 

「盗むのが面倒な車」にする——専門家が勧める3層の防犯策

犯人が最初に見るのは車ではない。家と駐車環境だ。

防犯企業Secualの分析によると、プロの窃盗犯は犯行前に夜間の人通り、照明の有無、防犯設備の有無、作業のしやすさを確認してからターゲットを選ぶ。

つまり「高級車だから盗まれる」「盗みやすい環境にある高級車」が狙われる

石田修一代表理事は「犯人に『盗むのが面倒な車だ』と思わせる必要がある」と指摘。
駐車場にセンサーライトや防犯カメラを設置したうえで、車にハンドルロックを取り付けるなど複数の対策を組み合わせることが重要だと述べている。(読売新聞報道

犯人が嫌がるのは「時間」と「目立つこと」

完璧な防御は難しい。
だが犯人には明確な弱点がある。

犯行に時間がかかること。
そして周囲に気づかれること。
この2つのリスクが上がるほど、犯人はその車を避ける。

あなたの自宅の駐車場を犯人の目線で見てほしい。
照明は十分だろうか。
防犯カメラは設置されているか。

3つの層を組み合わせる

対策は1つでは足りない。
物理的防犯・電子的防犯・環境防犯の3層を重ねることで、犯人の「成功確率」を下げる。

具体策 狙い
物理的防犯 ハンドルロック、タイヤロック 犯行時間を延ばす
電子的防犯 CAN対策機器、GPS追跡 侵入を検知・追跡
環境防犯 防犯カメラ、センサーライト 犯行を「目立たせる」

1つの対策を突破されても、次の壁が待っている。
その手間を嫌って犯人は別のターゲットに移る。

警察庁も自動車メーカーに盗難防止機能の向上を働きかけている。
トヨタは近年の新型車で純正セキュリティにCAN対策を追加しているとされるが、すでに車を持っているオーナーは自分で防御を重ねるしかない。

まずは今夜、自宅の駐車場を犯人の目で眺めてみてほしい。

 

 

 

まとめ

  • 2025年の自動車盗難は6386件、4年連続増加。約82分に1台が盗まれている
  • CANインベーダーで無音・2分の犯行が横行。2026年には新種も確認された
  • 盗まれた車はヤードで解体され海外へ。手元に戻る確率はわずか19%
  • 検挙率は44.1%で殺人・強盗より大幅に低く、「盗み得」の構造がある
  • 個人の対策は物理・電子・環境の3層を組み合わせ、「盗むのが面倒な車」にすること

CANインベーダーの所持規制やヤード規制法案など、法整備の動きは始まっている。
だが規制が整うまでの間、愛車を守れるのは自分だけだ。

 

 

 

よくある質問(FAQ)

Q1. CANインベーダーとは何ですか?

車の制御システムに不正侵入してドアを解錠しエンジンを始動させる小型機器。車種によっては約2分で犯行が完了する。

Q2. 自動車盗難で最も盗まれやすい車種は?

2025年上半期はランドクルーザーが765台で最多。プリウス289台、アルファード191台と続く。

Q3. 盗まれた車は見つかりますか?

日本損害保険協会の調査によると発見率は約24%、オーナーの手元に戻る確率は約19%にとどまる。

Q4. トクリュウ対策の法改正はどう進んでいますか?

警察庁がCANインベーダーの所持規制を検討中。国民民主党は2025年12月にヤード規制法案を衆議院に提出した。

Q5. 自動車盗難の対策として何が有効ですか?

ハンドルロック等の物理防犯、CAN対策機器の電子防犯、防犯カメラやセンサーライトの環境防犯を組み合わせること。

Q6. 自動車盗難の検挙率はどれくらいですか?

2024年の検挙率は44.1%。殺人96.6%や強盗92.5%と比べて大幅に低く半数以上が未検挙。

Q7. 自動車盗難はどの都道府県で多いですか?

愛知県が最多。埼玉・千葉・茨城・神奈川と合わせた上位5県で全体の約57%を占める。

Q8. リレーアタックとCANインベーダーの違いは?

リレーアタックはスマートキーの電波を中継する手口で電波遮断ケースで防げる。CANインベーダーは車の配線に直接侵入するため物理的な防護が必要。

Q9. 車両保険で自動車盗難は補償されますか?

車両保険に加入していれば盗難も補償対象になることが多い。ただし契約内容により異なるため保険会社への確認が必要。

Q10. ヤードとは何ですか?

盗難車を解体・保管する鉄壁に囲まれた施設。全国に約3100カ所あり、千葉・茨城・埼玉など関東に多い。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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