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千鳥屋本家が民事再生を申請した。
負債は約22億6800万円だが、店舗は営業を続ける。
その背景には、4兄弟による老舗の分裂と、看板商品をめぐる訴訟がある。
この記事でわかること
千鳥屋本家グループが民事再生——負債総額は約22億6800万円
千鳥屋本家と関連3社が民事再生を申請した。
ただし、店は閉まらない。
RKB毎日放送の報道によると、福岡県飯塚市に本社を置く千鳥屋本家は2026年2月27日、福岡地方裁判所に民事再生法の適用を申請した。
関連会社のチロリアン、一実も同日に申請している。
📊 負債の規模
負債総額はグループ4社あわせて約22億6800万円。
千鳥屋本家の単体では約7億3800万円にのぼる。
(NetIB-News)
「千鳥屋が倒産した」と聞くと、もう店が閉まるのかと心配になる。
しかし今回の民事再生は破産とは異なる手続きだ。
✅ 民事再生とは
会社をたたむ手続き → 事業を続けながら借金を整理し、立て直しを目指す制度。
東京商工リサーチの情報では、別の親族の会社が経営をサポートし、店舗は通常通り営業するとされている。
もうひとつ、異例の事実がある。
NetIB-Newsによると、千鳥屋本家は2025年2月に有限会社から株式会社へ組織変更したばかりだった。
組織変更からわずか1年で民事再生に至った背景には、長年の課題が積み重なっていたのではないだろうか。
申請代理人は日野孝俊弁護士ほか2名が務める。
では、そもそも千鳥屋本家とは何か。
他の「千鳥屋」とは何が違うのだろうか。
「千鳥屋」は4つある——4兄弟が分けた約400年の老舗
千鳥屋は1つの会社ではない。
4つの別法人に分かれている。
あなたが福岡土産に買った千鳥饅頭やチロリアンは、果たして今回の千鳥屋本家の商品だろうか。
それとも、まったく別の千鳥屋の商品だろうか。
寛永7年から続く原田家の歴史
千鳥屋の起源は寛永7年、西暦1630年にさかのぼる。
千鳥饅頭総本舗の公式サイトによると、原田家が佐賀県で「松月堂」という菓子屋を始めたのが出発点だ。
昭和に入り、松月堂は福岡県飯塚市に支店「千鳥屋」を開いた。
看板商品の千鳥饅頭は、筑豊炭田の労働者たちの土産ものとして広まった。
経営を引き継いだのは、創業者の妻・原田ツユだ。
Wikipedia「千鳥屋」によると、ツユは息子たちをそれぞれ各地の事業に配置した。
長男は東京、三男は大阪、五男は飯塚を担当した。
やがて4兄弟がそれぞれ別の会社を立ち上げた。これが、いまも続く「千鳥屋」の分裂構造だ。
4社の違いを整理する
| 社名 | エリア | 現在の状況 |
|---|---|---|
| 千鳥屋総本家 長男 |
東京 | 2016年に民事再生→全店閉鎖 |
| 千鳥饅頭総本舗 次男 |
福岡市 | 売上23.7億円で営業中 |
| 千鳥屋宗家 三男 |
関西 | 営業中 |
| 千鳥屋本家 五男 |
飯塚・北九州 | 民事再生を申請 |
ここで注目したいのは、4社のうち2社が民事再生を経験しているという事実だ。
2016年には東京の千鳥屋総本家が破綻し、その後全店が閉鎖された。
そして2026年、飯塚の千鳥屋本家が同じ道をたどった。
💡 影響範囲のポイント
今回の民事再生の影響を受けるのは、飯塚の千鳥屋本家グループだけだ。
福岡市の千鳥饅頭総本舗と関西の千鳥屋宗家は別法人であり、直接の影響はない。
同じ屋号を掲げていても、経営も財布もまったく別。
同族経営の暖簾分けが生んだ構造だ。
では、なぜ千鳥屋本家は破綻に至ったのか。
その背景には、看板商品をめぐるある訴訟があった。
チロリアン訴訟と解決金5000万円——千鳥屋本家を追い詰めた背景
民事再生の直接の原因は公式に発表されていない。
だが、破綻に至る伏線は複数あった。
看板商品「チロリアン」の名前を失った
企業法務ナビによると、千鳥饅頭総本舗は2019年、千鳥屋本家に対してチロリアンの商標権侵害を理由に訴訟を起こした。
チロリアンは1962年に千鳥屋が開発したロール状のクッキーで、九州土産の定番として親しまれてきた。
この訴訟は2022年12月に和解が成立した。
和解の条件は、千鳥屋本家がチロリアンの名前の使用をやめ、解決金5000万円を千鳥饅頭総本舗に支払うというものだった。
📝 商品名の変更
NetIB-Newsによると、千鳥屋本家は2023年4月1日から商品名を「チロリアン」から「ヨーデルン」に変更した。
パッケージも一新している。
資本金の2.5倍を支払った重み
Wikipedia「千鳥屋本家」によると、千鳥屋本家の資本金は2000万円。
解決金の5000万円は資本金の2.5倍にあたる。
さらに2019年3月期の純利益は約マイナス143万円と、すでに赤字体質だった。
解決金
5000万円
資本金
2000万円
赤字の会社が資本金の2.5倍の解決金を支払い、さらに看板商品の名前まで失った。
ブランド力の低下が売上に響いたとしても不思議ではないだろう。
⚠️ ここからは推測を含みます
訴訟だけが原因とは限らない。
老舗の菓子業界は近年、原材料の高騰や消費構造の変化に直面している。
2016年に破綻した千鳥屋総本家も、原材料価格の高騰と大口取引先の喪失が引き金だった。
千鳥屋本家にも同様の構造的な逆風が吹いていたのではないだろうか。
こうした業界共通の課題に加え、チロリアン訴訟による金銭的負担とブランド毀損が重なったことが、民事再生への道を早めた一因だったといえそうだ。
以下に、2019年からの流れを整理する。
❶ 2019年 — 千鳥饅頭総本舗が千鳥屋本家を提訴(チロリアンの商標権侵害)
↓
❷ 2022年12月 — 大阪地裁で和解成立。解決金5000万円、商品名の変更で合意
↓
❸ 2023年4月 — 「チロリアン」を「ヨーデルン」に改名し販売開始
↓
❹ 2025年2月 — 有限会社から株式会社へ組織変更
↓
❺ 2026年2月27日 — 福岡地裁に民事再生法の適用を申請
約400年にわたり受け継がれてきた老舗が、兄弟間の分裂と訴訟を経て再建の道を選んだ。
店舗の営業は続く。ヨーデルンも千鳥饅頭もまだ買える。
千鳥屋本家がこの先どう立て直すのか、再生計画の行方が焦点となる。
まとめ
- 千鳥屋本家グループ4社は2026年2月27日に民事再生法の適用を申請。負債総額は約22億6800万円
- 店舗は通常通り営業を継続。別の親族の会社が経営をサポートする
- 「千鳥屋」は4つの別法人であり、千鳥饅頭総本舗(福岡市)と千鳥屋宗家(関西)は無関係
- 2023年のチロリアン商標訴訟で解決金5000万円を支払い、商品名を「ヨーデルン」に変更していた
- 4社のうち2社が民事再生を経験。同族経営の分裂が生んだ構造的な問題が浮き彫りとなった
福岡空港や博多駅で千鳥饅頭を手に取るとき、その箱がどの千鳥屋のものか確かめてみてほしい。
4つの千鳥屋の歴史を知ると、いつもの土産菓子が少し違って見えるはずだ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 千鳥屋本家と千鳥饅頭総本舗の違いは何ですか?
同じ千鳥屋をルーツとする別法人です。本家は五男が飯塚で、総本舗は次男が福岡市で運営しています。
Q2. 千鳥屋本家の店舗は閉まりますか?
東京商工リサーチによると、別の親族の会社がサポートし店舗は通常通り営業を続けます。
Q3. チロリアンとヨーデルンの違いは何ですか?
同じ商品ですが、2023年の商標訴訟和解で千鳥屋本家がチロリアンの名称をヨーデルンに変更しました。
Q4. 千鳥屋は全部で何社ありますか?
4兄弟がそれぞれ独立し、総本家・総本舗・宗家・本家の4社に分かれました。うち総本家は全店閉鎖済みです。
Q5. 千鳥饅頭総本舗や千鳥屋宗家に影響はありますか?
経営が完全に独立した別法人のため、直接の影響はありません。
Q6. 千鳥屋本家の負債総額はいくらですか?
グループ4社で約22億6800万円。千鳥屋本家の単体では約7億3800万円です。
Q7. 千鳥屋総本家はどうなりましたか?
2016年に東京地裁に民事再生を申請し、その後事業譲渡を経て2022年までに全店閉鎖されました。
Q8. 民事再生と倒産はどう違いますか?
民事再生は事業を続けながら裁判所の監督下で借金を整理する再建手続きです。会社をたたむ破産とは異なります。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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