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住所不定の男(27)が、車1台をだまし取った疑いで逮捕された。
名乗ったのは「中古車の委託販売業者」。
だが女性が預けた車は、いつの間にか売られていた。
関西テレビ によると、詐欺の疑いで逮捕されたのは自動車販売業の 阿部水晶容疑者 (27)。
委託販売の業者を名乗って兵庫県の50代女性から乗用車1台を受け取り、代金を渡さなかった疑いがもたれている。
取り調べに対しては「女性をだますつもりはなかった」と、容疑の一部を否認している。
契約書もあり、人から紹介された相手だった。
それでもなぜ、代金は戻らなかったのか。
この記事でわかること
「だますつもりはなかった」否認、270万円分を詐取か
「女性をだますつもりはなかった」——男は容疑の一部を、こう否認している。
阿部容疑者は、被害女性に引き渡された車が既に売られていたことが分かって発覚した、というのが警察の見立てだ。
関西テレビ の報道では、女性は引き渡した車が「売却済み」になっていると知って不審に思い、警察に届け出た。
渡したはずの車が、自分の知らないところで 転売されていた 。
ここで初めて、話がおかしいと分かった。
一方で 神戸新聞 によると、だまし取られたのは時価 270万円 相当の乗用車1台。
国産の中古車としては、決して安くない一台がまるごと消えた計算になる。
車を受け取ったことは、男も認めている。
認めていないのは「だます意図」の部分だけだ。
手元には車があり、口では否認する。
この食い違いは、どんな経緯から生まれたのか。
2月の契約から7月の逮捕まで、約5カ月が過ぎていた
契約から発覚まで、事態は約 5カ月 かけて進んだ。
神戸新聞 によると、だまし取りがあったとされるのは2月23〜27日ごろ。
男は尼崎市の女性(56)に「車を委託販売する」などとうそのメッセージを送り、乗用車1台を受け取った。
2月27日に契約書を交わし、車を持ち帰っている。
異変が表に出たのは、その1カ月後だった。
3月下旬から男と連絡が取れなくなる。
心配した家族が、男の名刺にあった会社に問い合わせた。
ところが名刺の会社に、男の 勤務実態はなかった 。
会社は山口県の自動車販売業のものだったが、男はそこで働いていなかった。
こうして被害が見え、女性は4月に被害届を出した。
そして今月29日、男は広島市内で逮捕される。
契約の2月から数えて、約5カ月。
車を渡した瞬間ではなく、渡したあとの長い沈黙のなかで、被害は静かに固まっていった。

契約から逮捕まで約5カ月、詐取は沈黙の時間差のなかで成立した(※イメージ図)
そもそも「委託販売」とは、代金がいつ入る取引なのか。
「委託販売」は買取と何が違うのか
委託販売は、車を先に預ける仕組みだ。
ふつうの買取は、業者に売って、その場で代金を受け取る。
「売る」と「お金が入る」がほぼ同時に起きる。
ところが委託販売(持ち主に代わって業者が買い手を探し、手数料を引いて売却代金を渡す仕組み)は、順番が違う。
まず車を業者に預ける。
業者がそれを別の相手やオークションに売る。
売れてから、手数料を引いた残りが持ち主に振り込まれる。
お金が入るのは、いつも後だ。

買取は即入金、委託販売は後払い。先に車を手放す構造が違う(※イメージ図)
今回、男は「オークションで売却し、手数料を引いた額を振り込む」と女性に説明していた。
この説明そのものは、委託販売の形として不自然ではない。
だからこそ、女性は車を先に渡した。
代金が後から来るのは、この取引ではふつうのことだからだ。
人をだまして物を受け取れば、詐欺罪にあたる。
詐欺罪 は刑法246条1項で「10年以下の拘禁刑(刑務所に入れられる刑)」と定められた、れっきとした犯罪だ。
だます意図があったかどうかが、これから争われることになる。
仕組みが後払いでも、ふつうは車を渡す前に身構える。
その警戒は、なぜ働かなかったのか。
なぜ紹介された相手を信じてしまうのか
「知人のディーラー」——男は、そう紹介された相手だった。
神戸新聞 によると、詐取された車は亡くなった女性の父親が使っていたものだった。
女性は家を売ろうとしていて、その際に不動産会社の従業員から、車の売却相手として男を紹介された。
見ず知らずの業者に飛び込みで頼んだのではない。
信頼していた不動産会社の担当者を通じて、つながった相手だった。

信頼できる紹介者を経ると、相手への警戒が内側から外れていく(※イメージ図)
ここに、この事件の急所がある。
信頼できる人から紹介されると、その信頼はそのまま相手にも移りやすい。
「あの担当者が紹介してくれた人なら」という気持ちが、初対面の警戒をやわらげる。
しかも男は、勤務実態のない会社の名刺を差し出していた。
紙の名刺は、それらしい安心感を足す。
代金を後で振り込むという仕組みは、それ自体はふつうの商習慣だ。
だが信頼できる人の紹介で相手を信じ切ると、車を渡す前に入金を確かめるという最後の歯止めが、「相手を疑う失礼な行為」に見えて外れてしまうのではないか。
仕組みの後払いと、紹介による信頼が噛み合ったとき、守りの一線が内側から消える。
知り合いの紹介で、契約書もある。
だから車を先に渡す——狙われたのは、まさにそこだった。
相続や家じまいの場面では、こうした紹介の連鎖が起きやすい。
親の家財を片づけ、車を手放す。
信頼できる誰かから、また別の誰かを紹介される。
そのつど身元を細かく確かめるのは、気が引ける。
だが今回の被害は、その気の引けるところにこそ落とし穴があったことを示している。
なお、男が逮捕時に別の事件の裁判を受けていたことも分かっている。
関西テレビ によると、阿部容疑者は去年12月、別の事件で強要未遂などにより起訴され、今回の件が起きたときは刑事裁判の最中だった。
ただ、今回の手口がその別の事件と関係するかどうかは、明らかになっていない。
信じてしまう構造がある以上、踏みとどまる一線をあらかじめ決めておくしかない。
車を売るとき、代金を守る一線はどこか
車の売却に、クーリング・オフ(一定期間内なら無条件で契約を取り消せる制度)はない。
国民生活センター によると、車の売却は特定商取引法のクーリング・オフの対象外だ。
訪問販売のように「後から無条件で解約」という逃げ道は、車を売る取引には用意されていない。
いったん契約して車を渡してしまうと、あとから取り戻すのは難しい。
気が変わったら解約すればいい は、車には 効かない 。
では、何で守るのか。
国民生活センター は、買取代金の支払いがなされるまで、車や名義変更に必要な書類の引き渡しを延期するのも一つの方法だと呼びかけている。
査定額は書面に残す。
入金予定日を契約書にはっきり書いてもらう。
そして、入金を確認するまでは車と書類を渡さない。
守れる一線は、突きつめればこの一点に集まる。

守れる一線は「入金を確かめるまで車を渡さない」ただ一点(※イメージ図)
もしあなたが車や親の車を手放す場面に立ったとき、思い出してほしいのは相手の肩書きや名刺ではなく、「お金がまだ入っていないのに、鍵を渡していないか」という一点だ。
紹介された相手でも、契約書があっても、そこだけは動かさない。
車の売却トラブルで不安を感じたら、消費者ホットライン「 188(いやや) 」に電話すれば、最寄りの消費生活センターにつないでもらえる。
少しでもおかしいと思った時点で、早めに相談してほしい。
信頼できる人の紹介と、代金は後払いという当たり前の商習慣。
そのふたつが重なったとき、鍵を渡す前にお金を確かめるという最後の一線が、いちばん外れやすくなる。
だからこそ、守るべき一点はいつも同じだ——入金を確かめるまで、車は手元に置いておく。
まとめ
- だまし取られたのは時価270万円相当の乗用車1台で、亡くなった父親が使い、家の売却の場で不動産会社の従業員から「知人のディーラー」として紹介された相手に預けたものだった。
- 被害は車を渡した瞬間ではなく、2月の契約から7月の逮捕まで約5カ月、連絡が途絶えた沈黙の時間差のなかで固まった。
- 委託販売は「預けてから後日送金」の後払い構造で、買取の「売って即入金」とは代金の入るタイミングが根本的に違う。
- 車の売却はクーリング・オフの対象外で、いったん渡すと取り戻しにくい。守れる一線は「入金を確認するまで車と書類を渡さない」の一点。
- 男は逮捕時、別の事件(強要未遂など)で起訴され裁判中だったが、今回の手口との関係は明らかになっていない。
よくある質問(FAQ)
Q1. 中古車の委託販売業者を名乗る詐欺とは、どんな手口ですか?
委託販売の業者を装い名刺やLINEで「オークションで売って手数料を引いた額を振り込む」と説明し、車だけ先に受け取って代金を渡さない手口です。
Q2. 「委託販売」と「買取」はどう違うのですか?
買取は業者に売って即その場で代金を受け取ります。
委託販売は車を先に預け、売れてから手数料を引いた残りが後で振り込まれる後払いの仕組みです。
Q3. 車を売るときにクーリング・オフは使えますか?
使えません。
国民生活センターによると車の売却は特定商取引法のクーリング・オフの対象外で、いったん契約して渡すと取り戻すのは難しくなります。
Q4. 車の売却で代金が振り込まれないとき、どこに相談できますか?
消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、最寄りの消費生活センターにつないでもらえます。
おかしいと思ったら早めに相談してください。
Q5. 同じ被害に遭わないためには、何に気をつければいいですか?
査定額を書面に残し、入金予定日を契約書に明記させ、入金を確認するまで車と書類を渡さないことです。
紹介された相手でもこの一線は動かさないのが安全です。
Q6. 逮捕された男は、ほかにも事件を起こしていたのですか?
関西テレビによると、男は去年12月に別の事件で強要未遂などにより起訴され、今回の件が起きたときは裁判中でした。
ただ、今回の手口との関係は明らかになっていません。
📚 参考文献
- 関西テレビ(カンテレ)「『だますつもりはなかった』と容疑を一部否認 中古車の委託販売業者を名乗り、50代の女性から車をだまし取った疑いで20代の男逮捕」 (2026年7月31日)
- FNNプライムオンライン「【速報】『中古車の委託販売業者』名乗り女性から車だまし取ったか 27歳男を逮捕」 (2026年7月31日)
- 神戸新聞NEXT「委託販売名目で乗用車1台詐取 容疑で自動車販売業の男逮捕 尼崎」 (2026年7月31日)
- 国民生活センター「車を売る際は要注意!中古車の売却トラブル(発表情報)」 (2024年6月18日)
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