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クロード・ギルモ死去——アサシンクリードを守った「知られざる兄」の正体

| 読了時間:約5分

「アサシンクリード」を作った会社に、誰も知らない共同創業者がいた。

2026年6月19日、フランス西部の空でセスナが墜落した。

亡くなった一人は、世界的なゲーム会社Ubisoft(ユービーアイソフト)の共同創業者だ。

しかしその名前を知っていたゲームファンは、ほとんどいなかっただろう。
40年間表に出ず、ゲームコントローラーを売る会社を経営しながら、Ubisoftを買収から守り続けた男がいた。

クロード・ギルモ死去——アサシンクリードを守った「知られざる兄」の正体

飛行機事故で亡くなった「もう一人の創業者」

「深い悲しみとともに受け止めている」—— Ubisoft がそう声明を出した相手を、あなたはおそらく知らない。

2026年6月19日 (金)午後遅く、フランス西部・ロワール=アトランティック県のラ・ボール飛行場付近で セスナ421型 の双発プロペラ機が墜落した。

搭乗していた 2 名が死亡した。

亡くなった一人が、Ubisoft共同創業者の クロード・ギルモ(ギユモ)氏 69 歳)だ。

PC Gamer によると、ラ・ボール市長 フランク・ルヴリエ氏 は「8人乗りの双発プロペラ機が着陸アプローチ中に旋回し、墜落した」と声明を発表した。
2名はいずれも有資格の経験豊富なパイロットだったという。

操縦はギルモ氏本人が担っており、翌日の 100 機以上が集まる航空ショーへ向かう途中だったという。

同乗していたのは飛行教官で、こちらも現場で亡くなった。

Ubisoftは死去を正式に確認した。

しかし追加のコメントは出さなかった。

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では、Ubisoftという世界的なゲーム会社の共同創業者なのに、なぜこの人の名前をほとんど誰も知らないのか。

イヴが「顔」、クロードが「骨格」——知られざる役割分担

5人兄弟で世界的なゲーム会社を作った一家の中で、会社の「顔」は末弟のイヴ、「骨格」は長男のクロードだった。

「ゲーム会社の創業者」と聞けば、表に出てメディアに登場する人物を思い浮かべるのが普通だ。

Ubisoftでその役割を担ってきたのは、CEO(最高経営責任者)の イヴ・ギルモ氏 だ。

「アサシンクリード シャドウズ」の日本での論争も、ゲームメディアへの出演も、全てイヴ氏が前面に立ってきた。

イヴ氏
CEO・公の顔

メディア出演・経営判断・対外発信を一手に担う「表の創業者」

クロード氏
取締役・裏の骨格

オペレーション統括・持株会社経営・株式防衛を40年間担った「知られざる創業者」

一方、長男のクロード氏は 常に裏方に徹し、会社の骨格を支え続けていた のではないか。

レンヌ第1大学で経済学の修士号を取得し、ビジネスとテクノロジーの双方に通じた人物として、Ubisoftでは取締役兼業務担当副社長としてオペレーション(会社の日々の運営)全般を統括していたとされる。

GIGAZINE によると、ギルモ家はブルターニュ地方で農家向けに化学薬品や部品を販売する家業を営んでいた。

農業ビジネスが傾いた後、兄弟はゲームソフト販売会社「 Guillemot Informatique 」を立ち上げ、ハードウェア販売会社「 Guillemot Corporation 」を設立。

そして 1986 年3月、ゲームソフト開発のためにUbisoftを創業した。

「ゲームを作る兄弟と、ゲームを遊ぶための道具を作る兄弟」という分業が、この一族の基本構造だった。

クロード氏は 1997 年からGuillemot Corporationの会長兼CEOを務め、フライトシミュレーター用の高性能コントローラーで知られる「 Thrustmaster(スラストマスター) 」ブランドや、デジタル音響機器の「 Hercules(ヘラクレス) 」を世界的なブランドに育てたとされる。

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しかし「ゲームコントローラーのメーカー」と思われていたGuillemot Corporationには、ゲームファンには知られていない、もうひとつの顔があった。

ゲームコントローラーの会社が、実はUbisoftの「盾」だった

Thrustmasterのフライトスティックがなければ、アサシンクリードは今頃よその会社のものになっていたかもしれない。

Guillemot CorporationはUbisoftの株式を創業一族が保有するための「 持ち株機能 」(株式を管理する器)を担っており、外部からの 敵対的買収 (経営陣が望まない形での乗っ取り)に対して、Ubisoftの独立を守る株主防衛の核心だった。

AUTOMATON によると、フランスの巨大メディア企業 Vivendi(ヴィヴァンディ) 2015 年10月からUbisoftの株を買い増し始め、持ち株比率を 27%超 にまで引き上げた。

フランスの法律では、ある企業の株を 30% 以上持つと正式な買収提案が義務付けられる。

Ubisoftは文字通り「崖っぷち」に立たされていた。


2015年10月
買収開始
VivendiがUbisoft株の取得を開始。持ち株比率6.6%から買い増しへ
2017年9月
危機深刻化
Vivendiの持ち株比率が26.63%に到達。30%超で買収義務化が現実の脅威に
2018年3月
防衛成功
Vivendiが全株売却に合意。ギルモ家・Tencent・年金基金が買い戻しに成功
2019年3月
完全終結
Vivendiによる全Ubisoft株売却が完了。約3年半の攻防戦に終止符
2026年6月
創業者死去
クロード・ギルモ氏が墜落事故で死亡。株式防衛の中枢を担った人物が不在に

それでもギルモ家は約 3 年をかけてVivendiを退けた。

その株式防衛の核心にあったのが、Guillemot Corporationという構造だった。

ファミリービジネスの研究では、「純粋な持ち株会社」(株だけを持つ会社)よりも「実際に事業もやっている持ち株会社」のほうが、外部の投資家から切り崩されにくいことが知られている。

純粋な持ち株会社は株を買い取れば機能を奪えるが、事業会社を兼ねている場合はそう簡単に切り離せない。

Guillemot CorporationがThrustmasterなど独自ブランドを持つ「本物の事業会社」でもあったことが、 Ubisoftの独立を守る最終防衛線になっていたのではないか

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「Thrustmasterのコントローラーを売っていた会社が、実はアサシンクリードを守る盾だったって、知らなかった」——ゲームコントローラーのメーカーと思いきや、実はUbisoftの独立を守る株主防衛の砦だった。

クロード氏が40年間Ubisoftの「表」ではなくGuillemot Corporationの経営者として動き続けたのも、この構造を維持するためだったのかもしれない。

FinanzWire によると、クロード氏の死去を受け、Guillemot Corporationではすぐに後継人事が動いた。

弟の クリスチャン・ギルモ氏 が会長に就任し、 バランタン・ギルモ氏 (次世代)がCEOを継続。

クロード氏の娘である ヴィクトリア・ギルモ氏 がフランス商法典の規定に基づき暫定的に取締役へ就いた。

しかし、後継体制が整った一方で、クロード氏が死去したのはUbisoftにとって最悪のタイミングと重なっていた。


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株価2018年比96%超減、リストラ最中の「最悪のタイミング」

2018 年に 107 ユーロあったUbisoft株が、今は 5 ユーロ台だ。

107
ユーロ
2018年最高値
過去最高の株価
5
ユーロ台
2026年現在
96%超の下落
380
名規模
追加リストラ
2026年6月報道

2026 1 月、Ubisoftは 6タイトルの開発中止 2スタジオの閉鎖 を含む大規模な組織再編を発表し、パリ本社では最大 200 名の人員削減が提案され、6月にはさらに最大 380 名規模のリストラが報じられているという。

中国のIT大手 Tencent(テンセント) から 11億6000万 ユーロの出資を受けて財務危機を一度しのいだものの、経営の先行きは依然として不透明だろう。

ABC News によると、Ubisoftはクロード氏の死去を確認したものの、追加コメントは出さないとした。

クロード氏が担っていた「株主防衛の中枢」という役割が後継者にどう受け継がれるかは、現時点では分からない。

「知らない創業者」が40年かけて作った構造が、今後も機能し続けるのかが問われている。

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あなたが遊んでいたゲームも、この一族の仕事によって守られていた。

その意味は、次の項目で見えてくる。

あなたが遊んでいたゲームは、この一家が守ったものだ

「どこにでも存在する」という願いが、 Ubisoft(ユービーアイ)という名前の由来 だ。

「ubi」はラテン語由来の「ubiquitous(ユビキタス)」——「どこにでも存在する」の略で、社名を考えたのはギルモ兄弟の一人 ジェラール・ギルモ氏 だとされる。

その願い通り、Ubisoftのゲームは世界に広がった。

「アサシンクリード」は 2007 年の初代発売からおよそ 20 年続くシリーズになったのも、Ubisoftが独立を守り続けたからだろう。

フライトシミュレーターやレーシングゲームを遊ぶなら、Thrustmasterのコントローラーに触れたことがある人も多いはずだ。

そのブランドを作った会社と、アサシンクリードを生んだ会社は、実は同じギルモ一族の二つの事業だった。

「ゲームを作る兄弟」と「ゲームを遊ぶ道具を作る兄弟」が、40年間この業界を一緒に支えてきた。

GIGAZINE によると、最新作「アサシンクリード ブラック フラッグ RE:シンクロ」は 2026年7月9日 に発売予定だ。

Tencent(テンセント)から 11億6000万 ユーロもの出資を受けてもなお揺れるUbisoft。

クロード氏の不在がこの一族にとって何を意味するのか、そのゲームをプレイしながら静かに見守るしかない。

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「誰も知らなかった」からこそ、その不在は静かに重い。

まとめ

  • Ubisoft共同創業者のクロード・ギルモ氏(69歳)が2026年6月19日、フランス・ラ・ボールでセスナ421型機の墜落事故により死亡した。操縦は本人が担っており、翌日の航空ショーへ向かう途中だったという。
  • クロード氏は40年間Ubisoftの表に立たず、ゲーム周辺機器メーカーGuillemot CorporationのCEO兼会長として裏方を貫いた。その会社が同時に、Ubisoftの株式を創業一族が保有する「持ち株の砦」でもあった。
  • Vivendi(ヴィヴァンディ)が2015〜2018年にわたってUbisoft株を27%超まで買い増した際、ギルモ家がこれを退けられたのは、Guillemot Corporationを軸にした株式防衛構造があったからだ。
  • クロード氏の死去後、Guillemot Corporationでは弟のクリスチャン氏が会長に就任し、息子世代のバランタン氏がCEOを継続するなど後継体制が即座に動いた。
  • 株価が2018年比で96%超も下落し大規模リストラが続く「最悪の時期」に、40年間一族の株式防衛を実務で支えた人物を失ったことの意味は、今後のUbisoftの動向が示すことになる。

よくある質問(FAQ)

Q1. クロード・ギルモ氏とはどんな人物ですか?

1956年生まれ。
5人兄弟の長男として1986年にUbisoftを共同創業。

40年間表に立たず、ゲーム周辺機器メーカーGuillemot CorporationのCEO兼会長を務めた。

Thrustmaster・Herculesブランドを世界展開した実業家だ。

Q2. クロード・ギルモ氏の事故はどのような状況でしたか?

2026年6月19日(金)午後遅く、フランス・ロワール=アトランティック県のラ・ボール飛行場付近でセスナ421型双発機が墜落。

ギルモ氏本人が操縦しており、翌日の航空ショーへ向かう途中だったという。

搭乗していた2名が死亡した。

Q3. Guillemot Corporationはなぜ重要なのですか?

ゲーム周辺機器メーカーとして知られる一方、ギルモ一族がUbisoftの株式を保有するための持ち株機能も担っていた。
2015〜2018年のVivendi(ヴィヴァンディ)による敵対的買収を退けた株式防衛の核心だった。

Q4. クロード氏の死後、Guillemot Corporationはどうなりましたか?

死去後すぐに後継人事が動いた。

弟のクリスチャン・ギルモ氏が会長に就任し、バランタン・ギルモ氏がCEOを継続。

クロード氏の娘ヴィクトリア・ギルモ氏がフランス商法典の規定に基づき暫定取締役に就任した。

Q5. UbisoftとVivendi(ヴィヴァンディ)の間で何があったのですか?

Vivendiは2015年10月からUbisoft株を買い増し、持ち株比率を27%超まで引き上げた。

フランスの法律では30%超で買収提案が義務化されるため、Ubisoftは存続の危機に立たされたが、ギルモ家が約3年かけてこれを退けた。

Q6. 現在のUbisoftの経営状況はどうなっていますか?

2026年1月に6タイトルの開発中止と2スタジオ閉鎖を発表。

株価は2018年の最高値107ユーロから5ユーロ台まで下落しているという。

Tencentから11億6000万ユーロの出資を受けたが、先行きは不透明な状況が続いている。

Q7. ThrustmasterとUbisoftはどういう関係ですか?

Thrustmaster(スラストマスター)はフライトシミュレーター用コントローラーで知られるブランドで、クロード氏が経営したGuillemot Corporationの傘下にある。

Ubisoftとは別会社だが、同じギルモ一族が運営するグループ事業だ。

📚 参考文献

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