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独身偽装」で勝訴した被害者は守られる—逆に訴えられるという誤解と本当の法的リスク

| 読了時間:約5分

【訂正・2026年6月22日】 公開時、不貞慰謝料について「独身偽装の被害者も配偶者から請求される可能性がある」と記載しましたが、不貞慰謝料は相手の故意・過失を要件とし、独身だと信じたことに過失がなければ原則として責任を負いません。読者の誤解を招く表現であったため、タイトルおよび該当箇所を訂正しました。ご指摘に感謝します。

既婚者に騙されて裁判で勝ったのに、次は自分が訴えられた。

マッチングアプリでの出会いが当たり前になった今、「独身偽装」の被害が社会問題になっている。

東京地裁や大阪地裁での賠償命令が続き、被害者が声を上げやすくなってきた。

だが、この問題には多くの人が見落としている構造的な落とし穴がある。

「訴えれば解決する」という思い込みが、被害者をさらに追い詰めることがあるのだ。

独身偽装」で勝訴した被害者は守られる—逆に訴えられるという誤解と本当の法的リスク

独身偽装に「刑事罰」がない本当の理由

「詐欺ではないか」——でも実は、この言葉が法律の壁にぶつかる。

「騙して関係を持たせたなら逮捕できるはず」と感じる人は多い。

しかし現行法では、 独身偽装をした相手を刑事罰に問うことはできない。

理由は 詐欺罪(刑法246条) の定義にある。

詐欺罪が成立するには、嘘をついて「お金や財産」を騙し取ることが必要だ。

性的な権利(誰と関係を持つかを自分で決める権利。

法律用語で「 貞操権 」という)は「財産」ではないため、対象外になる。

貞操権(ていそうけん)とは

「誰と、いつ、どんな状況で性的な関係を持つかを、正しい情報をもとに自分で決める権利」のこと。

今回のように「独身だと騙されていなければ関係を持たなかった」という場合、この権利が侵害されたとして民事で損害賠償を請求できる。

さらに驚くべきことがある。
2023 年の刑法改正で「 不同意性交等罪 」が新設された際、 法務省は「既婚者が独身と偽る行為は対象外」と意図的に明示した。

弁護士ドットコムニュース (※リンク切れ) によれば、「婚姻関係の有無という属性に関する誤信があるにすぎない」として、意図的に対象から外したとされている。

刑事
逮捕・処罰できない

詐欺罪は「財産」が対象。

貞操権は財産でないため適用不可。

不同意性交等罪からも意図的に除外された。

民事
損害賠償を請求できる

民法709条の不法行為(貞操権侵害)として損害賠償を請求できる。

ただし慰謝料の相場は低い。

つまり法律の「網の目をくぐり抜けた」のではなく、 「くぐり抜けて当然」とされた

独身偽装の被害者が「なぜ逮捕されないのか」と怒りを感じるのは、むしろ当然のことだ。

では、刑事で動けないなら、民事裁判で戦えば取り返せる——そう思うかもしれない。

実際にいくら認められるのか、判決の中身を見てみよう。

【「独身偽装」】マチアプ彼氏は“妻子持ち” 当事者が語る被害 突如音信不通…そして法廷で2年ぶりの再会 地裁は「貞操権侵害」認め約150万円の賠償命じる【news23】|TBS NEWS DIG


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民事で戦えば勝てる、でもいくら取れるか

151万円

これが 2025 12 月、東京地裁が独身偽装の男性に命じた賠償額だ。

この判決で原告の女性(仮名・マイコさん)は、慰謝料として 110万円 を認められた。

月収 30 万円の人に換算すると、約 4 か月分の給与に相当する金額だ。

注目すべきは「何が認められたか」の内訳だ。
弁護士JPニュース によれば、東京地裁( 河原崇人 裁判官)は「客観的には、婚姻の可能性を前提とした交際であるとみるのが相当」として、貞操権侵害を認定した。

110万円
慰謝料
精神的苦痛への賠償
全額
探偵費用
調査費が認容
全額
治療費
適応障害・帯状疱疹

「探偵に頼むのは費用の無駄」と諦めてきた人も多いだろう。

しかしこの判決は、 探偵の調査報告書が裁判で有効な証拠になり、費用ごと回収できる前例 を示した。

また同月の 大阪地裁 でも、別の独身偽装事件で 55万円 の賠償命令が出ている。

いずれも、裁判所が「婚姻の有無は、性的関係を持つ相手を選ぶ上で重要な情報だ」と判断した点で共通している。

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だが話はここで終わらない。

民事で勝ち取った被害者の中には、その直後に「今度は自分が訴えられた」という事態に陥った人もいる。

「勝訴しても訴えられる」はどこまで本当か—免責される条件

裁判で勝ったのに、次の封筒は「慰謝料請求」だった。

「勝訴したのに自分も訴えられるのでは」という不安が語られることがある。

だが、不貞行為(不倫)を理由とする慰謝料は、相手に 「故意」または「過失」がある場合にのみ成立する 。相手が既婚者だと知っていたか、知らなくても疑うべき状況だったのに気づかなかった場合だ。

逆に、相手が独身だと偽り、それを信じたことに過失がなければ、配偶者から慰謝料を請求されても支払い義務は生じない。実際に、相手が独身と偽り名前や住所まで偽っていた事案で、不倫相手の責任が否定された判例がある(東京地裁2011年4月26日)。独身偽装で勝訴したということは、まさに「騙されたことに過失がなかった」と認められた可能性が高く、逆提訴を過度に恐れる必要はない。ただし、過失がなかったことを示すにはやり取りの記録など証拠が役立つ。

さらに、 大阪地裁 の別のケースでは、貞操権侵害の勝訴後に被害者がSNSで事実を公表したところ、名誉毀損として 34万円 の支払いを命じられた事例もある。
内幸町法律事務所ブログ がこのケースを伝えている。


独身偽装が民事でしか戦えない構造は、加害者の配偶者と被害者の両者を同じ法廷で争わせる仕組みになっている。

そして 加害者だけが、法的制裁を最も受けにくい位置に置かれやすい のではないか。

慰謝料の上限が 50 万〜 150 万円程度の現状では、加害者の側から見れば「最悪 150 万払えば終わり」と計算できる水準だ。

繰り返す加害者が出やすい構造になっているとも言えるだろう。

この構造を整理するとこうなる。

被害者(騙された側) ①勝訴→②配偶者から逆提訴のリスク SNS公表で名誉毀損リスクも
加害者の配偶者 被害者へ慰謝料請求が可能 民法上の不貞行為の相手として
加害者(独身偽装した側) 最大150万程度の支払いで終了 刑事罰なし・繰り返せる構造

長崎新聞 でも、この構造的な問題が指摘されている。

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この歪な仕組みを変えようとする動きは、政治の場にもある。

だが奇妙なことに、国会議員自身が独身偽装で問題になるという現実があった。

国会議員まで独身偽装、それでも法律は動かない

「名前・職業・結婚歴を詐称しており、一般の不倫とは重みが違う」—— 国民民主党 が自党議員の独身偽装問題でこう語った。

2025 4 月、国民民主党の 平岩征樹 衆院議員が、偽名を使い、既婚者であることを隠して女性と交際していた事実を認め、謝罪した。
時事通信 によれば、同年 5 14 日に離党届が受理された。

玉木代表
役職停止3か月

不倫を週刊誌に報じられ、3か月の役職停止処分。

一般的な不倫案件として処理された。

平岩議員
無期限停止→離党

偽名使用・既婚隠しの独身偽装。

「重みが違う」として無期限の党員資格停止を経て離党。

同じ党内でも「独身偽装は一般の不倫と質的に異なる行為」という認識が、処分の重さに現れた。

にもかかわらず、 国会全体では刑事罰化の議論は進んでいない。

独身偽装に刑事罰を求めるオンライン署名も立ち上がっているが、法整備の実現見通しは不透明なままだ。
Change.org の署名ページには、被害当事者たちの声が集まっている。

法整備を議論すべき立場にある政治家の一人が独身偽装の加害者だったという事実は、 この問題の根深さを象徴している。

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では今の法律のまま、自分の身を守るには何ができるのか。

今すぐできる「独身偽装」の見分け方と初動

プロフィールに「既婚者お断り」と書いたマイコさんは、それでも突破された。

マイコさんは交際前、「既婚の男性を退職に追い込んだ話」を意図的に相手に伝えた。

「やましいことがあれば引くはずだ」という作戦だった。

しかし男性は動じず、むしろ積極的にアプローチを続けた。
弁護士JPニュース が伝えるこの事実は、 「気をつければ防げる」という考え方の限界 を示している。

⚠️ 完璧な自衛は難しい

相手が「真面目に見え、土日も会えて宿泊もできる」独身生活を完璧に演じていた場合、事前のやり取りだけでは見抜くことは困難だ。

それでも、現時点で有効な手段がある。
「独身証明書(正式名称: 婚姻要件具備証明書 )」の提示を相手に求めること だ。

本籍地の市区町村役場で取得できる書類で、費用もさほどかからない。

独身証明書を断る相手は、本当に独身であっても誠実さに欠ける可能性が高いだろう。


1
証拠を保全する

LINEの会話履歴・写真・探偵の調査報告書をすぐに保存する。

削除される前に別デバイスにバックアップを。

2
すぐに弁護士に相談する

被害が明らかになった時点で早期に相談。

探偵費用も裁判で全額認容された前例がある。

3
SNSへの公表は慎重に

怒りのままに発信すると名誉毀損で逆に訴えられるリスクがある。

法的手続きと並行して進めること。

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社会全体のルールはこれから変わっていくのか。

最後にその問いを見ていこう。

「訴えれば泣き寝入りしない」社会は来るか

貞操権は 50 年前から法律にあった。

それが今、初めて社会問題として語られている。

最高裁が「貞操権侵害による損害賠償」を認めたのは 1969 年だ。

法的な枠組みは 50 年以上前から存在した。

にもかかわらず、長らく「騙された自分が悪い」という空気が被害者を泣き寝入りに追い込んできた。

この状況が変わり始めたのは、マッチングアプリの普及と、被害者がSNSで声を上げ始めたことが重なったタイミングだ。


1969年
判例確立 最高裁が貞操権侵害の賠償を認める

法的枠組みは50年以上前から存在していた。

2023年
法改正 刑法改正・不同意性交等罪が新設

法務省が独身偽装を意図的に対象外とした。

2025年10月
判決① 大阪地裁が55万円の賠償命令

婚活アプリでの独身偽装事件で貞操権侵害を認定。

2025年12月
判決② 東京地裁が約151万円の賠償命令

探偵費用・治療費の全額認容という前例を示した。

2026年5月
継続報道 5年間交際・妊娠・流産の被害女性が提訴

東京新聞 が報道。

被害の実態は単発ニュースでなく継続問題として扱われている。

2025 10 月の大阪地裁( 55 万円)、同年 12 月の東京地裁(約 151 万円)と、判決が積み重なるにつれ、慰謝料の相場は徐々に引き上げられていく可能性があるのではないか。

刑事罰化については、 2023 年の刑法改正附則に「 3 年後を目途に見直す」という条項があるとされる。

ただし、実現するかどうかは現時点では確定していない。

被害者が声を上げるたびに、判決という形で社会の「常識」が更新されていく。
その積み重ねが、今この問題を動かしている。


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まとめ

  • 独身偽装に刑事罰がないのは法の盲点ではなく、2023年の刑法改正で法務省が意図的に対象外と定めた結果だ
  • 東京地裁は2025年12月、独身偽装の男性に約151万円の賠償を命じた。探偵費用・治療費が全額認容された点が今後の被害者に重要な前例となる
  • 不貞慰謝料は相手の故意・過失が要件であり、独身だと信じたことに過失がなければ(=独身偽装で勝訴した場合)、配偶者から慰謝料を請求されても原則支払い義務はない。ただしSNSで実名公表すると名誉毀損に問われるリスクは別途ある
  • 国民民主党議員の独身偽装問題で「一般の不倫と独身偽装は重みが違う」という党の認識が示されたが、国会全体での刑事罰化は動いていない
  • 現状でできる自衛策として、独身証明書(婚姻要件具備証明書)の提示要求と、LINEなど証拠の早期保全が有効とされている

加害者だけが法的に最もダメージを受けにくい構造が変わるまで、被害者たちの闘いは続く。

よくある質問(FAQ)

Q1. 独身偽装に刑事罰がないのはなぜですか?

詐欺罪はお金や財産を騙し取る行為にしか使えません。

性的な権利(貞操権)は財産ではないため対象外で、2023年の刑法改正でも法務省が意図的に対象外としました。

Q2. 独身偽装の慰謝料はいくらもらえますか?

相場は50万〜150万円程度とされています。
2025年12月の東京地裁判決では慰謝料110万円に加え探偵費用・治療費が全額認められ、合計約151万円の賠償命令が出ました。

Q3. 独身偽装の被害者が逆に訴えられることはありますか?

不貞慰謝料は相手に故意か過失がある場合に成立します。

独身だと偽られ、それを信じたことに過失がなければ(独身偽装で勝訴したケースなど)、配偶者から請求されても原則支払い義務はありません。ただしSNSで実名を公表すると名誉毀損に問われたケースはあります。

SNS公表で名誉毀損に問われたケースもあります。

Q4. 独身偽装を見分ける方法はありますか?

独身証明書(正式名称:婚姻要件具備証明書)の提示を相手に求めることが有効です。

本籍地の市区町村役場で取得できます。

提示を断る相手は誠実さに欠ける可能性が高いといえるでしょう。

Q5. 独身偽装は詐欺罪になりませんか?

なりません。

詐欺罪(刑法246条)は財物の交付が要件で、性的な権利は財産に当たらないためです。

ただし民法709条の不法行為(貞操権侵害)として民事で損害賠償を請求することはできます。

Q6. 独身偽装被害者の会とはどんな団体ですか?

独身偽装の被害経験者が設立した当事者団体です。

被害者への情報提供や相談受付のほか、刑事罰の制定を求めるロビー活動や署名活動も行っています。

Q7. 独身偽装で裁判を起こすとき証拠は何が必要ですか?

LINEなどのメッセージ履歴が主な証拠になります。

探偵の調査報告書も有効で、2025年の東京地裁判決では探偵費用が全額認容されました。

早期に弁護士に相談し証拠を保全することが大切です。

📚 参考文献

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

reaitimenews.com

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