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ダイドーグループHDが303億円の赤字に転落した。
自販機ビジネスの崩壊は、コカ・コーラや伊藤園にも広がっている。
ダイドー、前期の黒字から一転して過去最大の赤字へ
ダイドーグループHDの赤字額は303億円にのぼる。
前期は38億円の黒字だった。
わずか1年で、黒字額の約8倍もの赤字に振れた計算になる。
📰 読売新聞の報道
読売新聞の報道によると、ダイドーグループHDが2026年3月4日に発表した2026年1月期連結決算で、最終赤字は3期ぶり。過去最大の赤字額となった。
赤字の主な原因は、298億円の減損損失だ。
減損損失とは、持っている資産の価値が大きく下がったとき、帳簿上の金額を実態に合わせて引き下げる処理をいう。
つまり「うちの自販機、もうこんなに稼げません」と会社が自ら認めた数字にほかならない。
ロイターの報道では、2月の時点で純損失が307億円に拡大する見通しが示されていた。
最終的な着地は303億円で、ほぼ予告どおりの厳しい結果だ。
高松富也社長は決算会見で「自販機ビジネスの厳しさは想定以上に進んでいる」と語っている。
なぜ自販機で稼げなくなったのか
自販機はかつて「ドル箱」と呼ばれた。メーカーが定価で売れる、数少ない販路だったからだ。
ところが、いまペットボトル1本200円の時代に突入している。
2025年10月、コカ・コーラ500mlの希望小売価格が200円になった。
3年前は140円前後。
倍近い値上がりだ。
スーパーの価格
100円台
自販機の価格
200円
節約志向が強まるなか、わざわざ自販機で買う理由が薄れてきた。
ダイドーは全国に約27万台の自販機を展開している。
ダイドーグループHDの公式情報によれば、国内飲料の売上高の9割を自販機に頼ってきた。
まさに自販機一本足のビジネスモデル。
この依存度の高さが、裏目に出た。
追い打ちをかけたのがコンビニのカウンターコーヒーだ。
100〜150円で淹れたてが飲める。
缶コーヒーを主力にしてきたダイドーにとって、直接の競合になる。
さらに、コーヒー豆の国際相場が高騰し、原材料費も跳ね上がった。
⚠ 赤字自販機の急増
東洋経済の取材では、2025年秋の値上げで赤字の自販機が2〜3割に跳ね上がるとの見方が示されていた。実際にダイドーの国内飲料事業は営業損失に転落し、この予測を裏づけるかたちとなった。
ダイドーだけじゃない、コカ・コーラも伊藤園も巨額減損
自販機で苦しんでいるのはダイドーだけではない。
飲料大手3社がそろって、自販機事業で巨額の損失を出している。
| 企業 | 減損損失額 | 決算期 |
|---|---|---|
| コカ・コーラBJH | 904億円 | 2025年12月期 |
| ダイドーグループHD | 298億円 | 2026年1月期 |
| 伊藤園 | 137億円 | 2025年5月〜2026年1月期 |
読売新聞の報道によると、3社あわせて約1,339億円。
業界トップのコカ・コーラですら、この規模の減損を避けられなかった。
東洋経済の記事によれば、伊藤園は自販機事業を子会社ネオスに移管する計画を立てている。
「お〜いお茶」で知られる伊藤園にとっても、自販機はもはや切り離したい事業になりつつあるようだ。
⚠️ ここからは推測です
3社が同じタイミングで減損に踏み切った背景には、共通の構造がある。人口減少で自販機の前を通る人が減り、コンビニやネット通販に客を奪われ、値上げで残った客もさらに離れていく。個々の企業努力ではどうにもならない、市場そのもののしぼみだろう。
飲料用の自販機は、2014年の247万台から2024年には204万台まで減った。
10年で約40万台の消滅は、業界の構造が根本から変わりつつある証拠だ。
ダイドーは立て直せるのか
2万台の撤去で、ダイドーは復活できるのか。
ダイドーグループHDの公式ページによれば、298億円の減損は「帳簿上の調整」であり、現金の流出をともなうものではない。
2026年度以降は減価償却費が大きく減るため、利益面ではプラスに働く見込みだ。
📈 来期の見通し
会社の2027年1月期予想は、連結最終損益50億円の黒字。不採算の自販機約2万台を撤去し、中古機の活用やコスト低減で収益の改善を図る方針だ。
もうひとつの支えが海外事業だ。
トルコの飲料子会社は3期連続で過去最高益を更新しており、ポーランドでも新たな製造ラインが稼働を始めた。
国内の自販機が沈むなか、海外が屋台骨を支える構図に変わりつつある。
ただし、自販機27万台のうち2万台を減らしても、残り25万台の収益性がすぐに上がるわけではない。
コーヒー中心の品ぞろえから炭酸飲料やソフトドリンクへの転換、価格帯の幅を広げる「ハートプライス」戦略がどこまで効くかは未知数だ。
自販機ビジネスの苦境は、ダイドー1社の問題ではなく、業界全体が直面している転換期の象徴だ。
コンビニに押され、ネット通販に追われ、200円のペットボトルに客が去っていく。
日本に約200万台残る飲料自販機が、10年後にどれだけ生き残っているか。
その答えを、いま飲料各社が手探りで描いている。
まとめ
- ダイドーグループHDは2026年1月期に303億円の最終赤字を計上し、過去最大の赤字額となった。自販機事業で298億円の減損損失を出したことが最大の要因
- 国内飲料売上の9割を自販機に依存するビジネスモデルが、物価高騰・コンビニコーヒーとの競合・ペットボトル200円時代のなかで限界を迎えた
- コカ・コーラ(904億円)、伊藤園(137億円)もそろって自販機事業で巨額減損を計上。業界全体が同じ構造的な苦境にある
- ダイドーは不採算の約2万台を撤去し、海外事業の成長と商品ラインアップの転換で2027年1月期の黒字回復をめざしている
- 飲料用自販機はピーク時の247万台から204万台へ減少しており、業界の構造転換はまだ途上にある
よくある質問(FAQ)
Q1. ダイドーの赤字の原因は?
自販機事業で298億円の減損損失を計上したことが主因です。2026年1月期の最終赤字は303億円で過去最大となりました。
Q2. 減損損失とは何ですか?
持っている資産の価値が下がったとき、帳簿上の金額を実態に合わせて引き下げる会計処理のことです。
Q3. ダイドーは自販機を何台撤去する?
不採算の自販機約2万台を撤去する方針です。全国27万台のうち約7%にあたります。
Q4. なぜ自販機で飲料が売れなくなった?
ペットボトル200円時代に突入し、スーパーとの価格差が拡大。コンビニコーヒーとの競争も激化しました。
Q5. コカ・コーラも自販機で赤字?
コカ・コーラボトラーズジャパンHDは2025年12月期に自販機事業で904億円の減損損失を計上しました。
Q6. 伊藤園の自販機事業はどうなった?
伊藤園も自販機事業で137億円の減損損失を計上。子会社への事業移管を計画しています。
Q7. 日本の飲料自販機は何台ある?
2024年時点で約204万台です。2014年の247万台から10年で約40万台減少しています。
Q8. ダイドーは来期黒字に戻れる?
2027年1月期の連結最終損益は50億円の黒字を予想しています。海外事業の成長と不採算機撤去が柱です。
Q9. ダイドーの売上で自販機が占める割合は?
国内飲料事業の売上高の約9割を自販機が占めています。業界でも突出した依存度です。
Q10. 自販機は今後も減り続ける?
日経新聞の報道では2050年に半減する見方もあります。人手不足と割高感が主因です。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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