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F-35はなぜ41年ぶりに敵機を撃墜したか──相手は練習機だった

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「F-35が敵の有人機を撃ち落とした」──この記録がテヘラン上空で初めて生まれた。

2026年3月4日、イスラエル空軍のF-35I「アディール」がイラン空軍のYak-130を撃墜した。
ただし撃墜された機体は「戦闘機」ではなく、ロシア製の練習機だった。



F-35「アディール」が刻んだ新たな記録──有人機撃墜は世界初

IDFの公式発表によると、イスラエル空軍のF-35I「アディール」がテヘラン上空でイランのYak-130を撃墜した。

IDFはこれをF-35による史上初の有人機撃墜と位置づけている。

IDF公式声明(2026年3月4日)

「これはF-35(アディール)による、史上初の有人戦闘機の撃墜である」

F-35は2018年にイスラエル空軍がシリアへの空爆で初めて実戦に投入して以来、各国で使われてきた。
空爆や精密攻撃の実績は数え切れない。

ところが、有人の航空機を空中で撃ち落としたことは、一度もなかった

Newsweekの報道も「これまでF-35が撃墜したのは、ドローンなどの無人標的だけだった」と伝えている。

ドローン、巡航ミサイル、そして有人機

F-35の空対空実績は段階的に進んできた。

① 2021年:イスラエル空軍のF-35Iが、イラン製ドローンを撃墜。The Aviationistが報じたF-35初の空対空撃墜記録となった

② 2023年11月:同じくF-35Iが巡航ミサイルを迎撃。Key.aeroによると、F-35として初の巡航ミサイル撃墜だった

③ 2026年3月4日:テヘラン上空でYak-130を撃墜。有人機としては初

無人の低速目標、無人の高速目標、そして有人機。
5年かけて段階的にエスカレーションしてきた流れが見える。

では、なぜそもそも有人機の撃墜記録がなかったのか。


現代の航空戦では、制空権は敵の防空レーダーやミサイル基地を破壊して確保する。
敵機が飛び立てない状態を先に作るのが基本だろう。

つまり有人機同士が空中で撃ち合う場面が、そもそも起きにくい。

F-35は対地攻撃やミサイル迎撃でその性能を示してきた。
「空対空の最強戦闘機」というイメージは確かにあるが、真価を発揮する場面は別のところにあった。

そんなF-35が有人機を撃墜した。相手のYak-130とは、どんな機体なのか。「戦闘機」と報じるメディアもあるが、実態は少し違う。



撃墜された「Yak-130」の正体──練習機がテヘラン上空で戦っていた理由

「F-35がイランの戦闘機を撃墜」──見出しからそう受け取った人は多いだろう。だがYak-130は、厳密には戦闘機ではない。

戦闘機本来は練習機だ。

JPostの報道Yak-130について「ロシアのSu-57など、より高性能な戦闘機のパイロット養成に使われる高等練習機」と説明している。
攻撃機としても使えるが、あくまで副次的な役割にすぎない。

マッハ0.93の亜音速あおんそく

項目 F-35I「アディール」 Yak-130
分類 第5世代ステルス戦闘機 高等練習機/軽攻撃機
最高速度 マッハ1.6超 マッハ0.93
ステルス性 あり なし
世代 第5世代 該当なし(練習機)
開発国 米国(イスラエル独自改修) ロシア

マッハ0.93は音速に届かない。
旅客機より少し速い程度だ。

第5世代のステルス戦闘機と、亜音速の練習機。
性能差は歴然としている。

ではなぜ、イランはこの練習機をテヘラン上空で飛ばしていたのか。



2日前にはR-73Eミサイルを積んでパトロールしていた

EurAsian Timesの報道によると、イランは2023年9月にロシアからYak-130を受け取った。
1979年のイスラム革命以来、西側の兵器を買えなくなったイランにとって、ロシアから届いた最も新しい航空機だった。

そしてイランはこの練習機にロシア製の短距離空対空ミサイル「R-73E」を搭載し、実戦に投入していた。
R-73Eは赤外線で熱源を追う方式のミサイルで、ヘルメットに連動して機首の向き以外にも発射できる。

撃墜のわずか2日前の映像

Army Recognitionの3月2日付報道によると、撃墜のわずか2日前にあたる3月2日、Yak-130がR-73Eを搭載してMiG-29と編隊を組み、テヘラン上空をパトロールしている映像が確認されていた。

目的は対ドローン防空だったと見られる。
Army Recognitionは「イランは持続的な無人機の活動に対抗するため、防空の層を拡張している」と分析した。


なぜ練習機を防空に回したのか。
イラン空軍の主力はF-4ファントムII、F-5、F-14トムキャットといった半世紀前に設計された機体だ。

MiG-29は比較的新しいが保有数が限られる。
高強度の戦闘でMiG-29を消耗させるわけにはいかない。

一方、低速のドローンを迎撃するならYak-130でも対応できる。
Army Recognitionは「イランは専用の対ドローン迎撃機を調達する代わりに、手持ちの資産を最適化している」と評した。

練習機まで実戦に駆り出さざるを得ない。そこにイラン空軍の台所事情が透けて見える。



41年ぶりの空対空戦闘──イスラエル空軍が最後に敵機を撃墜した日

F-35が有人機を撃墜したのは世界初だった。同時に、イスラエル空軍が空対空で有人機を撃墜したのは約41年ぶりでもあった。

前回は1985年11月24日。
レバノン上空で、イスラエル空軍のF-15「バズ」がシリア空軍のMiG-23を2機撃墜した。Times of Israelの報道が伝えている。

項目 1985年 2026年
場所 レバノン上空 テヘラン上空
イスラエル側 F-15「バズ」 F-35I「アディール」
相手 シリア空軍MiG-23(2機) イラン空軍Yak-130
相手機の種類 第3世代戦闘機 練習機/軽攻撃機

41年前はF-15が第3世代の戦闘機と交戦した。
今回はF-35が練習機と交戦した。

航空機の世代は上がったのに、相手のレベルは下がっている。

なぜ41年間、空対空戦闘が起きなかったのか

イスラエル周辺の国々が空軍力で正面から挑むことを避けるようになったのだろう。
ミサイルやドローンによる非対称攻撃が主流になった。

そしてイスラエル側も、敵の航空機を「飛ばさない」戦略を徹底している。

離陸前に潰す──現代の制空権

JPostによると、撃墜の2日前にあたる3月1日(日曜日)、IDFはイランのF-4とF-5を離陸直前に滑走路上で爆撃していた。2機はすでに滑走路に出て離陸準備に入っていたところを破壊されている。

飛ぶ前に潰す。
これが現代の制空権せいくうけん確保の実態だ。

IDFと米軍は開戦から2日以内にテヘラン上空の制空権を確保したと、JPostは報じている。

そのなかで「それでも飛んだ」のがYak-130だった。
滑走路上で戦闘機を失ったイラン空軍が、練習機でテヘランの空を守ろうとした。
結果は、F-35に撃墜された。



同日、英国のF-35Bも初の撃墜記録を刻んだ

JPostの報道によると、同じ日に英国空軍(RAF)のF-35Bもヨルダン上空でイラン製ドローンを撃墜した。
Business Insiderも「RAF F-35として初の実戦での撃墜」と報じている。

イスラエルのF-35Iは有人機初の撃墜。
英国のF-35Bは作戦初の撃墜。
2つの「初」が同じ日に重なった

まとめ:3つの文脈が重なった「歴史的」撃墜

  • F-35の空対空実績がドローン→巡航ミサイル→有人機へと段階的に進んだ延長線上にあること
  • 撃墜された相手は「戦闘機」ではなく、イランが対ドローン防空に転用した練習機Yak-130だったこと
  • イスラエル空軍にとって約41年ぶりの空対空戦闘だったこと──この3つを押さえると「歴史的」と報じられる理由が見えてくる


よくある質問(FAQ)

Q1. F-35が有人機を撃墜したのは本当に初めて?

IDF公式発表で「F-35による史上初の有人機撃墜」と明言されている。過去の空対空実績はドローン(2021年)と巡航ミサイル(2023年)のみだった。

Q2. Yak-130とはどんな機体?

ロシア製の高等練習機。本来はSu-57などのパイロット養成用だが、イランが軽攻撃機として実戦転用していた。最高速度はマッハ0.93で亜音速。

Q3. なぜイランは練習機を飛ばしていた?

主力のF-4やF-14が半世紀前の設計で数も限られるため、安価なYak-130にR-73Eミサイルを積み、対ドローン防空を補っていた。

Q4. イスラエル空軍が前回空対空で撃墜したのはいつ?

1985年11月24日、レバノン上空でF-15「バズ」がシリア空軍のMiG-23を2機撃墜したのが最後だった。約41年ぶりの空対空戦闘となる。

Q5. F-35のこれまでの空対空撃墜記録は?

2021年にイラン製ドローン、2023年に巡航ミサイルを撃墜。いずれも無人標的で、有人機は2026年3月4日のYak-130が初。

Q6. 英国のF-35Bも同じ日に初撃墜した?

同日、RAF F-35Bがヨルダン上空でイラン製ドローンを撃墜した。英国空軍のF-35として初の実戦撃墜となった。

Q7. イランのYak-130は何機ある?

正確な保有数は未公表。2023年9月にロシアから最初の機体を受領し、少なくとも数機を運用しているとされる。

Q8. テヘラン上空の制空権はどちらが握っている?

JPostの報道によると、米軍とイスラエル軍が開戦から2日以内にテヘラン上空の制空権を確保した。

Q9. F-35Iアディールは通常のF-35と何が違う?

イスラエル独自のC4Iシステム(指揮・通信・情報の統合システム)やイスラエル製兵器を搭載可能にした特別仕様のF-35A。

Q10. イラン空軍はまだ戦闘機を飛ばせる?

MiG-29が残存しており散発的な飛行は続いているが、制空権は圧倒的に米・イスラエル側にあるとみられる。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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