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マイナカード偽造で他人のクレカ再発行——爪やすり1本の手口と自衛策

偽造マイナカードとICチップの脆弱性を象徴するアイキャッチ画像

| 読了時間:約8分

偽造マイナカードで他人のクレカが勝手に再発行された。
信用情報を奪う「多段階スキーム」の手口と、1万3000人分の個人情報がグループの手元にあった事実を整理する。

 

 

 

指示役ら4人逮捕——偽造マイナカードで394万円をだまし取った事件の全容

警視庁は2026年2月26日、偽造マイナカードグループの指示役ら4人を詐欺容疑で逮捕した。

グループの手元からは1万3000人分以上の個人情報が見つかっている。
あなたや家族の情報が含まれていない保証はどこにもない。


だれが、なにをしたのか

産経新聞の報道によると、逮捕されたのは浜山進容疑者(53)と日高大容疑者(44、別名・村川大)の2人。
さらに鈴木啓修被告(63)ら2人が再逮捕された。

鈴木被告はすでに詐欺未遂罪などで起訴されている。
浜山容疑者がほかの3人に指示を出していたとみられる。

📌 逮捕容疑の概要

4人は2025年11月、他人名義のクレジットカードを不正に再発行させ、腕時計など360点・約394万円相当をだまし取った疑いがもたれている。
——日テレNEWS NNN

ここで注目すべき点がある。
犯人たちは偽造カードで直接買い物をしたのではない。

カード会社に「引っ越しの際にクレジットカードをなくした」とうそをつき、正規の紛失再発行の手続きを悪用して本物のカードを手に入れていた。

 

 

 


2023年6月から2年半——発覚までの時系列

この事件は突然起きたものではない。

ITmediaの報道によると、鈴木被告らは2023年6月ごろから偽造を繰り返していたとみられる。
約2年半にわたり犯行が続いていた計算になる。

🕐 事件の時系列

2023年6月ごろ マイナカード・運転免許証の偽造を開始
2025年5月〜 JICCに少なくとも26人分の不正な開示請求
2025年9〜10月 偽造身分証でJICCに開示請求し、情報を得ようとした疑い
2025年11月 他人名義クレカを不正再発行、394万円相当を詐取
2025年12月 関係先からPC押収、1万3000人分の個人情報が発覚
2026年1月15日 鈴木被告ら2人を有印公文書偽造などで再逮捕
2026年2月26日 指示役の浜山容疑者ら2人を新たに逮捕、鈴木被告らを再逮捕

産経新聞の2025年12月の報道によれば、関係先からはプリンターや他人名義のマイナンバーカードなど約190点も押収されている。

さらに産経新聞は、在留カードなどを偽造していた中国人グループとのつながりも捜査対象だと報じている。
犯行の背景には、国境を越えた違法ビジネスのネットワークがあるのだろう。

 

 

 


1月の「6億円事件」との共通点

偽造マイナカードを使った大型の詐欺事件は、これだけではない。

2026年1月にも、偽造マイナカード168枚で銀行口座を不正に開設し、約6億円を詐取した疑いで別のグループが逮捕されている。

  浜山グループ(今回) 林茂樹グループ(1月)
手口 クレカの紛失再発行を悪用 偽造マイナカードで口座開設
偽造方法 本物を削って上から貼付 画像データで偽造申請
被害額 約394万円 約6億円
規模 1万3000人分の個人情報 168口座・クレカ437枚

手口は異なるが、偽造マイナカードを身分証として悪用する構図は同じだ。
こうした事件が同時多発的に表面化している事実は、制度の穴がいかに広いかを物語っている。

では、このグループはどうやって他人のクレカ情報を把握し、紛失届を出せたのか。

 

 

 

 

爪やすりとラミネートで突破——信用情報を奪い取る多段階の手口

手口の核心は、信用情報の窃取とクレカの正規手続きの悪用を組み合わせた「多段階スキーム」にある。

マイナカードにはICチップが入っているから偽造しても無意味——そう思っていないだろうか。
現実はまるで違う。


本物のカードを「削って貼る」偽造術

2026年1月の産経新聞の報道が、偽造の手口を詳しく伝えている。

爪用やすりなどで本物のマイナンバーカードの表面を削り取り、他人の個人情報を印刷したラミネートフィルムを上から貼り付けて偽造していた。
——産経新聞(2026年1月15日)

つまり、爪やすりで本物のカード表面を削り取り、別人の情報を印刷したラミネートフィルムを貼り付ける
道具は100円ショップで手に入るものばかりだ。

カードの「中身」であるICチップには一切手を加えていない。
チップ自体は本物のままだが、券面に書かれた名前や住所だけを別人のものに差し替えている。

なぜこれで通用するのか。
答えは単純で、クレカ会社や信用情報機関の本人確認が、カードの券面を目視で見るだけだったからだ。


信用情報を先に奪い取る——7つのステップ

この事件が従来のカード犯罪と決定的に違うのは、信用情報を先に奪い取る点にある。

🔓 詐欺の7ステップ

  1. 何らかの方法で他人の個人情報(氏名・住所・勤務先など)を大量に入手する
  2. 本物のマイナカードの表面をやすりで削り、別人の情報を貼り付けて偽造する
  3. 偽造した身分証で、信用情報機関のCICJICCに開示請求を行う
  4. 開示された情報から、その人がどのクレカを持っているか把握する
  5. カード会社に電話し「引っ越しの際にカードをなくした」とうそをつく
  6. 再発行されたカードを別の住所で受け取る
  7. 届いたカードで腕時計などの高額商品を購入する

CICとは、クレジットカード会社が加盟する信用情報機関しんようじょうほうきかんのことだ。
あなたがどのカードをいつ契約し、いくら借りているかといった情報がまとまっている。

本来は本人しか開示請求できない。
ところが産経新聞の報道によると、グループはCICに対しても不正な開示請求を行っていたとみて、警視庁が捜査を進めている。

TBSの報道では、カードの再発行手続きに偽造マイナカードが使われた疑いも指摘されている。

 

 

 


ICチップは偽造できない——だが読まなければ意味がない

情報セキュリティの世界では、本人確認の強度を「要素の数」で測る。

知識(パスワードや暗証番号)、所有(カードやスマホ)、生体(指紋や顔)の3つのうち、2つ以上を組み合わせるのが多要素認証たようそにんしょうだ。

マイナカードの券面だけを目で見る確認は、所有の1要素しか使っていない。
偽造カードを持っているだけで突破できてしまう

ICチップの電子証明書を読み取れば、カードが本物かどうかを暗号的に検証できる。
これは所有に加えて知識(暗証番号)も必要になるため、格段に強い。

⚠️ この事件の核心

ICチップは偽造できない。だがチップを読まなければ意味がない。
券面だけの確認が残る限り、爪やすり1本で突破される穴は塞がらない。

CIC自身も2025年4月、第三者によるなりすましでインターネット開示が行われていた事案を公表し、ネット開示を一時停止した。
その後、マイナカードによる本人確認を導入している。

にもかかわらず、今回の事件ではCICへの不正開示請求も行われていた疑いがある。
対策と犯罪の「いたちごっこ」が続いている構図だ。

こうした手口が今後も通用し続けるのか。
制度の動きと、いますぐできる自衛策を確認しておきたい。

 

 

 

 

2026年4月から変わる本人確認——自分の身を守るためにできること

制度は動き始めている。ただし、すべてが一度に変わるわけではない。

あなたのマイナカードの券面情報が、知らぬ間に1万3000人分のリストに含まれている——そんな事態は、決して他人ごとではない


ICチップ義務化は段階的に進む

券面偽造を根本から防ぐには、ICチップの読み取りを必須にするしかない。
政府もその方向に動いている。

時期 対象 内容
2026年4月 携帯電話の契約(オンライン) 券面撮影を廃止、ICチップ読み取りを義務化
2027年4月 銀行窓口など対面取引 マイナカード等のICチップ読み取りを原則義務化

セキュリティ対策Labの解説によると、金融庁は非対面の本人確認にICチップの利用を求める方針を固めており、対面取引での義務化は2027年4月施行とされている。

ただし、ここに落とし穴がある。
携帯契約は2026年4月、銀行の対面は2027年4月
クレカの紛失再発行手続きがいつICチップ必須になるかは、カード会社ごとの対応に委ねられている部分が大きいのではないだろうか。

制度の移行が完了するまでの空白期間こそ、犯罪グループにとっては最後の「稼ぎどき」になりうる。


いますぐできる3つの自衛策

制度改正を待つだけでは不十分だ。
自分で身を守る方法がある。

1つ目は、CIC・JICCへの自己開示請求だ。
自分の信用情報を取り寄せれば、身に覚えのないカード契約や開示請求の履歴がないか確認できる。
CICはマイナカードを使ったネット開示を再開しており、JICCもスマホアプリから請求できる。

✅ いますぐ確認できる

信用情報の開示請求は、CIC・JICCそれぞれのWebサイトやアプリから本人が行える。
身に覚えのない契約がないか、定期的に確認しておきたい。

2つ目は、JICCの本人申告制度ほんにんしんこくせいどの活用だ。
身分証の紛失や盗難にあった事実を登録しておけば、加盟する金融機関が審査時にその情報を参照できる。
なりすましによる不正契約を防ぐ一つの壁になる。

3つ目は、クレカの利用明細をこまめに確認することだ。
今回の手口では、被害者は再発行されたカードで買い物をされて初めて異変に気づく。
月に一度ではなく、アプリの通知をオンにして日常的にチェックする習慣が助けになる。


デジタルIDの普及と運用のギャップ

一歩引いて全体を見ると、構造的な問題が浮かび上がる。

マイナカードは国が推進するデジタルIDだ。
ICチップには高度な暗号技術が使われており、チップ自体の偽造は極めて難しい。
政府はこの安全性を繰り返し強調してきた。

ところが現場の運用は追いついていなかった。
カード会社も、信用情報機関も、券面の目視で本人確認を済ませていたICチップは読まれていなかった
カードの「器」は最先端でも、「使い方」に穴があれば意味がない。

今回の事件が突きつけているのは、デジタルIDの普及速度に、それを使う側の運用整備がまだ追いついていないという現実だろう。
ICチップの義務化は正しい方向だが、犯罪の手口も変わり続ける。
「仕組みを作って終わり」にならないことを願うばかりだ。

 

 

 

まとめ

  • 偽造マイナカードグループの指示役・浜山進容疑者ら4人が詐欺容疑で逮捕された
  • 手口は信用情報機関への不正開示→クレカ紛失届→再発行→高額商品購入の多段階スキーム
  • 本物のマイナカードを爪やすりで削りラミネートで偽造する極めてアナログな手法が通用していた
  • ICチップ読み取りの義務化は2026年4月(携帯契約)と2027年4月(銀行対面)に段階的に進む
  • いますぐできる自衛策として、CIC・JICCへの信用情報の自己開示請求が有効

よくある質問(FAQ)

Q1. マイナンバーカードのICチップは偽造できるの?

ICチップ自体の偽造は極めて困難です。ただし券面だけを確認する場面ではチップを読まないため、表面の偽造だけで通用してしまいます。

Q2. 偽造マイナカードはどうやって見分ける?

ICチップの電子証明書を読み取るソフトで検証すれば偽造を見破れます。目視だけでは精巧な偽造の判別は難しいとされています。

Q3. 自分のクレカが勝手に再発行されていないか確認する方法は?

CIC・JICCに信用情報の開示請求をすれば、身に覚えのないカード契約や開示履歴がないか確認できます。

Q4. CIC・JICCの信用情報開示請求はどうやるの?

CICはマイナカードを使ったネット開示、JICCはスマホアプリから請求できます。郵送での請求も可能です。

Q5. 本人確認のICチップ義務化はいつから?

携帯電話のオンライン契約は2026年4月、銀行窓口など対面取引は2027年4月から段階的に義務化されます。

Q6. クレジットカードの不正再発行を防ぐにはどうすればいい?

JICCの本人申告制度で身分証の紛失・盗難を登録しておくと、なりすましによる不正契約の防止に役立ちます。

Q7. 偽造マイナカードの手口はどんなもの?

本物のマイナカードの表面を爪やすりで削り、別人の情報を印刷したラミネートフィルムを貼り付ける手口が確認されています。

Q8. マイナンバーカードの偽造は何の罪になる?

マイナンバーカードは国の発行する公文書のため、偽造すると有印公文書偽造罪に問われ、1年以上10年以下の懲役となります。

Q9. 信用情報機関CICへの不正アクセスは過去にもあった?

CICは2025年4月になりすましによるネット開示の不正を公表し、一時的にネット開示を停止した経緯があります。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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