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ガザ停戦後なぜ600人超死亡?日本人医師が見た現実とMSF排除の危機

ガザ停戦後も600人超が死亡。日本人医師の証言とMSF排除の危機を伝えるアイキャッチ画像

| 読了時間:約8分

ガザの停戦合意から約5カ月。
停戦後だけで600人超が死亡し、国際支援団体まで排除されようとしている。

2人の日本人医師が現地で目にしたのは、「停戦」とはほど遠い現実だった。

 

 

 

停戦後のガザで何が起きているか——「名ばかりの停戦」と600人超の犠牲

停戦したはずのガザで、人が死に続けている。

JETROの報道によると、ガザの停戦合意は2025年10月10日正午に発効した。
ハマスは人質20人全員を解放し、イスラエル側も囚人を釈放。
トランプ大統領が「テロと死の時代の終焉」と宣言した和平の第1段階である。

多くの人が「ようやく平和が来る」と感じただろう。

ところが現実は違った。
AFPの報道によると、2026年1月末の時点で停戦後だけで600人以上が命を落としている
停戦合意があっても、ガザ各地でイスラエル軍の空爆は続いた。


「何も変わっていない」——現地からの声

日テレNEWSの取材に応じたガザ北部の若者は、通信アプリでこう訴えた。
「"停戦"といっても正直、何も変わっていない」。

停戦発効日に自宅へ戻り片づけを始めたが、6日後に攻撃を受け家は全壊したという。

ガザの犠牲者数

ARAB NEWSによれば、2026年2月時点で死者は7万2070人、負傷者は17万1738人にのぼる。
CNNの報道では、イスラエル軍自身がガザでの死者約7万人を認めた

 

 

 

攻撃に加え、支援まで断たれる「二重の危機」

しかも危機はこれだけではない。
イスラエルは2025年12月末、ガザで活動するNGO37団体の登録を失効させた。

MSFの公式発表によると、国境なき医師団こっきょうなきいしだん(MSF)を含むこれらの団体に対し、2026年3月1日までの退去が通告された。

停戦後ガザの主な動き

  1. 2025年10月10日:停戦合意が発効
  2. 停戦後もイスラエル軍の攻撃が継続、死者が増え続ける
  3. 2025年12月30日:イスラエルがNGO37団体の登録を失効させる
  4. 2026年3月1日:退去期限。MSFを含む支援団体に退去を通告
  5. 2026年2月27日:イスラエル最高裁が一部NGOに活動継続の仮処分

攻撃が止まらないうえに、支援体制まで解体されようとしている。
これが停戦から5カ月後のガザの現実だ。

数字の向こうには、病院で息を引き取った人や、テントで震えながら夜を過ごす家族がいる。
その現場を、2人の日本人医師が自分の目で見てきた。

 

 

 

日本人医師が見た停戦後のガザ——廊下にあふれるベッド、家族を全て失った10歳の少女

着任からわずか2日で退避を強いられた医師がいる。

森岡慎也氏(41)。
名古屋掖済会えきさいかい病院の救急医で、MSFに登録後、ミャンマーやスーダン、レバノンの紛争地で活動してきた。

2025年9月7日にガザ入りしたが、その2日後にイスラエル軍の退避勧告が出された。
北部で大規模爆撃が始まったのだ。


「政治的理由で最善の治療ができない」

停戦発効後、森岡氏はガザに戻り医療活動を再開した。
だが状況は改善していなかった。

日テレNEWSの取材で森岡氏はこう語った。
「技術もあって人もいて、やることは分かっているのに、それがそこにない。政治的理由で最善の治療が受けられない方がたくさんいるのがつらい」

物資の搬入が滞り、医療品は慢性的に不足していた。
同僚の家族が攻撃で亡くなり、森岡氏が勤務する救急外来に運ばれてきたこともあったという。

「停戦後も何百人という患者さんが亡くなっていて」——その言葉に、名ばかりの停戦の実態がにじむ。

 

 

 

別の医師が見た、同じ惨状

森岡氏とは別の日本人医師も、ガザの現場を証言している。

  森岡慎也 氏 小杉郁子 氏
専門 救急医 外科医
活動時期 2025年9〜11月 2025年12月〜2026年1月
活動場所 北部ガザ市→南部 南部ナセル病院→北部
共通する証言 物資不足、攻撃の継続 病床飽和、やけどの子ども

時期も場所も違う。
なのに、2人の証言は同じ方向を指している。
これは個人の感想ではなく、ガザ全体の構造的な問題だ。

MSFの公式記事小杉郁子氏はナセルなせる病院の状況を語った。
南部最大の医療施設であるナセル病院で、病床率は100%を超え、廊下にまでベッドがあふれていた

手術用手袋は自分に合うサイズがほとんどなく、大きめで代用した。
鎮痛剤が箱単位で入荷すると、誰に何錠渡したかを記録して管理を徹底した。

手術中にハエが入り込み、集中を妨げることもあった。


 

 

 

「家族で生き残ったのは自分だけ」

患者のなかには、家族全員を紛争で失った10歳の少女がいた。

おばあさんに付き添われて通院していたその女の子は、右足のリハビリ中だった。
痛みと精神的な負担が重なり、病院に着くなり嘔吐して失神した
食事もほとんど取れていなかったという。

小杉氏は「家族で生き残ったのは自分だけという子どもがたくさんいる」と語った。
もし身寄りが誰もいなかったら、その子はどうなるのか——答えは出なかった。

一方で、厳しい日常のなかにも人のぬくもりがあった。
病院の中庭で休んでいると、若い女性がクッキーを差し出してくれた。

スマホの着信音を日本のアニメの主題歌にしている若者もいた。
「日本のように立ち直れると信じている」——そう語る現地スタッフの言葉を、小杉氏は忘れられないという。

しかし、その現場を支えてきたMSFの存在そのものが、今まさに揺らいでいる。

 

 

 

消えゆく「命綱」——MSF排除でガザの医療はどうなるのか

NGOは「補助的な支援団体」だと思っていないだろうか。ガザでは事情が違う。

MSFの2025年ガザ活動実績

MSFのプレスリリースによると、MSFは2025年にガザの病床の5分の1を運営し、分娩の3件に1件を介助した。
外来診療は91万3284件、給水量は7億リットルを超えた。

つまりガザの病床の5台に1台、赤ちゃんの3人に1人の分娩をMSFが支えていた。
もはや「支援」ではなく、医療インフラそのものだ。

91万件の外来診療は、1日あたり約2500件。
35秒に1件のペースで患者を診ていた計算になる。


なぜNGOは排除されるのか

イスラエルは新たな登録制度のもと、NGOにパレスチナ人スタッフの個人情報の提出を求めた。
MSFはスタッフの安全を理由にこれを拒否した。

MSFのクリストファー・ロックイヤー事務局長はこう述べている。
「この規模の医療・人道援助は、簡単に替えがきくものではありません」
「MSFの信用を失墜させ、声を封じ込め、医療援助を妨害することを目的としています」

 

 

 

消えた拡大計画

MSFは2026年に1億3000万ユーロ(約240億円)の予算で活動拡大を計画していた。
現状維持どころか、支援を大幅に増やすはずだった。
その計画が、登録拒否によって宙に浮いている。

2026年1月だけで、MSFは8万3579件の外来診療と4万646件の緊急症例に対応した。
この数字を退去後に誰がどう引き継ぐのか。代わりはいない。

最高裁の仮処分は「命綱」になるか

2月27日、イスラエル最高裁が一部NGOに活動継続を認める仮処分を出した。

ただし、これは暫定的な措置にすぎない。
MSFの国際スタッフは3月1日までにパレスチナからの退去を余儀なくされている。
新たな物資やスタッフの搬入も1月初めから妨げられたままだ。

パレスチナ自治政府の登録のもと活動を続ける方針をMSFは示しているが、制限された条件下で活動を維持できるかは不透明だろう。
仮処分が恒久的な解決にならない以上、MSFの「命綱」がいつ切れてもおかしくない

「世界に見捨てられた」——その言葉は、攻撃が止まらないこと、支援まで排除されること、そして国際社会の関心が薄れていること、全てを含んでいるのではないだろうか。

 

 

 

まとめ

  • ガザの停戦合意は2025年10月10日に発効したが、その後も攻撃は続き、停戦後だけで600人以上が死亡した
  • 日本人医師の森岡慎也氏と小杉郁子氏が、時期と場所を変えて同じ惨状を証言。病床は飽和し、物資は枯渇し、子どもたちが傷ついている
  • MSFはガザの病床の5分の1、分娩の3分の1を担う「医療インフラそのもの」だったが、イスラエルの登録拒否で活動が脅かされている
  • 2月27日のイスラエル最高裁の仮処分は暫定的な措置であり、長期的な活動の見通しは立っていない

ガザの現状を知ることが、まず最初の一歩になる。
MSF日本のウェブサイトでは、ガザの最新状況や支援の方法が公開されている。

よくある質問(FAQ)

Q1. ガザの停戦合意はいつ発効しましたか?

2025年10月10日正午(日本時間午後6時)に発効しました。米国主導の和平計画の第1段階です。

Q2. 停戦後のガザで何人が亡くなっていますか?

2026年1月末時点で停戦後だけで500人超、2月中旬には600人超に増加しています。

Q3. 国境なき医師団(MSF)はガザで活動を続けられるのですか?

パレスチナ自治政府の登録のもと活動継続の方針ですが、国際スタッフは退去を迫られており先行きは不透明です。

Q4. なぜイスラエルはNGOを退去させるのですか?

新登録制度でパレスチナ人スタッフの個人情報提出を要求し、拒否した37団体の登録を失効させました。

Q5. MSFがいなくなるとガザの医療はどうなりますか?

ガザの病床の5分の1、分娩介助の3分の1を担っており、退去すれば医療体制に壊滅的な影響が出ます。

Q6. ガザで活動した日本人医師は誰ですか?

救急医の森岡慎也氏と外科医の小杉郁子氏。MSFの派遣で2025年9月〜2026年1月にかけて活動しました。

Q7. ガザの現在の死者数は何人ですか?

2026年2月時点で死者7万2070人、負傷者17万1738人です。イスラエル軍も約7万人の死者を認めています。

Q8. ガザを支援する方法はありますか?

MSF日本のウェブサイトでガザの最新状況や寄付方法が公開されています。

Q9. イスラエル最高裁の仮処分とは何ですか?

2月27日に一部NGOに活動継続を暫定的に認めた裁判所の命令です。ただし恒久的な措置ではありません。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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