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「女の人にこんなに給料払いたくないですわ」——この発言、実は刑事罰の対象になる。
兵庫県在住の40代女性エンジニアが、20年近く前の体験を明かした。派遣から正社員への登用交渉で、総務部長から面と向かって放たれた言葉だ。手取り14〜16万円という最低限の要求を、性別を理由に渋られた。
この発言がなぜ「犯罪」なのか。そして差別した側の会社は今どうなっているのか。データが示す答えは、思ったより重い。
この記事でわかること
「女だから給料は安くていい」は刑事犯罪である
この発言は、労働基準法に明確に違反する。
「法律的にはグレーゾーンかも」と思っていないだろうか。実は、労働基準法第4条は「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」と定めている。
⚠️ 罰則:刑事事件になる
jinjer HRブログ(労基法4条解説)によると、男女間で差別的な賃金の差を設けると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
道義的にアウト → 刑事事件になる話だ。
「発言だけ」と「実際の差別」では何が違うのか
厳密に言うと、発言だけでは直ちに犯罪にはならない。問題は、その発言が実際の賃金に反映されたかどうかだ。
- 発言のみ→ ジェンダーハラスメントに該当しうる。ただし刑事罰の直接対象外
- 発言+実際に賃金格差が生じた→ 労基法4条違反(6か月以下の懲役)
- 発言+昇進・降格など雇用条件に影響→ 男女雇用機会均等法違反
今回のケースは「正社員登用の賃金交渉」の場での発言だ。条件設定に直結する場面なので、労基法4条の問題になりうるといえる。
「間接的な理由」でも違法になる
もうひとつ見落とせない事実がある。
「女性は勤続年数が短いから」「女性は家計を主に支えていないから」——一見もっともらしく聞こえる。しかしjinjer HRブログによると、こうした間接的な理由による賃金差別も労基法4条違反となる。
📌 実際の判例
岩手銀行事件(平成4年)では、女性行員にだけ家族手当を支払わない慣行が違法と判決された。内山工業事件(平成13年)でも、女性専用の低い賃金表の適用が違法とされた。
理由がどれだけ合理的に見えても、根底に「女性だから」がある限り違法だ。「昔の話」ではない。法律は今も生きている。
では、その法律が守られている職場は今どれだけあるのか——数字は、少し暗い現実を見せてくれる。
2025年、それでも「女の給料は安くていい」職場が残っている
あなたの職場に、こんな上司はいないだろうか。
2025年2月、女性618名を対象にした女の転職typeの調査によると、約6割の女性が今も職場でジェンダーギャップを感じていると答えた。「女性であること」を理由に経験したこととして最も多かったのは「給料が低い」で、40.0%に上った。
管理職になれば格差は消える——は幻想だった
「平社員なら格差があっても、管理職まで上がれば関係ない」。そう思っているとしたら、データが覆してくれる。
出典:労働政策研究・研修機構 2024年賃金構造基本統計調査
役職が同じ「部長」でも、男女間に年約104万円の差がある。毎年「ボーナス1回分丸ごとなし」に近い差が、役職者にも存在する。
「男性が12か月で稼ぐ金額」を女性は約16か月かけて稼ぐ
同調査によると、一般労働者の月額賃金は男性36万3,100円に対し、女性は27万5,300円だ。
男性 月額
36万3,100円
女性 月額
27万5,300円
男性が12か月で稼ぐ金額を、女性が同じだけ稼ごうとすると約15.8か月かかる計算になる。1年と4か月近く余分に働かなければ、同じ収入に届かない。
世界に目を向けると、より鮮明になる。2025年のジェンダーギャップ指数で、日本は148か国中118位だ。G7のなかで最下位で、OECD加盟国のなかでも男女賃金格差は3番目に大きい。20年前の「払いたくない」発言は、今も構造として残っている。
では、こういう体質の会社は長続きするのか——答えはすでに出ている。
「給料出し渋ったらそうなる」——差別した会社の末路
体験者の女性は現在、すでにその会社を辞めている。個人事業主として独立し、電子機器の製造業を営んでいる。
元いた会社については、こう語った。
この言葉は、一企業だけの話ではない。
「給料を出し渋った会社」が今、倒産している
東京商工リサーチの調査によると、2025年に「人手不足」を原因とする企業倒産は過去最多の397件に達した。前年比35.9%増で、4年連続の増加だ。
📉 内訳:何が原因で倒産したか
「従業員退職」が前年比54.9%増(1.5倍増)、「人件費高騰」が43.3%増と大幅に増えた。同調査は「賃上げが難しい企業では、人手不足から失注し、業績にも影響を及ぼしている」と指摘している。
約1日に1社以上が「人が来ない」「人が辞める」で倒産した計算になる。賃金を出し渋った会社が、市場から退場しているのだ。
被害を受けたら、どこに相談できるか
もし今、職場で性別を理由に賃金差別を受けているなら、泣き寝入りしなくていい。
✅ 相談できる窓口
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):性別を理由とした差別の申告ができる(厚生労働省 均等法Q&A)
- 総合労働相談コーナー:全国の労働基準監督署内に設置。電話相談も可能
- 労働条件相談ほっとライン:0120-811-610(夜間・休日対応)
相談する前に、発言の日時・内容・状況をできる限り記録しておくことが力になるといわれている。メモでも、メールでも残しておこう。
体験者の女性が最終的に条件を勝ち取れたのは、派遣先企業が「会社ごと撤退する」と圧力をかけたからだ。交渉には力がいる。法律と窓口は、その力になる。
この発言が暴いた、もっと深い問題
⚠️ このセクションについて
ここからは事実に基づく考察であり、確定情報ではありません。筆者の考察として読んでください。
報道されている文脈では、これは「呆れた上司の暴言エピソード」だ。総務部長が面と向かって「女の人に給料払いたくない」と言い放ち、派遣先の圧力で条件が通った——その話だ。
「個人の暴言」ではなく「構造の露出」だった
この発言が20年近く前のものであるにもかかわらず、今も共有され反響を呼んでいる理由は何か。
それは「過去の珍事」ではなく、「今も続いている構造が、たまたま言語化されたもの」という見方ができるのではないだろうか。前述のとおり、2025年の調査でも女性の40%が「給料が低い」体験をしている。発言は消えても、構造は残っている。
発言が「珍しい」のではなく、発言が「可視化された」のが珍しいのだ。多くの職場では、同じ意識が態度や制度として静かに続いているという見方もある。
「言えなかった時代」から「言える時代」への転換
もうひとつ、別の読み替えができる。
20年前、多くの女性は「言っても無駄だ」と泣き寝入りしたのではないだろうか。今、体験者はSNSとデジタルメディアで発信できる。それを受け取る読者も増えた。この記事が話題になること自体が、労働者の発言力が高まった証拠といえそうだ。
さらに、人手不足の深刻化が「労働者の交渉力」を底上げしているという側面もあるだろう。企業が人を選べない時代には、人が企業を選ぶ。「給料を出し渋る会社」は選ばれなくなるし、選ばれなければ倒産する。市場原理が、法律の代わりに差別を淘汰しつつあるという見方もできる。
あなたならどう動くか
この話を「昔の変な上司の話」で終わらせるのは、少しもったいない。
20年分のデータが示しているのは、「構造は変わりにくいが、個人の行動と時代の変化が少しずつ動かしている」という事実だ。体験者は資格を取り、独立し、気がつけば元の会社より豊かな立場にいる。差別をした総務部長の会社は、人材不足に嘆いている。
あなたが今いる職場は、20年後にどちら側にいるだろうか。
📝 まとめ
- 「女だから給料を安くしたい」は労働基準法第4条違反。6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されうる
- 2025年の調査でも、約6割の女性が職場でジェンダーギャップを感じている。「給料が低い」体験は女性の40%が経験
- 管理職でも格差は消えない。部長級でさえ男女差は月8万6,500円・年約104万円
- 差別した会社の末路は人手不足倒産。2025年は過去最多の397件(前年比35.9%増)
- 被害を受けたら、都道府県労働局の雇用環境・均等部に相談できる
よくある質問(FAQ)
Q1. 「女だから給料を安くしたい」という発言は法律違反ですか?
労働基準法第4条に違反します。実際に賃金差が生じた場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
Q2. 男女同一賃金違反の罰則は何ですか?
6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。労働基準法の中で3番目に重い罰則に当たります。
Q3. 「女性は勤続年数が短いから」という理由での賃金差別は合法ですか?
違法です。間接的に性別を理由とした賃金差別も、労働基準法第4条違反に該当します。
Q4. 職場で性別を理由に給料差別を受けた場合、どこに相談できますか?
都道府県労働局の雇用環境・均等部、または全国の労働基準監督署内の総合労働相談コーナーに相談できます。
Q5. 日本の男女賃金格差は今どのくらいですか?
2024年のデータで男性月額36万3,100円、女性27万5,300円です。同じ部長職でも年約104万円の差があります。
Q6. 管理職になれば男女の賃金格差はなくなりますか?
なくなりません。部長級でも月8万6,500円、年約104万円の差があります。役職では格差は解消されません。
Q7. 今も職場で性差別的な発言をする上司はいますか?
2025年の調査では約6割の女性が職場でジェンダーギャップを感じており、偏見発言の1位は「男性上司」です。
Q8. 給料を出し渋る会社は人材不足になりますか?
なりやすいといわれています。2025年の人手不足倒産は過去最多の397件で、前年比35.9%増でした。
Q9. 男女雇用機会均等法と労働基準法4条は何が違いますか?
労基法4条は賃金差別のみ禁止します。均等法は採用から退職まで性別差別を幅広く禁止する法律です。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
reaitimenews.com
話題のニュースを「なぜ?」の視点で深掘りするニュースメディアです。法律・心理学・経済など専門分野の知識をもとに、報道だけではわからない背景や理由をわかりやすく解説しています。
📚 参考文献
- キャリコネニュース「女の人にこんなに給料払いたくないですわ——手取り14万の正社員登用で総務部長が暴言」(一次情報・体験談)
- jinjer HRブログ「労働基準法4条による『男女同一賃金の原則』を分かりやすく解説」(法律解説・罰則・判例)
- 労働政策研究・研修機構「2024年賃金構造基本統計調査 結果の概要」(統計データ・賃金格差)
- 東京商工リサーチ「2025年の『人手不足』倒産は過去最多の397件」(2026年1月7日)
- 女の転職type「約6割の女性が職場のジェンダーギャップは『ある』と回答」(2025年3月7日・618名調査)