| 読了時間:約5分
梶井基次郎の「虚無」が、2026年のアイドルのステージで叫ばれている。
原因は自分にある。
(通称ゲンジブ)が、楽曲「ニヒリズムプリズム」の推しカメラ映像をメンバー全員分・計 7 本、YouTubeで公開した。
映像のもとになったのは今春完走した全国ツアー「LIVE TOUR 2026 輪廻の箱庭」のライブ映像だ。
なぜこの曲が選ばれたのか。
その理由を知ると、映像の見え方がガラッと変わる。
この記事でわかること
広告

推しカメラ7本、全員分いっきに公開
スマホ縦画面いっぱいに、 1人のメンバーだけが映し出される。
「チッケム」と呼ばれるこの映像形式を知らない人のために説明しよう。
韓国語の「직캠(チッケム)」が語源で、「直接カメラ」という意味だ。
グループのステージで特定の 1 人だけをカメラが追い続け、縦長フォーマットで公開する。
日本語では「 推しカメラ 」とも呼ばれている。
チッケム(직캠)とは
韓国語で「直接カメラ」を意味する言葉。
グループのライブ中に特定の 1 人だけをカメラが追い続け、縦長フォーマットで公開する映像のこと。
もともとはK-POPの音楽番組が発祥の文化だが、近年は日本の男性・女性アイドルにも広がっている。
「推しカメラ」「ファンカム」とも呼ばれる。
「チッケムはK-POPだけのもの」 と思っていたなら、それはもう少し前の話かもしれない。
近年は日本の男性・女性アイドルにも広がり、公式が全員分を同時に公開する形式が 定着しつつある。
今回公開されたのは、 大倉空人 ・ 小泉光咲 ・ 桜木雅哉 ・ 長野凌大 ・ 武藤潤 ・ 杢代和人 ・ 吉澤要人 の 7 人それぞれのパフォーマンスだ。
全員分・フル尺・縦型という形式で、 音楽ナタリー「原因は自分にある。
『ニヒリズムプリズム』チッケム公開、全国ツアー『輪廻の箱庭』ライブ映像より」 が伝えている。
広告
では、なぜよりによってこの曲「ニヒリズムプリズム」が選ばれたのか。
梶井基次郎の短編から生まれた曲だった
400字詰め原稿用紙 10 枚にも満たない明治の短編が、2026年のアイドル楽曲になった。
「ニヒリズムプリズム」は、作家・ 梶井基次郎 の掌篇(てのひらに収まるほど短い小説)「蒼穹(そうきゅう)」をモチーフにしている。
晩春の午後、土手の上でぼんやり空を眺めていた主人公が、ふと心の中に虚無感と大きな不幸を感じる——そんな作品だ。
楽曲を制作したのは、ゲンジブの代表曲を数多く手がける 久下真音 だ。
以前から「蒼穹の世界観がゲンジブのイメージとシンクロしている」と考えていたことから、今回の題材に採用した。
EP「 文藝解体新書 」( 2026 年 3 月 11 日発売)に収録されており、日本文学の名作×春夏秋冬をコンセプトにした全 4 曲の 1 曲目にあたる。
ユニバーサルミュージック「原因は自分にある。
、文学作品から着想を得たEP『文藝解体新書』 3月11日(水)発売!」 に詳細が記されている。
EP「文藝解体新書」は日本文学×春夏秋冬をコンセプトにした全 4 曲構成。
「ニヒリズムプリズム」(梶井基次郎「蒼穹」×春)のほか、「疾走」(太宰治「走れメロス」×夏)、「愛無常」(夏目漱石「こころ」×夏)、「Silence」(遠藤周作「沈黙」×冬)を収録。
「虚無虚無虚無虚無…」と繰り返されるフレーズがなぜ中毒性を持つのか。
原典を知ると見えてくるのは、 「晴れた青空の下にある黒い虚無」という梶井的な対比構造だ。
この楽曲がこれほど聴き込まれる理由は、シングル1曲に収まらない文学的な重さにあるのではないか。
ではなぜ、虚無感を歌う重い曲が、ライブで観客を熱狂させることができるのか。
広告
アイドルが「虚無主義」を歌うと何が起きるか
「虚無虚無虚無虚無」と繰り返す歌詞のライブで、観客が全力で手を振り上げている。
この矛盾を解くカギは、「チッケム」という映像形式の性質にある。
心理学には「 パラソーシャル関係(parasocial relationship) 」という概念がある。
テレビや動画の中の人物に対して、実際には会ったことがないのに、まるで親しい友人のように親密感を覚える現象だ。
アイドルとファンの関係はこれに近いと一般にいわれている。
チッケムはその体験をさらに強化するフォーマットだ。
グループ全体ではなく「 1人だけ 」を追い続ける映像は、「推しが自分に向けてパフォーマンスしている」という感覚を生み出しやすい。
ここにゲンジブの世界観が重なる。
ゲンジブは ユニバーサルミュージック公式PR で「 シニカルな世界観・表情管理1000%のアイドル 」という両極端な表現を武器にしていると明記している。
虚無感という極めて個人的なテーマと、個人を切り出すチッケムの形式が重なると、「推しが自分に向けて虚無を歌っている」という唯一無二の体験が生まれるのではないだろうか。
「虚無感を歌うアイドルを応援できる」矛盾が成立するのは、チッケムがその体験を完全に個人に閉じた回路として完結させるからではないか。
言い換えるなら—— 「虚無虚無って歌ってるのに盛り上がれるの、推しカメラが『これ自分だけへのメッセージだ』って感覚にさせてくれるから」 ということだ。
Mikiki by TOWER RECORDS「原因は自分にある。
が対峙する人間の根源的な問い——『文藝解体新書』と"ニヒリズムプリズム"の〈虚無〉を読む」 では、文學界新人賞受賞の小説家でゲンジブのファンでもある 福海隆 が「何度も聴くうちに、虚無を前に未だ懊悩している、わたしたちに寄り添ってくれている作品だ、という印象が湧いてきた」と記している。
広告
そのステージでは実際、何が起きていたのか。
ツアー中、1人が抜けてもステージは続いた
「みんながいてくれるから、俺らは必ず、みんなのところに会いに来ます」—— 吉澤要人 がそう告げたのは、 7人全員でステージに立てた瞬間 のことだった。
「輪廻の箱庭」ツアーは、 2026 年 3 月 17 日から 4 月 26 日にかけて全国 5 都市で開催された。
音楽ナタリー「四季は巡る、観測者と共に——原因は自分にある。
春ツアー『輪廻の箱庭』終幕」 によれば、最終公演は宮城・仙台サンプラザホールで行われた。
ツアー中、 小泉光咲 が肺気胸(はいきょう・肺に穴が開く病気)と診断され、一時的に公演を離れたとされている。
その間、残り 6 人で公演を続け、 4 月 22 日に復帰してツアーを完走したとされる。
大宮ソニックシティを皮切りに「輪廻の箱庭」開幕
小泉光咲が肺気胸と診断。
以降は6人体制で公演を継続したとされる
小泉光咲がライブに復帰。
7人そろっての公演が再開したとされる
宮城・仙台サンプラザホールにて最終公演。
全18曲・15曲目に「ニヒリズムプリズム」を演奏して完走
最終公演のセトリは全 18 曲構成で、 15 曲目に「ニヒリズムプリズム」が演奏された。
ライブの締めくくりには、舞台の秒針の音とレーザーが再出現し、カウントダウンが「輪廻(りんね)」を表現した。
最後の曲「無限シニシズム」の歌詞の一節「ここで終われない これは巻き戻し」が流れた後に消えていったという。
今回公開されたチッケム映像には、そのツアーを生き抜いた 7人それぞれの記録が映っている。
単なる振り付け確認映像ではない。
広告
そのツアーを終えたゲンジブが次に向かうのは、どんなステージなのか。
あなたの推しのチッケムを今すぐ見る方法
公式YouTubeチャンネルに 7 本の縦型動画が並ぶ——見たいメンバーを選ぶだけでいい。
動画は原因は自分にある。
の公式YouTubeチャンネル(@GENJIBU)で公開されている。
スマホで縦画面のまま見ることを想定した縦型フォーマットで、曲の全編分がフルで収録されている。
https://www.youtube.com/@genjibu
次のライブ情報: ARENA TOUR 2026 仮ノ現(かりのうつつ)
6 月 27 日〜 28 日:神戸ワールド記念ホール/ 7 月 4 日〜 5 日:東京・有明アリーナ。
自身初のアリーナツアー。
チッケムを見た後に来るのが、初のアリーナツアー「ARENA TOUR 2026 仮ノ現」だ。
2026 年 6 月 27 日開幕で、神戸・有明アリーナの 2 都市で開催される 自身初のアリーナツアー だ。
チッケム公開は、そのツアー開幕の約 2.5 週前にあたる。
ファンの熱量を高める仕掛けとしてこのタイミングが選ばれたのではないだろうか。
広告
虚無を歌うアイドルが熱狂を生む——その矛盾が成立する構造こそ、ゲンジブが作り出している新しい体験の正体かもしれない。
まとめ
- 「ニヒリズムプリズム」のチッケムは、大倉空人・小泉光咲・桜木雅哉・長野凌大・武藤潤・杢代和人・吉澤要人の7人分が全員フル尺で公開された
- この曲は梶井基次郎の超短編「蒼穹」をモチーフにしており、「晴れた空の下にある虚無」という文学的な対比構造が歌詞に埋め込まれている
- チッケムという「1人だけを追い続ける」映像形式と、虚無感という個人的テーマの組み合わせが、推しに向き合う体験を個人に完結させるのではないか
- ツアー「輪廻の箱庭」では小泉光咲の離脱・復帰というドラマがあり、今回の映像はその全員そろった完走の記録でもある
よくある質問(FAQ)
Q1. 「ニヒリズムプリズム」の歌詞はどんな意味?
梶井基次郎の短編「蒼穹」をモチーフにした曲で、晴れた空の下に芽生える虚無感と不幸の感覚を表現している。
「虚無虚無虚無虚無」と繰り返すフレーズはその世界観から来ている。
Q2. 原因は自分にある。
のメンバーは何人?誰がいる?
大倉空人・小泉光咲・桜木雅哉・長野凌大・武藤潤・杢代和人・吉澤要人の7人組ダンスボーカルグループ。
通称「ゲンジブ」。
2019年7月7日にスターダストプロモーションからデビューした。
Q3. チッケム(推しカメラ)とは何?
韓国語の「직캠」が語源で、グループのライブ中に特定の1人だけをカメラが追い続け縦長フォーマットで公開する映像のこと。
日本では「推しカメラ」とも呼ばれる。
Q4. 「輪廻の箱庭」ツアーのセトリに「ニヒリズムプリズム」は入っていた?
はい。
最終公演(2026年4月26日・仙台サンプラザホール)のセトリは全18曲で、15曲目に「ニヒリズムプリズム」が演奏された。
Q5. ニヒリズムプリズムのチッケムはどこで見られる?
全メンバー7人分・フル尺の縦型動画が揃っている。
Q6. 輪廻の箱庭ツアーのBlu-rayや映像商品化はある?
2026年6月時点では公式からの映像商品化の発表は確認されていない。
今後のゲンジブ公式サイトやSNSでの告知を確認することをおすすめする。
Q7. ゲンジブの次のライブはいつ?
2026年6月27日から「ARENA TOUR 2026 仮ノ現」が開幕予定。
神戸ワールド記念ホール(6月27〜28日)と東京・有明アリーナ(7月4〜5日)で開催される自身初のアリーナツアーだ。
📚 参考文献
- 音楽ナタリー「原因は自分にある。『ニヒリズムプリズム』チッケム公開、全国ツアー『輪廻の箱庭』ライブ映像より」 (2026年6月9日)
- ユニバーサルミュージック公式PR「原因は自分にある。、文学作品から着想を得たEP『文藝解体新書』 3月11日(水)発売!」 (2026年3月11日)
- 音楽ナタリー「四季は巡る、観測者と共に——原因は自分にある。春ツアー『輪廻の箱庭』終幕(ライブレポート / 写真24枚)」 (2026年4月30日)
- Mikiki by TOWER RECORDS「原因は自分にある。が対峙する人間の根源的な問い——『文藝解体新書』と"ニヒリズムプリズム"の〈虚無〉を読む」 (2026年3月13日)
- スターダストプロモーション「原因は自分にある。」
- ja.wikipedia.org
- x.com
リアルタイムニュースNAVI 編集部
reaitimenews.com
話題のニュースを「なぜ?」の視点で深掘りするニュースメディアです。法律・心理学・経済など専門分野の知識をもとに、報道だけではわからない背景や理由をわかりやすく解説しています。
広告