
| 読了時間:約8分
しょうがの価格が、高知の干ばつと熊本の豪雨の「ダブルパンチ」で過去最高水準に達した。
わさびはさらに深刻だ。
国内の生産量が10年で3分の1減り、海外需要の急増も重なっている。
しょうがとわさびでは高騰の原因が異なり、今後の見通しも真逆だ。
しょうが倍増、わさびはマグロ超え──値札に何が起きているか
しょうがの卸売価格は1キロ2,504円に急騰。本わさびは1キロ5万円でマグロの2.5倍に達し、「脇役が主役を超えた」異常事態が起きている。
しょうがは「100円→200円超え」の衝撃
スーパーでしょうがを手に取り、値札を見て棚に戻す。
そんな経験をした人は少なくないだろう。
日テレNEWSの報道によると、しょうがの市場での取引価格は1キロあたり2,504円(2026年1月時点)に達した。
2024年11月ごろまでは1,500円前後だったから、わずか数か月で1,000円以上も跳ね上がった。
消費者の声
横浜市のスーパーでは、国産しょうがが214円で販売されていた。来店客は「前は100円で買えた物が、いまは200円近くする」と話す。──日テレNEWS(2026年3月3日)
飲食店への打撃も大きい。
しょうが焼き店「食事処 高雅」の津田幸雄店主は「いま1.5倍くらい」と明かす。
3月2日にメニューを値上げしたが、それでも追いつかないという。
わさびの逆転劇──「握っている魚より高い」
しょうがだけではない。
わさびの値上がりはさらに異常だ。
川崎市のすし店「北海寿し」では、本わさびの仕入れ価格が1キロ5万円に達した。
マグロの仕入れが1キロ約2万円だから、脇役が主役の2.5倍という逆転が起きている。
本わさび
1キロ 5万円
マグロ
1キロ 約2万円
店主の後藤治さんは「もう握っている魚より高いような感じ」と苦笑する。
刺し身1切れに使うわさびはわずか5グラムだが、それだけで250円。回転寿司の1皿分に相当する。
FNNの報道によると、わさびの卸売価格は前年同時期に比べて7割近く上昇した。
都内スーパーでも、2025年春に300円ほどだったわさびが現在は680円と2倍以上になっている。
業界40年の証言
スーパー「アキダイ」の秋葉弘道社長はこう語る。
「40年近く業界にいるけど、今シーズンのしょうがの高値は過去にないかな」──FNN(2026年3月3日)
業界40年のベテランが「初めて」と口にする事態。
しょうがもわさびも、かつてない水準に達している。
では、何がここまで価格を押し上げたのか。
しょうがとわさびでは、その背景がまるで異なる。
しょうがは「ダブルパンチ」、わさびは「消えゆく日本の味」
しょうがの高騰は高知の干ばつと熊本の豪雨の「ダブルパンチ」が引き金。わさびは国内生産量が10年で3分の1減った構造問題を抱える。
高知の干ばつ×熊本の豪雨が同時に直撃した
しょうが高騰の直接の引き金は、2つの自然災害だ。
食料新聞によると、しょうが生産量全国1位の高知県が干ばつの影響で半作となった。
収穫量が通常の約半分に落ち込んだということだ。
2024年夏の記録的な高温と少雨が原因で、県内全体で4割近い収量減に見舞われた。
取引価格は前年の2倍、一時は3倍近くに達し、過去最高値を記録している。
熊本の豪雨被害
熊本日日新聞(2025年8月22日)によると、八代市では全農地の9割にあたる約6千ヘクタールが冠水。
JAやつしろは「ショウガそのものの被害額は低く見積もっても1億円はありそうだ」と指摘した。
ここに肥料代や人件費の高騰が重なった。
日テレNEWSによると、高知県のJAは人件費や肥料・農薬代の上昇を高止まりの要因として挙げている。
注目すべきは、1位の高知と2位の熊本が「同じ年に別々の災害で同時に打撃を受けた」点だ。
しかも干ばつと豪雨、真逆の災害が産地トップ2を同時に直撃するのは、まさに最悪のシナリオだった。
なぜ一つの県の被害で全国の価格が急騰するのか
しょうがの価格がここまで跳ね上がる背景には、「産地集中リスク」という構造がある。
しょうがは高知県だけで全国生産量の約4割を占める。
2位の熊本県をあわせれば過半数だ。
つまり、この2県が同時に不作になれば、全国の供給が一気に細る。
農業経済学では、特定の産地に生産が偏る作物ほど、災害時の価格変動が激しくなるとされている。しょうがはまさにその典型だろう。
わさびの問題はもっと根深い──10年で生産量が3分の1減った
わさびの高騰は、天候の問題だけでは説明がつかない。
多くの人は、しょうがと同じように「天候が戻れば価格も戻る」と思っているのではないか。
過去にも猛暑や台風のあとに一時的に野菜が高騰し、翌年には落ち着いた──そんな経験は誰にでもある。
ところがわさびの場合、事情がまるで違う。
わさびの生産量が急減
JETROの報告によると、わさびの国内生産量は2015年の2,213トンから2024年には1,497トンへと減少した。
10年間で約700トン、3分の1が失われた計算だ。
減少の原因は複合的だ。
わさびは冷涼な湧き水がないと育たないため、栽培できる土地が限られる。
温暖化で水温が上がれば生育環境は悪化する。
さらに生産者の高齢化と後継者不足が拍車をかけていると、JETROは指摘する。
そこへ追い打ちをかけたのが、海外からの需要急増だ。
日テレNEWSの取材に対し、静岡県の産地関係者は「輸出が増えたことで国内に出回る分が少なくなった」と答えている。
世界的な日本食ブームで「Wasabi」は海外でも通じる言葉になり、高級レストランでの需要が伸びている。
天候が回復すれば価格も戻る → わさびは「生産量そのものが縮小している構造問題」を抱えている。
しょうがが「一時的な災害による高騰」なのに対し、わさびの事情はまったく別物だ。
では、この高値はいつまで続くのか。
じつはしょうがとわさびでは、その見通しが正反対だ。
しょうがは「やや明るい」が、わさびは「長期戦」
しょうがは少しずつ落ち着く兆しがあるが、わさびは来年度さらに高くなる懸念がある。両者の見通しは真逆だ。
しょうがとわさび、見通しはなぜ真逆なのか
「しょうがもわさびも同じように高くなって、同じように戻るだろう」──そう思っていないだろうか。
しかし両者の見通しは、まったく異なる。
| しょうが | わさび | |
|---|---|---|
| 高騰の主因 | 高知干ばつ+熊本豪雨 | 生産量減少+海外需要増 |
| 問題の性質 | 一時的な天候被害 | 構造的な供給不足 |
| 今後の見通し | やや回復の兆し | 長期高止まり |
FNNの報道によると、アキダイの秋葉社長は「しょうがは少しずつ落ち着き始めている」と話す。
天候が原因の高騰は、翌年の収穫が正常に戻れば解消に向かう。
一方でわさびについては「当分の間、高値が続く」という見通しだ。
わさびはさらに高くなる?
JAふじ伊豆のわさび担当・日吉新さんによると、去年秋ごろからの雨の少なさでわさびの植え付けが遅れており、来年度はさらに高くなる懸念があるという。──日テレNEWS(2026年3月3日)
わさびの価格は、天候が回復しただけでは戻らない。
生産者が減り続ける以上、供給の回復には時間がかかるだろう。
JETROは温暖化の進行で「今後はより状況が厳しくなる」と予測している。
新しい動きと家庭でできること
明るい材料がないわけではない。
JETROによると、植物工場やコンテナ型の栽培モジュールでわさびを育てる取り組みが始まっている。
場所や天候を選ばない栽培方法が広がれば、中長期的に供給は改善に向かうだろう。
家庭で使い分けるなら、チューブわさびの性質を知っておくと役に立つ。
チューブ製品の多くは西洋わさび(ホースラディッシュ)が主原料で、高騰している本わさびとは別の作物だ。
本わさびほどの値上がりは起きにくいため、家庭の薬味としては十分に代替になる。
家庭でできる対策
しょうがは冷凍保存で無駄なく使い切れる。すりおろして製氷皿で凍らせれば小分けで長持ちする。
わさびはチューブ製品(西洋わさび主原料)なら本わさびほどの高騰は受けにくい。乾燥パウダーも手軽な選択肢だ。
まとめ
- しょうがは高知の干ばつ+熊本の豪雨の「ダブルパンチ」で過去最高水準に。やや回復の兆しが見え始めている
- わさびは国内生産量が10年で3分の1減少する構造問題を抱え、長期的な高止まりが見込まれる
- 本わさびの仕入れ価格は1キロ5万円でマグロ(約2万円)の2.5倍に達した
- しょうがは冷凍保存で節約、わさびはチューブ(西洋わさび主原料)で代替するのが家庭でできる対策
よくある質問(FAQ)
Q1. しょうがが高い理由は何ですか?
高知県の干ばつで収穫量が半減し、熊本県の豪雨被害も重なったことが直接の原因です。肥料代や人件費の高騰も追い打ちをかけています。
Q2. わさびが高騰しているのはなぜ?
国内生産量が10年で3分の1減少し、海外の日本食ブームで輸出が増えた結果、国内向けの供給が不足しています。
Q3. しょうがの値段はいつ安くなる?
アキダイの秋葉社長によると少しずつ落ち着き始めていますが、すぐに以前の100円台に戻る見通しは立っていません。
Q4. わさびの高値はいつまで続く?
JAふじ伊豆は来年度さらに高くなる懸念を示しており、構造的な供給不足のため短期的な回復は難しいとみられます。
Q5. チューブわさびも値上がりする?
チューブ製品の多くは西洋わさび(ホースラディッシュ)が主原料で、本わさびとは別の作物のため影響は限定的です。
Q6. 紅生姜やガリの値段にも影響がある?
食料新聞によると漬物用生姜は過去最高値からさらに高値で取引されており、紅生姜やガリへの価格転嫁は避けられない見通しです。
Q7. しょうがの生産量1位はどこ?
高知県が全国生産量の約4割を占め、2位は熊本県です。この2県で過半数を生産しており、同時被災が価格急騰の一因です。
Q8. 本わさびの値段はいくら?
川崎市のすし店では本わさびの仕入れ価格が1キロ5万円に達し、マグロ(1キロ約2万円)の2.5倍になっています。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
最新ニュースをわかりやすく、いち早くお届けします。
📚 参考文献
- 日テレNEWS NNN「しょうが・わさび…高騰のワケ 食卓の名脇役に異変が」(2026年3月3日)
- FNNプライムオンライン「和食の必需品ワサビが高騰 『1~2割』値上げ…しょうがも」(2026年3月3日)
- 食料新聞「国産生姜の高値続く 漬物用は過去最高値からさらに高騰」(2025年11月21日)
- JETRO「『日本独自のスパイス、東洋の高級ハーブ』生鮮わさびを世界へ」(2026年1月8日)
- 熊本日日新聞「熊本・記録的大雨、八代地域の農業直撃」(2025年8月22日)