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金が3万円突破、なぜ?有事買いだけじゃない三つの理由

金が3万円突破、なぜ?有事買いだけじゃない三つの理由

| 読了時間:約8分

金が1グラム3万円を超えた。
イラン攻撃を引き金に1日で1571円跳ね上がったが、高騰の裏には有事買いだけでは説明できない三つの構造がある。

 

 

 

1日で1571円、金3万305円の衝撃──イラン攻撃で何が起きたか

3月2日、金の国内小売価格が1グラム3万305円に達した。
約1ヶ月ぶりの最高値更新だ。

共同通信の報道によると、田中貴金属工業は2日午後、金の店頭販売価格を前週末から1571円引き上げた。

100グラムの金のインゴットを持っている人なら、たった1日で約15万7000円分の含み益が増えた計算になる。


午前と午後で2回、価格が変わった異例の1日

この日の動きは異例だった。
午前9時半に田中貴金属が発表した価格は2万9865円。

産経新聞の報道では、この時点で前週末から1131円の上昇とされている。

ところが午後、市場の急変を受けて価格は再び更新された。
終値は3万305円。
通常は1日1回の価格設定を、追加で改定するほどの値動きだった。


引き金はイラン攻撃、そしてハメネイ師の死亡

きっかけは2月28日にさかのぼる。
三井住友DSアセットマネジメントのレポートによれば、米国とイスラエルがこの日イランへの攻撃を行った。

翌3月1日、イラン国営メディアが最高指導者ハメネイ師の死亡を伝えた。

野村證券の池田雄之輔氏は、攻撃そのものは想定内だったが「体制転覆を意図した動きはサプライズ」と指摘する。

イランは報復として中東各地の米軍基地を攻撃。
エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡ホルムズかいきょう事実上、通過困難な状態に陥った。
投資家はリスク資産から金へ一斉に資金を移した。

 

 

 

「ずっと上がっている」は本当か

金はずっと右肩上がりだと思っている人は多い。
しかし実態は違う。

東京ニュースメディアの報道によると、2月5日に金は1グラム2万6527円まで急落し、一時売買中断措置が取られた。

2月5日

2万6527円

3月2日

3万305円

1ヶ月足らずで3000円以上も値を戻したことになる。
一本調子の上昇ではなく、激しい上下動を繰り返しながらの最高値更新だ。

では、イラン攻撃だけがこの高騰の原因なのか。
裏側を掘り下げると、三つの構造的な要因が浮かび上がる。

 

 

 

「三つの理由」の正体──有事買い・中銀の金爆買い・円安の三重奏

金が3万円を超えた理由は一つではない。
有事買い、中央銀行の金購入、円安の三つが重なり合った結果だ。

イラン攻撃が原因と聞けば「戦争が終われば下がる」と思うだろう。
だが構造を知ると、そう単純ではないことが見えてくる。

理由①:有事の金──戦争リスクが投資マネーを動かす

1つ目はもっとも分かりやすい要因だ。
産経新聞は「米国とイスラエルによるイラン攻撃で地政学ちせいがくリスクが高まり、安全資産としての金の需要が強まった」と報じた。

戦争や大きな危機が起きると、投資家は株のようなリスク資産を手放す。
代わりに買われるのが金だ。

株は企業が潰れればゼロになるが、金そのものの価値はゼロにはならない。
テレ朝NEWSも「リスク回避の動きが強まり、安全資産とされる金が買われた」と市場関係者の見方を伝えている。


 

 

 

理由②:中央銀行の「静かな爆買い」──年634トンの金が市場から消える

2つ目の理由は、ニュースではあまり目立たない。
世界各国の中央銀行が、猛烈な勢いで金を買い集めている。

ピクテ・ジャパンの分析によると、2025年1〜9月の中央銀行による金の購入量は合計634トンに達した。

634トンといってもピンとこないだろう。
東京スカイツリーの鉄骨の総重量が約3万6000トンとされるから、その約1.8%にあたる量の金を、わずか9ヶ月で各国政府が買い上げた計算だ。

なぜ各国は金を買うのか。
背景にあるのはだつドルの流れだ。

2022年にロシアがウクライナに侵攻した際、米国はロシアのドル資産を凍結した。
この一件で「ドルを持ちすぎると、いざというとき凍結される」という危機感が新興国に広がった。

中国やインドをはじめとする国々は、外貨準備がいかじゅんびをドルから金へ移す動きを加速させている。
この買いは戦争が終わっても止まらない。
金の価格を底から支える、息の長い構造要因だ。


 

 

 

理由③:日本だけの「二重高騰」──有事のドル買いが円安を呼ぶ

3つ目は日本特有の事情だ。
産経新聞は「有事のドル買いによって円安ドル高が進み、ドル建ての国際価格を円換算して決まる国内価格が押し上げられた面もある」と報じた。

ここが意外なところだ。
「有事のドル買い」と「有事の金買い」は、一見すると矛盾する。
ドルが買われて強くなるなら、ドル建ての金は割安に見えるはずだからだ。

しかし日本で暮らす人にとっては事情が違う。
ドルが強くなれば、円は弱くなる。円が弱くなれば、円建ての金はさらに高くなる。

つまり国際的な金価格の上昇と、円安による円換算額の膨張が同時に起きる。
日本の金価格はこの二重の力で押し上げられた。

野村総合研究所の木内登英氏によれば、日本は原油輸入の94.0%を中東地域に依存している。
ホルムズ海峡の混乱は原油高と円安を同時に招き、金だけでなく生活コスト全体を押し上げる構造を持つ。

タンスの奥に眠っている金のネックレスや結婚指輪。
あなたの手元にある金にも、この3万円時代は静かに影響を及ぼしている。

三つの理由が重なった今回の金高騰。
では、戦争が終われば価格は元に戻るのだろうか。

 

 

 

「有事の金は短命」の常識は通用するか──専門家が読む今後の金相場

「戦争が落ち着けば金は下がる」──市場にはそんな定説がある。
ところが今回、その常識に疑問を投げかける専門家が出てきた。

2025年6月の「12日間戦争」とは何が違うのか

前例がある。
2025年6月、米軍はイランの3つの核施設を攻撃した。
いわゆる「12日間戦争」だ。

このときも金価格は急騰したが、停戦後すぐに落ち着きを取り戻した。
だが今回は前回と根本的に異なる。

  2025年6月 2026年2-3月
攻撃対象 核施設3ヶ所に限定 広範囲、政権中枢を狙う
指導者の死亡 なし ハメネイ師が死亡
海峡への影響 なし 事実上の航行停止
米国の意図 核開発の牽制 体制転覆を示唆

野村證券の池田氏は「体制転覆を意図した動きはサプライズ」と述べた。
前回とは規模も狙いも根本的に異なる。


 

 

 

豊島逸夫氏「今回は例外になりそうだ」

金市場の第一人者として知られる豊島逸夫氏は、三菱マテリアルの解説記事でこう分析した。

「地政学的要因は短命に終わることが多いが、今回ばかりは長期化リスクもあり、例外となりそうだ

豊島氏の見立てでは、金の国際価格は5000ドルが下値になるという。
「急騰」ではなく「底値の切り上げ」が起きているという指摘だ。

下がるとしても以前ほど安くはならない。
中央銀行が売らずに買い続ける限り、市場に出回る金が減り、下落幅は限られるという構造がある。

一方で逆風にも触れている。
FRB高官たちが利下げに消極的になり始めた」とも述べ、金利が高いままだと金にとっては重荷になるとも警告した。


「もう織り込み済み」との慎重論もある

すべての専門家が強気なわけではない。

ロイターの報道で、GFMアセット・マネジメントのデニソン氏は「金相場はすでに地政学的な不確実性を最大限に織り込んでいる」と語った。

つまり、今の価格にはすでに戦争の影響が含まれていて、ここからさらに大きく上がるとは限らないという立場だ。

⚠️ ここからは推測を含みます

NRI木内氏のベースシナリオでは原油価格が1バレル87ドルまで上昇し、日本の実質GDPを0.18%押し下げ、物価を0.31%押し上げるとされている。
悲観シナリオでは原油140ドル、GDP0.65%減、物価1.14%上昇というスタグフレーション景気後退と物価上昇の同時進行的な状況も想定される。
金の価格もこうしたマクロ環境に左右されるだろう。

はっきりしているのは、戦争が終われば自動的に下がるそう単純な話ではないということだ。

中央銀行の金購入という構造的な買いが続く限り、金の底値は以前より高い水準に留まり続ける。
有事の金は短命──その常識が覆りつつある。

 

 

 

まとめ

  • 金は3月2日に1グラム3万305円を記録し、1日で1571円急騰した
  • 高騰の背景には①イラン攻撃による有事買い ②各国中央銀行の金購入(脱ドル) ③円安による国内価格の二重押し上げ、の三つがある
  • 「有事の金は短命」が定説だが、構造的に底値が切り上がっており、例外になる可能性を複数の専門家が指摘している
  • 専門家の見方は楽観(5000ドル下値、年末6300ドル予測)と慎重(織り込み済み)に二分されている

金の値動きが気になる人は、国際価格だけでなく為替の動き、そして各国中央銀行の購入ペースにも目を配っておきたい。
三つの歯車がどう噛み合うかで、次の景色が変わる。

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜ金価格が高騰しているのですか?

イラン攻撃による有事買い、各国中央銀行の金購入(脱ドル化)、円安による国内価格の二重押し上げの三つが重なっているためです。

Q2. 金価格の最高値はいくらですか?

2026年3月2日に田中貴金属工業の店頭小売価格が1グラム3万305円を記録し、過去最高値を更新しました。

Q3. 有事の金は戦争が終われば下がりますか?

金の第一人者・豊島逸夫氏は「今回は例外」と分析。中央銀行の購入が底値を構造的に押し上げており、単純に元に戻るとは限りません。

Q4. 中央銀行はなぜ金を買っているのですか?

2022年のロシア資産凍結をきっかけに、ドルに依存しすぎるリスクを避けるため、新興国を中心に外貨準備を金に移す動きが広がっています。

Q5. 円安だと金価格はどうなりますか?

金は国際市場でドル建てのため、円安が進むと同じドル価格でも円に換算した国内価格は高くなります。

Q6. 金は今から買っても遅いですか?

専門家の見方は分かれています。豊島氏は「5000ドルが下値」と強気ですが、GFMアセットのデニソン氏は「すでに織り込み済み」と慎重です。

Q7. 1日で1571円の値上がりは異常ですか?

田中貴金属は通常1日1回の価格設定ですが、この日は急変動で午前と午後に2回更新しており、極めて異例の値動きでした。

Q8. 2026年末の金価格はいくらと予測されていますか?

JPモルガンは2026年末の金価格を1オンス6300ドルと予測しています。豊島逸夫氏は5000ドルが下値になるとの見方を示しています。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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