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ガンホー元幹部逮捕、「4000万円背任」は8年3.5億円不正の一断面だった

| 読了時間:約5分

月256万円を8年間——自分の口座に振り込ませ続けた元幹部が、ついに逮捕された。

スマートフォンゲーム「パズル&ドラゴンズ」を運営する ガンホー・オンライン・エンターテイメント で、元システム本部長・ 菊池貴則容疑者 (48)が背任の疑いで逮捕された。

ニュースのタイトルに出てくる「4000万円」は逮捕容疑となった2022年分にすぎない。

社内調査が明らかにした実際の被害は、その規模をはるかに上回っていた。

ガンホー元幹部逮捕、「4000万円背任」は8年3.5億円不正の一断面だった

クラウドソーシングで「自分に発注」という手口

架空の不具合チェック業務——上司が自分で作り出し、自分で受け取った。

菊池容疑者 はネット上で仕事を発注したり受けたりできる「クラウドソーシング」のサービスに、個人事業主を装った 偽名のアカウント を開設したとされる。

そのアカウント宛てに、ゲームの製品の不具合を調べる架空の業務を発注した。

委託費という名目で、 時事通信 によると自身名義の口座に計 約4000万円 が振り込まれた。

期間は 2022年1月から12月 の1年間で、振り込みは 12回 にのぼる。

ここで目を引くのは、手口のシンプルさだ。

「クラウドソーシング」は誰でも使える一般的なサービスだ。

それを偽名で登録し、 自分が発注者かつ受注者になる ——この二重の偽装が、見た目には「正規の業務委託」として機能していたのではないかと考えられる。

1年間で 12回 、月平均 333万円 を抜き取った計算になる。

では、これより前の年はどうだったのか。

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▶ タップで再生(音声OFF)
億単位の不正か 大手ゲーム会社「ガンホー」元幹部の男を背任容疑で逮捕 自らに架空業務を発注し自分名義の口座に送金か 警視庁丸の内署|TBS NEWS DIG

逮捕容疑は「氷山の一角」だった

約4000万円 ——しかし社内調査が明らかにした本当の被害総額は、 その約8倍 だった。

共同通信 によると、ガンホーの社内調査では菊池容疑者が同様の手口を繰り返し、自己受注分だけで合計 約2億4600万円 を不正に取得していたことが判明している。

さらに インサイド によると、別の取引先に対しても実態のない発注を行い、 約1億円 を外部に流出させていたことも確認されている。

約4,000 万円
逮捕容疑
2022年分のみ
約2.46 億円
自己受注分
8年間の累計
約3.46 億円
被害総額
第三者流出分含む

不正は 2017年 (平成29年)頃から始まり、 2025年 まで続いたとみられる。

期間を約 96ヶ月 で割ると、 月平均256万円を自口座に振り込ませ続けていた計算 になる。

タイトルの「4000万円」は逮捕容疑となった2022年1年分にすぎず、全体の被害のほんの一部にすぎないのではないかという見方が広がっている。

📊 数値の再解釈

自己受注分 約2億4600万円 ÷ 96ヶ月 (2017〜2025年)= 月平均 約256万円

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なぜ逮捕容疑が2022年分だけになったのか。

刑事捜査では、 証拠が固まった特定の期間を切り出して逮捕するのが実務上の慣行 だ。

ガンホーも警視庁も「余罪があるとみて捜査を継続する」としており、今後の追加逮捕や追加の訴追もあり得るだろう。

タイトルの数字と実態の差が生まれた理由は、「1回あたりの金額を承認がおりやすい水準に抑えることで個々の取引が目立たなくなっていた」という設計にもある——8年間バレなかった背景は、金額の分散だけでなく、会社の仕組み自体にもあった。

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タイトルの数字と実態の差を生んだ構造は、もう一つある。

では、会社の仕組みのどこに穴があったのか。

部下に書かせ、自分で判を押す仕組み

発注する人間と、その発注を承認する人間が同一—— これが8年間を可能にした構造 だった。

「チェックがあれば不正は防げる」と思っているとしたら、それは大きな思い込みだ。

チェックする立場の人間が不正の当事者なら、その仕組みは形だけになる。

時事通信 によると、菊池容疑者は 支払いの決裁権限 (支払いを最終承認する権限)を持ち、部下に稟議書(りんぎしょ=会社内で上司の承認を得るための申請書)を作成させて自身が承認していた。

発注・申請・最終承認のすべてを 1人が支配できる状態 だったとすれば、外部からは「正規の発注」と区別がつかなかっただろう。

❌ 今回の構造
発注→承認→支払いを1人が支配
✅ 本来の仕組み
3段階を別々の人間が担う

これは「担当者ならやりがちなミス」ではない。

組織の内部統制(会社内の不正チェックの仕組み)は、一般的に「発注・承認・支払い」の3段階を別々の人間が担うことで機能する。

この「三権分立」が1人に集中したとき、仕組みは穴だらけになる。
発注承認の権限を持つ立場にある人間にとって、これは他人事ではないかもしれない。

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では、この行為はなぜ「横領」ではなく「背任」として立件されたのか。

「横領」ではなく「背任」が適用される理由

会社のお金を自分のものにした——のに、なぜ「横領」ではないのか。

横領と背任は似ているようで、法律上は別の犯罪だ。

横領は「自分がすでに預かっている他人のお金や物を、勝手に自分のものにする」行為を指す。

これに対して背任は、「会社のために仕事をする立場の人間が、その任務を裏切って会社に損害を与える」行為だ。

デイライト法律事務所 の解説によると、 刑法第247条 では、背任罪の刑罰を「 5年 以下の拘禁刑または 50万円 以下の罰金」と定めている。

今回の菊池容疑者のケースは、架空の発注という「権限の悪用」で会社の財産管理に反した形なので、直接お金を横取りした横領とは構造が異なるとして背任が適用されたとみられる。


背任と横領——何が違うのか

横領は「すでに手元にある他人の財物を自分のものにする」犯罪。

背任は「任された権限を悪用して会社に損害を与える」犯罪。

今回は架空の発注という「一手間」を挟んだ権限の悪用にあたるため、背任が適用された。

発注承認の権限を持つ立場の人間が、発注者にも受注者にもなれる環境にいるなら、理論上は同じ手口が成立しうる。


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では、 ガンホー 自身はこの問題にどう対応してきたのか。

ガンホーが9ヶ月間、告訴を公表しなかった理由

「捜査機関による捜査活動への支障を考慮し、公表を差し控えておりました」——上場企業が刑事告訴を 9ヶ月間 、非開示にしていた。

スポニチアネックス によると、ガンホーの対応はこの流れで動いた。

2017年頃
不正開始

クラウドソーシングを利用した架空発注が始まったとみられる

2025年7月
懲戒解雇

社内調査で発覚。

菊池容疑者を懲戒解雇

2025年8月
被害公表

約3億4600万円の資金流出への関与を公表

2025年10月3日
告訴受理

刑事告訴が受理。

ただし捜査への支障を理由に非開示

2026年7月8日
逮捕

警視庁丸の内署が背任容疑で逮捕。

告訴から約9ヶ月後

告訴受理から逮捕まで約 9ヶ月 かかっている。

ガンホーはその間、告訴という事実を株主・投資家に開示しなかった。

理由は「捜査活動への支障を考慮した」というのが会社側の説明だ。

再発防止策として、ガンホーは以下の 3点 を掲げている。


  1. コンプライアンス(法令・規則の順守)教育・研修の拡充
  2. 外部業者との取引の発注・支払い承認プロセスにおける内部統制の改善
  3. 内部監査によるモニタリングの強化

スポニチアネックス によると、ガンホーは「事態の全容解明に向け、捜査機関による捜査活動に全面的に協力してまいります」とコメントしている。

警視庁は 余罪があるとみて捜査を継続 しており、事件の全容はまだ明らかになっていない。

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発注を承認する権限を持つ立場が、発注者にも受注者にもなれる——その「穴」を塞ぐルールが組織にあるかどうか、今この事件は静かに問いかけている。

まとめ

  • 逮捕容疑は2022年分の「約4000万円」だが、社内調査では自己受注分だけで約2億4600万円、別の取引先への流出分も含めると計約3億4600万円の資金流出が確認されている
  • 手口の核心は「発注・稟議作成・最終承認」のすべてを1人が握っていた構造で、8年間発覚しなかった理由は権限集中にある
  • 「横領」と「背任」は似て非なる犯罪で、今回は架空発注という「権限の悪用」だったため背任が適用された
  • ガンホーは告訴受理(2025年10月)から逮捕(2026年7月)まで約9ヶ月間、その事実を非開示にしていた
  • 警視庁は余罪があるとみて捜査を継続しており、全体の被害規模はさらに拡大する可能性がある

よくある質問(FAQ)

Q1. ガンホー元幹部はどんな手口でお金を抜いたの?

クラウドソーシングのサービスに偽名でアカウントを作り、自分宛てに架空の業務を発注。

委託費名目で自分の口座にお金を振り込ませていた。

Q2. 逮捕容疑の4000万円と3億4600万円はなぜ金額が違うの?

4000万円は逮捕容疑となった2022年1年分の金額。
3億4600万円は社内調査が明らかにした2017〜2025年の累計被害総額で、逮捕容疑はその一部にすぎない。

Q3. 背任罪と横領罪は何が違うの?

横領は預かっている他人の財物を自分のものにする犯罪。

背任は会社のために働く立場の人間が任務を裏切って損害を与える犯罪。

刑法第247条が定める背任罪の刑罰は5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。

Q4. なぜ8年間も不正が発覚しなかったの?

菊池容疑者が発注・稟議書の作成指示・最終承認のすべてを1人でコントロールしていたとされる。

チェックする側が不正の当事者だと、承認の仕組みが形だけになる。

Q5. ガンホーはいつ問題に気づいて、どう対応したの?

社内調査で発覚し、2025年7月に懲戒解雇。
8月に被害を公表、10月に刑事告訴が受理された。

告訴受理から2026年7月の逮捕まで約9ヶ月間、捜査活動への支障を理由に告訴の事実は非開示にされていた。

Q6. パズドラのゲームサービスに影響はあるの?

現時点でゲームサービスの停止や変更に関する公式発表はない。

ガンホーは捜査機関に全面協力するとしており、今後の捜査の進展次第では追加の発表もあり得るだろう。

Q7. 警視庁は今後もさらに捜査するの?

警視庁は余罪があるとみて捜査を継続している。

今回の逮捕は2022年分のみが容疑となっており、2017年以降の全期間についての立件が今後進む可能性がある。


📚 参考文献

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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