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調べられていた最中も、止まらなかった。
原子力規制庁が中部電力に調査を始めたのは 2025年5月 のことだ。
それでも中部電力は、 225件 のうち 69件 ——ほぼ 3件に1件 ——のデータを、その後も書き換え続けた。
規制庁が「任意の面談」をやめて「強制検査」に切り替えてから初めて、書き換えは止まった。
その事実が 2026年7月1日 に明らかになり、 電気事業連合会 (大手電力会社が加盟する業界団体)の会長は「原子力事業への信頼を失墜させた」と頭を下げた。
「また電力会社が不正した」という話ではない。
調べられながら止まれなかったのには、 2018年 以降に不正の手口が「より見抜かれにくい形に進化していた」ことと、深くつながっているのではないかという見方がある。
この記事でわかること
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規制当局に調べられながらも止まらなかった
225件 中 69件 ——調査が始まってからも、 中部電力 はデータを書き換え続けていた。
経緯をたどると、まず 2025年2月 に外部からの通報が規制委員会に届いた。
これを受けて規制庁は同年 5月 から中部電力と面談を重ね、地震データが正しいかどうかを調査し始めた。
ところが、その面談調査が進んでいる間にも、中部電力は 225件 の地震データのうち 69件 を書き換えていたことが、 日本経済新聞 の報道で明らかになった。
書き換えが止まったのは、規制庁が 2026年1月 に強制力を持つ立ち入り検査に移行したあとのことだ。
原子力施設安全情報申告制度に基づく外部通報が規制委員会に届く
規制庁が中部電力との面談調査を開始——この後も69件の書き換えが続く
中部電力が社内調査でも不正行為を確認したと規制庁に説明
中部電力が不正を公式発表し、第三者委員会の設置を決定
規制委員会が浜岡原発の再稼働審査を白紙にすると正式決定。
強制検査以降は書き換えなし
電事連会長・森望氏が「原子力事業への信頼を失墜させた」と再び頭を下げる
任意の調査では抑止力にならなかった 、という構造がここにある。
規制庁から「おかしいのでは」と問われながら、中部電力は内部で辻褄(つじつま)を合わせ続けた。
NHK によると、規制委員の一人は「辻つまあわせで、頭を抱えるしかない」と語り、別の委員は「 上層部が関与した可能性もある 」と指摘した。
同社内でどのような指示によって書き換えが続いたかは、現時点では判明していない。
規制庁が「追及を逃れようとしていた可能性がある」とした背景には、こうした構造があった。
強制検査が始まって以降、書き換えは確認されていない。
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では、そもそも中部電力はどんな方法でデータを操作していたのか。
その「手口」を知ると、問題の深刻さが別の次元で見えてくる。
地震データは2018年以降、逆算で「作られた」
「 都合のいいデータを選んだ 」ではない—— 2018年 頃からは、答えを先に決めてデータを「丸ごと作り直す」手口に変わっていた。
浜岡原発 の審査では、想定される最大の地震の揺れ( 基準地震動 =原発が耐えられるように設計された「想定最大の揺れ」)を計算するために「 代表波 」と呼ばれる1つの波形データを選ぶ必要がある。
中部電力は規制委員会に対し、「 20組 の地震データを計算し、その平均に最も近い波を代表波として選ぶ」と説明していた。
しかし実態はまったく違った。
多数のセットを作り、その中から都合のいい1組を選ぶ。
説明と異なる恣意的な選び方
「使いたい代表波」を先に決め、その波が平均に近く見えるよう残り19組を逆算で生成。
完全な捏造
原子力資料情報室(NPO法人) がまとめた声明によれば、規制委員会の 山岡耕春委員 はこれを「研究不正にたとえると 捏造・改ざんにあたる 」と批判している。
審査に提出する書類の数字が、最初から「こう見せたい」という結論に向けて逆算で整えられていた、ということだ。
注目すべきは、この手口が「進化した」時期だ。
2018年 頃といえば、内陸の断層が審査の対象になり、審査が特に厳しくなっていた時期にあたると、同声明は指摘している。
審査が厳しくなるほど不正が精巧になる という構造は、外部からの規律の強化が内部の不正を抑える力を上回れなかった組織的な失敗の典型例ともいえるだろう。
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「調べる側が本気で来るなら、もっとバレにくくやろう」という動きが組織の中で起きやすくなるメカニズムは、組織心理学でも確認されている現象だ。
任意の面談では止まらず、強制検査で止まった——という事実は、このメカニズムと一致している。
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ではなぜ、この原発でそこまで審査を通したかったのか。
答えは、浜岡原発が立っている場所にある。
南海トラフ震源域だから「揺れを小さく見せた」
最も大きな地震が来ると予想される場所にある原発が、逆に「 揺れが小さい 」と見せようとしていた。
南海トラフ地震の想定震源域内にある浜岡原発 は、 2011年 の東日本大震災後に政府の要請を受けて全機停止した。
一般的には「危険な場所にある原発ほど安全に作られているはず」と思いたくなる。
だが現実は逆だった。
⚠ 危険な立地だからこそ耐震審査は厳しい。
「揺れの想定を大きく見積もれば審査を通りにくくなる」——だから中部電力は「 揺れが小さく見える 」方向にデータを操作した、という構造になっていた。
最も地震リスクの高い場所にある原発で、最も地震に関わるデータが操作されていた逆説だ。
中部電力の公式発表 でも「審査に重大な影響を及ぼすおそれがあるとともに、地域の皆さまをはじめとするステークホルダーの皆さまからの当社原子力事業に対する信頼を失墜させ、同事業の根幹を揺るがしかねない事案」と認めている。
中部電力にとって再稼働は「悲願」に近い状況だったとされる。
2011年 以降の全機停止が続く間、火力発電への依存による燃料費の増加や、 1・2号機 の廃炉コストが重くのしかかっていた。
その焦りが、審査を通すためのデータ操作につながった可能性があるのではないか。
最も地震リスクの高い場所にある原発で、最も地震に関わるデータが操作されていた。
この逆説が、今回の問題の核心にある。
基準地震動とは
原発が耐えられるように設計された「想定される最大の揺れ」のこと。
この数値が小さいほど耐震設計のハードルが下がる。
浜岡原発は南海トラフ震源域内にあるため、他の原発より大きな揺れを想定しなければならず、審査のハードルが高い。
今回の不正は、その数値を「小さく見せる」方向にデータを選んだり逆算で作り直したりしたことで発覚した。
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「1社の問題」とも言えるこの不正に、なぜ他の電力会社のトップが謝罪するのか。
電事連会長の言葉には、業界全体への問いが込められている。
電事連会長が謝った理由は中部電力だけではない
「 原子力事業への信頼を失墜させた 」——この言葉を発したのは、中部電力の社長ではなく、大手電力会社の業界団体トップだ。
電気事業連合会 は、大手電力会社が加盟する業界団体だ。
NHK によると、関西電力社長の 森望氏 は 2026年2月 に会長に就任した際、浜岡問題について「原子力事業の根幹を揺るがしかねない重大な事案だ」と陳謝した。
そして 7月17日 、再び「原子力事業への信頼を失墜させた」と頭を下げた。
就任からわずか 半年 で、同じ問題について 2度 、公の場で謝罪したことになる。
これは「礼儀として謝った」で片付けられる話ではないだろう。
業界団体のトップが1社の不正について繰り返し謝罪するとき 、その背景には「同じことが自社でも起きていないか」という目が他社にも向けられているという事情があるのではないか。
規制委員会は今回の問題発覚後、他の電力会社にも注意喚起を行っている。
「浜岡だけの問題」ではなく、審査そのものへの信頼を業界全体が問い直す局面になっているということだ。
電事連会長の謝罪が示すのは、 中部電力1社への批判 ではなく、 原発業界全体の「自主規律への信頼」 が問われているという現実だ。
任意の調査で不正が止まらなかったという事実は、電力会社が自ら規律を守れるかどうかを、業界全体に問いかけている。
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処分の行方はどうなるのか。
規制委員会が「夏ごろ」と明言した決定の中身が、浜岡原発の命運を決める。
夏ごろ決まる処分が浜岡原発の命運を決める
設置許可の取り消し—— 廃炉の強制に相当する可能性がある最上位の処分 が、選択肢として示されている。
日本経済新聞 によると、 原子力規制委員会 が提示した処分の選択肢は 3つ ある。
「審査不合格」「設置許可の取り消し」「保安規定の変更命令」だ。
このうち設置許可の取り消しは、原発を保有するための法的な根拠そのものを失わせる処分で、事実上の廃炉強制に相当する可能性がある。
ただし具体的な法的帰結は規制委の最終判断次第であり、現時点では確定していないのではないか。
規制委はすでに中部電力本店に 7回 の立ち入り検査を行っており、第三者委員会の報告書も踏まえて夏ごろに処分を決める方針だ。
NHK の報道によると、住民側はすでに動き始めた。
浜岡原発の 3号機から5号機 の運転差し止めを求めている住民側の弁護団が、規制庁の調査後もデータ操作が続いていたという新事実を受け、裁判での弁論再開を申し立てた。
ℹ 静岡県の 牧之原市 など地元自治体も、データ不正を「 県民の信頼を損なう重大な事案 」として、原因の究明と住民への丁寧な説明を中部電力に求めている。
浜岡原発には現在も使用済み核燃料が保管されており、再稼働の是非とは別に、 安全管理への問いは処分後も続く 。
南海トラフ震源域に暮らす人たちにとって、浜岡原発には現在も使用済み核燃料が保管されている。
再稼働の是非という話の前に、「いまある核燃料は安全に管理されているのか」という問いは、処分がどう決まろうと消えることはない。
夏の決定は、その問いへの答えの一部を形にするものになるはずだ。
任意の調査では止まらず、強制検査で止まった——この一事実が、「信頼」というものが宣言でなく仕組みによってしか担保されないことを示している。
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まとめ
- 規制庁が調査を始めた2025年5月以降も、中部電力は225件中69件のデータを書き換え続けた。止まったのは強制検査に切り替わってからだ
- 2018年以降、不正の手口は「都合のいいデータを選ぶ」から「答えを先に決めて残り19組のデータを逆算で生成する」という完全な捏造に変わっていた
- 南海トラフ震源域という最も厳しい立地条件にある原発が、地震の揺れを「小さく見せる」方向にデータを操作していた——立地の厳しさが不正の動機に直結した逆説だ
- 電事連会長は2026年2月と7月の2度にわたって公開謝罪している。これは「1社の問題」でなく業界全体の信頼基盤が問われていることの表れだろう
- 処分の選択肢には「設置許可の取り消し」が含まれており、規制委は夏ごろに決定を下す方針だ
よくある質問(FAQ)
Q1. 浜岡原発のデータ不正とはどんな内容?
中部電力が再稼働審査で使う地震の揺れの想定(基準地震動)を決める際、規制委員会に説明した方法とは違う手口でデータを選んだり作り直したりしていた問題です。
Q2. なぜ規制庁の調査が始まってからもデータを書き換え続けたの?
社内でどのような指示があったかは現時点では判明していません。
規制庁の任意の面談調査では抑止力にならず、強制検査に切り替わって初めて書き換えが止まったことが明らかになっています。
Q3. 浜岡原発の再稼働審査はこれからどうなる?
2026年1月に審査は白紙に戻されました。
規制委員会は夏ごろに処分を決める方針で、審査不合格・設置許可の取り消し・保安規定の変更命令という3つの選択肢が示されています。
Q4. 電事連の会長がなぜ中部電力の問題で謝罪したの?
電気事業連合会は大手電力会社が加盟する業界団体です。
1社の不正が業界全体の信頼に関わるとして、会長の森望氏が2026年2月の就任時と7月の2度にわたって公開で謝罪しました。
Q5. 浜岡原発と南海トラフ地震の関係は?
浜岡原発は南海トラフ地震の想定震源域内にあり、2011年に政府の要請で全機停止しました。
耐震審査が特に厳しい場所であるにもかかわらず、地震の揺れを小さく見せる方向にデータが操作されていました。
Q6. 設置許可の取り消しになると廃炉になるの?
設置許可の取り消しは原発を保有するための法的な根拠を失わせる処分で、事実上の廃炉強制に相当する可能性があります。
ただし具体的な帰結は規制委員会の最終判断次第で、現時点では確定していません。
Q7. 他の電力会社でも同じような不正はあるの?
現時点で他社の同様の不正は確認されていません。
ただし規制委員会は今回の問題発覚後、他の電力会社にも注意喚起を行っています。
📚 参考文献
- NHK「浜岡原発データ不正問題 中部電力が規制委指摘後もデータ操作」 (2026年7月1日)
- 日本経済新聞「中部電力、規制庁の調査開始後も地震データ改ざん 浜岡原発」 (2026年7月1日)
- 中部電力「浜岡原子力発電所の新規制基準適合性審査における基準地震動策定に係る不適切事案について」 (2026年1月5日)
- 原子力資料情報室(CNIC)「浜岡原発の基準地震動策定でデータ捏造 徹底した真相解明と、過去の審査の全面的な見直しを求める」 (2026年1月8日)
- 朝日新聞(Yahoo!ニュース転載)「浜岡原発再稼働の審査白紙に 規制委『データの捏造、極めて深刻』」 (2026年1月7日)
- NHK「電気事業連合会 新会長に関西電力の森望社長が就任」 (2026年2月20日)
- NHK「浜岡原発運転差し止め訴訟 住民側の弁護団が弁論再開申し立て」 (2026年7月6日)
- NHK「中部電力 浜岡原発めぐる不正 御前崎市議会特別委で陳謝」 (2026年7月9日)
- NHK「浜岡原発データ不正問題 市議会で審査での防止対策を求める声」 (2026年7月16日)
- 日本経済新聞「浜岡原発の再稼働、審査白紙撤回 規制委 データ不正で中部電立ち入りへ」 (2026年1月14日)
- www3.nhk.or.jp
- tokyo-kei.co.jp
- x.com
- x.com
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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