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広島・里親が1歳里子を暴行「しつけ」主張はなぜ通らないのか

広島・府中市の里親暴行事件アイキャッチ:親になる準備で、なぜ暴行を?

| 読了時間:約8分

里親が1歳の里子を足蹴りにし、検察は拘禁刑1年2か月を求刑した。
「この子の本当の親になる」準備期間のはずだった家庭で、何が起きていたのか。
事件の全容から判決の見通しまでを整理する。

 

 

 

広島・府中市の里親暴行事件 求刑は拘禁刑1年2か月

2026年2月24日、広島地裁福山支部で裁判が開かれた。
検察は里子への日常的な暴行を認定し、拘禁刑1年2か月を求刑している。

📌 報道による事件概要

RCC中国放送の報道によると、暴行の罪に問われているのは無職の工藤寿悦被告(31)
被告は特別養子縁組の前準備として同居していた当時1歳の男の子に対し、顔を足蹴りにし踏みつけるなどの暴行を加えたとされる。

特別養子縁組とは、実の親との親子関係を法的に解消し、養親と新たな親子関係を結ぶ制度だ。
つまり被告は「この子の実の親になる」ための試用期間にいた。

その期間に暴行を繰り返していた。
広島ホームテレビの報道では、被告は男児の顔を殴り、ベビーサークルのケージに叩きつけていたと伝えられている。

夫だけではない――妻も逮捕されていた

この事件で見落とされがちな事実がある。
夫婦ともに逮捕されていた点だ。

⚠ 夫婦での逮捕

共同通信(琉球新報配信)によると、2025年10月29日、広島県警府中署は被告と妻を暴行容疑で逮捕した。
妻は前日の9月11日に男児の頭をタオルで叩き、下半身を踏みつけた疑いが持たれている。

 

 

 

逮捕から求刑までの経緯

事件は複数の段階を経て裁判に至った。

① 2025年9月11〜12日:夫婦が1歳男児に暴行(起訴事実)

② 2025年10月29日:広島県警が夫婦を逮捕

③ 2025年12月23日:初公判。被告は起訴内容を認める

④ 2026年2月3日:追起訴された3件の暴行罪も認める(47NEWS/中国新聞

⑤ 2026年2月24日:検察が拘禁刑1年2か月を求刑し結審

⑥ 2026年3月13日:判決予定

拘禁刑こうきんけいとは、2025年の刑法改正で懲役刑と禁錮刑を統合した新しい刑罰だ。
刑務所に収容されるが、作業の義務は裁判所の判断で決まる。

追起訴ついきそが3件あった点に注目したい。
最初の起訴分に加え、さらに3件の暴行が認定されている。

検察が「日常的に多数回」と表現したのはこのためだろう。
被告は「しつけだと思っている」と法廷で主張した。検察が「しつけと呼べるものではない」と断じたその中身を次で見ていく。


 

 

 

「しつけだと思っている」――被告の主張と検察の論告

被告は法廷で暴行の意図を否定した。
広島ホームテレビの報道によると、工藤被告は「しつけだと思っている」と述べている。

虐待する人間は自分の行為を「悪い」と分かっている実際にはしつけと虐待の境界を認識できていない加害者は珍しくない
この事件はその典型だ。

検察は「極めて悪質」と断じた

HTV日テレNEWSの報道によると、検察は「生活の不安や育児・家事のストレスのはけ口として日常的に暴行を加えた極めて悪質な事案」と指摘した。
さらに「しつけと呼べるものではない」と明言している。

💡 検察の判断

1歳の子どもの顔を足蹴りにし、ケージに叩きつける行為は、どんな文脈でもしつけではない。
検察の論告はこの点を正面から否定した。

2020年4月に施行された改正児童虐待防止法は、親権者によるしつけ名目の体罰を全面禁止している。
法律上、身体的な暴力は「しつけの範囲」に含まれない。里親であっても同じだ。

 

 

 

うつ病と里親――弁護側の主張

一方、弁護側は別の角度から減刑を求めた。

RCC中国放送の報道によると、工藤被告は4年ほど前からうつ病を患っていた。
弁護側は「精神的に不安定だった」「前科前歴もない」として執行猶予付きの判決を求めている。

⚠️ ここからは推測です

うつ病を抱えながら里親として子どもを迎えた経緯には疑問が残る。
精神疾患を理由に里親認定を拒否する明確な基準は現行制度にないとされており、審査の段階でこの点がどう評価されたのかは明らかになっていない。

事実に戻ると、弁護側の主張はあくまで「情状」であり、暴行そのものの違法性を争ってはいない。
被告自身も起訴内容をすべて認めている。

被告がうつ病を抱えながら里親になっていた事実は、制度のチェック体制そのものに疑問を投げかける。


 

 

 

養育わずか3か月で虐待――里親制度の監視はなぜ機能しなかったのか

養育を始めて3か月余りで虐待が発生していた。
中国新聞が「広島県など異変に気付かず」と報じたこの事実は、制度の根幹を揺るがす。

里親制度には研修、家庭訪問、定期的な見守りといった安全網が用意されている。
子どもを守るために何重もの仕組みがある――はずだった。

ところが広島ホームテレビの報道によると、県が虐待の通告を受けたのは2025年9月12日。
「顔にあざがある」という内容だった。県の聞き取りに対し、夫婦は虐待を否定していた。

「虐待を測る基準がない」現場の声

この問題は広島に限った話ではない。

📎 横浜市の関係者証言

産経新聞の報道では、2024年に横浜で起きた里親暴行事件の取材で、横浜市こどもの権利擁護課幹部がこう証言している。

虐待しないかどうかを測る基準というのは正直ない
「(個人の)資質までは見抜けないところがある」

里親の登録数は増加傾向にある。
横浜市では2019年度の196組から2022年度には246組に増えた。

国は家庭養育を推進し、里親委託率の向上を目標に掲げている。
だが、量を増やすための政策が、質の管理を追い越しているのではないか。この事件は、制度の拡大と監視体制のギャップを浮き彫りにしている。

 

 

 

判決の見通し――横浜の類似事件との比較

判決は3月13日に言い渡される。
量刑の参考になるのが、2024年に横浜地裁で判決が出た里親暴行事件だ。

項目 広島・府中市(本件) 横浜(2024年判決)
被害者 1歳男児 2歳女児
暴行態様 足蹴り・踏みつけ・ケージに叩きつけ 顔をたたく・口や鼻をふさぐ
追起訴 あり(3件) なし
被告の主張 「しつけだと思っている」 「乱暴にやりすぎた」
求刑 拘禁刑1年2か月 懲役1年
判決 3月13日予定 懲役1年・執行猶予4年

横浜事件では執行猶予が付いた。
被告が謝罪と反省の言葉を述べたことが考慮されている。

⚠️ ここからは推測です

本件は横浜事件より悪質性が高いとみられる。
追起訴が3件あること、検察が「日常的に多数回」と認定していること、被告が法廷で「しつけ」と主張し反省の度合いが問われうることを考えると、執行猶予なしの実刑判決が出ても不思議ではない。
ただし弁護側はうつ病と前科なしを主張しており、判決は裁判所の総合判断に委ねられる。

事実に戻ると、広島県は有識者を交えた検証を行い、再発防止策を検討する予定だ。
判決の行方とともに、制度の見直しがどこまで進むかが問われている。


まとめ

  • 広島地裁福山支部で里親の工藤寿悦被告(31)に拘禁刑1年2か月が求刑された
  • 特別養子縁組の前準備として預かった1歳男児への日常的暴行が認定されている
  • 被告は「しつけだと思っている」と主張。検察は「しつけと呼べるものではない」と断じた
  • 養育開始わずか3か月余りで虐待が発生し、県は異変に気付けなかった
  • 判決は2026年3月13日。横浜の類似事件では執行猶予だったが、本件はより悪質性が高い

虐待が疑われる場面を目にしたら、児童相談所全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」に連絡できる。
確証がなくても通報して構わない。「迷ったら電話」が子どもを守る第一歩になる。

 

 

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 広島の里親暴行事件で求刑された刑はどのくらいですか?

検察は拘禁刑1年2か月を求刑しました。判決は2026年3月13日に言い渡される予定です。

Q2. 拘禁刑とは何ですか?

2025年の刑法改正で懲役刑と禁錮刑が統合された新しい刑罰です。刑務所に収容されます。

Q3. 里親の妻はどうなりましたか?

夫婦ともに2025年10月に逮捕されましたが、妻の起訴・不起訴処分は報道で確認できていません。

Q4. しつけと虐待の法的な違いは何ですか?

2020年4月施行の改正児童虐待防止法で体罰は全面禁止。身体的暴力はしつけの範囲外です。

Q5. 判決で実刑になる可能性はありますか?

横浜の類似事件では執行猶予でしたが、本件は追起訴3件で悪質性が高く判決は裁判所次第です。

Q6. なぜ養育3か月で虐待が発覚したのですか?

2025年9月に「顔にあざがある」との通告がきっかけで発覚。県の聞き取りでは夫婦が虐待を否定していました。

Q7. 里親制度で虐待を防ぐ仕組みはありますか?

研修・家庭訪問・定期見守りの仕組みがありますが、横浜市は「虐待を測る基準がない」と認めています。

Q8. 虐待を見つけたらどこに連絡すればいいですか?

児童相談所全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」に電話できます。確証がなくても通報可能です。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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