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リーマンショックもコロナ禍も乗り越えてきた会社が、EVで初めて折れた。
2026年6月26日、ホンダは東京都内で株主総会を開いた。
三部敏宏社長は冒頭、頭を下げた。
1957年の上場以来、一度も出したことのなかった赤字——4239億円——について「株主の皆さまに深くおわびを申し上げます」と語った。
「ホンダがやばい」とネットが騒いだ。
ただ、その「やばさ」の中身を正確に知っている人は、意外と少ない。
実は同じ期間、ホンダの財布には1兆円以上の現金が入り続けていたのだ。
この記事でわかること

69年間一度もなかったことが今日起きた
「前期の決算が赤字となり、深くおわび申し上げます」—— 三部社長 がこう語った日、ホンダ 69 年の記録が終わった。
2026 年3月期の最終的な損益(グループ全体の純損益)は 4239億円 の赤字だった。
前の年は 8358億円 の黒字だった。
1年で 1兆2597億円 分、数字が動いた計算になる。
ホンダは 1957 年に東証に上場した。
それ以来、 リーマンショックが自動車業界を直撃した2009年も、コロナ禍で世界が止まった2020年も、ずっと黒字を守り続けてきた。
その記録が今回、初めて途絶えた。
時事通信 が報じた通り、株主からは「経営が硬直化している」「対応が遅すぎた」という厳しい声も上がった。
三部氏 の解任を求める意見まで聞かれたという。
リーマンショックですら黒字を守ったホンダが、EVという一点に賭けすぎた結果として初の赤字に転落したのではないか——という見方が広がっている。
では、 3 兆円以上を注ぎ込んだEV戦略は、なぜここまで裏目に出たのだろうか。
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3兆円をつぎ込んでもEVが売れなかった理由
2021 年に「脱ガソリン」を宣言し、米国に 3 兆円超を投じた ホンダ を一変させたのは、 トランプ政権の誕生 だった。
nippon.com・ジャーナリスト井上久男氏 によると、当時の バイデン政権 は「 2032 年までに米国の新車販売に占めるEVの割合が 67 %に達する可能性がある」との試算まで出していた。
2025 年の実際のEV比率は約 7.8 %だ。
バイデン政権時代の試算の 8分の1以下 にとどまった。
流れを変えたのが トランプ政権 の誕生だった。
EV購入への補助金(IRA補助金)は廃止され、環境規制も事実上無効化された。
ホンダは北米向けに開発していたEV 3 車種の販売をやめると決め、 ソニー・ホンダモビリティ も 2026 年3月25日にEVの開発と販売を中止すると発表した。
バイデン政権時代の予測通りにEVが広まるはずだったため、ホンダが大規模投資を決断したのは当時の状況から見れば合理的な判断だったのではないか、という見方もある。
「問題は判断が間違っていたかではなく、状況が変わったときに修正できなかったことだ」という指摘が、業界関係者の間では広がっている。
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4239 億円の赤字——これは本当に、ホンダが危機的な状態に陥ったということなのか。
4239億円の赤字なのに財布はむしろ黒字
4239億円 の大赤字。
しかし同じ期間に、ホンダの財布には 1兆円以上 の現金が入ってきていた。
減損(げんそん)とは?
投資したお金の価値がなくなったと判断したとき、その分を帳簿上で損失として計上する会計処理のこと。
たとえばEV工場の設備に1000億円を使い、その事業を中止するなら「この設備の価値はゼロだ」と認めて1000億円を損失に計上する。
しかし、お金が実際に財布から出ていくのは設備を作ったときであり、減損は「過去に使ったお金の評価を帳簿で整理する作業」に過ぎない。
この逆説を理解するカギは「 減損(げんそん) 」という会計処理にある。
お金が財布から出ていくのは設備を作ったときだ。
減損は 「過去に使ったお金の帳簿評価を整理する作業」 に過ぎない。
マイナビニュース の分析によると、 2026 年3月期のホンダは営業活動(本業)で 1兆1352億円 のプラスを稼いでいた。
投資や財務への支出を全部差し引いても、手元に残る現金(フリーキャッシュフロー)は 2461億円 のプラスだった。
帳簿の数字は大きく赤字になっても、財布の中身は増え続けていた。
今回の損失の大半は、すでに使ったお金の「帳簿上の評価を引き下げる処理(減損)」であり、財布から新たに出ていくお金ではない——そう考えると、ホンダの経営の危機感は日産とはレベルが違うのではないか。
経営学の世界では「 ビッグバス会計(big bath accounting) 」と呼ばれる手法がある。
戦略の転換期に損失を一括で計上し、翌期以降の見通しを明確にする経営判断のことだ。
損失を先に全部吐き出すことで「膿(うみ)を出し切る」というイメージだ。
ホンダが今回、EV関連損失を 1兆5778億円 にまとめて計上したのは、この発想に近いのではないか——という見方ができる。
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ホンダの赤字って、財布からお金が消えたんじゃなくて、 損した投資を帳簿からまとめて消した処理 なんだよね——だから翌2027年3月期には 2600億円 の黒字見通しを出している。
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では、同じ時代に同じ電動化の波を受けながら、なぜトヨタは赤字を避けられたのか。
同じ時代にいたトヨタはなぜ赤字を免れたのか
ホンダが 規制の文字を信じた 一方、 トヨタ は 売れているクルマを見ていた 。
どちらの会社もEVシフトを推進してきた。
どちらも巨額の投資をしてきた。
だが結果は大きく分かれた。
nippon.com・井上久男氏の分析 によると、その差は「何を判断の基準にしたか」の違いにあるという。
トヨタ は米政府の規制より「ハイブリッドが実際に売れている」という顧客の動きを優先してEV戦略を修正した。
一方でホンダは規制動向に引きずられすぎたのではないか、というのが同氏の見立てだ。
もう一つ、ホンダに固有の問題があった。
米国市場への依存度 だ。
グローバルな販売台数のうち、米国が占める割合はホンダが約 40 %だった。
同じく米国市場の比率はトヨタが約 24 %、日産が約 29 %で、3社の中でホンダが最も高かった。
最も米国に賭けていたメーカーが、EV補助金の廃止で最大のダメージを受けた。
ホンダの 三部社長 も「複数の選択肢を持っていなかったことを反省している」と決算会見で語っている。
一本足打法でEVに振り切った構造が、環境変化への対応を難しくした——と読むことができる。
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じゃあ、ホンダのクルマを使っている人や株を持っている人は、これからどう向き合えばいいのか。
ホンダ車オーナーと株主、これからどうなる
「日産との協業は、発表間近という部分もある」—— 三部社長 が今日の株主総会でこう明言したことは、多くのニュースでは埋もれている。
まず株主総会の結果から整理する。
三部氏 を含む取締役 11 人全員の選任議案は賛成多数で可決された。
三部社長は続投し、少なくとも来年の株主総会まで経営の舵を握り続ける。
業績見通しについては、 2027 年3月期の最終損益を 2600億円 の黒字と見込んでいる。
日本経済新聞 が報じたホンダとしての公式見通しだ。
EV関連の一括損失計上が終われば、本業の稼ぎが数字に反映されやすくなる。
ただし課題が残る。
中国市場での販売台数は2026年3月期に前年比 23.8 %減の 61 万台まで落ち込んだ。
27年3月期はさらに 50 万台程度まで減る見通しだ。
かつて中国での年間販売が 120 万台を超えていたことを考えると、ピーク時の半分以下の水準だ。
日本経済新聞 によると、三部社長は本日の株主総会で 日産 との協業について「かなり煮詰まってきており、発表間近という部分もある」と明言した。
経営統合は 2025 年に破談になったが、それとは別の形での協業が水面下で進んでいる。
ホンダが日産と具体的な協業内容を近く発表するとすれば、自動車業界の再編が本格化する可能性があるだろう。
ホンダ車を現在使っているなら、品質や保証の体制に直接的な影響が出るほどの財務悪化ではない——というのが、今回の決算の実態から読み取れる現実だ。
財布の中身(営業キャッシュフロー)は 1兆1352億円 のプラスを確保しており、事業の継続性に差し迫った問題はない。
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帳簿の数字と財布の中身は別物だと知っているだけで、次にこういうニュースが出たとき、騒ぎの本質をずっと冷静に読めるようになる。
まとめ
- ホンダが2026年3月期に1957年の上場以来初めて赤字を計上した。最終損益は4239億円のマイナスで、前年の8358億円の黒字から1年で大きく転落した
- 赤字の中身のほとんどはEV関連の「減損」であり、財布からお金が消えた赤字ではない。実際に本業で稼いだ現金は同じ期間に1兆1352億円のプラスだった
- ホンダが「EVに全振り」した一方、トヨタは「ハイブリッドが売れている」という市場の現実を優先して対応を修正した。ホンダの米国市場への依存度(約40%)の高さが被害を大きくした
- 三部社長は今日の株主総会で続投が承認された。2027年3月期は2600億円の黒字へのV字回復を見込んでいる
- 「日産との協業は発表間近」と三部社長が今日明言した。業界再編の動きが具体化する可能性がある
よくある質問(FAQ)
Q1. ホンダが赤字になったのはなぜ?
EV(電気自動車)の開発を中止したことで、工場設備や開発費などに使ったお金の価値がゼロになったと認め、帳簿上で一気に損失として計上したため。
EV関連の損失は合計1兆5778億円にのぼった。
Q2. ホンダの赤字はいくら?
2026年3月期の最終損益は4239億円の赤字。
前の年は8358億円の黒字だったので、1年で1兆2597億円分、数字が動いたことになる。
Q3. ホンダの赤字で会社は潰れる?
可能性は低い。
赤字の大半は現金が実際に出ていく損失ではなく、過去の投資を帳簿で整理した処理。
同じ期間に本業で稼いだ現金は1兆1352億円のプラスで、財務的に危機的な状態ではない。
Q4. ホンダとトヨタの赤字対応の差はなぜ?
トヨタは政府の規制より「ハイブリッドが実際に売れている」という市場の動きを優先して戦略を修正した。
ホンダはEV優遇の規制動向を信じすぎ、トランプ政権による政策転換への修正が遅れたと見られている。
Q5. ホンダと日産の赤字はどう違う?
ホンダの赤字は現金流出を伴わない減損処理が主体で、本業の現金収支はプラス。
一方の日産は2期連続の赤字で、営業キャッシュフローが設備投資をカバーできていないなど、財務の実態が異なる。
Q6. 三部社長は辞任しないの?
2026年6月26日の株主総会で取締役11人全員の選任議案が可決され、三部社長は続投することが決まった。
株主から解任を求める声も出たが、議案は賛成多数で承認された。
Q7. ホンダはいつ黒字に戻る?
ホンダは2027年3月期の最終損益が2600億円の黒字になるという見通しを公式に発表している。
EV関連の一括損失計上が終わることで、本業の稼ぎが数字に反映されやすくなるとみている。
Q8. ホンダのボーナスや社員への影響は?
公式に発表された情報では、三部社長らが月額報酬の30%を3か月間返上し、業績連動報酬も不支給となる。
社員全体のボーナスへの具体的な影響は現時点では公表されていない。
📚 参考文献
- Yahoo!ニュース(共同通信)「ホンダ社長、赤字決算謝罪 株主総会で「深くおわび」」 (2026年6月26日)
- 時事通信「ホンダ社長、巨額赤字を陳謝 EV戦略、株主が責任追及」 (2026年6月26日)
- 日本経済新聞「ホンダの三部社長、EV損失「株主に多大な心配かけた」 26日総会ピーク」 (2026年6月26日)
- 日本経済新聞「ホンダ社長「日産との協業、発表間近」」 (2026年6月26日)
- 日本経済新聞「決算:ホンダが上場来初の最終赤字4239億円 26年3月期、EV損失重く」 (2026年5月14日)
- nippon.com・井上久男「巨額赤字のホンダ:「脱ガソリン車」で誤算、再起かけて戦略見直しへ」 (2026年4月10日)
- 文藝春秋PLUS「ホンダ三部社長降ろし全内幕」 (2026年6月)
- Bloomberg「赤字転落のホンダ、立場逆転で日産と統合交渉再開観測も」 (2026年5月15日)
- NHKニュース「ホンダEV巨額損失 舞台裏に迫る」 (2026年6月4日)
- マイナビニュース「ホンダと日産は巨額赤字計上も中身が違う? 2026年3月期決算を分析」 (2026年6月)
- nikkei.com
- coki.jp
- diamond.jp
- x.com
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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