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コンビニ、飲食店、路線バスが一斉に「出入り禁止」を宣言した男がいる。
2026年北中米W杯でグループステージ敗退した韓国代表の元監督、ホン・ミョンボだ。
帰国の夜には警察官約160人が仁川空港に配備され、殺害予告を警戒して動線そのものが一般客と分けられた。
「韓国人はサッカーに熱狂的だから」——そう片付けてしまうのは簡単だ。
しかし、ここまでの怒りが一人に集中した背景には、40年かけて積み上げられた構造と、それを一気に燃やした引き金がある。
この記事でわかること
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コンビニも精神科も「出入り禁止」にした男
韓国代表は今大会のグループAで 1勝2敗 、3位の成績比較で 9 番手に転落し、 2 大会ぶりのグループステージ敗退が決まった。
サッカーキング が伝えたところによると、チェコに2-1で勝利した後、メキシコと南アフリカにそれぞれ0-1で敗れた。
敗退が確定した直後、韓国国内のSNSには怒りがあふれ出した。
オンラインコミュニティには 「ホン・ミョンボを殺害する」という趣旨の書き込みが投稿され 、警察が捜査に着手した。
AFP BB News が報じている。
怒りはオンラインにとどまらなかった。
飲食店やコンビニの入口に 「ホン・ミョンボは出入り禁止」という張り紙 が貼られ、路線バスの前方ドアに「乗車拒否」と書いた紙が登場した。
ある精神科病院はSNSに「ホン・ミョンボ歓迎——直接心境を聞いてみたい」と投稿した。
嘲笑と排除が、現実の空間にまで染み出した形だ。
帰国の夜、その「排除」はさらに激しいものになった。
6月30日未明の仁川空港には機動隊など約 160 人が配備された。
ファンたちはホン監督や 大韓サッカー協会(KFA) に向けて激しい罵声を浴びせた。
スポーツの敗退で、これほどの警備が必要になる国はそう多くない。
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では、なぜ「ホン・ミョンボ」という名前がここまでの標的になったのか。
実はこの男、韓国サッカー最大の英雄だった。
英雄に石を投げる——2002年の主将が「生け贄」になるまで
「うちのOBのホン・ミョンボをいじめるな」——こう言ったのは韓国ではなく、日本の政治家だった。
湘南ベルマーレの元代表取締役会長でもある 河野太郎 衆院議員がXにこの一文を投稿した。
日刊スポーツ が伝えている。
ホン・ミョンボ は2002年日韓W杯でキャプテンとして韓国をベスト4に導いた選手だ。
アジア人として初めてFIFAワールドカップに 4 大会連続で出場し、ペレが選ぶ偉大な選手 100 人(FIFA100)にも名を連ねる。
Jリーグでも柏レイソルや湘南ベルマーレでプレーし、「ヒョン(兄)」と慕われた人格者として知られる。
帰国の風景は、残酷なほど対照的だった。
以下の2つのシーンは、同じ敗退チームから起きたこととは思えない。
- 罵声と怒号が飛び交う
- KFA会長に犬用ガムが投擲され現行犯逮捕
- 息子と推定される写真が個人情報とともに拡散
- 拍手と「お疲れ様」の声
- 深夜からユニフォームを着て待機するファン
- 「愛している」「頭を下げないで」の声援
Number Web の密着記者は「この対照は、あまりにも残酷だった」と記している。
同じ敗退チームから、英雄と生け贄が同時に生まれた。
「2002年の英雄だからこそ責任を取るべき」 という見方が韓国では強く、期待の高さが怒りの燃料になったという見方が広がっている。
しかしそれだけで、ここまでの怒りが説明できるだろうか。
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韓国サッカーには、40年かけて作られた「怒りを個人にぶつけやすくなる構造」がある。
「1.5年で監督が替わる国」が作った怒りの構造
2002 年以降だけで監督交代 16 回。
24 年間で割ると、平均在任期間はおよそ 1.5 年になる。
これは単なる数字ではない。
日本代表では 森保一 監督が 8 年間指揮を執った。
韓国では同じ期間に 5〜6 人の監督が入れ替わっていた計算だ。
中央日報日本語版 によると、ヒディンク以降、4年間の任期を全うした監督は パウロ・ベント (2022年カタールW杯)ただ一人だという。
この短命な交代サイクルを作ったのが、 「86体制」 と呼ばれる枠組みだ。
1982年のW杯予選敗退後、韓国は「W杯本大会出場」を国家目標に設定した。
1983年にプロリーグを発足させ、財閥系企業がクラブを支え、短期的な成果を何より優先する——この体制が 40 年間続いてきた。
スケープゴーティング(Scapegoating)とは
社会心理学で確立されている概念。
集団の中に蓄積された怒りや不満が、本来の問題とは別の「代わりの標的」に向けられる現象のこと。
今回で言えば、韓国の格差競争社会(受験・就職・賃金格差)で積み重なった国民の不満が、W杯敗退をきっかけに「86体制が許可した標的」であるホン監督個人へ向かった可能性を説明できる概念だ。
「韓国人は感情的だからサッカーに過激に反応する」 という見方がある。
だがそれは、 構造が見えていない 。
超格差競争社会で積み重なった国民の鬱屈した思いが、W杯敗退というきっかけで「許された標的」であるホン監督個人に向かった可能性がある。
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「韓国でサッカー監督が殺害予告を受けるくらい叩かれるのは、韓国人が感情的なのではなく、 40年かけて『負けたら監督が全部悪い』という仕組みが社会に染み込んでいる から、かもしれない」——これが、今回の騒動の本質に近い読み方だ。
86体制なき社会では、同じ敗退でも怒りはここまで一人に集中しなかったのではないか。
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そしてこの怒りに、国のトップがSNSで「燃料」を注いだ。
大統領が「お墨付き」を出した日
「能力より身内を重視し、 無能な人物を指揮官に選べば、結果は火を見るより明らかです 」——これは批判コメントではなく、韓国の現職大統領がSNSに書いた文章だ。
李在明 大統領は敗退が決まった直後、公式アカウントにこの言葉を投稿した。
東洋経済オンライン が伝えている。
元テレビ朝日社員の玉川徹氏はこの投稿に対し、「国の元首がこんなことを言うのはどうかと思う。
ある意味、 誹謗中傷へのお墨付きになってしまうではないか 」と公の場で指摘した。
サイダー政治とは
「サイダー」は韓国語の俗語で「スカッとする・胸のすく」という意味。
国民の怒りに乗っかって爽快な発言をする政治手法を指す言葉で、今回の大統領の投稿がまさにそれに当たるのではないかという見方が広がっている。
この投稿が「監督個人を叩くことが正義だ」というメッセージとして機能した可能性がある。
AFP BB News によると、告訴・告発は計 8 件受理された。
法的手続きとSNS上の怒りが、互いを増幅させる形で連鎖した。
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では、大統領がここまで踏み込んで批判できた背景には何があるのか。
実は監督の就任自体に、最初から大きな問題があった。
そもそもこの監督の就任自体が「違法」だった
捜査審議委員会が「迅速な捜査を」と求めてから 9 カ月、警察はほぼ動かなかった。
ホン・ミョンボの監督就任(2024年7月)は、正規の手続きを経ていなかった。
通常、代表監督の選任は 国家代表戦力強化委員会 (選任専門の委員会)を通じて行うのが協会の決まりだ。
しかし今回、技術総括理事の イ・イムセン 氏が個人的にホン・ミョンボへ就任を打診したとされる。
AFP BB News が報じている。
文化体育観光部 の特別監査はこの選任手続きに瑕疵(手続き上の問題)があると確認した。
行政裁判所が2026年4月に選考過程の違法性を認定したとされるが、協会側は控訴しており、最終的な結論は出ていない。
AFP BB News によると、ソウル鍾路警察署はこれらの事件をソウル警察庁広域捜査団の金融犯罪捜査隊に移送した。
クリンスマン前監督の選任疑惑事件も統合して、より上位の捜査機関が直接動くことになった。
国民の怒りの一部は、「不透明な選任に対する正当な怒り」 だったとも言える。
こうした複雑な怒りの連鎖を、隣の日本はどう見ていたのか。
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日本では「いじめるな」——同じ敗退で正反対の反応が出た理由
韓国で 「国の恥」 と呼ばれた同じ人物が、日本では 「日本に来ればいい」 と迎えられた。
河野太郎議員の「いじめるな」に加え、コラムニストのえのきどいちろう氏もXで「そんな言い方ないよ。
明甫、日本に来たらいい。
あなたの闘志をJリーグサポーターは忘れない」と投稿した。
森保一監督は帰国後の記者会見で韓国メディアの質問に答え、「過去最低のチームとは思わない。
国のために身を粉にして頑張っているのだから、褒める報道をしてあげてほしい」と語った。
Yahoo!ニュース エキスパート(慎武宏) が伝えている。
なぜこれほど温度差が生まれたのか。
ホン・ミョンボは柏レイソルでキャプテンを務め、「ヒョン(兄)」と慕われた経験がある。
Jリーグで積み上げた人間的な信頼が、日本での反応を作ったのだろう。
一方で、韓国と日本とでは「監督への責任の帰し方」の構造が違うという見方もある。
86体制のもとでは監督は短期成果の「請負人」として扱われ、失敗すれば全責任を負う役割が固定されやすい。
日本では監督と選手が共に失敗の当事者として見られる文化が相対的に強いのではないか。
もしあなたの職場でも、何か大きな失敗が起きたとき、「責任者一人に全部押し付けて終わり」になっていないだろうか。
「韓国の話」で笑って済ませられないかもしれない。
「韓国人は熱狂的」という一言で片付けると、構造が見えなくなる。
個人への怒りの裏には、 40年かけて作られた社会の仕組み がある。
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まとめ
- 韓国代表は2026年W杯でグループA1勝2敗・9番手転落で敗退。帰国時の空港に警察官約160人が配備される事態になった
- 「2002年W杯英雄だからこそ許せない」という論理が怒りを増幅させた。ソン・フンミン(拍手で出迎え)とホン監督(罵声・怒号)の帰国の落差が、韓国社会の「英雄と生け贄」という二分構造をそのまま映し出した
- 2002年以降で監督交代16回(24年間で平均約1.5年)という「86体制」の短命サイクルが、失敗を監督個人の問題として処理し続ける土台を作ってきた
- 李在明大統領がSNSで「無能な人物を選べば結果は明らか」と投稿したことが、バッシングへの「お墨付き」として機能した可能性がある
- ホン監督の選任プロセスは正規の委員会を経ない手続き上の問題があったとされ、捜査審議委が「迅速な捜査を」と議決してから9カ月間、警察がほぼ動かなかったという制度的な怠慢も重なっていた
よくある質問(FAQ)
Q1. ホン・ミョンボ監督とはどんな人物ですか?
1969年生まれの元韓国代表DF。
2002年日韓W杯でキャプテンとしてベスト4に貢献し、アジア人初のW杯4大会連続出場を達成。
柏レイソルや湘南ベルマーレにも在籍した。
Q2. 韓国代表は今回のW杯でどんな成績でしたか?
グループAで1勝2敗(チェコに2-1勝、メキシコに0-1負、南アフリカに0-1負)。
3位チームの成績比較で9番手に転落し、2大会ぶりのグループステージ敗退が決まった。
Q3. なぜ韓国でここまで過激なバッシングになったのですか?
2002年以降で監督交代16回という「失敗したら監督が全責任を負う」構造が積み重なっており、格差社会への不満が出口を求めてW杯敗退をきっかけに監督個人に向かったとみられている。
Q4. 大統領がサッカー監督を批判するのはよくあることですか?
異例のことだ。
李在明大統領は公式SNSに「無能な人物を指揮官に選べば結果は明らか」と投稿し、日本のコメンテーターからも「誹謗中傷へのお墨付きになる」と批判された。
Q5. ホン・ミョンボ監督の選任は問題があったのですか?
通常の選任委員会を経ず技術総括理事が個人的に打診した手続きの問題があり、文化体育観光部の監査が瑕疵を確認した。
行政裁判所も違法性を認定したとされるが、協会側は控訴中だ。
Q6. 韓国のサッカー協会への捜査はどうなっていますか?
告訴・告発計8件が受理され、2026年7月1日にソウル警察庁広域捜査団の金融犯罪捜査隊に移送された。
クリンスマン前監督の選任疑惑事件も統合して捜査が続いている。
Q7. 日本でホン・ミョンボ監督はどう受け止められましたか?
Jリーグでの縁から擁護の声が相次いだ。
河野太郎衆院議員は「うちのOBをいじめるな」と投稿し、森保一監督も「過去最低とは思わない、褒める報道をしてほしい」と語った。
Q8. 韓国代表の次期監督はどうなりますか?
大韓サッカー協会のチョン・モンギュ会長も辞任を表明しており、会長選挙と新代表監督の選任作業が同時進行で進む予定だ。
詳細な人選は現時点では公表されていない。
📚 参考文献
- JBpress「【W杯惨敗】韓国代表のホン・ミョンボ監督に『殺害予告』も…異常な大バッシングを生む『韓国社会の闇』」 (2026年7月1日)
- AFP BB News「サッカー韓国代表監督の選任問題、警察が捜査へ…協会会長らへの告発8件受理」 (2026年6月29日)
- AFP BB News「韓国サッカー代表監督選任疑惑、警察審査委が迅速捜査求めるも9カ月停滞」 (2026年7月6日)
- Yahoo!ニュース(中央日報日本語版)「2002年以降だけで監督交代16回の韓国サッカー、問題は人ではない」 (2026年7月初旬)
- Number Web「監督への殺害予告、ファンからの罵声…W杯で敗れた韓国代表の"失敗の本質"とは?」 (2026年7月初旬)
- Yahoo!ニュース(Football Zone)「韓国監督は『殺害予告を受け逃亡』W杯敗退→辞任…"身の危険"を母国報道」 (2026年7月初旬)
- Yahoo!ニュース(サッカーキング)「韓国代表、W杯敗退決定 GSで1勝2敗…3位の成績上位8チームに入れず」 (2026年6月28日)
- Yahoo!ニュース(KOREA WAVE)「韓国代表監督を『一生出入り禁止』W杯惨敗で怒り沸騰」 (2026年6月29日)
- 東洋経済オンライン「韓国サッカーW杯惨敗で大統領が異例の『監督批判』に便乗、"サイダー政治"の真骨頂」 (2026年7月初旬)
- Yahoo!ニュース(KOREA WAVE/AFP)「疑惑の『監督選任』で告発8件…ソウル警察庁金融犯罪捜査隊、大韓サッカー協会を本格捜査へ」 (2026年7月2日)
- Yahoo!ニュース(中央日報日本語版)「李栄杓や朴智星で解決するわけではない…韓国サッカー協会のカルテル破るリーダーの条件」 (2026年7月2日)
- Yahoo!ニュース エキスパート・慎武宏「森保一監督はなぜホン・ミョンボ監督を擁護したのか」 (2026年7月初旬)
- 日刊スポーツ「『うちのOBのホン・ミョンボをいじめるな』敗退韓国監督への大統領批判 著名日本人も疑問続々」 (2026年6月29日)
- jbpress.ismedia.jp
リアルタイムニュースNAVI 編集部
reaitimenews.com
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