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兵庫県が662億円の債権放棄へ——なぜ分収造林事業は破綻したのか

兵庫県が662億円の債権放棄へ——なぜ分収造林事業は破綻したのか

| 読了時間:約8分

兵庫県が外郭団体への貸付金662億円の債権を放棄する
60年以上つづいた「分収造林事業」が破綻し、つぎ込んだ税金の大半が戻らない。

その裏には、借金の半分近くが利息で膨れ上がった異常な構造と、全国26都県にまたがる「8000億円の時限爆弾」があった。

 

 

 

兵庫県が662億円を「回収不能」と認めた——分収造林事業ぶんしゅうぞうりんじぎょうの正体

朝日新聞の報道によると、兵庫県は2026年2月20日、この議案を県議会に提出する。

対象は県の外郭団体ひょうご農林機構への貸付金だ。

682億円にのぼる借金のうち、303億円は利息だけで膨れた数字だった。
元金より利息が大きい——この異常な構造が、60年にわたって放置されてきた。

📄 兵庫県公式報告書より

「兵庫県の分収造林事業の借入金残高は682億円(県営分収育林事業を合わせると727億円)であり、全国最多の額。残高のうち過去利息が303億円。」
——分収造林事業のあり方検討に関する報告書

そもそも分収造林事業とは何か

仕組みは4つのステップで成り立つ。

県の関連組織が土地の持ち主から山を借りる

お金を借りて木を植え、数十年かけて育てる

木が育ったら売り、利益を持ち主と分け合う

その利益で借金を返す

「木を植えて、育てて、売って、分け合う」。
1962年に設立された兵庫県造林公社(現ひょうご農林機構)は、この計画のもとに約1万9400ヘクタールの森を管理してきた。

⚠ 破綻の構造

ところが木材の価格が下がりつづけ、売っても借金を返せない状態に陥った。
返せないから利息がさらに積み上がる。
682億円のうち303億円、約45%が利息の累積という数字が、その悪循環を物語っている。

 

 

 

県民1人あたり約1万2500円が消える

662億円を兵庫県の人口約530万人で割ると、県民1人あたり約1万2500円になる。
家族4人なら約5万円だ。

兵庫県の公式資料によれば、2025年7月末時点の負債は県への分が452億1000万円、日本政策金融公庫への分が271億3000万円。

県への負債

452.1億円

公庫への負債

271.3億円

このうち公庫分は県が肩代わりする方針がすでに決まっている。
2025年12月には大阪地裁に特定調停が申し立てられた

裁判所を通じた借金の整理が進み、2026年2月の県議会で承認されれば調停が成立する。

なぜ、木を売って返すはずだった借金が、ここまで膨らんだのか。

 

 

 

国策が生んだ「全国8000億円の時限爆弾」——破綻した3つの原因

「兵庫県が勝手に始めた無謀な事業」と映るかもしれない。
700億円もの借金をつくった外郭団体が悪い——そう感じるのも自然だろう。

ところがこの事業は、全国39都道府県で一斉に始まった国策だった。

📄 兵庫県公式報告書より

「昭和33(1958)年に国が分収造林特別措置法ぶんしゅうぞうりんとくべつそちほうを制定したことを受け、全国各地で林業公社が設立(39都道府県計44法人)され、本県においても昭和37(1962)年に県が認定して兵庫県造林公社が設立された。」
——分収造林事業のあり方検討に関する報告書

原因①:木材価格が想定から大幅に下落した

戦後の日本は木材が足りなかった。
「今植えれば、数十年後に高く売れる」。その前提で全国に木が植えられた。

だが1960年代から外国産木材の輸入が増え、国産材の価格は下がりつづけた。
林野庁のデータによると、2024年のスギ素材価格は1万5900円/㎥だ。

ピーク時の1980年ごろは約8万円/㎥だったとされており、ざっと5分の1の水準になる。

  ピーク時(1980年頃) 2024年
スギ素材価格 約8万円/㎥ 1万5900円/㎥
価格水準 基準 約5分の1

100万円返す計画で植えた木が、売っても20万円にしかならない。
返済が行き詰まるのは当然だった。

 

 

 

原因②:兵庫だけが「有利子の借金」に頼った

全国共通の制度なのに、なぜ兵庫が突出して借金が多いのか。

💡 兵庫だけが全国最大の負債を抱えた理由

兵庫県の報告書はこう指摘する。
多くの県では、公庫の貸付上限を超える分を県が無利子で貸し付けていた兵庫は民間金融機関から有利子で借りていた
この違いが利息303億円という全国最大の負担を生んだ。

他県が利息ゼロで資金を回した一方、兵庫は民間銀行への利払いがかさんだ。
木が売れないから返せない、返せないから利息が増える。そのループが半世紀つづいた。


原因③:60年間、誰も止められなかった

問題はずっと前から見えていた。
兵庫県は2008年に新行革プランを策定し、森林を「経済林」「環境林」「自然林」に分けて収支を改善しようとした。

分収割合も6対4から8対2に変え、土地の持ち主との交渉も進めた。

だが主伐しゅばつ計画835ヘクタールに対し、実績はわずか66ヘクタール。
達成率8%に満たない。改革は名ばかりだった。

神戸経済ニュースによると、斎藤元彦知事は2025年7月の全国知事会で次のように発言した。

🏛 斎藤知事の発言

26都県で総額8000億円を超える債務が隠れている
兵庫だけの話ではない。全国の林業公社が同じ構造的な問題を抱えている。

「もう少し待てば木材価格が戻る」。
そう信じて撤退の判断を先送りしつづけた結果が、全国8000億円という数字だろう。

 

 

 

県民1人あたり約1万2500円——662億円の「その後」と兵庫県財政の行方

662億円を放棄すれば、それで終わりなのか。答えはノーだ。

起債許可団体きさいきょかだんたいへの転落が迫る

兵庫県が2026年2月に公表した県政改革方針の変更案によると、実質公債費比率じっしつこうさいひひりつが2025年度決算で18%を突破する見通しだ。

この数字は、自治体の借金返済の重さを示す指標だ。
18%を超えると新しい借金に国の許可が必要になる。

兵庫県は14年ぶりの「起債許可団体」への転落が確実視されている。

年度 実質公債費比率 収支不足額
R7(2025) 19.0% 0億円
R8(2026) 21.7% ▲130億円
R9(2027) 21.1% ▲180億円
R10(2028) 23.3% ▲220億円

2028年度には23.3%に達する見込みで、財政健全化の道のりは長い。
分収造林事業の清算は1500億円ともいわれる「隠れ負債」の片方にすぎず、地域整備事業でも数百億円規模の処理が控えている。

 

 

 

662億円を放棄しても、2万ヘクタールの森は残る

見落としがちな事実がある。
約2万ヘクタールの森林管理は、債権放棄後もつづけなければならない

山を裸のまま放置すれば土砂災害のリスクが高まる。
水源を守る機能も失われる。

🌲 今後の森林管理

兵庫県は新たに「兵庫県森づくり支援センター(仮称)」を立ち上げ、ひょうご農林機構に代わる管理体制を築く方針だ。
662億円は「過去の失敗の清算」であると同時に、「今後の森林管理の出発点」でもある。


60年間の「もったいない」が生んだ構造

⚠️ ここからは推測です

行動経済学では「サンクコストの罠」と呼ばれる現象がある。
すでに投じた費用が大きいほど、損だとわかっていても撤退できなくなる心理だ。

兵庫の分収造林事業は、まさにこの罠にはまっていたのではないか。
「これだけ投資したのだから、もう少し待てば回収できる」——その判断が60年間くり返された。

主伐計画の達成率8%という数字は、撤退の決断がいかに難しかったかを示している。

もちろん、森林には水源を守り土砂災害を防ぐ公益的な役割がある。
単純に「やめればよかった」とは言い切れない。

だがそれでも、利息だけで303億円が積み上がる前に手を打つことはできたはずだ

⚠️ 推測ここまで

 

 

 

まとめ

  • 兵庫県は分収造林事業の破綻で662億円の債権を放棄する。2026年2月20日に県議会に議案を提出
  • 借入金682億円のうち303億円(約45%)は利息の累積。民間有利子での調達が全国最大の負債を生んだ
  • 分収造林は国策として全国39都道府県で実施された制度。26都県で8000億円超の「隠れ借金」が指摘されている
  • 兵庫県は起債許可団体に転落する見通し。財政悪化は長期化が避けられない
  • 約2万ヘクタールの森林管理は今後もつづく。662億円は「終わり」ではなく「仕切り直し」

よくある質問(FAQ)

Q1. 分収造林事業とは何ですか?

山に木を植えて育て、売った利益を土地の持ち主と分け合う仕組みです。国の法律に基づき全国39都道府県で始まりました。

Q2. なぜ兵庫県は662億円を債権放棄するのですか?

木材価格の低迷で事業が破綻し、外郭団体ひょうご農林機構の借金を回収できなくなったためです。

Q3. 借金682億円のうち利息はいくらですか?

303億円で全体の約45%です。他県が無利子で借りた中、兵庫は民間銀行から有利子で調達していました。

Q4. 県民の負担はどうなりますか?

662億円を人口約530万人で割ると1人あたり約1万2500円です。直接の増税ではなく県の財政悪化を通じて影響します。

Q5. 他の県でも同じ問題は起きていますか?

斎藤知事によると全国26都県で総額8000億円超の債務があります。兵庫だけでなく全国的な構造問題です。

Q6. 起債許可団体とは何ですか?

借金返済の重さを示す数値が18%を超えた自治体のことです。新たな借金に国の許可が必要になります。

Q7. 債権放棄後、山の管理はどうなりますか?

約2万ヘクタールの森林は引き続き管理が必要です。県は「森づくり支援センター(仮称)」で新体制を築く方針です。

Q8. 兵庫県の財政は今後どうなりますか?

2028年度に実質公債費比率が23.3%に達する見込みです。収支不足は3年間で530億円と試算されています。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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