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イラン攻撃で日本企業が中東退避——どの会社が何をしたか全容まとめ

イラン攻撃を受けた日本企業の中東退避状況とホルムズ海峡封鎖の影響を示すイメージ

| 読了時間:約10分

「ドバイにいる駐在員の退避は、すぐにはできない」。
ある金融企業の言葉が、中東の混乱の深刻さを物語っている。

イラン攻撃の影響は中東全域の日本企業に及んでいる。
商社・銀行・エネルギー企業が一斉に動き出した。

 

 

 

商社・金融・エネルギー——各社の駐在員対応を総まとめ

2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃を受け、日本企業の対応が加速している。3メガバンクはいずれも中東への出張を停止した。


退避の対象はイラン国内だけではない。
ドバイやサウジアラビアなど、イランの周辺国に拠点を持つ企業にも波及している。

大手商社はどう動いたか

khb東日本放送の報道によると、丸紅はテヘランの拠点から駐在員をすでに国外へ退避させた。

三井物産はテヘランとテルアビブに拠点があるが、日本人の駐在員はいない。
現地スタッフの安全は確認済みだ。
三菱商事と住友商事は駐在員の詳細を非公表としている。

伊藤忠商事の対応

「安全配慮の観点から回答は差し控えさせていただきます」としている。
ただしロイターによれば、同社はペルシャ湾からの石油・石油製品の輸送に一部影響が出ていると明らかにした。

金融・エネルギー・メーカーの対応は

ロイターによると、三菱UFJ・三井住友・スタンダードチャータードの3行は従業員に中東への出張延期を要請した。

みずほフィナンシャルグループはドバイとリヤドの拠点で不要不急の外出を控えるよう促し、自主退避も認めている。

一方、ドバイに拠点を持つ三井住友海上は駐在員の無事を確認しつつも、「すぐに駐在員が退避できる状況ではない」と語った。


エネルギー企業も動いている。
日本最大の発電・LNG購入企業であるJERAは、中東子会社の従業員17人と家族に退避指示を出した。

産経新聞の報道によると、ENEOSホールディングスはUAEのアブダビとドバイに子会社を含め約30人の日本人従業員がいる。
退避や帰国を検討中だ。

INPEXはアブダビで油田の権益を持ち、従業員は自宅で安全を確保している。

業種 企業 対応
商社 丸紅 テヘランから国外退避済み
商社 三井物産 日本人駐在員なし
金融 3メガバンク 中東への出張を停止
金融 みずほFG 外出自粛、自主退避可
エネルギー JERA 従業員17人と家族に退避指示
エネルギー ENEOS UAE約30人、退避を検討中
メーカー 荏原製作所 全員の無事確認、自宅待機
メーカー いすゞ自動車 中東への出張を禁止
旅行 JTB・HIS 中東経由ツアーを中止
航空 JAL 羽田—ドーハ便を3月7日まで欠航

プラント大手の日揮HDは中東でLNGプラントを建設中で、退避計画の再確認を進めている。
旅行大手のJTBとHISは中東経由のツアーを中止し、JALは羽田—ドーハ便を3月7日まで欠航とした。

羽田・成田の中東行き便は計13便が欠航している。

退避や自粛がイラン国内にとどまらず中東全域に広がっている背景には、今回の攻撃がイランの国境を越えて周辺各国にまで波及した事実がある。

 

 

 

「ドバイなら安全」ではなかった——中東全域に広がる攻撃と混乱

イランの報復攻撃は、UAE、バーレーン、カタール、クウェートにも及んだ。
ビジネスハブとして知られるドバイやアブダビも例外ではない。

「中東の中でもドバイやアブダビは安全」実際にはUAE国内で3人が死亡した。
そう思っていた人は少なくないだろう。
実際、中東に進出した日系企業の多くがUAEに拠点を構えている。

ところがBBCの報道によると、UAE国防省はイランのドローン35機が国内に落下し、3人が死亡したと発表した
ミサイル167発とドローン541機に対処したという。


被害はUAEだけではない。

中東各国の被害状況(BBC報道)

バーレーンの首都マナマでは、米海軍第5艦隊司令部を標的にしたミサイルとドローンが着弾。
クウェートでは弾道ミサイル97発とドローン283機を迎撃したが、1人が死亡し32人が負傷した。

外務省の海外安全情報は、UAE・サウジアラビア・バーレーン・カタール・クウェートを含む50以上の国と地域に注意喚起を出している。
対象が「中東全域」にまで広がっている点が、今回の深刻さを端的に示している。

前回(2025年6月)とは何が違うのか

2025年6月にも米軍はイランを攻撃した。
だがあのときとは規模が根本的に違う。

野村総合研究所の木内登英氏の分析によれば、前回は核施設3か所に絞った1回限りの攻撃だった
今回、米中央軍は最初の24時間で1000以上の標的を攻撃したと公表している。

比較項目 2025年6月 2026年2月28日〜
攻撃範囲 核施設3か所 イラン全土+周辺国
攻撃回数 1回限り 継続中(3日目以降も)
影響エリア イラン・イスラエル 中東全域
ハメネイ師 存命 死亡
ホルムズ海峡ほるむずかいきょう 通常運行 事実上の封鎖状態

イランが周辺国の米軍基地や民間施設にまで攻撃を広げた狙いは、防空網が薄い湾岸の施設を叩き、中東全域を混乱に巻き込むことにあるとみられる。
世界経済への打撃をカードにして交渉を有利に進める「焦土戦略」ではないだろうか。

この戦略の帰結として、日本が最も依存する海上輸送路——ホルムズ海峡にも影響が及んでいる。

 

 

 

ホルムズ海峡「封鎖」で日本の家計を直撃——ガソリン200円超えの試算も

ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥った。
日本が使う原油の8割近くが通るルートだ。

JETROの報告によると、イラン革命防衛隊かくめいぼうえいたいはホルムズ海峡で「いかなる船舶の通過も許されない」と通告した。

ロイターの船舶運航データでは、ペルシャ湾内に少なくとも150隻のタンカーが錨を下ろしたまま動けずにいる
川崎汽船など日本の海運大手の船舶も含まれている。


「備蓄があるから大丈夫」は本当か

日本には約254日分の石油備蓄がある。
JETROもロイターも同じ数字を報じている。
量だけ見れば8か月半は持つ計算だ。

だが政府関係者はロイターの取材に、こう答えている。

政府関係者の発言(ロイター)

「問題は価格。1バレル80ドルを超えると日本経済、内需で稼いでも海外に漏れてしまい、景気後退のリスクが出てくる」

つまり備蓄があっても、価格は守れない
量が足りるかどうかと、値段が上がるかどうかは別の問題だ。

3月2日のアジア市場では北海ブレント原油が1バレル82ドル台に達し、すでに「危険水域」を超えている。

ガソリン・電気代はどうなるか

野村総合研究所の木内登英氏の試算は具体的だ。
日本の原油輸入の94.0%が中東に依存しており、その影響は避けられない。

原油87ドル時の影響試算(NRI木内氏)

ガソリン価格は約3割上がり、全国平均で1リットル200円を超える
・ガソリン暫定税率の廃止による値下げ効果は消失する
・電気代・ガス代は半年から1年で1割以上の値上がり
・日本の実質GDPは1年間で0.18%押し下げられる

満タン60リットルで考えると、約3,600円の負担増になる。
暫定税率をなくしてガソリンを安くする政策が、原油高で帳消しになる皮肉な構図だ。

さらに悲観シナリオでは、ホルムズ海峡が長期間完全封鎖された場合に原油が1バレル140ドルまで上がり、GDPは0.65%の押し下げとなる。
景気悪化と物価上昇が同時に進む「スタグフレーションすたぐふれーしょん」に陥りかねない。

高市首相は3月2日の衆院予算委員会で「エネルギー安定供給確保に万全を期す」と語ったが、打てる手は限られている。
エネルギーの危機は、日本企業が築いてきた中東ビジネスの足元にも忍び寄っている。

 

 

 

営業利益「3年連続 過去最高」から一転——中東ビジネスの先行きは

中東に進出した日系企業の業績は、つい最近まで絶好調だった。

産経新聞が引用したJETROの2025年度調査によると、営業利益の黒字を見込む企業の割合は3年連続で過去最高を記録していた。
世界平均の66.5%を上回る73.8%という数字だ。

中東の黒字割合

73.8%

世界平均

66.5%

その好調の絶頂で、一夜にして退避騒ぎが起きた。
このコントラストこそ、中東ビジネスが抱える地政学リスクの本質だろう。


影響は日本企業にとどまらない。
ロイターによると、中国側の複数の投資家が中東のインフラ・エネルギー関連資産の買収交渉を一時停止した。
アジアの金融機関では中東出張のキャンセルが相次いでいる。

⚠️ ここからは推測です

野村総合研究所の木内氏が指摘するように、前回(2025年6月)より軍事衝突が長期化するリスクは高い。
M&A案件の中断やプラント建設の遅延が広がれば、中東戦略の見直しを迫られる企業は増えるだろう。

ただし事態が早期に収束すれば、影響は限定的にとどまる。
2025年6月の前回攻撃のあと、日系企業の中東ビジネスは持ち直した実績もある。
撤退ではなく「リスクとの付き合い方」を問い直す局面ではないだろうか。

中東ビジネスの見通し

2025年6月の前回攻撃でも中東ビジネスは一時打撃を受けたが、その後回復して過去最高の利益を記録した。今回は規模も範囲も異なるが、中東市場そのものの成長性が消えたわけではない。問われているのは、好調時にこそ地政学リスクへの備えを怠らない姿勢だ。

 

 

 

まとめ:3月2日時点で押さえておきたいポイント

  • 企業対応:大手商社は退避・情報非公表、3メガは出張停止、JERAは退避指示
  • 攻撃範囲:イランだけでなくUAE・バーレーン・クウェートにも波及
  • ホルムズ海峡:事実上の封鎖状態。150隻以上のタンカーが足止め
  • 家計への影響:ガソリン200円超え、電気代・ガス代1割以上の値上がり試算
  • 中東ビジネス:3年連続で過去最高の好調から一転、戦略見直しの局面に

状況は流動的で、数日のうちに大きく変わりうる。
外務省の海外安全ホームページで最新の注意喚起を確認してほしい。
中東に家族や知人がいる人は、連絡手段を今のうちに確認しておくことが具体的な第一歩になる。

よくある質問(FAQ)

Q1. イラン攻撃でどの日本企業が中東から退避しているのか?

丸紅はテヘランから退避済み、JERAは中東の従業員17人と家族に退避指示、3メガバンクは出張を停止した。

Q2. なぜドバイやサウジアラビアでも退避が必要なのか?

イランの報復攻撃がUAE・バーレーン・クウェートにも及び、UAE国内ではドローン35機が落下し3人が死亡した。

Q3. ホルムズ海峡の封鎖で日本にどんな影響があるのか?

日本の原油輸入の8割近くがホルムズ海峡を経由しており、封鎖でガソリンや電気代の値上がりが見込まれる。

Q4. 日本の石油備蓄は何日分あるのか?

2025年12月末時点で国家備蓄と民間備蓄をあわせて約254日分。約8か月半に相当する。

Q5. ガソリン価格はどのくらい上がるのか?

野村総合研究所の試算では約3割上昇し、全国レギュラー平均で1リットル200円を超える見通し。

Q6. 中東行きの航空便はいつ再開するのか?

JALの羽田—ドーハ便は3月7日まで欠航が決定。その後は最新情報をもとに運航方針を決めるとしている。

Q7. 2025年6月の前回攻撃と何が違うのか?

前回は核施設3か所への1回限りの攻撃だったが、今回は1000以上の標的を攻撃し中東全域に影響が及んでいる。

Q8. ホルムズ海峡以外の原油輸送ルートはあるのか?

サウジは紅海沿いのパイプライン、UAEはフジャイラ港へのパイプラインがあるが、輸送能力は限られる。

Q9. 日本企業の中東ビジネスは今後どうなるのか?

攻撃が長期化すればM&A中断やプラント遅延で戦略見直しの企業が増えるが、撤退は現時点で報じられていない。

Q10. イラン攻撃はなぜ始まったのか?

米国はイランの核開発阻止を理由に挙げている。両国は交渉中だったが、2月28日に大規模攻撃が開始された。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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