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回転寿司の85%が回らないのはなぜ?二極化する業界の裏側

回転寿司の85%が回らない現状を示すアイキャッチ画像

| 読了時間:約8分

あなたが最後に"回る寿司"を取ったのは、いつだろう。
気づけば回転寿司は回らなくなった。

2026年3月、この流れに逆行するニュースが届いた。
くら寿司の公式発表によると、同社が「回転レーンで寿司を流す店舗数 世界一」としてギネス世界記録に認定されたのだ。

業界の85%が回転をやめたなか、なぜくら寿司は回し続けるのか。
そして回転を止めたスシローが選んだ"第三の道"とは。

 

 

 

回転寿司の85%が「回っていない」——迷惑動画だけが原因ではなかった

全国約5000の回転寿司店のうち、85%が寿司を回していない

📊 専門家の指摘

回転寿司評論家の米川伸生氏はTBSの取材で「近年の主流は無回転。全国に約5000ある回転寿司店のうち、85%が回っていない」と語っている。

5店行って、回っているのは1店だけ。
「回転寿司」の名前が実態と合わなくなっている。

「あの迷惑動画のせいだろう」と思った人は多いだろう。
たしかに2023年、スシローで客が醤油ボトルをなめる動画が拡散し、業界は大きく揺れた。

ところが、迷惑動画が原因迷惑動画は「最後の一押し」だったにすぎない。

📊 消費者調査の実態

同じくTBSの報道によると、マルハニチロの消費者調査(2023年)で「注文して握ってもらう」と答えた人が82.7%。レーンの寿司を取る人はすでに2割以下だった。

つまり迷惑動画が話題になるよりも前から、客の大半はタッチパネルで注文していた。
レーンを流れる寿司に手を伸ばす人は少数派だったのだ。

 

 

 

「脱・回転」は10年以上前に始まっていた

流れを時系列で追うと、全体像が見えてくる。

① 2012年
元気寿司「魚べい」が直線型の高速レーンを導入開始

② コロナ前
かっぱ寿司が回転レーン廃止の方針を発表

③ 2020年〜
コロナ禍で衛生意識が急上昇。各社が回転レーンの運用を見直す

④ 2023年1月
スシロー迷惑動画が拡散。全店で回転レーンを中止

⑤ 2023年〜
はま寿司が9割の店舗で回転レーンを完全撤去

ITmediaの報道によれば、かっぱ寿司はコロナ前から注文制の店を増やす方針を打ち出していた。
はま寿司も全575店舗のうち9割で回転レーンを撤去している。

迷惑動画の衝撃は大きかった。
しかしその下地には、10年以上にわたる「脱・回転」の流れがあった。


回さないと何が変わるのか

回転を止めた最大の恩恵は、食品の廃棄が減ることだ。

CIO Japanの取材記事によると、くら寿司ではAIを使った製造管理で廃棄率が12%から6%に半減した。
100皿つくって捨てていた12皿が、6皿に減った計算になる。

以前の廃棄率

12%

AI管理後

6%

富士経済の調査では、2024年の回転寿司市場は前年比6.2%増の8318億円
回転を止めても市場は成長を続けている。

こうして多くの回転寿司から"回転"が消えるなか、大手チェーンのなかでまったく異なる道を選んだ2社がある。

 

 

 

くら寿司「全694店で回す」vsスシロー「画面で回す」——真逆の戦略

くら寿司は全694店舗で物理的な回転を堅持。スシローはデジタル画面で回転を再現する「デジロー」を156店舗に導入した。

2026年3月2日、大阪・なんばパークスサウス。
くら寿司でギネス世界記録の認定証が授与された。

Lmagaの取材で、取締役の岡本浩之氏はこう語っている。
「レーンで流すことが回転寿司の存在意義そのもの。自分で選んですぐ取れるエンタメ要素を大切にしたい」。

🏆 ギネス認定の事実

くら寿司は大手回転寿司チェーンで唯一、国内外全694店舗で回転レーンを維持している。プレジデントオンラインの取材で広報担当の辻明宏氏は「社内で回転を止める議論は一度も出ていない」と明かした。

 

 

 

テクノロジーで「回すリスク」を抑える

回転を続けるには、衛生面のリスクを抑える技術がいる。

くら寿司は2011年から透明カバー「鮮度くん」を全店に導入した。
空気中のほこりや飛沫から寿司を守る仕組みだ。

カバーのQRタグでレーンに乗ってからの時間を管理し、鮮度が落ちる前に自動で撤去する。

さらに2023年からはAIカメラを拡張。
カバーの不審な開閉を検知すると本部にアラートが飛び、店舗が即対応する体制をとっている。


それでもリスクはゼロにならない。
ITmediaの報道によると、2025年10月にもくら寿司の山形県の店舗で来店客がレーン上の寿司を素手で触る迷惑動画が拡散した。

AIカメラで犯人は特定されたが、回転を続ける以上、こうしたリスクとは向き合い続けなければならない。

 

 

 

スシローが選んだ「デジタルで回す」という第三の道

一方、2023年に全店で回転レーンを止めたスシローは、別のアプローチを打ち出した。

デジローと呼ばれる大型タッチディスプレイだ。
65インチの画面に原寸大の寿司画像が流れ、気になるネタをタップすると注文できる。
2024年度のグッドデザイン賞を受賞した。

📱 デジローの導入状況

スシローのプレスリリースによると、2026年2月末時点でデジローの導入店舗は全国156店舗を突破。スシロー全約640店の4分の1に広がっている。

「目に入る」ことの力——なぜ回転レーンは売上に効くのか

2社の戦略は真逆だが、守ろうとしているものは同じだ。
それは「目に入る」体験の力である。

  くら寿司 スシロー
回転方式 物理レーン(全694店) デジタル画面(156店)
衛生対策 鮮度くん+AIカメラ 物理的な接触なし
エンタメ プレゼントシステム、スマイルチャレンジ ゲーム、デザイン切替
フードロス AI管理で廃棄率6% 注文分だけ調理

Lmagaの取材では、くら寿司の来客調査でこんな結果が出ている。
タッチパネルだと毎回同じ商品を頼みがちだが、回転レーンでは「頼んだことのないネタ」にも手が伸びやすい。

行動経済学でいうデフォルト効果に近い。
目の前を流れる寿司は「選ばなくていい選択肢」として自然に視界に入る。

タッチパネルでは自分から探す必要がある分、いつもの定番に偏りやすいのだろう。
スシローのデジローも、この「目に入る」効果をデジタルで再現しようとしている。

"物理で回す""デジタルで回す""回さない"——三つの道に分かれた回転寿司は、この先どこへ向かうのか。

 

 

 

「回転寿司」の名前は残るか——寿司が回らない未来の姿

「数年後には、"寿司がレーンを回る"ことを知らない世代が出てくるかもしれない」——米川氏の予測だ。

85%が回っていない現状を思えば、その日はそう遠くないだろう。
「回転寿司」という名前だけが残り、中身はまったく別のものになる——そんな未来が見え始めている。

「回す」ことで広がるエンタメの可能性

ただし、回転が消える一方通行のシナリオとは限らない。

くら寿司は回転レーンを「食品を届ける手段」から「エンタメ装置」へと再定義しつつある。
2024年秋に始めたプレゼントシステムは、特別メニューとメッセージを指定して注文すると、音楽つきの装飾が回転レーンを流れてくるサプライズ演出だ。78店舗で展開している。

🎪 万博での挑戦

2025年の大阪・関西万博では、くら寿司史上最長となる約135メートルの回転レーンを設置。約70か国の料理を寿司とともに流す実験的な店舗を出店した。

Lmagaの取材によると、特に子どもや海外からの観光客は回転レーンの方が「珍しい」「楽しい」と手を伸ばす傾向にある。

 

 

 

J-CASTニュースの報道では、くら寿司の2026年10月期の売上高は前期比4.9%増の2570億円で過去最高の見込みだ。
一方で営業利益は8.4%減の50億円と、コスト増の課題も抱えている。回転維持はタダではない。


三極構造の時代へ

⚠️ ここからは推測です

以下は報道された事実ではなく、収集した情報にもとづく筆者の見立てです。

回転寿司業界は、三つの型に棲み分けていくのではないだろうか。

代表チェーン 強み
物理回転型 くら寿司 エンタメ・インバウンド
デジタル回転型 スシロー 衛生と体験の両立
回転なし型 はま寿司・かっぱ寿司・魚べい 効率・フードロス削減

どれが正解ということではない。
「子どもを連れて回転レーンで楽しみたい」人はくら寿司へ。「できたてを手早く食べたい」人ははま寿司へ。ニーズごとに選べる時代が来ている。

「回転寿司」という名前の意味が変わりつつある。
回るか、画面で回すか、回さないか。選ぶのは、食べに行く私たちだ。

 

 

 

まとめ

  • 全国の回転寿司の85%はすでに回っていない。迷惑動画だけでなく、コロナ前からの消費行動の変化が背景にある
  • くら寿司は全694店で回転レーンを維持し、ギネス世界記録に認定。鮮度くんやAIカメラで衛生リスクを技術で抑えている
  • スシローは「デジロー」で回転体験をデジタルに置き換え、156店舗に拡大中
  • 回転寿司は「物理回転」「デジタル回転」「回転なし」の三極に分化しつつある
  • 次に回転寿司に行くとき、「この店は回るのか、回らないのか」を意識してみると、業界の変化が肌で感じられるはずだ

よくある質問(FAQ)

Q1. 回転寿司が回らなくなった理由は何ですか?

コロナ禍の衛生意識の高まりと2023年の迷惑動画が決定打です。ただし迷惑動画以前から消費者の82.7%は注文派でした。

Q2. 今も寿司が回っている回転寿司チェーンはどこですか?

大手では唯一くら寿司が全694店舗で回転レーンを維持しています。2026年3月にギネス世界記録にも認定されました。

Q3. スシローの「デジロー」とは何ですか?

65インチの大型タッチ画面に原寸大の寿司画像が流れ、タップで注文できるシステムです。全国156店舗に導入済みです。

Q4. くら寿司はなぜ回転をやめないのですか?

「回転は回転寿司の存在意義そのもの」という方針で、社内で回転中止が議論されたことは一度もないと公表しています。

Q5. 回転寿司のフードロスはどのくらい減りましたか?

くら寿司ではAIを使った製造管理により、廃棄率が12%から6%に半減しました。

Q6. 回転寿司の市場規模はどのくらいですか?

富士経済の調査によると2024年の国内回転寿司市場は前年比6.2%増の8318億円です。

Q7. くら寿司の「鮮度くん」とは何ですか?

2011年から導入された透明カバーで、ほこりや飛沫から寿司を守ります。QRタグでレーン上の滞在時間も管理しています。

Q8. 回転寿司は今後どうなりますか?

物理回転型(くら寿司)、デジタル回転型(スシロー)、回転なし型(はま寿司等)の三極構造に棲み分けが進むと見られます。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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