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上関町議選で中間貯蔵施設はどうなる?賛成5人は過半数に届かず

上関町議選で中間貯蔵施設はどうなる?賛成5人は過半数に届かず

| 読了時間:約8分

「賛成派が過半数」――だが、この数字は額面通りに受け取れない。

2026年2月22日、山口県上関町かみのせきちょうで8年ぶりの町議選が行われた。
中国電力が計画する使用済み核燃料の中間貯蔵施設ちゅうかんちょぞうしせつ建設が最大の争点だ。

有権者わずか1,944人の町が全国の注目を集めた。
西哲夫町長は「賛成派が過半数」と語ったが、内実はそう単純ではない。

当選者の得票数、無回答2人の過去の立場、そして町長の任期というタイムリミットから、今後の展開を読み解く。

 

 

 

上関町議選「賛成派過半数」の実態――賛成5人は過半数ではない

上関町議選で中間貯蔵施設への賛成が過半数を占めたと報じられたが、実態はもう少し複雑だ。
賛成と明言したのは5人で、定数10の過半数である6には届いていない。

「賛成派が過半数」。
この見出しだけ見ると、施設の建設はもう決まったように映る。


ところが内実を見ると、話は変わる。

選挙結果の内訳

山口朝日放送の報道によると、中間貯蔵施設建設に「賛成」と答えた当選者は5人
過半数の6には届いていない。残りは反対3人、無回答2人だ。

「勝ったのに減った」賛成派の誤算

さらに見逃せない事実がある。

中国新聞の告示前アンケートでは、改選前の現職10人のうち賛成は6人、反対は2人だった。
つまり今回の選挙で、賛成派は6から5に減り、反対派は2から3に増えた。

  改選前 改選後
賛成 6 5(−1)
反対 2 3(+1)
無回答 2 2(±0)

反対派の新人・国弘秀人氏が135票を得て初当選した。
KRY山口放送は「賛成派が半数を占めるも議席を減らす結果」と伝えている。

「賛成が多数」という構図は変わらない。
だが、その中身は改選前より賛成派に不利な方向へ動いた。

 

 

 

得票数で見る賛否のバランス

選挙ドットコムの公式データから、全12候補の得票を賛否別に集計してみる。

立場 候補者数 合計得票
賛成(落選2人含む) 7人 912票
反対 3人 380票
無回答 2人 230票

賛成派の得票が圧倒的に多い。
ただし賛成には落選した2人の票も含まれており、当選者同士で割れた結果、議席数では後退した。


もうひとつ、見落としがちな数字がある。
山口新聞によると、当日の有権者は1,944人。8年前より375人少ない。

投票者は1,533人で、411人が棄権している。
8年間で約16%の有権者が消えた。

投票した人だけでなく、投票しなかった411人の意思も、この結果には映っていない。

賛成5人では過半数に足りない。
残る焦点は「無回答」の2人と、建設の可否を判断する西哲夫町長の動きだ。

 

 

 

中間貯蔵施設はいつ、どう決まるのか――事業計画・町長任期・無回答2人のゆくえ

建設はまだ決まっていない。
中国電力が事業計画すら出していないからだ。

事業計画は未提出

貯蔵容量も施設の規模も、交付金の額も決まっていない。
町民はその情報がないまま、賛否を問われた。

中国新聞も「事業計画が分からなければ具体性を帯びた論争にはなりにくい」と指摘する。

では、建設の可否はどんな手順で決まるのか。

決定までに残された3つのステップ

ステップ1:中国電力が事業計画を提出する
中国電力の公式発表によれば、2025年8月に「立地は可能」との調査結果を町に報告済み。
ただし施設の規模や貯蔵容量を示す事業計画はまだない。

ステップ2:町議会で議論する
西町長はTBS NEWS DIGの取材に「選挙結果は計画受け入れの判断材料のひとつ」と答えた。
議会での議論を経たうえで判断する方針だ。

ステップ3:西町長が受け入れの可否を判断する
選挙ドットコムによると、西町長の任期は2026年10月22日に満了する。
あと約8か月だ。

 

 

 

「6対4」と読む町長、無回答2人の正体

西町長は選挙後、踏み込んだ発言をしている。

KRY山口放送によると、西町長は「おそらく議会構成では6対4になるのではないかと思う」と述べた。

アンケート上の賛成は5人なのに、なぜ6対4なのか。

カギは「無回答」の2人にある。
同じくKRY山口放送によると、この2人はいずれも現職だ。
2023年に立地可能性調査を受け入れるかどうかを問われた際、1人は賛成、もう1人は反対の立場だった。

町長はこのうち1人を賛成寄りと見込んでいるのだろう。
ただし無回答のまま当選した以上、今後の事業計画の中身や交付金の額しだいでは、どちらに転ぶかわからない。


⚠️ ここからは推測

2月8日の衆院選、山口県知事選、そして今回の町議選と、選挙が続いた。
中国電力がこの間に事業計画を出さなかったのは、選挙結果への影響を避けたかったためではないか。

一連の選挙が終わった今、事業計画の提出は意外と早いかもしれない。
町長の任期が10月に迫っている以上、春から夏にかけて動きが出てくるとの見方もある。

事業計画の提出から議会議論、そして町長判断へ。
もっとも、中国新聞の取材では「町長選で受け入れ可否を住民に問えばいい」と話す候補者もいた。
判断が10月の町長選に持ち越される展開も否定できない。

では、そもそもなぜ上関町にこの施設が計画されたのか。
背景には40年以上続く、ある分断がある。

 

 

 

なぜ上関町なのか――原発計画40年の分断が生んだ中間貯蔵施設

中国電力が一方的に持ち込んだ話ではない。
電力会社が押し付けた町長自ら振興策を要請したのが始まりだ。

計画浮上の経緯

中国電力の公式発表には「2023年2月に上関町長から地域振興策検討のご要請を受け」と記されている。

なぜ町長自ら要請したのか。
答えは、この町の歴史にある。

原発計画の頓挫と深刻な過疎

1982年、上関町に原子力発電所の建設計画が浮上した。
KRY山口放送によれば、それからおよそ45年にわたり、町は原発の賛否で分断されてきた。

2011年の福島第一原発ふくしまだいいちげんぱつ事故で、計画は中断する。
交付金や工事にともなう地元への発注もなくなり、町の財源は細った。

深刻な過疎高齢化

上関町第6次総合計画によると、町の人口は2,269人。高齢化率は58.8%にのぼる。
65歳以上が町民のほぼ6割を占め、0〜14歳はわずか132人、5.8%しかいない。

1960年代に11,000人を超えていた人口は、およそ5分の1にまで減った。
原発に代わる財源がほしい。その切実さが、中間貯蔵施設の受け入れ検討につながった。

 

 

 

中間貯蔵施設とは何か

原発で使い終えた核燃料を、再処理するまでのあいだ一時的に保管する施設だ。
金属製の頑丈な容器に核燃料を密封し、水や電気を使わず空気の対流で冷やしながら保管する。

この方式を乾式貯蔵かんしきちょぞうと呼ぶ。
発電はしない。あくまで「置き場所」だ。

中国電力関西電力が共同で検討しており、実現すれば青森県むつ市に次いで国内2か所目になる。


ただし「中間」という名前に、疑問の声もある。

使用済み核燃料の最終的な行き先は、青森県六ヶ所村ろっかしょむらの再処理工場だ。
しかしこの工場は完成の延期をくり返しており、稼働の見通しは立っていない。

再処理できなければ、搬出先がない。
「中間」が事実上の長期保管、あるいは永久貯蔵になるのではないか。
反対派の候補は「永久貯蔵施設になる懸念」を主張していたと、中国新聞が報じている。

40年の分断はくり返されるのか

選挙戦2日目、上関町室津の道の駅前。
反対派の新人が「危険な原子力財源に頼らなくても町を元気にする道はある」と訴えた。

約10分後、今度は賛成派の現職が同じ場所に立った。
「人が住まなければ美しい自然もなくなる」。

中国新聞はこのルポの中で、ある声を伝えている。

祝島いわいしまに暮らす92歳の女性はこう嘆いた。
「生きているうちに皆が仲良くする姿を見られるだろうか」

有権者1,944人。
大型マンション2〜3棟分の住民しかいない町で、全国の原子力政策に影響する判断が下されようとしている。

過疎で財源が足りない。だから原子力施設で補おうとする。
けれどその選択が町を分断し、さらに人が離れていく。
この構造は上関だけの話ではない。
日本各地の過疎自治体が抱えるジレンマの、もっとも先鋭的な形がここにある。

 

 

 

まとめ

  • 上関町議選で中間貯蔵施設に賛成と答えた当選者は5人。定数10の過半数である6には届いていない
  • 賛成派は改選前の6議席から5に減り、反対派は2から3に増えた
  • 中国電力は「立地は可能」と報告したが、事業計画はまだ出していない
  • 無回答2人の動向と、西町長の任期(2026年10月22日)が今後の焦点になる
  • 事業計画が出てから議会議論、そして町長判断へ。10月の町長選に持ち越される展開もありうる

よくある質問(FAQ)

Q1. 上関町議選の結果は?

定数10に対し賛成5人・反対3人・無回答2人が当選。投票率は78.86%だった。

Q2. 中間貯蔵施設の建設はもう決まった?

まだ決まっていない。中国電力の事業計画提出、議会議論、町長判断の3ステップが残っている。

Q3. 中間貯蔵施設とは何か?

原発の使用済み核燃料を再処理するまで一時的に保管する施設。金属容器に入れ空気で冷やす乾式貯蔵を採用する。

Q4. 無回答の2人はどちら寄り?

2023年の立地可能性調査の受け入れ時には1人が賛成、1人が反対の立場だった。

Q5. 上関町長選はいつ?

西哲夫町長の任期は2026年10月22日に満了する。

Q6. なぜ上関町に中間貯蔵施設が計画された?

2023年2月に西町長が中国電力に地域振興策を要請し、その回答として計画が浮上した。

Q7. 中国電力の事業計画はいつ出る?

提出時期は未定。ただし町長の任期が10月に迫っており、春から夏にかけて動きがあるとの見方もある。

Q8. 上関町の人口は?

2024年1月時点で2,269人。高齢化率は58.8%で、1960年代の約5分の1に減少している。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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