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市立川崎病院の麻酔科医が薬物不正使用——なぜ患者への説明は報道後になったのか

| 読了時間:約4分

手術中に麻酔科医が不在
川崎市立川崎病院で起きたこの事態は、単なる不祥事では済まされない。
病院は発覚から2ヶ月以上も患者に説明しなかったのだ。

2025年12月1日、28歳の麻酔科医が手術室を抜け出し、自分に麻酔薬を注射した。
さらに2026年1月には、薄めた麻酔薬を患者に投与していた。
なぜ病院は真実を伝えなかったのか。
患者の「知る権利」はどこにあったのか。

衝撃の経緯──手術中に麻酔科医が抜け出し、自分に麻酔薬を注射

少なくとも30分間、麻酔科医が不在だった。

2025年12月1日、川崎市立川崎病院の手術室で信じがたい事態が起きた。

渥美一哉医師(28)はこの日、40代女性患者の手術で麻酔を担当していた。
手術は午前9時から翌午前0時までの長時間手術。
午後8時ごろ、渥美医師は突然手術室を離れた。
向かった先は麻酔科医局だ。
そこで麻酔薬「プロポフォール」を自分の腕に注射した。ソファで横たわっているところを発見された[1][4]

少しでも睡眠を確保したかった」。
渥美医師はこう供述した。
数年前から不眠に悩まされ、衝動的に自己注射に及んだという[3]
麻酔科医不在の間、患者の容体に問題は生じなかったが。一歩間違えば重大な医療事故につながりかねない危険な行為だった。

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わずか2ヶ月の勤務で起きた異常行動

渥美医師は2025年10月に会計年度任用職員(非常勤)として。採用されたばかりの専攻医だった[4][6]
専攻医とは専門研修中の若手医師のことだ。
採用からわずか2ヶ月だ。長時間手術のプレッシャーと不眠症が重なった。この異常行動に及んだのではないかと見られている。

知ってる?麻酔科医が手術中に自分に麻酔薬を打って、そのままソファで寝てたんだって。

にわかには信じがたい話だが、これが現実に起きたことだ。
そして問題はこれで終わらなかった。

薄めた麻酔薬を患者に投与──濃度75%、2度目の事件

渥美医師は復帰後、さらに悪質な行為に及んだ。
麻酔薬を抜き取り、生理食塩水で薄めて患者に投与したのだ。

渥美医師は一度目の発覚後、自宅療養を経て2026年1月5日に職場復帰した。
ところが復帰からわずか2日後の1月7日、さらに悪質な行為に及ぶ。

この日、70代女性患者の手術で麻酔を担当した渥美医師は。プロポフォール20ml入りのシリンジ(注射筒)から5mlを抜き取った。代わりに生理食塩水を5ml注入した[1]
つまり、元の麻酔薬の濃度は75%に低下していたのだ。
この薄まった麻酔薬のうち8mlを、渥美医師は患者に投与した。

濃度75%の麻酔薬、独立検証は未実施

川崎市病院局は「患者の容体に問題はなかった」と説明している。なお、今回の事案は死亡・死産を伴わないため医療事故調査制度(医療法第6条の10)の対象外であり、病院局の判断は院内の自己評価に基づくものである。

渥美医師は1月8日にも同様の行為を試みた。
しかし、隠していたシリンジを看護師が発見。
事態は一気に表面化した。
2026年3月27日、川崎市病院局は渥美医師を懲戒免職処分にした[4]


なぜ希釈偽装に及んだのか

渥美医師は「自分で使うために麻酔薬を抜き取った」と供述している[1]
つまり、再び自己注射する目的で薬を盗んだ。発覚を防ぐために生理食塩水で薄め、患者に投与したのだ。プロポフォールは投与速度で効果を調整する薬剤であり、希釈時に投与量を補正することで臨床的影響を軽減できる。川崎市病院局は「患者の容体に問題はなかった」としており、補正投与が行われた可能性は否定できない。問題の本質は、患者のシリンジから薬物を抜き取り、自己使用目的で流用したという行為そのものにある。

自己注射の衝動を抑えられず、その結果として患者に薄めた麻酔薬を投与する──。
医師個人の倫理観の問題を超え、医療安全管理体制の根本的な欠陥を問わざるを得ない事案だろう。

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なぜ病院は2ヶ月以上説明しなかったのか──市長の「把握していなかった」発言

ここからが本題だ。
事件発覚から2ヶ月以上、病院は患者に一切説明しなかった。

川崎市立川崎病院のホームページにはこう掲げられている。
「患者には治療について知る権利を持ち」[2]
その理念とは正反対の対応だった。

2026年3月27日の記者会見で処分が公表された後も、患者への説明は行われなかった。
病院がようやく患者に電話連絡したのは、報道を受けた2026年4月上旬になってからだ[2]

もし自分が同じ状況だったらと想像してみてほしい。
手術中に麻酔科医が不在だったことや。薄めた麻酔薬を投与されたことを。2ヶ月以上も知らされない。
その間、何の不安も抱かずに過ごせただろうか。


市長が会見で明かした「認識の欠如」

では、なぜ病院は説明しなかったのか。
問題の核心は「隠蔽した」かどうかではない。事実調査・弁明機会の付与・懲戒委員会審議などの処分手続きを考慮すると、発生から約3ヶ月半での処分公表は公立病院の重大事案として特段異例ではない。問題は、処分公表(3月27日)後も患者への連絡がなく、報道を受けてようやく4月上旬に動いた点だ。
しかし、福田紀彦市長の記者会見での発言を見ると、事態はより根深い。

福田市長は2026年4月7日の定例会見でこう述べた。
「患者への説明の有無を、今の質問まで把握していなかった」[5]
市長はその場で回答を保留した。約3時間後に「事案を把握した時点で謝罪すべきだった」と文書で回答した。

この発言が示すのは、病院局が「患者に説明すべき事案だ」という認識すら持っていなかった可能性だ。
組織内でリスク情報が共有されず、説明責任の意識が希薄だったのではないか。
隠蔽したのではなく、説明する必要性そのものを感じていなかった──そのほうがむしろ深刻な問題だろう。

再発防止は可能か?患者が持つ「知る権利」と取るべき行動

川崎市は病院長を厳重注意し「ガバナンスの再構築」を求めた。
しかし、それだけで再発は防げるのか。

川崎市は福田市長の指示で、病院長を厳重注意し「ガバナンスの再構築」を求めた[2]
上司2名(局長級63歳、部長級57歳)には文書注意処分が下された。

再発防止策は現時点で公表されていない

麻酔薬の管理体制強化や長時間労働対策。医師の健康管理など、抜本的な見直しが必要になるだろう。

しかし、「再発防止は病院任せ」と考えるだけでは不十分だ。
患者自身が「知る権利」を意識すること自体が、医療機関への強力な抑止力になる。

医療法には「医療の担い手は、医療を提供するに当たった。適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」と定められている(医療法第1条の4第2項)。
この「インフォームド・コンセント」の考え方は、患者が主体的に医療に関わるための大前提だ。


もし自分が同じ状況に遭ったら

もしあなたや家族が、説明されないまま医療上の問題に直面したらどうすればいいか。

まず、病院内の患者相談窓口に相談する。
それでも解決しない場合は、各都道府県に設置されている医療安全支援センターが相談に応じている。
ここでは医療事故や医療安全に関する相談を無料で受け付けた。必要に応じて医療機関への助言や調査を行う。

「患者には知る権利がある」。
この当たり前の権利を守るのは。病院任せではなく、私たち患者自身の意識でもある。

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川崎市立川崎病院 麻酔薬不正使用事件の要点

  • 2025年12月1日、28歳の麻酔科医が手術中に抜け出し、自分に麻酔薬を注射。約30分間不在となった。
  • 2026年1月7日には、麻酔薬20mlから5mlを抜き取り生理食塩水で薄め、濃度75%の麻酔薬を患者に投与した。
  • 病院は発覚から2ヶ月以上、患者に説明も謝罪も行わなかった。
  • 福田市長は「把握していなかった」と発言。組織内で説明責任の意識が欠如していた可能性が浮き彫りになった。
  • 患者自身が「知る権利」を意識し、必要に応じて医療安全支援センターなどの相談窓口を活用することが再発防止の抑止力になる。

よくある質問(FAQ)

Q1. 川崎市立病院で何があったのか?

麻酔科医が手術中に麻酔薬を自己注射し、薄めた薬を患者に投与。
病院は2ヶ月以上説明しなかった。

Q2. 麻酔薬プロポフォールとは何か?

全身麻酔に使われる鎮静剤。
医師は不眠対策として自己注射した。

Q3. 薄めた麻酔薬を投与しても安全なのか?

病院は「人体への影響なし」と説明。
ただし独立した専門家の検証は未実施。

Q4. 病院はなぜ患者に説明しなかったのか?

市長が「把握していなかった」と発言。
組織内で説明義務の認識が欠如していたかもしれない。

Q5. 医師はどのような処分を受けたのか?

渥美一哉医師(28)は2026年3月27日付で懲戒免職処分。
上司2名は文書注意。

Q6. 過去にも同様の事例はあったのか?

医師による麻酔薬(プロポフォール等)の自己注射・依存は国内外で複数の事例が報告されており、医療安全上の継続的な課題とされている。

Q7. 患者はどこに相談すればいいのか?

病院内の患者相談窓口、または各都道府県の医療安全支援センターが無料で対応する。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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