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「ビールになったのに、なぜ安い?」
2026年10月、あなたが長年飲んできた金麦がビールに生まれ変わる。
「ビールになれば値段が上がる」と思うのが普通だろう。
ところがサントリーは、増税分だけを価格に反映し、できる限り価格を守ると宣言した。
その裏に、2023年の酒税改正でサントリー自身が確認した「ビール類から離れた消費者 4.3百万ケース 分」という痛い教訓がある。
880円という数字は安売りではない。
失敗から計算された、離脱を防ぐぎりぎりのラインだ。
この記事でわかること

ビール化で金麦はなぜ安いままなのか
91.3% が物価高を実感しているのに、金麦はビールになって値段を抑えてきた。
紀伊民報AGARA が伝えたサントリーの調査(対象 2万2238人 )では、食料品の価格が2007年から2025年にかけて 46.1% 上昇した一方、名目賃金(物価を考慮しない給与水準)の伸びはわずか 7.4% にとどまると明らかになっている。
財布が実質的に細っているのに、なぜビール化した金麦は価格を大幅に引き上げない設計にできたのか。
答えは税率の仕組みにある。
金麦 はこれまで「第三のビール」(麦芽以外の原料とスピリッツを組み合わせた発泡酒の一種)として販売されてきた。
ビールより税率が安かったからこそ店頭価格を低く保てた。
ところが 2026年10月の酒税改正 で、ビール・発泡酒・第三のビールの税率が350ml缶1本あたり 54.25円 に一本化される。
財務省 が公式に定めたこの改正により、第三のビールは増税、ビールは減税という方向で税率が揃う。
ここが 逆説の核心 だ。
金麦は製法を変えてビールに転換することで、「増税対象の第三のビール」から「減税対象のビール」側に移動できる。
共同通信 によると、サントリーはこの税率変化による影響分だけを価格に転嫁する方針を明らかにした。
つまり 「ビールになったから値上がり」 ではなく、 「ビールになることで増税を回避した」 という構造になっている。
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では、税率がそもそもどんな経緯で分かれ、なぜ今一本化されるのか——その歴史を知ると、今回の変化の意味がさらくっきり見えてくる。
ビール・発泡酒・第三のビールの税率がどう変わるか
三度の税率変更が、ビール業界の勢力図を静かに塗り替えてきた。
第一弾は 2020年 10月。
ビールの税率を引き下げ、第三のビールの税率を引き上げる方向で、段階的な見直しが始まった。
第二弾は 2023年 10月。
「新ジャンル」という分類が廃止され、それまで第三のビールとして売られていた商品群が発泡酒の区分に吸収された。
このとき第三のビールから発泡酒に移った商品は、実質的に 増税の対象 となった。
そして第三弾が今年10月の最終統一だ。
財務省 の公式資料によると、ビール系飲料の税率は350ml換算で 54.25円 に完全に一本化される。
ビールは減税、発泡酒・第三のビールは増税という方向で最終的に揃う形だ。
この改正が目指したのは 「税率の格差を使った商品開発競争の終止符」 だ。
ビールより安い区分に収まるよう、麦芽の比率や原料の配合を調整して価格を下げる——そうした税制の抜け穴を突く設計が、長年の業界慣習として定着していたとされる。
制度的な逃げ道がなくなることで、各社は「いかに安く見せるか」ではなく「いかにうまいか」で正面から競う環境に移行する。
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ならば、税率が揃うことを前提に、 サントリー はどんな価格の設計を選んだのか——そこには、3年前の失敗が深く刻まれている。
880円という価格に込めた2023年の教訓
4.3百万ケース ——2023年にビール類を離れた消費者の規模だ。
紀伊民報AGARA が伝えたサントリーの説明会データによると、2023年の酒税改正時、新ジャンル市場( 1億1200万ケース 規模)のうち 7.4百万ケース が「酒の量を減らした」という形で消え、さらに 4.3百万ケース がビール類そのものを飲まなくなった。
合わせると、ビール類市場全体の約 4% に相当する消費者が離れた計算になる。
この数字を サントリー 自らが今回の説明会で開示した。
⚠ 2023年の酒税改正で起きたこと
新ジャンル市場から 7.4百万ケース分が酒量を削減 し、さらに 4.3百万ケース分がビール類そのものをやめた 。
ビール類市場全体の約 4% が一度に消えた規模だ。
その教訓を受けて設計されたのが「プレミアム・スタンダード・デイリー」という価格の三段構えだ。
共同通信 によると、350ml・6缶パック(税抜き)でプレミアム 1,130円 ・スタンダード 1,030円 ・デイリー 880円 という価格の階段が示された。
デイリーとスタンダードの差は 150円 。
単純計算すると、週3日・1日2缶飲む家庭がデイリーを選び続けた場合、スタンダードと比べて年間で約 7,800円 (150÷6×2缶×3日×52週)の差になりうる。
「たかが150円の差」が積み重なると、 1年で7,800円の違いになる 。
📐 年間の差額を計算すると
150円(差額)÷ 6缶 × 2缶/日 × 3日/週 × 52週 = 約7,800円/年
※単純計算。
実際の節約効果は購入頻度・販売店によって異なる
共同通信 によると、 西田英一郎 社長は記者会見でこう語った。
「金麦のビール化で『デイリービール市場』の創造に挑戦する。
手ごろな価格で満足感を楽しんでほしい」。
その言葉の背景には、将来的に年間 3500万ケース を目指すという目標がある。
現在の 2850万ケース 程度から積み上げるには、まず既存の飲み手を離さないことが前提になる。
行動経済学に「選択アーキテクチャ(人が選択肢をどう提示されるかによって意思決定が変わるという理論)」という考え方がある。
デイリー・スタンダード・プレミアムという三段構えは、消費者が「今日は安いもので」と自分で選ぶ余地を残すことで、ビール類全体からの離脱を防ぐ設計になっているのではないか。
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880円という値段は「安売り」じゃなくて、 「飲むのをやめさせないぎりぎりのライン」 として計算されている——2023年に 4.3百万ケース 分の消費者が「お酒をやめた」という事実を踏まえると、最も怖い競合は他社ブランドではなく、 「酒を飲むのをやめる」という消費者の選択そのもの だろう。
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価格は守った。
では、中身はどこまで変わったのか——新商品「豊潤」には、意外な出所がある。
新商品「豊潤」はプレミアムモルツの技術をデイリーで飲む
「 上位ブランドの技術を注ぎ込んでいる 」——豊潤の製法はプレミアムモルツ直系だ。
金麦〈豊潤〉 は10月13日に発売される。
アルコール度数は 6% と、ビール化した金麦本体( 5.5% )より高めに設定されている。
コクと飲みごたえを重視する層に向けたブランドと位置づけられている。
金麦〈豊潤〉の3つの製法
① ダイヤモンド麦芽 :欧州産の希少な麦芽。
ザ・プレミアム・モルツでも使われる上位素材
② ダブルデコクション製法 :原料を二度煮出す製法。
麦のうまみとコクを引き出す
③ 銅炊き仕込み :銅製の釜で仕込む製法。
通常は上位ブランド向けの技術
Impress Watch によると、ダイヤモンド麦芽の使用、原料を二度煮出すダブルデコクション製法、銅製の釜で仕込む銅炊き仕込みという三つの技術が使われる。
いずれも ザ・プレミアム・モルツ で培った技術で、通常は上位ブランドに使われる手法だ。
「デイリービールだから製法も手軽なはず」 ——その思い込みは、ここで覆される。
プレミアム価格帯で磨いた製法を、デイリー価格帯に降ろす という価値の逆転が豊潤の設計意図にあるのではないか。
飲みやすさ重視・コク重視・機能重視という三つの飲み口すべてを金麦ブランド内で受け止め、他ブランドへの流出を防ぐ構えだ。
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新商品が加わる一方、長年親しまれてきた「金麦〈ザ・ラガー〉」は姿を消す——10月、売り場は何がどう変わるのか。
金麦〈ザ・ラガー〉が終わり、10月に何が変わるか
10月6日、スーパーのビールコーナーに金麦が並ぶ—— ザ・ラガーはもうない 。
共同通信 によると、 10月6日 に 金麦 (ビール化)と 金麦〈糖質75%オフ〉 が、 10月13日 に 金麦〈豊潤〉 が全国で発売される。
一方、サントリーは 金麦〈ザ・ラガー〉の生産終了 を明らかにした。
ラガー系の味わいを好んでいた愛飲者にとっては、選択肢が一つ消える形になる。
業界全体の流れを見ると、 ITmedia ビジネスオンライン によると第三のビールのシェアは 2020年 ごろの約 4割 から近年では約 2割 に低下している。
税率格差という「安さの根拠」が薄れるにつれ、消費者がビールへと戻ってきた結果だ。
東洋経済オンライン によると、金麦は 2025年 実績でブランド合計約 2970万ケース を販売し、サントリーのビール類売上のおよそ 半分 を占める看板商品だ。
これまで
「安いから第三のビール」という基準で選ぶ。
発泡酒コーナーに金麦が並ぶ
10月以降
税率が揃い「何を飲みたいか」で選ぶ時代へ。
ビールコーナーに金麦が移動する可能性がある
10月以降、あなたの近くのスーパーの酒売り場でも変化が起きる。
これまで「発泡酒」コーナーにあった金麦が、「ビール」コーナーへと移動する可能性がある。
同じ価格帯でビールが選べる環境になることで、「安いから第三のビール」という基準で飲み物を選んでいた人の選択肢が変わる。
9月末までに現行の金麦をまとめ買いするか、 10月6日 に新しいビールとしての金麦を試すか。
その選択が、サントリーが描く「デイリービール市場」の成否を決める最初のテストになる。
ℹ 10月の売り場変化・チェックポイント
スーパーやコンビニで金麦を探す際は 「発泡酒」コーナーではなく「ビール」コーナー を確認しよう。
パッケージも一新され、中央に「生ビール」の文言が入った新デザインに切り替わる。
現行デザインは7月出荷分から順次変更が始まっている。
「安いから選ぶ」時代が終わり、「何を飲みたいか」で選ぶ時代が始まる—— その最前線に、880円という価格で立っているのが新しい金麦だ。
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まとめ
- 2026年10月の酒税改正でビール系飲料の税率が350ml缶1本あたり54.25円に一本化され、第三のビールは増税・ビールは減税の方向に揃う
- 金麦は製法を変えてビールに転換することで増税対象を避け、上昇分は酒税改正分のみに抑える設計。350ml・6缶パックの想定価格はデイリー880円で、スタンダードより150円安い(年換算で週3日・1日2缶飲む場合、単純計算で約7,800円の差になりうる)
- 880円という価格の背景には2023年の酒税改正でビール類を飲まなくなった消費者が4.3百万ケース分いたというサントリー自身の痛い経験がある
- 新商品「金麦〈豊潤〉」にはザ・プレミアム・モルツで培ったダイヤモンド麦芽・ダブルデコクション製法・銅炊き仕込みが使われており、デイリー価格でプレミアム技術を飲める設計になっている
- 金麦〈ザ・ラガー〉は生産終了。10月6日以降、スーパーの酒売り場で金麦の陳列コーナーが変わる可能性がある
よくある質問(FAQ)
Q1. 金麦はいつからビールになるの?
2026年10月6日に金麦・金麦〈糖質75%オフ〉がビールとして発売される。
金麦〈豊潤〉は同年10月13日に発売される。
Q2. 金麦がビールになったら値段はどうなる?
350ml・6缶パックの想定価格はデイリービールとして880円程度(税抜き)。
スタンダードビール(1,030円)より150円安い設定で、増税分のみを価格に反映する方針だ。
Q3. 金麦がビールになる理由は何?
2026年10月の酒税改正でビール・発泡酒・第三のビールの税率が54.25円に一本化される。
第三のビールは増税になるため、ビールに転換することで増税を避ける設計になっている。
Q4. 金麦〈ザ・ラガー〉はどうなる?
金麦〈ザ・ラガー〉は生産終了となる。
代わりに2026年10月13日から「金麦〈豊潤〉」が新たにラインアップに加わる。
Q5. 金麦〈豊潤〉とはどんなビール?
アルコール度数6%のビールで、ザ・プレミアム・モルツで使うダイヤモンド麦芽・ダブルデコクション製法・銅炊き仕込みという製法を採用。
コクと飲みごたえを重視した仕上がりとされる。
Q6. 発泡酒や第三のビールの値段は2026年10月以降どう変わる?
発泡酒・第三のビールは増税の方向で税率が変わり、ビールとの価格差が縮まる。
ビールは減税になるため、これまで「安いから」という理由で選んでいた商品が値上がりする可能性がある。
Q7. ビール・発泡酒・第三のビールの税率はいつから統一されるの?
2026年10月に統一される。
財務省の公式資料によると、350ml換算で54.25円に一本化される。
2020年・2023年・2026年の3段階で段階的に進めてきた改正の最終段階だ。
📚 参考文献
- 財務省「酒税に関する資料」
- 共同通信b.「ビールになった『金麦』、10月6日デビュー 〈豊潤〉も新登場、サントリーが酒税改正後のビール戦略発表」 (2026年7月16日)
- Impress Watch「サントリー『金麦』"ビール"になる 酒税改正で10月6日発売」 (2026年7月16日)
- 紀伊民報AGARA「金麦のビール化、350mlの6缶パック『880円』をユーザーはどう判断する? 物価高時代の"デイリービール"を狙う」 (2026年7月17日)
- ITmedia ビジネスオンライン「『金麦』『本麒麟』『クリアアサヒ』が第3のビール→ビールに『昇格』へ」 (2026年5月6日)
- 東洋経済オンライン「〈新社長に聞く〉サントリー、『金麦』ビール化は一世一代の勝負!」 (2026年5月28日)
- jbja.jp
- news.yahoo.co.jp
- column.finance.ponta.jp
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リアルタイムニュースNAVI 編集部
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