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絆ホールディングス倒産:障害者支援の給付金150億円不正受給の全貌

| 読了時間:約5分

障害者を「支援」する会社が、障害者を使って150億円を稼いでいた。

大阪の福祉事業会社「絆ホールディングス」グループが、障害者向けの就労支援給付金を約2年間にわたって不正に受け取り続けたとして、大阪市から事業者指定の取り消しと110億円超の返還請求を受けた。

払えなかった。

その結果、2026年6月22日に会社更生法を申請した。

負債の総額は約289億円。

日本の社会福祉事業者グループとしては過去最大の倒産額だ。

しかも行政は、この不正を2022年の時点で察知していた。

それでも止められなかった。

絆ホールディングス倒産:障害者支援の給付金150億円不正受給の全貌

289億円の倒産、何が起きたのか

289億円 ——これは日本の社会福祉事業者グループとして 史上最大の倒産額 だ。

絆ホールディングス と関連会社「 JOB connect 」「 レーヴ 」「 リベラーラ 」の3社は、2026年6月22日に大阪地裁へ 会社更生法 (事業を続けながら借金を整理する法的手続き)の適用を申請した。

同日、保全管理命令も受けた。

NPO法人「 リアン 」は同じ日に自己破産を申請している。
関西テレビ放送カンテレ が伝えた。

何が問題になっていたのか。

大阪市は 2026年3月27日 、絆HDグループの 4 つの「就労継続支援A型事業所(障害のある人と雇用契約を結んで働く場を提供し、一般企業への就職を目指す福祉施設)」に対し、事業者指定の取り消しという最も重い行政処分を下した。

理由は、国や自治体から受け取る給付金の 不正受給 だ。

被害の規模は大阪市だけにとどまらない。

関係する自治体は全国 14都府県・104市町村 に及んだ。

不正受給の認定総額は 約150億円 にのぼる。


289億円
負債総額
5社合計・過去最大
150億円
不正受給額
全国認定総額
110億円超
返還請求額
大阪市分・罰則含む

過去最大という基準も具体的に確認しておきたい。
帝国データバンク によると、2024年5月に民事再生法を申請した株式会社コペルがそれまでの最大規模だったが、今回の絆HDグループはそれを上回った。

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では、 150億円 ものお金をどうやって受け取ることができたのか——その手口を次で解剖する。

150億円を生んだ「36か月プロジェクト」の仕組み

同じ障害者が、同じ場所で、同じ仕事をしながら「就職」と「戻り」を繰り返していた。

不正受給というと、 お金を横領したり着服したりするイメージがある

しかし実態はまったく違う。

制度の仕組みそのものを使って、合法的に見える形で給付金を積み上げていた

これが今回の事件の核心だ。

仕組みを理解するには「 就労移行支援体制加算 (一般企業に就職した障害者が6か月以上働き続けると事業所に上乗せされる報酬)」という制度を知る必要がある。

この加算には特徴がある。

就職した本人の分だけ増えるのではなく、そのとき事業所に在籍している「 全利用者分 」の日当が底上げされる仕組みなのだ。

つまり、就職実績が1人増えると、事業所全体への給付金がまとめて増える。

日本経済新聞 が伝えた。

絆HDはこの構造を使った。

グループ内では「 36か月プロジェクト 」と呼ばれた手口だ。

①利用者をグループ内の関連企業に「一般就労」として半年間雇用する→②就労実績として行政に申告し加算を受け取る→③また利用者に戻す——このサイクルを繰り返した。

  1. 利用者をグループ内企業に「一般就労」として 6か月 雇用する
  2. 就労定着実績として行政に申告し、就労移行支援体制加算を受け取る
  3. 利用者をA型事業所に戻す
  4. ①〜③を同じ人物で繰り返し、加算を 何度も積み上げる

実際の仕事内容も環境も変わっていないのに、書類の上では「就職→定着→復帰」が繰り返された。
帝国データバンク によると、大阪市はこれを「事業所の主導により計画的に自社雇用への移行を繰り返すことで、過大に就労定着者を創出した」と断定している。

単純な概算をしてみる。

全国不正認定総額 150億円 を、大阪市分で申告された延べ 1,114人 (2024年4月〜2026年1月)で割ると、 1人あたり約1,347万円の公費が引き出された計算 になる。

1人の障害者が「回転」するたびに、その何倍もの給付金が全利用者分の加算として積み上がる構造だった。

全国不正認定総額 150億円 ÷ 大阪市分申告人数 1,114人 (概算)= 約1,347万円 /人

※大阪市分の人数と全国総額の組み合わせのため「単純計算での概算値」

パンフレットには「何度でもチャレンジできる」と書かれていた。

実態は、利用者が自分の働き方の変化に気づかないまま「加算を生み出す道具」になっていた可能性がある、というのが複数の元職員の証言が示すことだ。

だが最大の謎が残る——大阪市は 2022年 の時点でこの「異常な数字」に気づいていた。

なぜ止められなかったのか。


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国も市も知っていたのに止まらなかった理由

違法と指摘するのは難しい 」——これが当初の国の回答だったとされる。

厚生労働省 の対応記録が示すように、大阪市は 2022年度 、絆HDの事業所からの加算申請が前年度の数十倍に跳ね上がっていることを検知した。

異常だと判断し、厚生労働省に相談した。

しかし当時の法令上、グループ内での就労と復帰を繰り返す行為を直接禁じる規定は存在していなかった。

「違法と指摘するのは難しい」という回答が返ってきたとされている。

2024年4月 、厚労省はついにルールを改定した。

一度加算対象になった障害者については、その後 3年間 は再び加算対象にできないという「 3年ルール 」を設けた。

しかし絆HD側はこのルールを「改正前の加算歴には遡って適用されない」と解釈し、同年度以降も同じ手口で請求を続けた。
日本経済新聞 が伝えた。

ここには、経営組織論で「 エージェンシー問題 (委託者と代理人の利益がずれることで生じる構造的な問題)」と呼ばれる状況に当てはまる可能性があるのではないか。

国や自治体(委託者)は事業所(代理人)の現場を直接見ることができない。

書類が揃っていれば給付金を支払う仕組みになっている。

事業所側は「書類上の実績」を最大化するほど収入が増える。

監視する側には現場の実態を確認するコストと手段がなく、される側には実績を水増しするインセンティブ(動機)がある——この構造が成立していた可能性がある。

委託者
国・自治体(行政)

書類を審査して給付金を支払う。

現場の実態を直接確認する手段がない。

代理人
福祉事業所

書類上の実績を増やすほど収入が増える構造。

実態との乖離が生まれやすい。

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「行政は書類しか見ていなかった。

だから書類さえ正しく作れば、現場で何が起きていても 2年間 気づかれなかった」——これがこの事件の本質だ。

もう一段深く考えると、これは絆HD固有の問題ではないことが見えてくる。

「書類が揃っていれば指定を認可する」という行政の運用慣行と、グループ内就労を禁じる明文がなかった制度設計が組み合わさったとき、同じことが別の事業所でも起きうる。

今回の制度改正は応急処置に過ぎないのではないか——その答えは最後のセクションで触れる。

ところで、この会社はそもそも何者だったのか。

出自を知ると、この事件の見え方が変わる。


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元は結婚相談所だった、という事実

2012年 、大阪の結婚相談所が産声を上げた——それが絆ホールディングスの始まりだ。

帝国データバンク によると、絆ホールディングスは 2012年1月 結婚相談所として設立 された。

その後、放課後等デイサービスへ業態を転換。

さらに、障害者を一般企業へ就職できるようにサポートする就労支援事業にも事業領域を広げた。

就労継続支援A型事業所を運営する関連会社を 2015年12月 以降、順次設立していった。

2012年1月
設立

大阪市で 結婚相談所 として設立

2015年〜
参入

放課後等デイサービスへ転換後、 就労継続支援A型事業所 を順次設立

2022年度
察知

大阪市が加算申請の 異常な急増 を検知。

厚労省に相談するも「違法と言えない」

2023年3月期
最盛期

年間収入高 約23億9,900万円 を計上

2024年4月
改定

厚労省が「 3年ルール 」を設けるも、絆HD側は請求を継続

2026年3月27日
処分

大阪市が4事業所の 指定取消処分 ・返還請求 110億円超 を発表

2026年6月22日
申請

会社更生法 を申請。

負債 約289億円

史上最大の社会福祉倒産へ

設立から約 11年 後の 2023年3月期 には、年間収入高が 約23億9,900万円 に達した。

結婚相談所から始まった会社が、 10年 余りで福祉事業の大きな柱を持つグループに変わった。

なぜ、専門外の企業が福祉事業に参入してここまで規模を拡大できたのか。

就労継続支援A型事業所の指定は、必要な書類と人員配置の基準を満たせば下りる仕組みになっている。

医師免許や建築士のような専門資格が参入条件ではない。

事業を始めさえすれば、利用者の人数に応じた給付金が国や自治体から安定的に入ってくる。

事業経験のない企業でも参入できる構造になっていた可能性があるのではないか。

会社のホームページには「しあわせをカタチに。

」という経営理念が掲げられていた。

下川弘美 代表は事業所閉鎖に際して動画で「利用者の皆様、従業員の皆様に多大な迷惑をおかけしていること、深くお詫び申し上げます」と語った。

一方で「見解の相違があり、法廷で主張すべき点は主張し、誠実に対応していく」とも述べており、不正の認定については争う姿勢を示している。
読売新聞(Yahoo!ニュース) が伝えた。

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では今、その会社が管理していた 1,340人 はどこへ向かうのか。

障害者1340人はこれからどうなるのか

会社更生法を申請した翌日も、事業所は「 平常どおり営業 」している。

倒産=即廃業・消滅 」と思いがちだが、今回適用された 会社更生法 は清算のための手続きではない。
事業を続けながら借金の整理と立て直しを目指す 、いわば「経営再建のための法的保護」だ。

破産 (資産をすべて換金して清算する手続き)とは根本的に違う。

裁判所が選任した保全管理人が経営を引き継ぎ、事業継続と承継先の探索を並行して進める。

会社更生法
今回の絆HD

事業を続けながら借金を整理する「再建型」の手続き。

残存事業は継続中。

破産
NPO法人リアン

資産を換金して全債務を清算する「清算型」の手続き。

事業は終了する。

今回の 1,340人 という数字の内訳を確認しておきたい。

不正認定された 4 つのA型事業所はすでに 2026年4月末 に閉鎖済みで、そこに通っていた利用者が 334人 、スタッフとして雇用されていた障害者が 1,006人 だった。

一方、残る事業(障害児通所支援事業・相談支援事業)については、保全管理人の 野上昌樹 弁護士が「 2026年6月22日 以降も平常どおり、営業しております」と明言している。

閉鎖済みのA型事業所とそれ以外の事業は、すでに別のフェーズにある。

受け皿の確保も動き始めた。

東京や大阪を中心とするA型事業所など 26法人 2026年4月 に「 関西障害福祉事業者連盟 」を結成し、 約150人 を受け入れる方針を示した。

厚生労働省 も大阪府内のすべてのハローワークに障害者向けの特別相談窓口を設けるよう大阪労働局に指示した。

ただし、行き場を失う利用者の受け皿が全員分整う保証はない、という状況だ。

あなたの身近に絆HDの事業所を使っていた人がいる場合、今すぐハローワークや各市区町村の障害福祉窓口に相談することが実際に取れる行動になる。

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では制度全体は、この事件を受けてどう変わろうとしているのか。

この事件は制度の何を変えるのか

絆HDの倒産から 3か月 も経たないうちに、大阪府八尾市で同じ手口が発覚した。

2026年5月 、八尾市の就労継続支援A型事業所「 テイラーズ・ギルド 」が関係会社に利用者を就職させたものの就労の実態がなかったとして、指定取り消しの方針が示された。

絆HD問題は 氷山の一角にすぎない という見方が業界内に広がっている。

国の動きは速かった。

本来なら 3年 に一度の報酬改定サイクルを待つところ、 令和8年度(2026年度) に就労移行支援体制加算の見直しが期中改定として実施された。

異例の早さ だ。

これにより、加算の循環取得を防ぐためのルールが強化された。


⚠ ただし、厚生労働省の資料には「 令和9年度 報酬改定に向けて、就労移行支援体制加算のあり方については改めて議論する」と明記されている。
今回の改定が制度の穴を完全に塞いだとは言い切れない状況 だ。

実地指導の体制が実質的に強化されなければ、書類審査に依存する構造は変わらない。

A型事業所を使っている障害者の家族、またはこれから利用を検討している場合に確認しておきたいことがある。

年間の一般就労移行実績が極端に多い事業所 」は要注意のサインになりうる。

1 つの事業所から年間数十人〜数百人が一般就労に移行しているという申告は、それ自体が異常値だった——これが今回の不正を最初に察知したきっかけだったからだ。

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元は結婚相談所だった会社が 10年 289億円 の倒産に至るまでの経緯は、「誰でも参入できる制度」と「書類しか見ない監査」が重なったとき、どれほどの規模の穴が開くかを見せてくれた。

まとめ

  • 絆ホールディングスは「36か月プロジェクト」と称し、利用者をグループ内企業に半年間就労させては戻す循環を繰り返すことで就労移行支援体制加算を多重取得し、全国14都府県・104市町村から約150億円を不正受給したとされる
  • 不正の規模が150億円に膨らんだ理由は、加算が就職実績者数と在籍全利用者数の「掛け算」で算出される制度設計にある。1人の実績が事業所全体の給付単価を底上げする仕組みが悪用された
  • 大阪市は2022年度に異常な数字を把握していたが、当時は「違法と指摘するのは難しい」という状況が続いており、2024年4月の制度改定後も不正請求が継続した
  • 2026年6月22日の会社更生法申請後も、障害児通所支援などの残存事業は継続中。ただし不正認定された4つのA型事業所はすでに4月末に閉鎖済みで、1,340人の行き先が問われている
  • 2026年5月には大阪府八尾市の別事業所でも同種の手口が指摘された。令和9年度の報酬改定で抜本的な見直しが予定されているが、書類審査に依存する監査体制が変わらない限り、問題は形を変えて繰り返される可能性がある

よくある質問(FAQ)

Q1. 絆ホールディングスはどんな会社?

大阪市中央区に本社を置く福祉事業会社。
2012年に結婚相談所として設立し、放課後等デイサービスを経て障害者就労支援事業に参入した。

2023年3月期の年収入高は約23億9,900万円だった。

Q2. 絆ホールディングスの不正受給はどんな手口だった?

「36か月プロジェクト」と称し、利用者をグループ内企業に半年間雇用して就労実績を作り、就労移行支援体制加算を受け取った後に利用者に戻すサイクルを繰り返した。

全国14都府県・104市町村で計約150億円の不正受給が認定されている。

Q3. なぜ2年間も不正が止まらなかったの?

大阪市は2022年度に異常な加算申請を把握していたが、当時の法令にはグループ内就労を直接禁じる規定がなく「違法と指摘するのは難しい」という状況が続いた。
2024年4月に「3年ルール」が設けられた後も請求は継続された。

Q4. 会社更生法を申請したら会社はどうなる?

会社更生法は清算ではなく「事業を続けながら立て直す」ための法的手続き。

裁判所が選んだ保全管理人が経営を引き継ぎ、事業を継続しながら借金の整理と承継先の探索が進められる。

破産(資産を換金して清算する手続き)とは異なる。

Q5. 障害者の利用者はどうなるの?

不正認定された4つのA型事業所は2026年4月末に閉鎖済みで、利用者334人・スタッフ雇用障害者1,006人が影響を受けた。
26法人が結成した「関西障害福祉事業者連盟」が約150人の受け入れを表明し、大阪府内の全ハローワークに特別相談窓口が設けられている。

Q6. 絆ホールディングスの社長は誰?

代表取締役は下川弘美氏。

事業所閉鎖の際に「多大な迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げます」と謝罪する一方、不正認定については「見解の相違があり法廷で主張すべき点は主張する」と述べている。

Q7. 同じ手口の不正は他の事業所でもある?

2026年5月、大阪府八尾市の就労継続支援A型事業所「テイラーズ・ギルド」でも同種の手口による不正が指摘され、指定取り消しの方針が示された。

Q8. 就労移行支援体制加算の制度はこれから変わる?

厚労省は2026年度に異例の期中改定を行い、就労移行支援体制加算の循環取得を防ぐルールを強化した。

ただし抜本的な見直しは令和9年度の報酬改定で改めて議論される予定で、今回の改定が制度の穴を完全に塞いだとは言い切れない状況だ。

📚 参考文献

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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