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日の丸を燃やしたら、今より重く罰せられる——それは間違いだ。
2026年6月26日、日本国旗を傷つける行為を罰する新しい法律が衆院内閣委員会で可決された。
「成立を契機に愛国心が醸成される」と提出者の議員は語った。
ところが実際の罰則の上限は、すでにある「器物損壊罪(他人の物を壊した場合に適用される罪)」の刑より軽い。
「重くなる」どころか「軽い」法律が、なぜ今の国会に存在するのか。
この記事でわかること
「愛国心が醸成される」——維新議員が語った狙い
「成立を契機に国旗を大切にする気持ちが醸成され、 愛国心も醸成されていく 」—— 日本維新の会 の 阿部圭史 衆院議員が2026年6月26日に語った言葉だ。
阿部議員はこの日、衆院内閣委員会に提出者として出席した。
Web東奥(共同通信配信)
が伝えたとおり、法案は同日、賛成多数で可決された。
提出したのは
自民・維新・国民民主・参政
の4党だ。
法案の正式名称は「
国旗の損壊等の処罰に関する法律案
」。
自由民主党の公式サイト によると、この法律が「守ろうとしている利益(保護法益)」は「 国旗を大切に思う国民感情 」とされている。
4党は来週の衆院本会議で可決し、参院に送付したいと考えているとされる。
では、この法律で具体的に何をしたら捕まるのか。
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お子様ランチの旗は?アニメは?セーフとアウトの線引き
自分で買った日の丸を自宅で破っただけでも、捕まる可能性がある法律だ。
罰則の対象は「
人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法
」で、国旗を公然と壊したり、汚したりする行為だ。
刑罰は
2年
以下の拘禁刑または
20万円
以下の罰金となる。
自民党公式サイト「国旗損壊罪を新設 法案を了承」 が法案の内容を公開している。
一方、対象外とされるものも明確に示されている。
以下はいずれも処罰されない。
- 「お子様ランチの旗」「絵画の一部に描かれた旗」
- アニメ・マンガ・ゲーム・生成AIの創作物
- 国旗を損壊する様子を第三者がSNSにリポストする行為
- 報道機関が損壊の様子を映像で報じる行為
また、国旗を損壊する様子をSNSに投稿することを禁じる規定は、修正の過程で
全面削除
された。
東京新聞
によると、国民民主党の「表現の自由への過度な侵害になりかねない」という主張を受け入れた形だ。
ただ、「著しく不快または嫌悪の情を催させる」という基準がどこからを指すのかは、実際に適用されるまで 線引きが見えにくい 部分が残るだろう。
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海外では同じような法律はどうなっているのか。
そこには意外な事実がある。
アメリカでは"保守派の判事"も違憲とした
フランス・ドイツ・韓国に国旗損壊罪がある一方、アメリカでは 2 度、連邦最高裁が 違憲 と判断した。
自民党公式資料「各国の事例を研究し議論」
によると、国立国会図書館の説明では、自国国旗の損壊に関する刑罰がある主要国として米国・フランス・ドイツ・イタリア・中国・韓国の
6カ国
が挙げられている。
「海外もそうしているから日本もすべき」という議論の根拠になってきた事実だ。
しかし米国は少し違う。
1989
年のテキサス州対ジョンソン事件で、連邦最高裁は国旗損壊を禁じる州法を
違憲
と判断した。
驚くのは、共和党(保守系)のロナルド・レーガン大統領が指名した保守派の
アントニン・スカリア
判事も、この違憲判決を支持したことだ。
1990
年には連邦法の「国旗保護法」も同様に違憲とされた。
⚠
香港の実例
:
Human Rights Watch
によると、香港では国旗損壊を禁じる法律が民主活動家の弾圧に使われてきた。
2019年には
13
歳の女の子が中国国旗を燃やしたとして
12か月
の保護観察処分を受けた事例がある。
国旗損壊罪が法文上は存在する国でも、実際の運用では表現の自由の観点から極めて限定的にしか適用されていないとの指摘がある。
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では、日本の新しい法律の罰則は、実際どのくらいの重さなのか。
そこに驚くべき「逆転」がある。
他人の国旗を壊した方が罪が重い、という「逆転」
他人の国旗を壊せば最大
3年
。
でも新しい「国旗損壊罪」の上限は
2年
だ。
現行の
器物損壊罪
(刑法261条)は、
3年
以下の拘禁刑または
30万円
以下の罰金だ。
他人の国旗を壊せばこちらが適用され、今回の国旗損壊罪(上限
2年
)より刑が重くなる。
つまり「 他人の日の丸を公然と破いた場合 」の方が、「 自分の日の丸を公然と破いた場合より法律上は重く扱われる 」という逆転が起きている。
他人の国旗を壊した場合
自分の国旗を公然と壊した場合
しかも、外国の国旗を守る法律(
刑法92条・外国国章損壊罪
)は、制定から
65年
以上が経つ。
桃山法学掲載の江藤隆之氏の論文
によると、この外国版の判決は確認できる限り実質
1件
のみだ。
65年 で 1件 ——つまり法律はあっても、 ほぼ使われてこなかった 。
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今回の法律は実際に多くの人を摘発する「道具」というより、
国旗への敬意を国家が宣言するためのシンボル的な立法
として機能するのではないかという見方がある。
「国旗を燃やしたら逮捕される」というより、「日本もちゃんと国旗を大切にしてますよ、という国の"宣言"のための法律」かもしれない。
冒頭の「愛国心が醸成される」という発言は、罰則の実効性よりもメッセージ性を正直に表現したものであったとも読めるだろう。
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それでは、SNSの投稿やアート活動をしているあなたには、実際どんな影響があるのか。
SNSの投稿やアートは実際どうなる?
国旗に落書きした写真をSNSに投稿しても、それ自体は 今回の法律の対象外 になった。
修正の過程でSNS投稿を禁じる規定は全面削除されている。
東京新聞「国旗損壊罪、SNS投稿は処罰対象外に」
が伝えたとおり、「リポストしただけで逮捕される」という状況にはなっていない。
萎縮効果(いしゅくこうか)とは
本来は処罰されないはずの表現まで、罰則を恐れて自主的に控えてしまう現象のこと。
法律の基準が曖昧なとき、「これはアウトかもしれない」という不安から、アーティストやデモ参加者が必要以上に表現を自粛してしまうリスクがある。
一方で懸念されるのは、罰則そのものより「萎縮効果(いしゅくこうか:本来は処罰されないはずの表現まで、自主的に控えてしまう現象)」だ。
「著しく不快または嫌悪の情を催させる」という基準が曖昧なため、アーティストやデモ参加者が「これはアウトかもしれない」と感じて
自主規制する状況が増える
だろう。
処罰される前に、表現が縮んでいく——そのリスクを 札幌弁護士会の会長声明 も指摘している。
衆院本会議、そして参院でこの法律がどう扱われるかが、次の焦点となる。
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まとめ
- 2026年6月26日、国旗損壊罪を新設する法案(「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」)が衆院内閣委員会で賛成多数で可決された
- 罰則の上限は2年以下の拘禁刑——「他人の国旗を壊した場合」に適用される器物損壊罪(上限3年)より軽い、という逆転が起きている
- 外国の国旗を守る似た法律(刑法92条)は65年以上でほぼ使われてこなかった。日本版も「宣言的な意味が主」になりうるという見方がある
- SNS投稿を禁じる規定は修正で全面削除。ただし「著しく不快」という基準の曖昧さによる萎縮効果(表現の自主規制)は残る
- 米国では保守派の最高裁判事も「国旗損壊を禁じる法律は違憲」と判断している。「海外でも禁止している」という議論は単純ではない
「愛国心は法律で醸成できる」という問いへの答えは、この逆転した罰則の設計そのものが示しているのかもしれない。
よくある質問(FAQ)
Q1. 国旗損壊罪とは何ですか?何をしたら罰せられますか?
日本国旗を「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法」で公然と壊したり汚したりする行為を罰する法律です。
2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金が科されます。
Q2. 国旗損壊罪に反対する理由はなぜですか?
「著しく不快」という基準が曖昧で、本来は守られるべき表現活動まで自主的に控えてしまう「萎縮効果」が生じるおそれがあるためです。
憲法が保障する表現の自由や思想・良心の自由に抵触するとの指摘も複数の法律家から出ています。
Q3. アニメやマンガで国旗が描かれた場合は処罰の対象になりますか?
アニメ・マンガ・ゲーム・生成AIの創作物は対象外とされています。
また「お子様ランチの旗」や「絵画の一部に描かれた旗」も処罰されません。
Q4. 国旗の画像をSNSにリポストしたら罪になりますか?
なりません。
修正の過程でSNS投稿を禁じる規定は全面削除されました。
国旗を損壊する様子を第三者がリポストする行為は処罰の対象外です。
Q5. 海外にも国旗損壊罪はありますか?
フランス・ドイツ・イタリア・韓国・中国などに自国国旗の損壊に関する刑罰があります。
ただし米国では連邦最高裁が2度、国旗損壊禁止法を違憲と判断しており、保守派の判事も違憲を支持しました。
Q6. 国旗損壊罪の罰則は重くなったのですか?
実は既存の器物損壊罪(上限3年以下の拘禁刑)より軽い上限2年以下です。
他人の国旗を壊した場合の方が法律上は重く扱われる「逆転」が起きています。
Q7. 国旗損壊罪はいつから施行されますか?
2026年6月26日時点で衆院内閣委員会を可決した段階です。
衆院本会議・参院での可決を経て成立・施行となる見通しですが、具体的な施行日は現時点では公表されていません。
📚 参考文献
- Web東奥(共同通信)「国旗損壊罪法成立で愛国心醸成と維新議員」 (2026年6月26日)
- 福井経済新聞(時事通信社)「国旗損壊罪が可決」 (2026年6月26日)
- 自由民主党「国旗損壊罪を新設 法案を了承」 (2026年6月2日)
- 自由民主党「各国の事例を研究し議論 国旗の損壊等に関する制度検討PTを設置」 (2026年4月2日)
- NHKニュース「国旗損壊罪法案 いまなぜ?どんな内容?」 (2026年6月18日)
- 日本経済新聞「自民党、『国旗損壊罪』法案を了承 自ら損壊し動画投稿でも罰則」 (2026年6月1日)
- 東京新聞「国旗損壊罪、SNS投稿は処罰対象外に…それでも残る『表現の自由』制約の懸念」 (2026年6月)
- Human Rights Watch「国旗損壊罪は表現の自由に対する脅威だ」 (2026年3月25日)
- 札幌弁護士会「日本国国章損壊罪の制定に反対する会長声明」 (2026年1月29日)
- J-STAGE・桃山法学「日本国章損壊等罪の立法に関する基礎的考察」江藤隆之
- YouTube 衆議院「衆議院 内閣委員会 国旗損壊処罰法案を質疑(2026年6月26日)」 (2026年6月26日)
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- hirokazu-fujioka.com
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