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あなたが通う薬局に、本来いるはずの責任者がいないとしたら──。
しかもその事実が、他人の印鑑を使って隠されていたとしたら。
ドラッグストア大手コクミンの調剤薬局で、そんな事態が現実に起きていた。
管理薬剤師の違法な兼務が12店舗で確認され、組織ぐるみの隠蔽まで明らかになった。
なぜこんなことが起きたのか。
法的な問題点から業界の構造的課題まで、わかりやすく整理する。
この記事でわかること
法が求める「1店舗専従」の原則
管理薬剤師は法律で「1人1店舗」が義務づけられており、複数店舗の掛け持ちは原則として違法だ。
管理薬剤師とは、調剤薬局ごとに配置が義務づけられている現場の責任者だ。
医薬品の品質管理や従業員の監督、患者の服薬状況の把握など、薬局運営の根幹を担っている。
薬機法が定める管理薬剤師の義務
医薬品医療機器法(薬機法)第7条は、管理薬剤師がその薬局以外で薬事の実務に従事することを原則として禁止している。
1人の管理薬剤師が複数の店舗を受け持つことは認められていない。
例外が許されるのは極めて限られたケースだけだ。
非常勤の学校薬剤師を兼ねる場合や、へき地で人材確保が困難な場合など、都道府県知事の許可を受けた場合に限られる。
この規制の趣旨は明快だ。
管理薬剤師が常駐していなければ、調剤過誤が起きた際の迅速な対応は難しくなる。
患者の薬歴を継続的に把握することもできなくなる。
複数の医療機関から処方された薬の飲み合わせを確認する「服薬指導」の質が低下する恐れもある。
つまり管理薬剤師の専従義務は、患者の安全を守るための最低限の防波堤なのだ。
内部通報で発覚した12店舗の兼務
2025年末の内部通報をきっかけに、大阪・兵庫・福岡の計12店舗で管理薬剤師の違法な兼務が発覚した。
朝日新聞の報道によれば、体調不良などで管理薬剤師が欠員になった店舗に、別の店舗から管理薬剤師を派遣する運用が続いていた。
派遣元の12店舗は大阪府、兵庫県、福岡県にまたがっている。
派遣元の店舗では別の薬剤師が業務にあたっていたという。
つまり派遣元では管理薬剤師が不在のまま営業していたことになる。
他人の印鑑で調剤記録を偽装
特に深刻なのは隠蔽の手口だ。
派遣先の店舗で調剤を行う際、派遣された管理薬剤師はその店舗の管理薬剤師の印鑑を使用していた。
書類上は「正規の管理薬剤師が調剤した」体裁を整えていたのだ。
処方箋に基づく調剤記録は、患者の安全に直結する公的な書類だ。
他人の名義で記録を残す行為は、単なる事務処理の便法とは到底言えない。
エリアマネジャー2人が指示
この兼務を指示していたのは、複数の店舗を統括するエリアマネジャー2人だった。
2人は会社側の調査に対し、法令違反であることを認識しながらも「通常通りに開店させることを優先した」と説明しているという。
売上や営業継続を法令遵守よりも上に置く判断が、現場の管理職レベルで日常的に行われていたことになる。
調剤報酬の返還と今後の対応
コクミンは保健所に報告済みで、過去3年分の調剤報酬について返還を含む対応を進める方針だ。
コクミンは内部通報を受けて各地の保健所に報告し、すでに行政の指導を受けている。
通報時点から過去1年間についてはすでに兼務の実態を確認済みだ。
さらに過去3年間をめどに調査を継続する方針を示している。
調査対象期間に受領した調剤報酬については「返還も含めて適切に対応を進めていく」としている。
調剤報酬とは?
調剤報酬とは、調剤や服薬指導といった薬局業務に対して公的な医療保険制度から支払われる対価のこと。
管理薬剤師が不在の状態で行われた調剤は薬機法上の要件を満たしていない可能性があり、その期間に受領した報酬は不当利得として返還対象になり得る。
3年分の調剤報酬となれば、返還総額は相当な規模に膨らむ可能性がある。
具体的な金額は現時点では公表されていない。
構造的な問題の所在
背景には、ドラッグストア業界全体が抱える薬剤師の人材不足という構造的課題がある。
コクミンは全国に約160店舗を展開している。
そのうち調剤を取り扱う店舗は76にのぼる。
2022年にはウエルシアホールディングス(イオングループ傘下)の子会社となり、大手ドラッグストアグループの一翼を担っている。
業界の拡大
調剤併設型が急増
現場の実態
薬剤師の確保が追いつかない
調剤併設型のドラッグストアが急速に拡大するなか、各店舗に管理薬剤師を確実に配置し続けることの難しさは以前から指摘されてきた。
欠員が生じた際に店を閉めるか → 違法と知りつつ営業を続けるという選択がなされた構図が浮かぶ。
しかし法令違反が正当化されるわけではない。
欠員時には営業を停止するか、速やかに代替の管理薬剤師を正規の手続きで届け出るのが本来の対応だ。
法令違反を認識しながら印鑑の不正使用まで行ったケースは、「やむを得ない現場判断」の範囲を明らかに逸脱している。
朝日新聞の関連報道によれば、厚生労働省はドラッグストア業界に対する規制を強める方向で動いているという。
コクミンには徹底的な原因究明と再発防止策の公表が求められる。
業界全体として管理薬剤師の配置体制をどう持続可能なものにしていくかが、今後の重要な論点となるだろう。
まとめ:コクミン管理薬剤師問題のポイント
- 大阪・兵庫・福岡の計12店舗で、管理薬剤師が違法に複数店舗を兼務していた
- 他人の印鑑を使って調剤記録を偽装するなど、組織的な隠蔽が行われていた
- エリアマネジャー2人が法令違反を認識しながら開店継続を指示していた
- コクミンは薬機法への抵触を認め、過去3年分の調剤報酬の返還を含む対応を検討中
- 背景にはドラッグストア業界の薬剤師不足という構造的課題がある
よくある質問(FAQ)
Q1. 管理薬剤師は他の店舗でも働けるの?
原則禁止。薬機法で1店舗への専従が義務づけられており、都道府県知事の許可がない限り兼務できない。
Q2. コクミンでは何店舗で違法な兼務があった?
大阪府・兵庫県・福岡県の計12店舗で管理薬剤師の兼務が確認された。
Q3. なぜ兼務がバレずに続いていたの?
派遣先の管理薬剤師の印鑑を使い、書類上は正規の薬剤師が調剤したように偽装していた。
Q4. 誰が兼務を指示していたの?
複数店舗を統括するエリアマネジャー2人が指示。法令違反を認識しつつ開店を優先していた。
Q5. 調剤報酬はいくら返還されるの?
具体的な金額は未公表。過去3年分を調査中で「返還も含めて適切に対応する」とコクミンは表明。
Q6. コクミンはどこの傘下の会社?
ウエルシアホールディングス(イオングループ傘下)の子会社。全国約160店舗を展開している。
Q7. どうやって発覚したの?
2025年末の内部通報がきっかけ。コクミンは各地の保健所に報告し指導を受けている。
Q8. コクミンに行政処分はあるの?
現時点では保健所からの指導段階。今後の調査結果次第で行政処分に発展する可能性がある。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- 1. 朝日新聞「コクミンの薬局、管理薬剤師の兼務相次ぐ 法に抵触、調剤報酬返還へ」(2026年3月2日)【元ニュースソース】
- 2. dメニューニュース(朝日新聞転載)「コクミンの薬局、管理薬剤師の兼務相次ぐ 法に抵触、調剤報酬返還へ」(2026年3月2日)【元ニュースソース転載】
- 3. 株式会社コクミン 公式サイト「会社概要」【公式組織情報】
- 4. 厚生労働省「薬機法第7条第3項に規定する薬局の管理者の兼務許可の考え方について」(2019年3月20日)【公式機関】