リアルタイムニュースNAVI

話題の出来事をリアルタイムで深掘り

クウェートが米軍F-15Eを誤射撃墜──なぜ味方を3機も撃ったのか

クウェートが米軍F-15Eを誤射撃墜──なぜ味方を3機も撃ったのか

| 読了時間:約8分

味方のクウェートが、米軍F-15E戦闘機3機を撃墜した。
乗員6人は全員脱出して無事だったが、同盟国による誤射は大きな衝撃を広げている。

なぜ味方同士で撃ち合う事態になったのか。
その背景と23年前から続く構造的な問題を読み解く。

 

 

 

クウェートで米軍F-15E「ストライクイーグル」3機が撃墜──6人のパイロット全員が脱出

2026年3月1日午後11時3分(米東部時間)、米空軍のF-15E 3機が味方であるクウェートの防空システムに誤射で撃墜された

米中央軍(CENTCOM)の公式発表によると、3機はいずれもF-15E「ストライクイーグル」だった。
搭乗していたパイロットと兵装へいそうシステム士官の計6人全員が射出座席で脱出し、無事に救助されている。

📄 CENTCOM声明

「イランの航空機・弾道ミサイル・ドローンによる攻撃が続くなか、米空軍の戦闘機はクウェートの防空システムによって誤って撃墜された」

火を噴きながら落ちるF-15Eの映像が拡散

撃墜された機体のうち1機は、垂直尾翼すいちょくびよくを失い炎上しながら錐揉きりもみ状態で落下する様子がSNSで拡散された。

米軍事メディアThe War Zoneによると、墜落地点はクウェートのアル・ジャフラ付近。
アリ・アル・サーレム空軍基地から10km以内だった。

✅ パイロットの救出

脱出したパイロットは現地のクウェート人に保護され、病院に搬送された。Aviation Safety Networkは、ヘルメットの装飾から少なくとも1機が米ノースカロライナ州シーモア・ジョンソン空軍基地の第335戦闘飛行隊(4th Fighter Wing)に所属する機体と特定している。

 

 

 

約141億円の戦闘機が一度に失われた

F-15Eストライクイーグルは、パイロットと後席の兵装システム士官の2人が乗る複座ふくざの戦闘爆撃機だ。
3機で6人という数は、この「2人乗り×3機」から来ている。

1機あたりの価格は約3,100万ドル。
日本円に換算すると約47億円で、3機で約141億円相当の戦闘機が味方の手で一度に失われた計算になる。

💡 F-15Eストライクイーグルとは

米空軍の主力戦闘爆撃機。1機約47億円×3機で約141億円相当が、味方の防空システムによって一度に失われた。

エピック・フューリー作戦3日目の出来事

この事件は、米軍がイランに対して行っている大規模軍事作戦「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」の3日目に起きた。
CENTCOMの発表によれば、作戦は2月28日午前1時15分(米東部時間)に始まっている。

Stars and Stripesは、クウェートではすでにイランの弾道ミサイル攻撃で米兵3名が死亡していたと報じた。
F-15Eの撃墜は、この激戦のさなかに起きている。

 

 

 

米国は「誤射」、クウェートは「墜落」──食い違う2つの声明

CENTCOMは「クウェートの防空システムが誤って撃墜した」と明言した。

一方、DWの報道が伝えたクウェート国防省の声明は「数機の米軍機が墜落した」と述べるにとどまった。

米CENTCOM

「防空システムが誤射で撃墜」

クウェート国防省

「米軍機が墜落した」

クウェート国防省は自軍の防空システムが関与したとは述べていない
Forbesも「クウェートの声明には誤射への言及がない」と指摘しており、同盟国同士の発表に温度差が見える。

全員無事だったとはいえ、なぜ味方であるクウェートの防空システムが、同盟国の戦闘機を撃墜してしまったのか。

 

 

 

なぜ味方のクウェートが米軍機を撃墜したのか──「戦場の霧」とIFFの限界

CENTCOMの声明は、撃墜が「イランの航空機・弾道ミサイル・ドローンによる攻撃が続くなか(during active combat)」に起きたと記している。

敵味方識別装置てきみかたしきべつそうちがあるのに、なぜ味方を撃ってしまうのか。
答えは、戦場の混乱にある。

イランのミサイルとドローンが飛び交う空

Axiosは「イランとの空の戦争がいかに混乱しているかを示している」と分析した。
味方がミサイルを防ぎ、その同じ空域を味方の戦闘機が飛ぶ。

イランは弾道ミサイル、巡航ミサイル、自爆ドローン、さらに航空機まで同時に投入している。
レーダー上には無数の「点」が映り、そのどれが味方でどれが敵かを瞬時に見分けなければならない。

⚠️ 判断に使える時間はほんの数秒

防空システムの操作員がミサイル発射を判断するまでの時間は、ほんの数秒だ。ミサイルやドローンが次々と飛来するなかで、味方の戦闘機が「敵」に見える瞬間が生まれてしまう。

 

 

 

敵味方識別装置(IFF)はなぜ機能しなかったのか

現代の軍隊には、IFFという装置が搭載されている。
レーダーから信号を送り、味方なら自動で「味方です」と応答する仕組みだ。

⚠️ ここからは推測を含みます

IFFは万能ではない。電波妨害を受ければ応答が遅れるし、レーダーに映る「点」が多すぎれば処理が追いつかなくなるだろう。戦闘中にIFFの応答が一瞬途絶えるだけで、その「点」は脅威と判断されかねない。

CENTCOMは使用された防空システムの具体的な名前を公表していない。
クウェートはMIM-104パトリオットを運用しており、これが関与したとの指摘もあるが、現時点では確認されていない。


専門家は事件の数時間前にリスクを警告していた

興味深いのは、この誤射が「予見されていた」事態だった点だ。

米軍事メディアThe War Zoneの記者タイラー・ロゴウェイは、事件の数時間前にこうツイートしていた。

「(アラブ諸国の参戦は)言うほど簡単ではない。航空作戦の空域調整を行い、計画を変更するのは、得られるものよりリスクのほうが大きいかもしれない」
──Tyler Rogoway(@Aviation_Intel)

複数の国の防空システムと戦闘機が同じ空域で動く「空の交通整理」は、計画段階から極めて難しい。
その難しさが、最悪のかたちで現実になった。

ロシアの軍事メディアTopWarはこの紛争中、クウェートでパトリオットの「異常な動作」が観測されていたとも報じている。
通常とは異なるミサイルの飛行軌道が撮影されていたといい、防空システム自体に何らかの問題があった可能性を否定できない。

味方への誤射は、今回が初めてではない。
同じクウェートの空で、23年前にも悲劇は起きていた。

 

 

 

繰り返されるフレンドリーファイア──2003年から2024年、そして2026年へ

軍事技術は日々進歩している。にもかかわらず、23年間で3度、同じ構造の事故が繰り返されている

2003年──同じクウェートで英軍機がパトリオットに撃墜された

2003年3月22日、イラク戦争のさなか。
英空軍のトーネードGR4がイラクでの任務を終え、クウェートのアリ・アル・サーレム空軍基地に帰投しようとしていた。

そのとき、米軍のパトリオットミサイルが発射された。
パトリオットのレーダーはこのトーネードを対艦ミサイルと誤認ごにんし、撃墜してしまった。
乗員2名が死亡している。

🔴 2003年の連続誤射

同じ月には、米海軍のF/A-18Cもパトリオットに撃墜され、パイロット1名が死亡した。わずか1ヶ月の間に、パトリオットは味方の航空機を2度撃ち落としている。

2003年の墜落地点はアリ・アル・サーレム空軍基地の付近。
2026年の今回も、墜落したF-15Eは同じ基地から10km以内に落ちている。
場所まで重なるこの符合は偶然だろうか。


2024年──紅海で米巡洋艦が自軍の戦闘機を撃墜

2024年12月22日、紅海でフーシ派のミサイル攻撃に対応していた米巡洋艦ゲティスバーグが、味方のF/A-18Fスーパーホーネットを撃墜した。

Task & Purposeによると、ゲティスバーグはフーシの対艦巡航ミサイルと味方の戦闘機を取り違えた。
2名のパイロットは脱出して無事だったが、もう1機のF/A-18にもミサイルが発射されており、こちらは回避に成功している。

クウェートの誤射は、この紅海の事件からわずか2ヶ月余りで起きた。

 

 

 

3つの事件を比較する──変わらない構造的問題

項目 2003年 2024年 2026年
撃墜した兵器 パトリオット SM-2ミサイル クウェート防空
被害機 トーネード / F/A-18C F/A-18F F-15E×3機
乗員の生死 3名死亡 2名生還 6名生還
戦闘環境 イラク戦争 フーシ派対応 エピック・フューリー

3つの事件には共通するパターンがある。
どれも「複数の脅威が同時に飛来する混乱した環境」で起きた。

敵のミサイルやドローンが次々と迫るなかで、防空システムの操作員やコンピュータが味方を敵と取り違えている。

テクノロジーは変わっても、人間が数秒で判断を迫られる構造は変わらない
レーダーの性能がいくら上がっても、「撃つか撃たないか」の最終判断が人間やアルゴリズムに委ねられている限り、誤射のリスクはゼロにならないのではないか。

📌 作戦は継続中

エピック・フューリー作戦は継続中であり、トランプ大統領は「4〜5週間」の作戦継続を示唆している。空域の混乱が続く限り、同じリスクは消えない。CENTCOMは原因調査中としており、その結果が再発防止策を左右するだろう。

 

 

 

まとめ

  • クウェートの防空システムが米空軍F-15E 3機を誤射で撃墜。乗員6人は全員脱出して無事
  • 誤射が起きたのは、イランの弾道ミサイル・ドローン・航空機が飛び交う混乱のさなか
  • CENTCOMは「誤射」と明言したが、クウェート国防省は「墜落」とだけ発表し、温度差がある
  • 2003年にも同じクウェートでパトリオットが英軍機を撃墜し、乗員が死亡している
  • 2024年12月には紅海で米巡洋艦が自軍のF/A-18を撃墜。わずか2ヶ月で再発した

CENTCOMの調査結果が、23年間繰り返されてきたフレンドリーファイアの連鎖を断ち切る手がかりになるかどうか。
その行方を注視したい。

よくある質問(FAQ)

Q1. クウェートで墜落した米軍機はどの機種?

F-15Eストライクイーグル3機。パイロットと兵装システム士官の2人乗りで、計6人が搭乗していた。

Q2. 撃墜されたパイロットは無事?

6人全員が射出座席で脱出し、救助された。CENTCOMによると容体は安定している。

Q3. なぜ味方のクウェートが米軍機を撃墜した?

イランのミサイル・ドローンが飛び交う混乱のなか、防空システムが味方のF-15Eを敵と誤認して撃墜した。

Q4. F-15Eストライクイーグルとはどんな戦闘機?

米空軍の主力戦闘爆撃機。複座(2人乗り)で、空対空・空対地の両方に対応する。1機約47億円。

Q5. エピック・フューリー作戦とは?

2026年2月28日に始まった、米国とイスラエルによるイランへの大規模軍事作戦。核脅威の排除が目的。

Q6. IFF(敵味方識別装置)があるのになぜ誤射が起きる?

電波妨害や大量の飛来物でIFFの応答が遅延・欠落し、味方を脅威と判断してしまうことがある。

Q7. 過去にもフレンドリーファイアで戦闘機が撃墜されたことはある?

2003年にパトリオットが英軍機を撃墜し乗員2名死亡。2024年12月にも米巡洋艦が自軍F/A-18を撃墜した。

Q8. クウェートの防空システムはパトリオット?

CENTCOMは具体名を公表していない。クウェートはパトリオットを運用しており指摘はあるが未確認。

Q9. 米軍のイラン攻撃はいつまで続く?

トランプ大統領は「4〜5週間」の作戦継続を示唆している。CENTCOMは誤射の原因を調査中。

Q10. クウェートは誤射を認めた?

クウェート国防省は「米軍機が墜落した」と発表したが、自軍の防空システムの関与には触れていない。

N

リアルタイムニュースNAVI 編集部

最新ニュースをわかりやすく、いち早くお届けします。

📚 参考文献