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今日から、離婚後の親権が選べる時代になった。
2026年4月1日、改正民法が施行された。日本の離婚制度が、民法制定以来はじめて大きく変わった日だ。
「共同親権って何が変わるの?」「DVがある場合は守られるの?」「既に離婚しているけど自分はどうなる?」──そんな疑問に、法務省の公式資料をもとに答えていく。
この記事でわかること
日本の親権制度が今日から変わる──約100年ぶりの歴史的転換
民法制定以来はじめて、離婚後の親権に「共同親権」という選択肢が加わった。
これまでの日本では、離婚すると必ずどちらか一方しか親権を持てなかった。これが当たり前とされてきたが、このルールは民法が制定されてからずっと変わっていなかった。
📋 法務省の公式発表より
法務省の公式ページによると、改正法は「2024年5月17日に成立(同月24日公布)」し、「2025年10月31日の閣議決定で施行日が2026年4月1日に確定」した。
離婚後の親権、これまでとこれからは何が違う?
改正前は、離婚すると父母のどちらか一方だけが親権を持つ単独親権しか選べなかった。
改正後は、父母の話し合いで「共同親権」か「単独親権」かを選べる。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所が子どもの利益を考えて判断する。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 離婚後の親権 | 単独親権のみ | 共同親権または単独親権を選択可 |
| 決め方 | 必ずどちらか一方 | 父母の話し合い→まとまらなければ家庭裁判所 |
「父親が親権を得られたのは11.1%」という現実
では、これまでの制度はどんな実態だったのか。
公明党の解説ページによると、厚生労働省の調査では、離婚後に父親が親権を得られたのはわずか11.1%、母親は85.9%だった。10組の離婚のうち9組近くで、父親は自動的に親権を失っていた計算になる。
この数字が示すのは「母親が優れているから」ではない。離婚専門弁護士の解説によると、裁判所がこれまで「監護実績が多い側(多くの場合は母親)」を親権者に指定する傾向があったためだ。
共同親権の導入は、こうした実態を変えるきっかけになるとみられている。ただし、共同親権を選んだからといって別居親が子どもと一緒に暮らせるわけではない。では「共同親権を選んだ場合」、子どもの日常生活で何が変わり、何が変わらないのだろうか。
「元配偶者が何でも口出しできる」は誤解──共同行使が必要なのはここだけ
共同親権を選んでも、子どもの日常的な世話はこれまでと大きく変わらない。
共同親権と聞くと、子どものあらゆることに元配偶者が口を出せるようになると感じる人は少なくない。
「毎日の食事や服装まで相手に許可をもらうのか」という不安の声は、施行前から多く上がっていた。ところが、法務省の公式資料が明示している通り、全てに同意が必要 → 日常の行為は監護親が単独で決定できる。
単独で決定できること・共同が必要なこと
| 区分 | 具体例 | 決定方法 |
|---|---|---|
| 単独で決定できる (日常の行為) |
食事・服装・習い事・通常のワクチン接種・短期旅行・通常の医療 | 監護親が単独で決定 |
| 共同行使が必要な 重要事項 |
転居・進学先の決定・重大な医療行為・財産管理(預金口座の開設など) | 父母の合意が必要 |
| 単独で決定できる (急迫の事情) |
DVや虐待からの避難・緊急手術・入試手続きの期限が迫った場合 | 監護親が単独で決定 |
法務省の資料では、「監護教育に関する日常の行為」はこどもに重大な影響を与えないものと定義されている。食事や服を決めること、習い事の選択、通常のワクチン接種などが該当する。
✅ ポイント
共同親権を選んでも、子どもと一緒に暮らす監護親の日常の決定権はこれまでと変わらない。元配偶者の同意が必要になるのは、転居・進学先・重大な医療・財産管理など「重要事項」に限られる。
父母の意見が対立したらどうなる?
転居や進学先など重要事項で父母の意見が対立した場合、家庭裁判所に申し立てることで「その事項についての親権行使者」を指定してもらえる。
また、「監護者」に指定された親は、重要事項も含めた監護・教育・居所変更を単独で行える。法務省の公式資料によると、監護者は「日常の行為に限らず、こどもの監護教育や居所・職業の決定を、単独ですることができる」とされている。
離婚専門弁護士の解説は「別居親が子供の生活に関わるケースはとても限定されている」とも指摘する。共同親権という言葉の響きほど、実生活への影響は大きくないとみられている。
それでも多くの人が心配するのが、DVや虐待がある場合の安全と、既に離婚した家庭への影響だ。
DVや虐待がある場合は必ず単独親権に──既に離婚した家庭は自動変更なし
「DVの相手と共同で親権を行使しなければならないのか」──これは今回の制度への最大の懸念のひとつだ。
すでに離婚している方も、これから離婚を考えている方も、どちらのケースで何が変わるかを整理しておくことが大切だ。
⚠️ 法務省の公式資料より
法務省の公式資料は明確に定めている。「虐待のおそれがあると認められるとき」「DVのおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」には、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされている。
重要なのは「身体的な暴力に限定されない」という点だ。精神的なDVや言葉による暴力も含まれる。共同親権にすることで子どもの利益を害すると認められる場合も、必ず単独親権になる。
既に離婚している家庭への影響
「今日から自動的に共同親権になってしまうのか」と心配している人もいるだろう。
📌 法務省Q&Aより(重要)
法務省の公式資料のQ&Aより:「既に離婚して単独親権の定めをしている場合には、今回の改正法の施行によって自動的に共同親権に変更されることはありません」
既に離婚した家庭が共同親権に変更したい場合は、家庭裁判所への申し立てが必要だ。その場合でも、DVや虐待のおそれがあれば共同親権への変更は認められない。
一方、DVなどがない場合でも、養育費を長期間にわたって合理的な理由なく払っていないケースでは「共同親権への変更が認められにくい」と法務省は示している。
反対意見と懸念の声
制度への懸念がまったくないわけではない。
⚠️ ここからは推測を含む内容です
離婚専門弁護士の解説によると、「虐待やDV被害者からの不安の声は大きく、団体から反対声明が出されたり、多くの署名が集められたりしている」という。特に「早期の離婚を望むDV被害者が、共同親権を選ぶよう圧力をかけられるリスク」を指摘する声が上がっている。
これは制度の設計上の問題というより「運用上の課題」といえそうだ。DVの認定には証拠が求められる場面もあり、被害者にとって主張が難しいケースがあるとの指摘もある。弁護士への相談を早期に行うことが、自分と子どもを守るうえで重要になるだろう。
養育費についても、今回の改正で大きな変化がある。むしろ、これを「最大の実質的変化」と評価する声もある。
養育費を取り決めなくても「月2万円」を請求できる──法定養育費と先取特権の新設
子ども1人あたり月2万円──これが新設された「法定養育費」の金額だ。
離婚時に養育費の取り決めをしていなくても、この金額を離婚した翌日から暫定的に請求できる。こども家庭庁の公式サイトは「取り決めるまでの間、こどもと暮らす親が他方の親へ、こども一人あたり月額2万円の養育費を請求できる」と説明している。
改正前と改正後で何が変わるか
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 取り決めなしの養育費請求 | 請求できない | 月2万円を暫定的に請求できる |
| 差し押さえに必要なもの | 調停調書などの「債務名義」が必要 | 私的な取り決め文書があれば申し立て可能 |
| 先取特権の上限 | なし | 月8万円まで(子1人あたり) |
改正前は、養育費を差し押さえるために裁判所での調停などの手続きが必要だった。改正後は、父母間で作成した書面があれば、その文書をもとに差し押さえを申し立てられる。
📌 重要な注意点
法定養育費の月2万円はあくまで暫定額だ。本来必要な金額は収入に応じて異なる。法務省は「父母の協議や家庭裁判所の手続きにより、各自の収入などを踏まえた適正な額の取り決めをすることが重要」と強調している。
ひとり親支援は変わらない
「共同親権になると児童手当や保育料が変わるのでは」と心配する声もある。
こども家庭庁の公式サイトによると、ひとり親家庭支援・児童手当・児童扶養手当・保育の必要性の判断は、いずれも「親権の有無にかかわらず、こどもを育てている実態があるか否かで判断」するため、共同親権になっても変わらない。
また、法定養育費の発生は「改正法施行後に離婚した場合のみ」だ。2026年3月31日までに離婚した場合は対象外になる。その場合は従来どおり、父母の話し合いや家庭裁判所の手続きで養育費を決める必要がある。
この制度改正が問いかけること──「選ぶ自由」が生まれた先に何があるか
⚠️ ここからは事実に基づく考察であり、確定情報ではありません。筆者の考察を含みます。
今回の報道では「共同親権が選べるようになった」という事実が前面に出ている。しかし別の視点から見ると、この改正は「国家が離婚後の家族設計に初めて本格的に介入した瞬間」とも読めるのではないか。
「選択」の裏にある設計の意図
改正前は、離婚後の親権についてルールはシンプルだった。「どちらかが持つ」という一択だ。
今回の改正で「選べる」ようになったが、選べるということは「選ばなければならない」ということでもある。協議がまとまらなければ家庭裁判所が決める。取り決めがなければ月2万円の法定養育費が自動発生する。離婚届を出す段階で、親権・監護者・養育費・親子交流の4つについて何らかの判断を迫られる構造になった。
これを「家族の自由度が上がった」と読むこともできる。一方で「離婚後も国家の制度の枠組みに当てはめられる関係が続く」という読み方もできそうだ。
「養育費の未払い問題」への解決策としての側面
今回の改正の背景には、日本の養育費未払い問題がある。
単一のソースに基づく情報だが、取り決め自体をしていない母子世帯が半数以上にのぼるという調査がある。取り決めがなければ請求できず、請求できなければ子どもの生活が困窮する。法定養育費と先取特権の新設は、この構造を変えようとする試みとも読める。
「共同親権制度の導入」という大きな話題の陰で、「法定養育費の新設」という地味だが実質的な変化が起きている。子どもを育てる側にとっては、むしろこちらの変化の方が日常に直結するだろう。
あなたが今日から考えるべきこと
「共同親権になった」という事実は、すべての家庭に等しく影響するわけではない。
今後離婚を考えているなら、協議の場で「共同か単独か」を話し合う必要がある。既に離婚しているなら、自動的な変更はないが変更を申し立てる選択肢が生まれた。DVや虐待がある状況なら、弁護士に早期相談することで単独親権の保護を受けやすくなる。
この制度が「子どもの利益」を本当に確保するかどうかは、運用の積み重ねが決める。施行初日の今日、まずは自分のケースに何が当てはまるかを確認することが、最初の一歩になる。
📝 まとめ
- 2026年4月1日から、離婚後も「共同親権」か「単独親権」かを父母が選べるようになった。日本の民法制定以来はじめての変更だ。
- 共同親権を選んでも、食事・習い事・通常の医療など日常の行為は監護親が単独で決定できる。共同行使が必要なのは転居・進学先・重大医療・財産管理など重要事項のみ。
- DVや虐待のおそれがある場合、家庭裁判所は必ず単独親権を定める。身体的暴力に限らない。
- 既に離婚している家庭は、施行日に自動的に共同親権に変更されない。変更には家庭裁判所への申し立てが必要。
- 新設された法定養育費(子ども1人・月2万円)により、取り決めなしでも離婚日から請求できる。先取特権(上限月8万円)で差し押さえも容易になった。
- DVや離婚に関する相談は、法テラス(0570-078374)または各都道府県の弁護士会へ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 共同親権と単独親権の違いは何ですか?
共同親権は離婚後も父母の双方が親権を持つ制度です。単独親権はどちらか一方のみ。2026年4月1日から、離婚時に父母の話し合いで選べるようになりました。
Q2. 共同親権になると子どものすべての決定に相手の同意が必要ですか?
いいえ。食事・服装・習い事など日常の行為は監護親が単独で決定できます。相手の同意が必要なのは転居・進学先・重大な医療・財産管理など重要事項のみです。
Q3. DVや虐待がある場合も共同親権になりますか?
なりません。DVや虐待のおそれがあると認められた場合、家庭裁判所は必ず単独親権を定めます。身体的暴力に限定されません(法務省公式資料より)。
Q4. 既に離婚している場合、今日から共同親権に変わりますか?
自動的には変わりません。施行前に離婚した家庭は、共同親権に変更するには家庭裁判所への申し立てが必要です(法務省Q&Aより)。
Q5. 法定養育費とはどういう制度ですか?
離婚時に養育費を取り決めていなくても、子ども1人あたり月2万円を暫定的に請求できる制度です。2026年4月以降の離婚から適用されます。
Q6. 共同親権を拒否することはできますか?
協議で断ることはできますが、相手が調停を申し立てれば家庭裁判所が子の利益をもとに決定します。「なんとなく嫌」だけでは拒否が認められないこともあります。
Q7. 養育費の差し押さえは今後どう変わりますか?
父母間の書面があれば、調停などを経ずに差し押さえを申し立てられるようになりました。先取特権の上限は子1人あたり月8万円です。
Q8. 共同親権になると児童手当や保育料は変わりますか?
変わりません。ひとり親家庭支援・児童手当・保育料はいずれも「育てている実態」で判断されるため、共同親権になっても影響なしとこども家庭庁が明示しています。
Q9. 離婚届の書き方は改正後に変わりますか?
離婚後の親権者を「父母双方」または「一方」として記載する欄が変更されます。詳細はお住まいの市区町村にご確認ください。
Q10. 相手が共同親権に合意しない場合はどうなりますか?
家庭裁判所に調停・審判を申し立てることができます。裁判所が子の利益を考慮して単独か共同かを決定します。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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