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南鳥島が核のごみ最終処分場の候補に浮上した最大の理由は、約1億5000万年前から安定している地質にある。
住民ゼロの絶海の孤島だが、東京都知事の同意という高いハードルが待ち受けている。
この記事でわかること
南鳥島ってどんな島?住所は「東京都」の絶海の孤島
日本の最も東にある島、南鳥島。住所は東京都小笠原村だ。
東京から南東に約1,950km離れた太平洋上にある。
船で片道4〜5日かかる。
面積は約1.51km²で、皇居とほぼ同じ広さしかない。
ふだん住んでいる民間人はゼロ。
海上自衛隊や気象庁、国土交通省の職員が約25名、交代で島に常駐している。
一般人が上陸するには特別な許可がいる。
島には滑走路や防衛省の施設がすでにある。
周囲はサンゴ礁に囲まれ、その外側は水深約1,000mの断崖だ。
周辺海域は水深約6,000mに達する。
コンビニも学校もない、文字どおりの孤島だ。
この島に2026年3月3日、経済産業省から「核のごみの調査をさせてほしい」と申し入れがあった。
産経新聞の報道によると、赤沢亮正経産相が閣議後の記者会見で明らかにし、午後に渋谷正昭村長へ文書で申し入れた。
では、なぜこの小さな孤島が選ばれたのか。
地震大国なのになぜ安全?南鳥島が選ばれた3つの理由
「日本は地震が多いから、核のごみを安全に埋められる場所なんてないのでは?」
そう思うのは自然だ。だが南鳥島は、日本列島とは地質のなりたちがまるで違う。
理由①:1億5000万年の安定した岩盤
日本列島はユーラシアプレートや北米プレートの境界に位置している。
だから地震や火山が多い。
南鳥島は違う。
太平洋プレートの上にある日本で唯一の領土で、島の岩盤は約1億5000万年前に形成されたものだ。
火山活動はすでに完全に終わっている。
毎日新聞の報道によると、京都大学名誉教授の尾池和夫氏は南鳥島を2020年から「世界で唯一、期待できる場所」と提唱してきた。
核のごみが無害になるまでに必要な時間は約10万年。
南鳥島の岩盤はその1,500倍もの時間を安定して過ごしてきた計算になる。
理由②:民間の住民がいない
核のごみの処分場選びでは、住民の反対がつねに大きな壁になる。
北海道の寿都町や神恵内村でも、賛成派と反対派の対立が続いている。
南鳥島には一般住民がいない。
風評被害を心配する住民も、反対運動を起こす住民もいない。
理由③:6年前からの学術的な下地
この動きは唐突に見えるが、実は6年前から専門家の間で議論されてきた。
尾池名誉教授の提唱を受け、原子力安全推進協会の松浦祥次郎氏も「交通運輸の困難以外には大きな問題はないようだ」と評価していた。
つまり学術界ではすでに有力候補だった。
では、住民がいないなら話はすぐまとまるのか。そう簡単ではない。
文献調査を受け入れたら処分場が決定?誤解されやすい3段階の仕組み
「調査を受け入れた=処分場が決まった」ではない。
文献調査は処分場の建設に直結するものではないと、経済産業省の公式発表にも明記されている。
核のごみの処分場選びは3つの段階を踏む。
① 文献調査(約2年)
地質図や学術論文をもとに、その土地が処分に向いているかを机上で調べる
② 概要調査(約4年)
ボーリングで実際に地下を掘って岩盤の状態を確かめる
③ 精密調査(約14年)
地下に試験施設をつくり、さらにくわしく調べる
文献調査はいわば「書類審査」だ。
資源エネルギー庁の解説では、対話活動の一環と位置づけられている。
この段階で自治体が「やっぱりやめたい」と言えば、止められる。
次の概要調査に進むには、市町村長と都道府県知事の両方の同意が必要だからだ。
交付金の規模
文献調査を受け入れた自治体には、国から最大20億円の交付金が出る。
小笠原村の年間予算は約50億円なので、その4割にあたる金額だ。
ただし南鳥島には住民がいないため、交付金をどう使うかは新しい論点になる。
NUMOの発表によると、3月14日と15日に父島と母島で村民説明会が開かれる予定だ。
では、南鳥島のこの動きは他の候補地と何が違うのか。
寿都町・神恵内村・玄海町との決定的な違い
全国で文献調査が行われているのは、いまのところ3カ所。
南鳥島が加われば4例目になる。
だが、国が自ら候補地を提示したのは今回が初めてだ。
| 寿都町・神恵内村 | 玄海町 | |
|---|---|---|
| 調査開始 | 2020年11月 | 2024年6月 |
| きっかけ | 自治体が応募 | 町議会が請願採択 |
| 人口 | 約800〜2,800人 | 約5,500人 |
| 南鳥島(申入れ段階) | |
|---|---|
| 調査開始 | 2026年3月(申入れ段階) |
| きっかけ | 国からの申し入れ |
| 人口 | 民間住民0人 |
従来は「自治体が手を挙げる」方式だった。
国は約10カ所での調査を目標にしているが、5年間で3カ所しか実現していない。
この停滞を打破するため、国は方針を転換した。
2026年2月19日付で小笠原村から国へ依頼文書が出された。
それを受けて3月3日に経産省が正式に申し入れたという経緯が経産省のプレスリリースに記されている。
フィンランドでは処分地の決定から試験操業まで30年以上かかった。
日本のガラス固化体はすでに約27,000本分。
先送りを続ければ、そのツケを払うのは次の世代になる。
最大の壁は「東京都知事の同意」
住民がいないなら反対運動も起きず、話はスムーズに進むのか。
答えはノーだ。
制度上の最大の壁は東京都知事の同意にある。
概要調査に進むには、小笠原村長だけでなく東京都知事が「同意する」と言わなければならない。
極めて重い政治判断
電力の最大消費地である東京のトップが、自分の管轄内に核のごみの処分場を受け入れる判断を下せるかどうか。
これは極めて重い政治的な問いだ。
関係者の反応
小池百合子都知事は3月3日、「(村長が)どのように対応されるのか注視したい」とだけ述べた。
賛成とも反対とも言っていない。
渋谷正昭村長も「村民や村議会の意見などを踏まえながら判断したい」としている。
物理的な課題もある。
南鳥島の面積は1.51km²。すでに滑走路や施設があり、処分場のインフラを置ける余地は限られる。
核のごみを運ぶ専用船の建造や港の整備も必要だ。
輸送コストは本州の候補地とは桁違いにふくらむだろう。
文献調査の入り口に立っただけの段階で、ゴールはまだはるか先にある。
だが「東京都が当事者になる」という構図は、これまでの候補地選びとはまったく質の異なる議論を生むはずだ。
まとめ
- 南鳥島は太平洋プレート上にある日本唯一の領土で、約1億5000万年前から地質が安定している
- 文献調査は3段階の第1段階にすぎず、受け入れても処分場が決まるわけではない
- 国からの申し入れは今回が初めてで、従来の自治体応募型とは異なるアプローチ
- 概要調査に進むには東京都知事の同意が必要で、これが最大の政治的ハードル
- 3月14〜15日に父島・母島で村民説明会が開かれる
よくある質問(FAQ)
Q1. 南鳥島はどこにありますか?
東京都小笠原村に属する日本最東端の島で、東京から南東に約1,950km離れた太平洋上にあります。
Q2. なぜ南鳥島が核のごみの候補地に選ばれたのですか?
約1億5000万年前に形成された安定した岩盤があり、民間住民がゼロで、専門家が6年前から提唱していたためです。
Q3. 核のごみの文献調査とは何ですか?
地質図や学術論文をもとに処分に適した土地かを机上で調べる約2年間の調査で、処分場の決定には直結しません。
Q4. 文献調査の交付金はいくらですか?
受け入れた自治体に最大20億円。次の概要調査に進むとさらに最大70億円が交付されます。
Q5. 南鳥島に住民はいますか?
民間住民はゼロです。海上自衛隊・気象庁・国土交通省の職員が約25名、交代で常駐しています。
Q6. 自治体は文献調査を拒否できますか?
拒否できます。次の概要調査に進むにも市町村長と都道府県知事の同意が必要で、反対すれば止まります。
Q7. 核のごみの文献調査は他にどこで行われていますか?
北海道寿都町・神恵内村(2020年11月〜)と佐賀県玄海町(2024年6月〜)の3カ所で実施中です。
Q8. 東京都知事は南鳥島の調査についてどう言っていますか?
小池百合子都知事は「村長がどのように対応されるのか注視したい」と述べ、賛否は明言していません。
Q9. 南鳥島の村民説明会はいつですか?
2026年3月14日に父島、3月15日に母島で各2回開催予定です。NUMOと資源エネルギー庁と村の共催です。
Q10. 国から文献調査を申し入れたのは初めてですか?
初めてです。従来の3カ所はすべて自治体側からの応募で、国が自ら候補地を提示した初のケースです。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- 経済産業省「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づく文献調査の東京都小笠原村南鳥島での実施について、申入れを行いました」(2026年3月3日)
- 産経新聞「経産省、東京都小笠原村に核ごみ最終処分調査の南鳥島での実施を申し入れ」(2026年3月3日)
- 毎日新聞「南鳥島は世界で唯一、期待できる 専門家提唱 核のごみ文献調査」(2026年3月3日)
- NUMO「南鳥島における高レベル放射性廃棄物の地層処分の文献調査に関する村民説明会の開催」(2026年3月3日)
- 資源エネルギー庁「2025年、『放射性廃棄物』の処分プロセスはどうなっている?(前編)」(2025年2月25日)
- リアルタイムニュースNAVI「なぜ南鳥島が核のごみ候補地に?交付金20億円と3つの理由」(2026年3月3日)