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退職代行モームリの社長ら4人が再び送検された。
今度の容疑は「金の隠し方」だ。
警視庁は2026年3月4日、モームリ運営会社社長の谷本慎二被告ら4人を追送検した。
2月の弁護士法違反に続く追加容疑だが、問われているのは「違法な紹介料をどう隠したか」という別次元の行為だ。
なぜ弁護士法違反だけでなく、組織犯罪処罰法まで適用されたのか。
3つの偽装手口とペーパー組合の正体、事件の全容を整理する。
この記事でわかること
モームリ追送検、今度の容疑は「犯罪収益の隠匿」──弁護士法違反とは別の罪
追送検の容疑は弁護士法違反ではない。
適用されたのは組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)だ。
「また同じ弁護士法違反の追加だろう」と思った人は多いはず。
2月5日にも弁護士2人が書類送検されており、あのときは確かに弁護士法違反の枠内だった。
ところが今回は、同じ弁護士法違反の追加 → 全く別の法律が適用された。
産経新聞の報道によると、警視庁は3月4日、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)容疑で谷本慎二容疑者(37)や弁護士ら計4人を追送検した。
追送検されたのは谷本被告のほか、妻で執行役員の志織被告(31)、弁護士法人オーシャンの梶田潤弁護士(45)、弁護士法人みやびの佐藤秀樹弁護士(49)の計4人。
法人としてのアルバトロス社と両弁護士法人も追送検された。
日刊スポーツの報道によれば、いずれも起訴を求める「厳重処分」の意見が付いている。
弁護士法違反と何が違うのか
2月の逮捕容疑と今回の容疑は、そもそも罰する対象が違う。
| 2月の逮捕 (弁護士法違反) |
3月の追送検 (組織犯罪処罰法違反) |
|
|---|---|---|
| 罰する行為 | 無資格で弁護士に依頼者を紹介したこと | 違法な紹介料を別名目で隠したこと |
| 法律の趣旨 | 弁護士でない者の法律事務仲介を禁止 | 犯罪で得た収益の隠匿を禁止 |
| 対象 | 紹介行為そのもの | 金の流れの偽装 |
弁護士ドットコムニュースの解説によれば、弁護士法72条は「弁護士でない人が報酬目的で法律事務を仲介すること」を禁じている。
つまり2月の容疑は「紹介した行為」を罰するものだった。
今回の容疑はその先にある。
違法な紹介で得た金を「賛助金」や「広告費」にすり替えて隠した行為が問われている。
紹介料を隠す行為そのものが犯罪として問われた。
弁護士法違反が「やったこと」への罰なら、組織犯罪処罰法違反は「隠したこと」への罰だ。
退職代行の事件でこの法律が使われた前例は、報道を見る限り確認できない。
それだけ偽装行為が悪質だと捜査当局が判断したのだろう。
では具体的に、紹介料はどんな手口で偽装されたのか。
ペーパー組合・アフィリエイト・コンサル料──紹介料偽装の3つの手口
偽装手口は3パターンあった。
どれも違法な紹介料を「正当な支払い」に見せかけるための仕掛けだ。
手口①「労働組合への賛助金」名目──実態のない組合が受け皿に
梶田弁護士の容疑は2023〜24年にかけてのもの。
紹介料約110万円を「労働環境改善組合への賛助金」という名目で、アルバトロス社の口座に振り込んだ疑いだ。
産経新聞の2月5日の報道によると、この組合の代表はアルバトロス社の社員が務めていた。
定期大会は一度も開かれず、役員選挙もなかった。
代表は「組合に実態はなく、モームリを運営する仕組みの一部だった」と話している。
「労働環境改善」という名前からは、労働者のために活動する組織を想像する。
だが実態は、違法な紹介料の受け皿として作られたペーパー組合だった。
手口②「アフィリエイト広告の業務委託費」名目
谷本被告ら3人の容疑は2024〜25年にかけてのもの。
約146万円を「広告業務委託費」の名目で振り込ませた疑いだ。
日テレNEWS NNNの報道によれば、この名目はアフィリエイト広告の業務委託を装ったもの。
実際の広告業務は存在せず、中身は紹介料だった。
賛助金に続いて広告費。
名目を変えながら同じ行為を続けていたことになる。
手口③ 週刊誌報道後の「返金→コンサル料で再支払い」
3つ目の手口が最も巧妙だ。
同じく日テレの報道によると、弁護士1人はモームリに関する記事が週刊誌に掲載された後、紹介料を返金させたうえで、コンサルティング料として再度支払わせた疑いがある。
つまり「返金したから問題ない」という体裁を作りつつ、名前を変えて同じ金を払い直していた。
発覚を恐れた結果の行動が、かえって悪質さを裏づけている。
偽装の名目は変わっても中身は同じ
「賛助金」「広告費」「コンサル料」──名目はすべて違ったが、中身はどれも違法な紹介料だった。
名前を変えても実態が同じなら、犯罪収益の隠匿と判断される。
なぜ弁護士側も応じたのか
同紙によると、アルバトロス社はもともと法的交渉が必要な依頼を断っていた。
だがオーシャンの弁護士に「依頼者を紹介して紹介料を得ることは可能か」と提案。
弁護士はこれに応じた。
梶田弁護士は「弁護士法違反を回避するためのスキームだった」と供述している。
みやびの佐藤弁護士も後から報酬額などを踏まえ、斡旋先に加わった。
弁護士が応じた背景について、産経新聞の取材に答えた深沢諭史弁護士は「安定した売り上げを確保したいという経営上の事情」を指摘している。
弁護士は厳しい義務を負う一方で、零細の個人事業主でもある。
経営圧力が法令遵守を上回った構図だろう。
産経新聞の報道によると、アルバトロス社は提携する弁護士らに依頼者約220人を斡旋し、紹介料約370万円を受け取っていたとみられる。
家宅捜索から約5カ月。事件は単なる弁護士法違反を超え、組織的な犯罪収益隠匿へと発展した。
家宅捜索から5カ月──モームリ事件の全容と利用者への影響
退職代行を使った人は大丈夫なのか。
利用者が罪に問われた事例は報じられていない。
ただ不安が広がったのは事実だ。
TBSの報道によると、アディーレ法律事務所には逮捕報道直後の2日間で問い合わせが通常の3倍を超えた。
「自分にも捜査が及ぶのではないか」という声が相次いだという。
退職代行を使った経験がある人なら、不安になって当然だろう。
利用者の退職は有効
退職の意思表示が会社に届いている以上、退職そのものの効力には影響がないとされている。
利用者が逮捕・起訴されたという報道も確認されていない。
事件はどう進んできたのか
ここで事件の全体を振り返っておく。
- 2022年 モームリがサービスを開始。産経新聞によると累計4万件超の退職を扱った
- 2025年10月 警視庁がアルバトロス本社や都内の法律事務所を家宅捜索
- 2026年2月3日 谷本慎二容疑者と妻の志織容疑者を弁護士法違反で逮捕
- 2026年2月5日 弁護士法人オーシャン・みやびの弁護士ら3人を書類送検
- 2026年2月24日 東京地検が社長夫妻を起訴、弁護士2人を在宅起訴
- 2026年3月4日 4人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)で追送検
ABEMAは「モームリの捜査終結」と報じている。
この追送検で一連の捜査は区切りを迎えたとみられる。
今後の焦点は裁判と懲戒処分
捜査は終結に向かっているが、注目すべき点はまだ残っている。
まずは裁判だ。
弁護士法違反と組織犯罪処罰法違反の2つの罪で審理されることになる。
弁護士2人は容疑を認めているが、谷本被告ら2人の認否は明らかにされていない。
次に弁護士の懲戒処分。
有罪が確定すれば、弁護士資格の剥奪にまで至る場合がある。
そして退職代行業界全体への影響。
「弁護士監修」「弁護士提携」をうたうサービスは多いが、提携の中身次第で犯罪になりうることを示した。
捜査は大きな節目を迎えた。
だが裁判の行方、弁護士の懲戒処分、業界への波及と、事件の影響はこれからが本番だ。
まとめ
- 2026年3月4日、モームリ社長ら4人が組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)で追送検された。2月の弁護士法違反とは別の法律による容疑だ
- 偽装手口は3つ。「労働組合への賛助金」「アフィリエイト広告の業務委託費」「コンサルティング料」と名目を変えて違法な紹介料を隠していた
- 紹介料の受け皿だった「労働環境改善組合」は実態のないペーパー組合だった
- 利用者の退職は有効であり、利用者が罪に問われた事例は報じられていない
- 今後は裁判の行方と弁護士の懲戒処分、退職代行業界への波及が焦点になる
よくある質問(FAQ)
Q1. モームリの追送検は前の逮捕と何が違う?
前回は弁護士法違反(紹介行為)、今回は組織犯罪処罰法違反(紹介料を別名目で隠した行為)で容疑が異なる。
Q2. モームリは弁護士法違反ですか?
社長夫妻は弁護士法違反(非弁活動)で逮捕・起訴済み。さらに紹介料の偽装で組織犯罪処罰法違反でも追送検された。
Q3. モームリの紹介料はどうやって偽装された?
労働組合への賛助金、アフィリエイト広告の業務委託費、コンサルティング料の3つの名目で偽装された。
Q4. モームリを使って退職した人は逮捕される?
利用者が逮捕・起訴された事例は報じられていない。退職の意思表示が会社に届いていれば退職の効力に影響はない。
Q5. 非弁提携とはどういう意味ですか?
弁護士が無資格者から事件の紹介を受けること。弁護士法27条で禁止されており刑事罰の対象になる。
Q6. モームリ事件の弁護士は懲戒処分を受ける?
有罪が確定すれば業務停止や弁護士資格の剥奪もありうる。東京弁護士会はすでに声明を出している。
Q7. モームリの労働環境改善組合とは何だった?
紹介料の受け皿として作られたペーパー組合。代表はアルバトロス社員で定期大会も役員選挙も一度もなかった。
Q8. 退職代行サービスは違法ですか?
退職の意思を伝えるだけなら適法。ただし弁護士資格なしに交渉や弁護士紹介で報酬を得ると弁護士法違反になる。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- 産経新聞「モームリ社長や弁護士ら4人を追送検 退職交渉の紹介料を仮装した疑い」(2026年3月4日)
- 日刊スポーツ「『退職代行モームリ』社長ら4人を追送検 組織犯罪処罰法違反容疑」(2026年3月4日)
- 日テレNEWS NNN「『モームリ』運営会社社長らを追送検 紹介料"偽装"」(2026年3月4日)
- 産経新聞「退職代行『モームリ』提携先に顧客220人不正斡旋、370万円受領か」(2026年2月5日)
- 弁護士ドットコムニュース「退職代行『モームリ』社長ら逮捕 なぜ『弁護士紹介』が違法になるのか」(2026年2月3日)
- 産経新聞「退職代行『モームリ』運営会社社長らを弁護士法違反容疑で逮捕」(2026年2月3日)
- TBS NEWS DIG「『自分も逮捕?』退職代行モームリ逮捕で相談殺到」(2026年2月12日)