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変動金利が上がった。
住宅ローン利用者の約8割に影響が広がる。
三菱UFJ銀行と三井住友銀行が2月27日、3月から変動金利を引き上げると発表した。
三菱UFJの最優遇金利は0.67%から0.945%へ跳ね上がる。
「固定に乗り換えれば安心」と考えがちだが、その判断には落とし穴がある。
この記事でわかること
三菱UFJ・三井住友が3月から変動金利引き上げ——5行中2行だけの「異例」
大手5行の対応が割れた。
📊 速報:大手行の3月金利
ブルームバーグの報道によると、三菱UFJ銀行は変動型の最優遇金利を0.67%から0.945%に引き上げる。
三井住友銀行は0.925%から1.175%に引き上げる。
みずほ銀行は0.775%で据え置いた。
「大手が一斉に引き上げる」と思っていた人は多いだろう。
ところが実態は違う。
産経新聞の報道によれば、変動金利を上げたのは三菱UFJと三井住友の2行だけだ。
みずほ・りそな・三井住友信託の3行は0.640〜0.775%で据え置いた。
| 銀行 | 3月の変動金利 | 前月比 |
|---|---|---|
| 三菱UFJ | 0.945% | +0.275% |
| 三井住友 | 1.175% | +0.25% |
| みずほ | 0.775% | 据え置き |
| りそな | 0.640% | 据え置き |
| 三井住友信託 | 0.640% | 据え置き |
三菱UFJの引き上げ幅は「日銀超え」
注目すべき数字がある。
三菱UFJの引き上げ幅0.275%は、日銀の利上げ幅0.25%を上回っている。
⚡ なぜ日銀の利上げ幅を超えたのか
日銀が2025年12月に政策金利を0.50%から0.75%へ引き上げた。
銀行が住宅ローン金利に転嫁する場合、日銀と同じ0.25%が通例だ。
三菱UFJがそれを超えた背景には、収益性の改善を図る意図があるのだろう。
一方で3行が据え置いた理由も見える。
1〜3月は住宅ローンの年間最大の繁忙期だ。
ここで金利を上げれば顧客が逃げる。
シェア確保を優先した判断ではないか。
「ざっくりと不安」——急増する相談の現場
朝日新聞によると、変動金利は住宅ローン利用者の約8割が選んでいる。
住宅価格の高騰で借入額も増えており、家計の負担は重くなる。
テレビ朝日の取材では、住宅ローンの見直し・借り換え相談が8月の37件から59件へ増加した。
30代女性Aさんは「ざっくりと不安なところがある」と語っている。
変動金利0.525%で借りた30代男性Bさんは、3年で金利が0.925%に上昇。
「酒を減らす」と生活を切り詰めはじめた。
⚠️ 4月にはさらに動く見通し
モゲチェックは「多くの銀行は2026年4月に一斉に変動金利の新規貸出金利を引き上げる」と予測している。
3月の引き上げは序章にすぎないだろう。
では、変動金利で借りている人はどう動くべきか。
「固定に借り換えれば安心」という常識には、思わぬ落とし穴がある。
「固定に借り換えれば安心」は本当か——3つの選択肢と損得ライン
固定への借り換えは安心 → 多くの人にとって損になる
変動金利が上がり続けるリスクを考えれば、固定で返済額を確定させたいという心理は自然だ。
フラット35の利用申請は前年同期比で1.5倍に急増している。
ダイヤモンド不動産研究所の調査によれば、特に保証型は2.7倍と急伸した。
ところが数字を追うと風景が変わる。
固定に借り換えて得するラインは「変動2.55%」
住宅ローン・不動産ブロガーの千日太郎氏(公認会計士)の分析が明快だ。
3年前に変動0.4%で借りた人が今フラット35に乗り換える場合を試算すると、借り換え費用は約120万円。
固定金利は当初5年が1.76%、その後2.26%で固定される。
千日太郎氏の試算によると、変動金利が2.55%に届かない限り、固定のほうが総支払額で損になる。
年2回の利上げペースで到達金利が2.05%にとどまるなら、固定への借り換えは得しない。
つまり「金利が上がったから固定に逃げる」は、不安解消にはなっても家計改善にはならないケースが大半なのだ。
3つの選択肢を比べると見えるもの
変動金利が上がった局面で取れる手は3つある。
| 選択肢 | 費用 | 回収期間 |
|---|---|---|
| ①変動→固定に借り換え | 約120万円 | 回収困難 |
| ②変動→低金利の変動に借り換え | 約120万円 | 約10年 |
| ③今の銀行に金利交渉 | 約6万円 | 約1年 |
千日太郎氏の試算では、②の変動→変動の借り換えは毎月の改善額が約1万円。
費用120万円の回収に約10年かかる。
借り換え
費用120万円
回収10年
金利交渉
費用6万円
回収1年
③の金利交渉は、条件変更の費用が数万円程度。
仮に6万円とすれば、毎月5,000円の改善でも回収は約1年で済む。
コスパの差は歴然としている。
「借り換えすらできない」落とし穴
もうひとつ見落としがちな事実がある。
テレビ朝日の取材では、固定への借り換えを銀行に相談したCさん家族が「建物の状態から借り換えは難しい」と断られた事例が報じられている。
物件の担保価値が大きく下がると、借り換え審査に通らない。
築年数が経った中古住宅やフルリノベ物件では、この壁にぶつかるリスクがある。
借り換えを検討する前に、まず今の銀行に金利交渉する。
これが費用面でもリスク面でも最初に打つべき手だろう。
では変動金利はこの先どこまで上がるのか。
変動金利はどこまで上がるのか——「逃げ切り」戦略と今後の見通し
エコノミストの大半は、利上げの到達点を1.5%程度と見ている。
5年ルールは「安心」ではなく「先送り」
変動金利が上がっても5年間は返済額が変わらない。
いわゆる5年ルールだ。
125%ルールもあり、6年目以降の増額も1.25倍までに抑えられる。
この2つのルールを聞いて「当面は大丈夫」と安心する人は多い。
だが中身は違う。
⚠️ 5年ルールの正体
返済額が据え置かれているだけで、利息は増えている。
元本の返済が遅れた分は先送りされ、将来の支払いに上乗せされる。
5年ルールは家計を守る盾ではなく、痛みを後ろにずらす仕組みにすぎない。
さらに注意が要るのは、5年ルールと125%ルールがない銀行も存在する点だ。
住まいサーフィンの一覧表によると、PayPay銀行・ソニー銀行・SBI新生銀行にはこのルールが適用されない。
金利が上がれば即座に返済額が増える。
ターミナルレートは1.5%——「逃げ切り」は可能か
モゲチェックの分析によると、多くのエコノミストは政策金利の最終到達水準を1.5%程度と予測している。
2027年度にかけてゆっくり到達するシナリオがメインだ。
📊 次回利上げの予測
ブルームバーグが52人のエコノミストに行った調査では、次回利上げは7月との見方が48%で最多だった。
年2回程度のペースが続くなら、変動金利の到達点は2%前後にとどまる。
この水準であれば、変動金利は固定金利(2.26%)を下回ったまま推移する。
「変動のまま低金利を享受しつつ、差額を繰り上げ返済や資産運用に回す」。
これが記事タイトルにある「逃げ切り」の中身だ。
損失回避バイアスに振り回されない
行動経済学でいう損失回避バイアスは、人が「得すること」より「損すること」に過剰に反応する心理だ。
金利上昇のニュースを見て「今すぐ固定に」と焦るのは、この心理そのものだろう。
⚠️ ここからは推測
冷静にシミュレーションすれば、変動金利のまま金利交渉でコストを抑え、浮いた資金を運用に回すほうが合理的なケースは多い。
ただし円安が進んで通貨防衛的な利上げが起きれば、政策金利が2%を超えるリスクシナリオもゼロではない。
どのシナリオにも対応するために必要なのは、焦って動くことではない。
他行の仮審査を取り、今の銀行に金利交渉をする。
それだけで、費用6万円・回収1年の改善が手に入る。
まずはそこからだ。
まとめ
- 三菱UFJと三井住友が3月から変動金利を引き上げ。ただし5行中3行は据え置きで対応が割れている
- 「固定に借り換えれば安心」は多くの場合損になる。変動が2.55%に届かない限り固定のほうが総支払額が多い
- 借り換え費用120万円の回収に10年かかるのに対し、金利交渉なら6万円で回収1年。まず交渉から始めるのが合理的
- 5年ルールは返済額を据え置くだけで利息は増えている。PayPay銀行など適用されない銀行もある
- エコノミストの多くはターミナルレートを1.5%と予想。変動のまま「逃げ切る」余地は十分にある
今の銀行に電話して「他行への借り換えを検討している」と伝える。
これが今日できる、最もコスパの高い一手だ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 住宅ローンの変動金利を3月から引き上げるのはどの銀行?
三菱UFJ銀行と三井住友銀行の2行。みずほ・りそな・三井住友信託の3行は据え置き。
Q2. 変動金利が上がったら固定に借り換えるべき?
変動金利が2.55%に届かない限り、固定への借り換えは総支払額で損になるケースが大半。
Q3. 住宅ローンを借り換えた方がいい場合ってどんな場合?
現在の変動金利が1.5%台に達している人、または金利差が大きく残期間が長い人。
Q4. 5年ルール・125%ルールがあれば返済額は上がらない?
返済額は5年間据え置かれるが利息は増えており、元本返済が遅れる。安心ではなく先送り。
Q5. みずほ銀行やりそな銀行の変動金利はいつ上がる?
2026年4月の基準金利見直しで引き上げる見通し。7月返済分から反映される銀行が多い。
Q6. 住宅ローンの金利交渉は本当にできる?
他行の仮審査を取って「借り換えを検討中」と伝えれば交渉の余地がある。費用は数万円程度。
Q7. 変動金利は今後どこまで上がる?
エコノミストの多くは政策金利の最終到達水準を1.5%程度と予測。急上昇は想定しにくい。
Q8. 5年ルールが適用されない銀行はある?
PayPay銀行・ソニー銀行・SBI新生銀行には5年ルール・125%ルールが適用されない。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- ブルームバーグ「三菱UFJ銀と三井住友銀、変動型の住宅ローン金利を引き上げ」(2026年2月27日)
- 産経新聞「住宅ローン金利、三菱UFJと三井住友が変動型引き上げ 3月に」(2026年2月27日)
- 朝日新聞「住宅ローン変動金利引き上げ 急増する借り換え相談、『逃げ切り』へ」(2026年2月27日)
- モゲチェック「住宅ローン金利2026年2月の最新動向」(2026年2月)
- ダイヤモンド不動産研究所「利上げ局面で、変動金利から固定金利へ借り換えすべき?」(千日太郎)(2026年2月25日)
- ダイヤモンド不動産研究所「金利上昇局面で固定型住宅ローン『フラット35』の利用者が急増」(2026年2月26日)
- テレビ朝日「住宅ローン変動金利1年で倍に…マイホーム苦悩 30代40代の相談急増」(2025年10月3日)
- 住まいサーフィン「【2026年2月最新】今後の住宅ローン金利はどうなる?推移と見通し」(2026年2月6日)