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教え子8人への性的虐待に対し、福岡地裁小倉支部は懲役24年を言い渡した。
検察の求刑は30年。6年もの差があるように見えるが、量刑判断の実態は少し違う。
この記事でわかること
懲役30年求刑→24年判決 裁判所の量刑判断が示した「格別の悪質性」
裁判所は何を認定したのか
2026年2月26日、福岡地裁小倉支部の三芳純平裁判長は、元空手塾経営者・永末哲也被告(62)に懲役24年の判決を言い渡した。
📄 判決の要旨
共同通信の報道によると、裁判長は「撮影した画像や動画は500件を超えている」と指摘。
「ほぼ無抵抗の被害者に一方的に辱めを与える陵辱的な行為。手口は狡猾で卑劣だ」と非難した。
6年間で500件を超える撮影。
1週間に1件以上のペースで記録を残していた計算になる。
産経新聞は、裁判長が「人格や尊厳を顧慮せず、欲求を満たすための対象として扱い、強い影響力を背景に行為に及んでいた」と述べたことを伝えている。
求刑30年と判決24年の「差」が意味すること
検察は有期刑の上限である懲役30年を求刑した。
弁護側は懲役15年が相当と主張。判決は24年だった。
| 立場 | 主張した刑期 |
|---|---|
| 検察側 | 懲役30年(有期刑上限) |
| 弁護側 | 懲役15年 |
| 判決 | 懲役24年 |
| 両者の中間値 | 22.5年 |
SNSでは「30年でもいいのに」「軽すぎる」との声が上がった。
たしかに数字だけ見れば、上限から6年引かれている。
ところが、日本の刑事裁判では求刑と弁護側主張の中間付近に判決が落ちつく傾向がある。
今回の中間値は22.5年。判決の24年はこれを上回っており、裁判所が検察側の主張をかなりの程度採用したといえそうだ。
読者の印象
24年は軽い
量刑の実態
中間値超えの重い判決
永末被告は現在62歳。
刑期を全うすれば出所時は86歳になる。
裁判の中で検察は「生きて刑務所を出られないかもしれない」と被告に問いかけていた。
TBS NEWS DIGによると、裁判長は「被害者たちは被告人の指示にあらがうのが難しい心理状態にあった」と指摘し、「性犯罪の中でも格別に悪質で、刑事責任は極めて重い」と結論づけている。
裁判所がここまで重い判断を下した犯行とは、どのようなものだったのか。
「先生に逆らえない」6年間の支配構造と犯行の全容
信頼された指導者の裏の顔
永末被告は北九州市小倉南区で空手塾を経営していた。
暴力ではなく「信頼」で子どもたちを支配していた点が、この事件の核心にある。
RKBの裁判詳報によると、保護者たちは被告を「練習中は厳しいが、練習以外では子ども一人一人に優しく寄り添う側面もあった」と信頼していた。
その信頼の裏で、被告は2018年から教え子の女子児童8人に性的虐待を繰り返した。
被害者は全員13歳未満。計11回にわたり起訴されている。
2025年11月27日の被告人質問。
永末被告は法廷でこう述べた。
「だんだん本人に会うにつれて、話をするようになって仲良くなって、女性として見るようになってきました」「最初はストレッチをする中で、体を触ったりとか(中略)それから自分の衝動を抑えられなくなってエスカレートしていきました」
子どもたちはなぜ抵抗できなかったのか。
永末被告は経営者であると同時に、昇級試験の試験官でもあった。
⚠ 子どもたちが恐れていたこと
教え子たちの多くは大会入賞を目指し練習に打ち込んでいた。
被告に逆らえば昇級できない、大会に出してもらえない、口もきいてもらえない。
そうした恐怖が子どもたちを縛っていた。
産経新聞の求刑公判の報道では、検察が「習い事の場を快楽を追求できる私的空間とし、常習的に行為に及んでいた」と非難したことが伝えられている。
発覚のきっかけと保護者の叫び
事件が明るみに出たきっかけは、被害児童の涙だった。
被害者の一人は、成長するにつれ性的知識を身につける中で、被告からの行為で妊娠したのではないかと不安に苦しんだ。
誰にも相談できず、ついに保護者の前で泣き出した。
産経新聞の逮捕時の報道によると、女児から話を聞いた父親が「習い事の先生から体を触られた」と110番。
2024年8月14日、永末被告は逮捕された。
RKBの初公判報道によると、検察は冒頭陳述で「従順な生徒であれば指導と称してわいせつな行為が出来るかもしれないと考えていた」と被告の動機を明かし、複数の事件で追起訴する方針を示した。
💬 保護者の意見陳述
RKBの裁判詳報・後編によると、ある保護者はこう述べた。
「改めて強い怒りや憎しみがこみ上げ、その場で殺してやりたいほどの強い衝動に襲われました」
別の保護者は「今でも事件のことを考えると気が狂いそうになります」「私たち夫婦は何をしても、心の底から笑うことができなくなりました」と訴えた。
検察は論告で「鬼畜にも劣る浅ましい蛮行」と断じ、有期刑上限の30年を求刑した。
一方、被告は最終意見陳述でこう述べている。
「被害者の皆さんの明るい未来を奪ってしまうことになりました。本当に申し訳ございませんでした」。
身柄拘束について聞かれた場面で、被告はこう漏らした。
💡 被告の異例の供述
「これ以上、被害者の方が多くならなくて済んでよかった」
自分の意志では犯行を止められなかったと、被告自身が法廷で認めた発言だった。
こうした被害を二度と起こさないために、いま何が動いているのか。
2026年12月施行の「日本版DBS」は悲劇を防げるか
始まる性犯罪歴の確認制度
子どもの習い事に安心して送り出せる日は来るのだろうか。
2026年12月25日、「こども性暴力防止法」が施行される予定だ。
通称「日本版DBS」と呼ばれる制度で、子どもに関わる仕事に就く人の性犯罪歴を事前に確認する仕組みになる。
学校や保育所では犯罪歴の確認が義務づけられる。
学習塾やスポーツ教室は、国の認定を受けた事業者が任意で確認できるようになる。
⚠️ ここからは推測です
永末被告に逮捕前の性犯罪の前科があったかどうかは報道されていない。
仮に前科がなかった場合、日本版DBSが施行されていても初犯は検知できないため、この事件を未然に防ぐことはできなかっただろう。
日本版DBSは犯罪歴のある人物を子どもの近くから遠ざける制度であり、初めて犯行に及ぶ人物を事前に見つけ出す仕組みではない。
制度の限界を正しく理解したうえで、保護者側にもできることがある。
保護者にできる3つのこと
子どもを習い事に送り出す保護者にとって、指導者を信じることは当然だろう。
だからこそこの事件は他人事ではない。
浮き彫りになったのは、閉鎖的な環境で指導者と児童が1対1になる状況の危険性だ。
✅ 保護者ができる3つの対策
| 対策 | 具体的な行動 |
|---|---|
| 密室を避ける | 見学可能な教室か、指導中に保護者が立ち入れるかを事前に確認する |
| 変化に気づく | 習い事に行きたがらなくなった、体の特定部位を気にしているなどの小さな変化を見逃さない |
| 相談先を共有 | 児童相談所(189)や性犯罪被害相談電話(#8103)を家庭で共有しておく |
永末被告が6年間も犯行を続けられた最大の要因は、道場という閉ざされた空間と、指導者に逆らえない上下関係だった。
日本版DBSの施行は判決からわずか10か月後。
制度だけに頼るのではなく、保護者が教室の透明性を確かめ、子どもとの対話を続けることが、悲劇を繰り返さないための土台になる。
まとめ
- 永末哲也被告に対する判決は懲役24年。求刑30年と弁護側15年の中間値を上回る、検察寄りの重い量刑だった
- 被告は空手塾の経営者・昇級試験官という立場を利用し、6年間にわたり教え子8人を心理的に支配。撮影した画像・動画は500件を超えた
- 裁判長は「性犯罪の中でも格別に悪質」と断じた
- 2026年12月に日本版DBSが施行されるが、初犯には対応できない制度的限界がある。保護者が教室の透明性を確認し、子どもの変化に敏感でいることが欠かせない
よくある質問(FAQ)
Q1. 永末哲也被告はどんな罪で起訴されたのか?
不同意性交等・不同意わいせつ・性的姿態等撮影・児童ポルノ禁止法違反の罪で計11回起訴された。
Q2. なぜ求刑30年に対して判決は24年だったのか?
弁護側主張の15年と求刑30年の中間値22.5年を上回る24年で、裁判所は犯行の悪質性を重く評価した結果といえる。
Q3. 被害者は何人でどのような状況だったのか?
被害者は教え子の女子児童8人で全員13歳未満。昇級や大会出場を人質にされ抵抗できない状態だった。
Q4. 事件はどうやって発覚したのか?
被害児童が保護者の前で泣き出し、話を聞いた父親が「習い事の先生から体を触られた」と110番して発覚した。
Q5. 日本版DBS(こども性暴力防止法)はいつ施行されるのか?
2026年12月25日に施行予定。学校・保育所は義務、学習塾やスポーツ教室は任意認定制となる。
Q6. 日本版DBSがあればこの事件は防げたのか?
永末被告に前科があったとの報道はなく、DBSは初犯を検知できないため防げなかった可能性がある。
Q7. 撮影された画像や動画はどのくらいあったのか?
裁判長は撮影した画像や動画が500件を超えていると指摘した。
Q8. 永末哲也被告は控訴するのか?
2026年2月26日の判決直後の時点では控訴の有無は報道されておらず未確認。
Q9. 習い事で子どもを性被害から守るために親は何ができるか?
見学可能な教室を選ぶ、子どもの小さな変化を見逃さない、相談先(189・#8103)を家庭で共有しておく。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- 共同通信(47NEWS)「教え子にわいせつ、懲役24年 空手塾『手口は狡猾で卑劣』」(2026年2月26日)
- 産経新聞「教え子8人にわいせつ懲役24年 空手塾の男『強い影響力背景に行為に及ぶ』」(2026年2月26日)
- 産経新聞「教え子の女児へのわいせつ罪、空手塾元経営の男に懲役30年求刑」(2026年1月9日)
- RKB毎日放送「『女性として見るように…』教え子の女子児童8人への性的虐待事件【裁判詳報・前編】」(2026年2月19日)
- RKB毎日放送「『鬼畜にも劣る浅ましい蛮行』検察が有期刑上限の求刑【裁判詳報・後編】」(2026年2月19日)
- TBS NEWS DIG「『性犯罪の中でも格別に悪質』道場で教え子の女子児童8人に性的暴行」(2026年2月26日)
- テレビ西日本「空手塾の教え子8人に"性的暴行" 元塾長の男に懲役24年判決」(2026年2月26日)
- 産経新聞「『性欲満たすため』教え子の女児にわいせつ 容疑で空手塾経営の男逮捕」(2024年8月14日)
- RKB毎日放送「経営する空手道場で女子児童に性的暴行 初公判」(2024年11月18日)