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『龍が如く』の名越稔洋氏が率いる名越スタジオ。
親会社ネットイースの資金打ち切りで、独立後初の大作『Gang of Dragon』が発売前に存続危機に陥った。
追加で必要な開発費は70億円。スポンサー探しは難航している。
この記事でわかること
発表からわずか3ヶ月──『Gang of Dragon』が直面する資金打ち切りの衝撃
名越スタジオに対し、ネットイースが2026年5月から資金提供を停止する。『Gang of Dragon』の完成には少なくとも70億円の追加資金が必要で、発売の見通しが立たなくなった。
Bloombergの報道によれば、ネットイース広報もこの方針を認めた。
3月6日、この決定がスタジオの従業員に伝えられた。
ネットイースが把握したのは、『Gang of Dragon』の完成に少なくとも70億円の追加資金が必要だという事実だった。
この金額を前に、発売を待たずして資金を引き揚げる判断が下された。
📌 Bloomberg報道より
「同作品の完成には少なくとも70億円の追加資金が必要とネットイースが把握したことを受け、発売前に資金提供を打ち切る決定が下された」
TGA2025での華やかなお披露目
2025年12月のThe Game Awards。
名越スタジオは独立後初の作品『Gang of Dragon』を世界に向けて発表した。
韓国の人気俳優マ・ドンソクが主人公を演じ、舞台は新宿・歌舞伎町。
『龍が如く』の遺伝子を受け継ぐアクションアドベンチャーとして、ゲームファンの期待は大きく膨らんだ。
TGAでの発表は「開発がある程度仕上がったタイトルの晴れ舞台」という印象が強い。
ところが実態はちがった。発表からわずか3ヶ月で、そのゲームは資金源そのものを失うことになる。
セガ退社から資金喪失まで──4年半の時系列
名越稔洋氏は1989年にセガに入社し、『デイトナUSA』や『龍が如く』シリーズを手がけた。
2021年10月にセガを退社。当時、ネットイースとテンセントが名越氏の獲得を争った。
最終的にネットイースの100%出資で名越スタジオが誕生した。
📅 名越スタジオの歩み
- 2021年10月 ── 名越氏がセガを退社
- 2022年1月 ── 名越スタジオ設立(ネットイース100%出資)
- 2025年12月 ── TGA2025で『Gang of Dragon』を世界初公開
- 2026年3月6日 ── ネットイースが資金打ち切りを従業員に伝達
- 2026年5月 ── 資金提供の停止予定
セガ退社から約4年半。独立の切り札であった初作品は、完成を目前にして宙に浮いた。
名越氏はすでに新たなスポンサー探しに動いているが、Bloomberg報道の時点では成果は出ていない。
名越スタジオだけの問題ではない。
ネットイースはいま、世界中で同時にスタジオを切り離している。その背景には、創業者CEOの大きな方針転換がある。
ネットイースCEO丁磊の「大撤退」──16スタジオに及ぶ投資引き揚げ
名越スタジオへの打ち切りは、孤立した判断ではない。ネットイース創業者でCEOの丁磊氏が主導し、海外の16以上のスタジオへの投資を一斉に縮小している。
「ネットイースは名越スタジオだけを見限った」と思いがちだが、実態はもっと大きい。
VGCの報道によれば、16以上のスタジオが閉鎖・売却のリスクにさらされている。
📌 VGC / Game File報道より
「ネットイースは海外チームの大半から撤退する計画で、10以上のスタジオが閉鎖に追い込まれうる」
閉鎖・縮小の連鎖
AUTOMATONの報道によると、日本では『聖剣伝説 VISIONS of MANA』を手がけた桜花スタジオが2024年後半に閉鎖された。
欧米でも被害は広がっている。
| 地域 | スタジオ名 | 状況 |
|---|---|---|
| 日本 | 桜花スタジオ | 2024年後半に閉鎖 |
| 日本 | 名越スタジオ | 2026年5月に資金停止 |
| カナダ | Worlds Untold | 活動休止 |
| カナダ | Bad Brain | 2025年11月閉鎖 |
| 米国 | Jar of Sparks | 縮小 |
| 米国 | Marvel Rivals米国チーム | 全員レイオフ |
金がないから切ったのではない
驚くべきは、ネットイースが経営難で撤退しているわけではない点だ。
Investing.comの報道によれば、同社の年間ゲーム事業収益は116億ドル(約1兆7000億円)に達する。
資金不足で撤退した → 世界最大級の売上を維持しながら海外スタジオを手放している。
丁磊CEOが「少数のタイトルに集中する」という戦略転換を進めた結果だ。
ネットイース自身も声明で「シングルプレイヤーゲーム開発はまだ初期段階にある」と認めている。
海外の有名クリエイターに資金を渡して大作を作らせる手法そのものを、「割に合わない」と判断したのだろう。
2020年から2023年にかけて、ネットイースは世界中の著名クリエイターを次々とスカウトし、スタジオを作らせた。
その拡大期からわずか数年で大撤退に転じたことが、今回の事態の構造的な背景にある。
Gang of Dragonと名越スタジオの行方──利益6700万円で70億円を賄えるか
名越氏は新スポンサーを探しているが成果は出ていない。開発資産の引き継ぎにも費用がかかり、利益6700万円のスタジオに70億円の壁は途方もなく高い。
名越氏に残された時間は多くない。
ネットイースからの資金が止まる5月まで、あと約2ヶ月だ。
Bloombergによれば、名越氏はすでに新たなスポンサー探しに動いている。
だが、報道時点では成果が出ていない。さらにハードルはもうひとつある。
⚠ 開発資産の権利問題
ネットイースは名越スタジオに対し「独立して事業を続けることは可能だが、開発資産やブランドを保持するなら相応の費用を負担する必要がある」と伝えている。新スポンサーを見つけるだけでは足りない。これまで作ったゲーム素材を引き継ぐこと自体にも、交渉と費用が必要になる。
1000倍のギャップが突きつける現実
gamebizの報道によると、名越スタジオの2024年12月期の最終利益はわずか6700万円だった。
前年比323%増という大幅増益ではある。
だが、完成に必要な追加資金70億円と並べるとどうか。
年間利益
6700万円
追加で必要な開発費
70億円
必要額の約0.1%にすぎない。
100%出資の開発スタジオは、親会社から受託費をもらって開発し、利益を出す構造だ。その親会社が去れば、収益の根幹が消える。
自力で70億円を調達する基盤は、もともと存在しない。
名越氏に残された選択肢
⚠️ ここからは報道内容に基づく推測です
以下の分析は、Bloomberg報道の事実をもとにした筆者の考察であり、確定情報ではありません。
新たなパブリッシャーが名乗りを上げる展開は、理論上ありえる。
ただし、開発途中の新規タイトルに70億円規模の投資を決断するのは容易ではないだろう。
ソニーやマイクロソフト、あるいはテンセントといった企業が候補として浮かぶが、各社が名越スタジオの案件をどう評価するかは未知数だ。
別の道として、スタジオごと他社に買収される形もありうる。
名越稔洋という名前はゲーム業界における強力なブランドであり、その価値を買う企業が現れてもおかしくはない。ただしネットイースとの資産交渉が前提になるため、時間との勝負になるのではないか。
SNSでは「セガに戻るのでは」という声も見られる。
しかし、龍が如くスタジオはすでに横山昌義氏の体制で独自の路線を歩んでおり、名越氏がそのまま復帰するシナリオは現実的には描きにくい。
この出来事が問いかける本当の問題
⚠️ ここからは事実に基づく考察であり、確定情報ではありません
以下は報道された事実をもとにした筆者の分析です。
報道の文脈は明快だ。
ネットイースの経営判断により、名越スタジオが資金を失った。ゲーム業界の苦境を象徴する一件として語られている。
だが少し視点を変えると、別の構図が浮かび上がる。
2020年代前半、中国のテック大手は日本のベテランクリエイターに「セガでは作れないものを作らせてあげる」「資金は心配ない」と声をかけ、次々と独立させた。
名越氏だけではない。
『ドラゴンクエスト8・9』のプロデューサーや『バイオハザード4』のプロデューサーも同じ構造でネットイース傘下に入った。
この構造には、日本のゲーム業界特有の問題が絡んでいるという見方もある。
大手メーカーに所属するクリエイターが、社内の序列や組織の慣性に縛られて「やりたいものを作れない」と感じたとき、外資の資金は魅力的な脱出口に映る。
名越氏自身も設立時のインタビューで「これまでとはちがうことをしたかった」と語っていた。
だが結果として、その脱出口は約束された安定ではなかった。
100%出資という形は「自由」を意味すると同時に、「親会社の一存で全てが変わりうる」ことも意味していた。
ネットイースが方針を変えた瞬間、開発資産も従業員の雇用も宙に浮く。
この構図は名越スタジオだけの話ではないだろう。
今後、外資の出資で独立するクリエイターは、「はしごを外されるリスク」をどう織り込むのか。あるいは日本のメーカー側が、才能を社外に流出させないためにどう変わるのか。
Gang of Dragonの行方は、そのまま日本のゲーム産業の課題を映し出している。
まとめ
- TGA2025で世界に披露された『Gang of Dragon』が、完成前に資金源を失った。追加で必要な70億円が打ち切りの直接的な引き金になった
- 名越スタジオだけの問題ではなく、ネットイースCEO丁磊氏による16スタジオ以上の一斉撤退の一部。年間1兆7000億円を稼ぐ企業の戦略転換がもたらした構造的な出来事
- 名越氏は新スポンサーを探しているが、利益6700万円のスタジオが70億円を自力で賄う手段はない。開発資産の権利交渉も含め、残された時間で道を切り拓けるかが焦点
よくある質問(FAQ)
Q1. 名越スタジオは誰の出資ですか?
NetEase Games(ネットイース)の100%出資によるゲーム開発会社です。2026年5月に資金提供が停止される予定です。
Q2. Gang of Dragonは発売されるのか?
完成には追加で70億円が必要。名越氏が新スポンサーを探していますが、Bloomberg報道時点で成果は出ていません。
Q3. なぜネットイースは名越スタジオへの資金を打ち切ったのか?
CEO丁磊氏が海外投資を縮小する方針に転換。名越スタジオだけでなく16以上のスタジオが影響を受けています。
Q4. 名越稔洋はセガに戻るのか?
龍が如くスタジオはすでに横山昌義氏の体制で運営中。名越氏がそのまま復帰するシナリオは現実的に描きにくい状況です。
Q5. NetEaseのスタジオはいつ閉鎖されますか?
桜花スタジオは2024年後半に閉鎖済み。Bad Brainは2025年11月に閉鎖。名越スタジオは2026年5月に資金停止予定です。
Q6. 名越スタジオの開発資産はどうなるのか?
ネットイースは資産を保持するなら費用負担を求めると通達。名越スタジオ側と交渉が続いています。
Q7. 70億円のゲーム開発費は高いのか?
大作ゲームの開発費は100億〜500億円規模に達しており、70億円の「追加」はむしろ全体像がさらに大きいことを示します。
Q8. グラスホッパー・マニファクチュアはどうなるのか?
ネットイースの投資縮小対象に含まれています。ただし現時点で閉鎖の公式発表はありません。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- Bloomberg / TBS NEWS DIG「龍が如く生みの親のゲーム開発会社が資金源失う-中国親会社撤退へ」(2026年3月7日)
- AUTOMATON「NetEase Gamesが、中国国外のスタジオへの投資打ち切り拡大中との報道」(2025年2月22日)
- gamebiz「名越スタジオ、24年12月期決算は最終利益323%増の6700万円と大幅増益」(2025年6月11日)
- ファミ通「『龍が如く』名越稔洋氏の新作『GANG OF DRAGON』が発表」(2025年12月12日)
- VGC「More than a dozen NetEase studios are reportedly at risk」(2025年2月22日)
- Investing.com「NetEase社長、海外展開を縮小し人員削減とスタジオ閉鎖を実施」(2025年2月22日)