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ネギマヨ『おでん』漫画が怖すぎる理由──挨拶が生んだ隣人ストーカーの全容

| 読了時間:約5分

隣の部屋の人に挨拶したら、翌日おでんが届いた。

断っても翌日また男が鍋を持って立っている。

やがて男は「自分は彼氏だ」と言い始めた。

19 歳の女性が初めての一人暮らしで遭遇したこの実体験は、Instagramのコミックエッセイとして爆発的に広まった。

だがこの漫画がバズり続ける裏には、 読者自身が「恐怖のキャラクター」を作り上げた 異例の仕掛けがあった。

挨拶しただけで、なぜここまでエスカレートするのか。


ネギマヨ『おでん』漫画が怖すぎる理由──挨拶が生んだ隣人ストーカーの全容

挨拶だけで「彼氏認定」された19歳の恐怖

就職して初めて借りた部屋の隣に、 "彼氏" がいた。

2 人組クリエイター 「ネギマヨ」 のネギさんは、 19 歳で就職し初めての一人暮らしを始めた。

親にすすめられて隣人へ引越しの挨拶に行った。

それがすべての始まりだった。

 
引越し初日
礼儀として挨拶
親のすすめで隣人に挨拶
 
翌日〜
おでんの押しつけ
手作りおでんを無理やりおすそ分け
 
その後
待ち伏せ開始
断っても玄関前で待ち伏せ
 
エスカレート
「彼氏」を自称
自分はネギさんの恋人だと思い込む

隣人の男性——作品では 「肝杉さん」 と呼ばれる——は、翌日から手作りおでんを無理やりおすそ分けしようとした。

断っても玄関前で待ち伏せし、つきまとい行為を繰り返す。

さらに「自分はネギさんの彼氏だ」と思い込んでいるかのような言動がエスカレートしていく。

この体験を漫画にした『俺の手作りおでん食べてください』は、 ウォーカープラス(Fandomplus) のインタビューでもネギさん自身が 「不動の1位」 と語るエピソードだ。

39 話、Kindle全 3 巻として刊行された同作は、Instagram上で繰り返し話題にのぼり続けている。

ただの怖い話ではなく、「たった一度の挨拶」から始まる恐怖の構造が、多くの一人暮らし経験者の心に刺さったからだろう。

おでんを差し入れ、待ち伏せし、彼氏を自称する——肝杉さんの頭の中では何が起きていたのか。


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「親切」が恋愛と化す脳のバグ

引越しの挨拶は、された側の脳内で 「好意」に化ける

好意の返報性

相手から親切にされると、自分も相手に好意を返したくなる心理の仕組み。

社会心理学で広く知られている。

引越しの挨拶のように「わざわざ自分のところに来てくれた」行為が、受け手に「自分は特別だ」という確信を生むきっかけになりうる。

ふつうはそこで止まる。

だが止まらないケースがある。

精神医学には 「エロトマニア」 、日本語でいえば「被愛妄想」(相手が自分に好意を持っていると根拠なく確信してしまう心理状態)と呼ばれる症状がある。

肝杉さんの行動——たった一度の挨拶を恋愛関係の開始と受け取り、拒否されても「照れている」と解釈し続ける——は、 この被愛妄想の特徴と重なるのではないか

純朴な親切
おでんの差し入れ
病的な確信
「彼氏」の思い込み

この2つの境界線は、外からはほとんど見えない。

おでんを差し入れてくれる隣人が、ある日突然ストーカーに変わるのではなく、本人の中では最初から「恋人同士」だった。

この構造的なズレこそが、被害者にとって対処を遅らせる最大の壁になる。

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心理の問題として理解できたとしても、現実に隣人が毎日ドアの前に立っているなら——法律はどこまで守ってくれるのか。

「彼氏ヅラ」はどこから犯罪になるか

東京都内だけで 1日約5件 、ストーカー相談が入る。

警視庁 によると、令和7年(2025年)の相談件数は 1,751件 で、前年から 20.3% 増えた。
1,751 件を 365 日で割ると、1日あたり約 4.8 件。

東京だけでほぼ毎日 5 件のストーカー被害が届け出られている計算になる。

80.8
%
女性被害者
相談者の割合
51.7
%
交際相手
元含む最多関係
10.1
%
面識なし
176件/年

注目すべきは 「面識なし」が 176 件、全体の 10.1% を占めている点だ。
1週間に約 3.4 件、見知らぬ相手——つまり挨拶を交わした程度の関係——からストーカーが発生していることになる。

ストーカー規制法 (正式名称:ストーカー行為等の規制等に関する法律)が定める行為形態を見ると、「つきまとい等」が 34.5% で最多。

次いで「面会・交際等の要求」が 25.6% にのぼる。

肝杉さんの行動——待ち伏せ、おでんの押しつけ、彼氏を自称——は、これらの行為類型に重なる。
「彼氏ヅラ」は気持ち悪いだけの話ではなく、法律上の規制対象になりうる行為 だ。

法律で裁ける行為なのに、漫画の中の肝杉さんは数十万人の読者に「推し」とまで呼ばれている。


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「気持ち悪いおじさんでいい」が殺到した理由

「気持ち悪いおじさんでも大丈夫」—— 読者アンケートの結果 だった。

作画のネギさんと原作のマヨさんは、肝杉さんのデザインを決める際に読者アンケートを実施した。

「イケメンにするか、気持ち悪いおじさんにするか」を問いかけたところ、 「気持ち悪いおじさんでいい」という回答が殺到した

マヨさんはキャラクターの設計について「純朴に狂気、思い込みと親切を組み合わせました」と ウォーカープラス(Fandomplus)のインタビュー で語っている。

イケメン案
読者の支持:少数
キモおじさん案
読者の支持:殺到

なぜ読者は「気持ち悪い方」を求めたのか。

心理学には 「カタルシス効果」 (恐怖や怒りの感情を安全な場所で疑似体験することで気持ちが浄化される仕組み)という概念がある。

ホラー映画を観てスッキリする感覚に近い。

だが『おでん』の場合、読者は映画を「観る」だけではなく、キャラクターの造形に投票するという形で制作に参加している。

自分が作ったキャラクターに自分が怖がる ——この構造は従来の読者体験にはなかったものだ。

読者が「気持ち悪いおじさんでいい」と求めたのは、安全に恐怖を味わいたいという欲求と、自分の被害体験の代理処罰を漫画に託す心理が重なった結果ではないか。

さらにマヨさんは彩色で 「黒と黒めの赤」 を選んだ。

キャラクターのフォルム自体は丸い。
かわいい絵柄とホラー配色のギャップ が、恐怖をさらに増幅させている。

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読者が恐怖を共創できたのは、ネギさんがこの体験を漫画にしたからだ。

しかしネギさん自身は、長い間この出来事を「刺激的な過去」だとは思っていなかった。

被害者本人が「平凡な人生」と思い込む怖さ

「私には刺激的な過去がないな」—— ネギさんの言葉 だった。

ネギマヨの2人は、もともとマヨさんの過去の話をエッセイ漫画にしていた。

そのとき「マヨは刺激的な人生だよね。

私には刺激的な過去がないな」とネギさんが漏らすと、マヨさんが「いやいやあるじゃん。

"おでん"」と指摘した。

ネギさんは「あーーーーー」と思い出したという。


正常性バイアス (自分は大丈夫、大したことではないと思い込む心理)によって、被害の深刻さが本人の記憶から消えていた。
19 歳のころは毎日怖い思いをしていたはずなのに、数年後には 「平凡な人生の一部」として記憶が上書きされていた のだろう。

漫画という形式が、体験を「自分のもの」から「物語」に変える装置になった。
Amazon でKindle版全 3 巻が 無料 で公開されており、番外編 3 篇も収録されている。

マヨさんがインタビューで語った「当事者のネギは元気にしているのでさくっとキモ怖がっていただければうれしいです」という言葉が、被害を客体化できた証しになっている。

自分の被害に気づけないことがある——では、気づいたとき最初に何をすればいいのか。


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隣人が怖いとき最初にやること

ドアの前に人の気配がする夜、スマホを握る手が震える。

もし引越し先で隣人の言動に違和感を覚えたら、最初にやるべきことは 「記録」 だ。

日時、内容、場所をメモに残す。

スマホの録音機能やドア用の防犯カメラも証拠になる。

1
記録する
2
管理会社に報告
3
警察に相談

次に管理会社か大家に報告する。

賃貸物件であれば、管理会社は居住者のトラブルに対応する義務がある。

それでも行動が止まらない場合、最寄りの警察署の 生活安全課 に相談できる。
ストーカー規制法 に基づく「警告」を出してもらえれば、行為者に対して警察署長名で書面が届く。

警告でも止まらなければ、「禁止命令」の発出を公安委員会に申し立てることが可能だ。

ストーカー規制法に基づく警告・禁止命令は、 交際関係がなくても申し立てることができる

挨拶程度の関係でも、つきまとい・待ち伏せ・面会要求があれば規制の対象になる。

この記事で見てきたとおり、引越しの挨拶という日常の礼儀が、相手の脳内では「好意のサイン」に変換されることがある。

挨拶をしたこと自体が悪いわけではない。

ただし、一人暮らしを始めるタイミングで 「違和感に気づいたら記録→管理会社→警察」 という順序を知っておくことが、自分の安全を守る最初の一歩になる。

[Turn 5 完了]

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まとめ

  • ネギマヨのコミックエッセイ『俺の手作りおでん食べてください』は、19歳の初めての一人暮らしで起きた隣人ストーカー被害の実体験がベースになっている
  • 警視庁の統計では、東京都内だけで1日約5件のストーカー相談があり、「面識なし」の関係からの被害が全体の10.1%を占める——挨拶程度の関係からストーカー化するケースは珍しくない
  • 肝杉さんのキャラデザインは読者アンケートで「気持ち悪いおじさんでいい」が殺到して決まった。読者が恐怖の造形に参加することで、カタルシス効果と被害体験の代理処罰が同時に機能する構造が生まれていた
  • 被害者のネギさん自身がこの体験を「平凡な人生の一部」と思い込んでいたことは、ストーカー被害における正常性バイアスの典型例といえる
  • 隣人の行動に違和感を覚えたら「記録→管理会社→警察」の順で動く。ストーカー規制法に基づく警告・禁止命令は、交際関係がなくても申し立てることができる

「たった一度の挨拶」が恐怖の入口になりうるという事実は、裏を返せば、違和感の段階で記録を始めれば被害を食い止められるということでもある。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「彼氏ヅラ」とはどういう意味?

彼氏でもないのに彼氏のような態度を取ること。

束縛や過度な干渉、一方的な恋人気取りの行動を指す俗語。

Q2. ネギマヨの漫画『俺の手作りおでん食べてください』はどこで読める?

Amazon Kindleで全3巻が無料で公開されている。

番外編3篇も最終巻に収録。

Instagramアカウント@negimayo3でも閲覧できる。

Q3. 隣人からストーカー被害を受けたら警察に相談できる?

できる。

最寄りの警察署の生活安全課に相談すると、ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令の手続きを案内してもらえる。

Q4. ストーカー規制法は交際関係がなくても使える?

使える。

面識がない相手や挨拶程度の関係でも、つきまとい・待ち伏せ・面会要求などの行為があれば規制の対象になる。

Q5. 一人暮らしで隣人に挨拶しないほうが安全?

挨拶自体が危険なわけではない。

ただし相手の反応に違和感を覚えたら、日時と内容を記録し管理会社に早めに報告することが大切だろう。

Q6. 隣人ストーカーの被害件数はどのくらい?

警視庁の統計では令和7年のストーカー相談は1,751件。

うち「面識なし」からの被害は176件で全体の約10%を占める。

Q7. ネギマヨとはどんなクリエイター?

ネギさん(作画)とマヨさん(原作・塗り)の2人組。

Instagramとブログ「ここはネギマヨ荘」で実体験ベースのコミックエッセイを発信している。

N

リアルタイムニュースNAVI 編集部

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