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工場の用水路にオオサンショウウオ——米子市が「毎年起きる」と言う理由

| 読了時間:約5分

化粧品工場の昼休みに、敷地内の用水路で74センチの黒い影が動いていた。

その正体は、国が最高ランクで保護する特別天然記念物・オオサンショウウオだった。

工場内は騒然となったが、米子市の担当者はいつも通りの手順で対応した。

実はこの出来事、毎年同じ時期に繰り返されている「定例」なのだ。

工場の用水路にオオサンショウウオ——米子市が「毎年起きる」と言う理由

昼休みに用水路を覗いたら、74センチの黒い影

「まずなんでいるの、っていうところですね」——昼休みに飲み物を買いに出た工場員の目に、用水路の黒い影が映った。

場所は 鳥取県米子市 にある化粧品の製造販売会社・ 進製作所 の敷地内だ。

発見したのは従業員の 宅野元基 さん。

外に出た際に用水路をのぞくと、黒くて大きな生き物がゆっくりと動いていたという。
BSS山陰放送 によると、発見時にはすでに米子市の職員が保護に動いていた。

今回発見された個体の体長はおよそ 74センチ

実はこれでも「 大きい部類 」ではなく 「比較的小さい部類」 にあたる。

この種は最大で全長 150センチ ——小学校低学年の子どもの身長ほど——に達することがある。

ランドセルを縦に 2枚半 以上並べた長さだ。

74 cm
今回の個体
比較的小さい部類
50〜70 cm
野生の標準
多くの個体の体長
150 cm
最大記録
小学低学年の身長

保護されたオオサンショウウオは マイクロチップ (皮膚の下に埋め込まれた個体識別装置)で管理され、発見地の上流にある河川に返された。

「本当にここの会社の川がすごいきれいなんだなってうれしい」と別の従業員が話す一方、この喜びと水質の関係については後ほど触れる。

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触れただけで法律違反になる——それはなぜか。

触れたら捕まる?死骸を拾っても違法

法隆寺と同じ扱い —— 文化財保護法 のもと、オオサンショウウオは「国宝」と同格だ。

農林漁業信用基金の特別天然記念物解説 によると、オオサンショウウオは 1951 年に天然記念物に指定され、翌 1952 年に「 特別天然記念物 」へと格上げされた。

特別天然記念物とは、天然記念物の中でも「世界的または国家的に特に価値が高い」とされるものを指す。

動物では、コウノトリやトキ、イリオモテヤマネコなどと同じカテゴリーだ。

特別天然記念物とは?

天然記念物の中でも最高ランクに位置づけられた指定。

文化財として「国宝」に相当する扱いを受ける。

オオサンショウウオはこの指定を種として受けているため、日本国内どこにいる個体でも保護の対象になる。

この指定を受けた生き物は、 文化財保護法 種の保存法 (絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)によって二重に守られている。

専門家以外が許可なく触れること、捕まえること、別の場所へ移動させることは、 すべて違法だ。

驚くのはその範囲の広さだ。
伊丹市の公式ページ によると、「死体や骨も特別天然記念物であり、許可なく所持または譲渡した場合も法律により罰せられるとされている」。

川で死んでいる個体を記念に持ち帰ることさえ、 法律に違反する。


⚠ オオサンショウウオに触れてはいけない3つの理由

  • 文化財保護法・種の保存法の二重違反になる
  • 個体によっては噛みつく危険があり、大けがのリスクがある
  • 死体や骨を持ち帰ることも違法対象になる

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それほど厳しく守られているこの生き物が、なぜ化粧品工場の用水路に現れたのか。

答えは意外にも、自治体の公式ページに淡々と書かれていた。

毎年起きている。米子市が「定例」と言う理由

毎年、用水路で発見される。
米子市の公式ページ は、その事実を淡々と書いている。

米子市によると、オオサンショウウオは市内の 日野川 小松谷川 佐陀川 精進川 などに生息しており、それらとつながる用水路に迷い込む事例が「 毎年 」起きているという。

水干し(農業用などで用水路の水を抜く作業)の際に発見されることも多い。

今回の「工場騒然」は、自治体の目線では年中行事のひとつだ。

なぜ毎年この時期に起きるのか。

ヒントは生き物の繁殖サイクルにある。

伊丹市の公式資料 によると、オオサンショウウオは 8月下旬 から 9月中旬 に産卵期を迎えるため、 7月 ごろから産卵の巣穴を確保しようと移動が活発になる。

今回の発見は7月初旬。

繁殖に向けて行動圏を広げる時期と、ぴったり重なっている。

メディア目線
「珍事!工場に騒然」
市役所目線
「今年も毎年の対応」

川の本流から枝分かれした用水路は、いわば生き物にとっての「横道」だ。

繁殖移動で普段より遠くまで動き回るこの時期に、川とつながった用水路のネットワークを通って人間の生活圏に現れる—— そういう構造が毎年繰り返されているのだろう。

「珍事」として報道されるたびに驚かれるが、米子市は毎年同じ手順で対応し、元の川に返しているわけだ。

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実は米子市の担当者は「またか」と毎年対応していて、 7月になるとこの生き物が川から用水路に迷い込む季節 なんです——「珍事」として報道されるたびに驚かれるが、自治体と生き物の双方にとっては季節の定例行動、という構造が成立している可能性がある。

そして従業員が「川がきれい」と喜んだのも根拠のない感想ではないかもしれない。

オオサンショウウオは水質と川の環境に非常に敏感な生き物で、この種が生息できる川は清浄である可能性がある。

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では実際に川や水路でこの生き物を見かけた場合、やっていいことと、絶対にダメなことがある。

近所の川にいたら絶対にやっていいこと・ダメなこと

「触らずに市に通報を」—— 米子市文化振興課 はそう呼びかける。

米子市の案内 によると、発見した場合は市の 文化振興課 へ連絡し、専門家が記録を取った上で上流の河川へ返すという手順を踏む。

自分で触ったり、捕まえたり、場所を移動させたりすることは すべて違法だ。

  1. その場を離れない ——生き物の位置を把握しておく
  2. 絶対に触れない ——噛みつく危険+文化財保護法違反
  3. 自治体の文化財担当課へ電話 ——専門家が対応・放流

やってはいけない理由はもうひとつある。
米子市文化振興課 左古友剛 主任は「個体によっては狂暴でかみついたりする恐れもある」と話す。

オオサンショウウオは目の前を動くものに反射的に噛みつく習性を持つ。

力も強く、不用意に顔や手を近づけると 大けがのリスクがある。

また、見た目だけでは在来種(日本のオオサンショウウオ)か外来種・交雑種かを判断するのは、専門家でも難しいとされる。
とにかく触れずに自治体の文化財担当課へ電話する ——それが唯一の正解だ。

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もっとも、このオオサンショウウオ、鳥取県全体で見ると今後も「毎年用水路に現れる」と言えるかどうか、実は揺れている。

鳥取県東部ではほぼ絶滅、なのに西部では毎年発見

同じ県の中に「毎年出る地域」と「ほぼ消えた地域」が共存している。

鳥取県の公式サイト によると、鳥取県は 2026 3 月に5年間の生息環境調査報告書を刊行した。

その内容は厳しいものだ。

気候変動や河川環境の変化で県内の生息地が縮小しており、特に県東部では 八頭町 私都川 流域のみで個体が確認されたにとどまる。

鳥取県東部
八頭町1流域のみ確認
鳥取県西部(米子市)
毎年用水路で発見

日本海新聞 (2026年5月15日付)の報道タイトルは「生息地縮小、高齢化も」だ。

同じ鳥取県でも、場所によって状況がまったく異なる。

米子市周辺が、この種にとって現在も重要な生息地として機能している可能性がある。

外来種の チュウゴクオオサンショウウオ との交雑も全国で深刻な問題になっており、鳥取県でも例外ではない。

今回工場の用水路で発見された個体が在来種かどうかも、 DNA検査なしには断言できない。


ℹ 外来種との交雑問題

1970年代に食用などの目的で中国から持ち込まれた チュウゴクオオサンショウウオ が野生化し、在来種と交雑した個体が増加している。
日本オオサンショウウオの会 によると、捕まえることも移動させることも法律で禁止されており、在来種の保護と外来種の管理が同時に求められる難しい問題だ。

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化粧品工場の昼休みに起きた「騒然」の裏側には、そういう現実がある。

毎年7月になると山の川から用水路へ迷い込み、毎年市が元の川へ返す——この静かな繰り返しが続く場所に、この生き物がまだ生きているということでもある。

まとめ

  • 今回の発見は鳥取県米子市の化粧品工場「進製作所」の敷地内用水路で起きた。体長約74センチだが、これはこの種にとって「比較的小さい部類」にあたる
  • 米子市では日野川など市内河川とつながる用水路へのオオサンショウウオの迷い込みが毎年起きており、今回の「騒然」は自治体にとって年次対応のひとつだ
  • 7月ごろから繁殖期に向けた移動が活発になる生態が、この時期の用水路出没と重なっている
  • 特別天然記念物のため、触れるだけで文化財保護法違反になる。見かけた場合は触れずに自治体の文化財担当課へ連絡することが唯一の正解だ
  • 鳥取県東部ではほぼ見られなくなった一方、県西部の米子市周辺では毎年発見が続いており、地域によって状況に大きな差がある

よくある質問(FAQ)

Q1. オオサンショウウオを見つけたらどうすればいいですか?

触れずに、発見した市区町村の文化財担当課へ連絡してください。

触れるだけで文化財保護法違反になります。

噛みつく危険もあるため、自分で捕まえたり移動させたりしてはいけません。

Q2. オオサンショウウオはどこに生息していますか?

岐阜県より西の近畿・中国地方を中心に、四国や九州の一部にも生息しています。

鳥取県では日野川・天神川水系が主な生息地ですが、近年は生息地の縮小が報告されています。

Q3. なぜ工場の用水路にオオサンショウウオが出てきたのですか?

米子市によると、市内河川とつながる用水路への迷い込みは毎年起きています。
7月ごろから産卵の巣穴を求めて移動が活発になる時期と重なることが、出没の理由として考えられます。

Q4. オオサンショウウオは触ると法律違反になりますか?

はい。
1952年に特別天然記念物に指定されており、文化財保護法により許可なく触れること・捕まえること・移動させることはすべて違法です。

死体や骨を拾うことも禁止されています。

Q5. オオサンショウウオの体長は最大でどのくらいですか?

最大で全長150センチほどになります。

野生個体は一般に50〜70センチ程度のものが多く、今回発見された約74センチは「比較的小さい部類」と報じられています。

Q6. オオサンショウウオはなぜ「生きた化石」と呼ばれるのですか?

約3000万年前の地層から見つかった化石と、今のオオサンショウウオの姿がほとんど変わっていないためです。

哺乳類の多くがまだ今の姿になっていなかった時代から形を保っています。

Q7. 在来種のオオサンショウウオと外来種はどう見分けますか?

見た目だけでは専門家でも見分けることが難しく、確実な判定にはDNA検査が必要とされています。

見かけた場合は種類を問わず自治体へ連絡するのが正しい対応です。


📚 参考文献

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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