| 読了時間:約5分
「全世界に分散しているから安全」——そう思ってオルカンを買った人は少なくないだろう。
PRESIDENT Online 掲載の調査によると、新NISAを始めた人の約 4割 がオルカンを選んでいる。
2025年 12 月末時点の新NISA口座数は 2826万 口座。
単純計算で、働く日本人のおよそ 2人に1人 が口座を持っている規模だ。
これほど多くの人が同じ商品を選んでいるとき、「本当に中身を理解して買っているか」という問いは、一度立ち止まって考える価値がある。
この記事でわかること
オルカンで「本当に」大丈夫か
新NISAを始めた約 2800万人 のうち、 4割 がオルカンを持っている。
だが「なぜ買ったのか」と聞かれると、答えに詰まる人が多い。
「みんな買っているから大丈夫」という安心感そのものが、投資における 最初の落とし穴 になりうる。
大勢が同じ商品に集中している状態は、過去の金融バブルが繰り返してきた構図でもある。
⚠️ 「みんなが正しいと言う商品」こそ危うい場面がある
「みんな買っているから大丈夫」という言説は2024年に広まったが、投資の世界では多数派への集中が必ずしも安全を意味しないのではないか。
そもそも「オルカン」の中に何が入っているか、説明できるだろうか。
「全世界株式」という名前が示す中身は、あなたが想像するものとはかなり違うかもしれない。
PRESIDENT Online が公開した 馬渕磨理子 氏との対談動画では、「新NISAを始めた人が絶対やってはいけないこと」や「オールカントリーは本当に大丈夫か」というテーマが取り上げられている。
広告
「全世界株式」という名前が与える安心感と、実態のズレ。
次のセクションで中身を解体する。
「全世界」なのに6割がアメリカ株の謎
オルカンの米国株比率は 63.9 %。
しかし正式名称は「全世界株式」だ。
オルカン (eMAXIS Slim 全世界株式)は「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」という株価の指数(さくひんのうちどれに・どれだけ投資するかを決めるモノサシ)に連動する。
この指数は世界 47 か国・約 2900 銘柄を組み入れているが、 SBI証券の分析 によると2025年11月末時点での米国株比率は 63.9 %だ。
日本株は約 5 %にすぎない。
なぜこうなるかというと、組み入れ比率が 「会社の規模が大きいほど多く持つ」 という仕組みで決まるからだ。
世界で最も規模の大きい企業の多くはアメリカ企業であるため、自動的に米国比率が高くなる。
「オルカンと S&P500 (米国株500社のみに投資する指数)を分散のために両方買う」という行動は、実質的にアメリカ株の比率をさらに高めることになる。
日経トレンディ も「オルカンでも 60 %以上を米国株が占める」と指摘している。
これは欠陥ではなく設計通りだ。
問題は「全世界」という言葉が与える安心感と、実態がずれている点にある。
広告
では、この米国偏重がオルカンの過去のリターン(投資の成果)にどう影響してきたか。
「10年で7倍」という数字の内訳は、見てみると少し違う色をしている。
「7倍」の正体は企業成長ではなく円安だった
オルカンは円建てで10年約 7 倍。
だがドル建てでは約 4.5 倍だ。
PRESIDENT Online掲載のFPコラム によると、オルカンに連動するMSCI ACWIの過去 10 年の平均リターンは配当込み・円ベースで年率 14 %程度、直近 5 年では 20 %を超えている。
【円建て vs ドル建て・リターンの乖離】
過去10年・円建て = 約 7倍
過去10年・ドル建て = 約 4.5倍
差(円安効果の分)= 約1.5倍以上
オルカンはドル建て資産が中心のため、 円安(ドル高)が進むと円建てリターンが膨らむ 構造になっている。
ところが、この数字には重要な補足がある。
同じ期間をドル建てで見ると約 4.5 倍にとどまる一方、円建てでは約 7 倍になる。
差は 1.5 倍以上だ。
「 オルカンが10年で7倍になった 」という実績の相当部分は、 企業の稼ぐ力ではなく円安という為替の追い風 によるものである可能性が高い。
この追い風が剥落したとき——つまり円高が進んだとき——円建てのリターンはドル建ての数字に近い水準に修正されるだろう。
ここで一つの認知の仕組みが働いている。
行動経済学では「 貨幣錯覚(Money Illusion) 」と呼ばれる性質がある。
名目(がめん上)の数字と、実質の中身(購買力ベース)を無意識に同じものとして捉えてしまう傾向のことだ。
「円建て 7 倍」という数字は目に分かりやすく、その数字を見るだけで「これは本物の成長だ」と感じてしまう構造が人間の脳にはある。
この性質が「オルカンは儲かる・安全だ」という確信をより強固にしているのではないか。
広告
💡 「職場で話せる1文」
「オルカンが10年で 7 倍になったのは、会社が成長したからだけじゃなくて、円が安くなったからでもある——ドル建てで見ると 4.5 倍しかないんだよ」
重要なのは「だからオルカンを買うな」ではない。
「 リターンの出どころを理解した上で持ち続けるかどうか判断する 」ことだ。
円安が永遠に続くという前提で老後の資産を設計するのは、もう一つの思い込みになる。
「正体を知った」。
では、その上で初心者は何をやってはいけないのか。
広告
馬渕磨理子が語る「絶対やってはいけないこと」の背景には、投資より先に知るべきヒトの心理がある。
初心者が「絶対にやってはいけないこと」の正体
「暴落した日にスマホを開いて、売るボタンを押す」——それが 最も高コストな判断 だ。
「含み損(まだ売っていないがマイナスになっている状態)が出たら売らない」「感情で動かない」「高い手数料の商品を買わない」。
これらは投資初心者が陥る典型的な失敗パターンの裏返しだ。
経験則ではなく、行動経済学の研究で繰り返し確認されてきた人間の行動パターンでもある。
損失回避バイアス(そんしつかいひバイアス)
「1万円を得る喜び」より「1万円を失う痛み」を約 2 倍大きく感じるという、人間の脳の性質。
行動経済学の確立した概念。
新NISAの積立において、この性質が「含み損が出たら売りたくなる」という衝動として現れ、長期投資の成果を最も削ぐ行為につながるとされる。
「暴落したら売りたくなる」という衝動は、 損失回避バイアス と呼ばれる人間の性質によるものとされている。
人間の脳は「 1 万円を得る喜び」より「 1 万円を失う痛み」を約 2 倍大きく感じるよう設計されており、含み損という状態はこの痛みを毎日突きつける。
積立を途中で止めさせる最大の原因がここにある可能性が高い。
PRESIDENT Online が公開した馬渕磨理子氏との対談動画では「新NISAを始めた人が絶対やってはいけないこと」が取り上げられている。
自分が今やっている積立が「暴落したら本当に続けられるか」を事前に想定しておくことが、唯一の準備になる。
「生活費の 3 〜 6 か月分の現金を手元に残した上で投資する」という原則はこのためにある。
✕ NISA口座での損確定は取り戻せない
NISA口座の損失は他の利益と相殺(損益通算)ができない。
含み損の状態で売ると、その損は永遠に確定する 。
これはNISAが持つ数少ないデメリットの一つだ。
「売るな、続けろ」は分かった。
では「月いくら、何年」積み立てれば2000万円に届くのか。
広告
馬渕磨理子が提示した「月5000円で2000万円」という数字を、正直に計算してみる。
月5000円で2000万円は本当に届くのか
月 5000 円× 30 年(年率 5 %)の試算は約 417 万円。
2000万円には届かない 。
「月5000円の積立で2000万円」というチャプタータイトルが動画に存在する。
ただし前提条件(年数・想定利回り)は動画本編での確認が取れていない。
複利計算(利息にも利息がつく計算方法)の一般式から逆算すると、年率 5 %・ 30 年で月 5000 円の場合、元本 180 万円は試算上約 417 万円になる計算だ。
2000 万円には 5 倍近い開きがある。
2000 万円を「年率 5 %・ 30 年」で達成しようとすると、月 3 万円以上の積立が必要になる(元本 1080 万円→試算上約 2500 万円)。
利回りの前提を変えると結果は大きく動く。
「 2000 万円」という目標を持つなら、月いくら・何年・どの利回りを想定するかを最初に自分で計算しておく必要がある。
あなたの年齢と残り積立年数で「月いくら必要か」を試算することが、最初の実務的な一歩になる。
三菱UFJアセットマネジメント の公式サイトには無料のシミュレーターが公開されている。
💡 自分に必要な積立額の確認方法
①目標金額(例:2000万円)と②残り積立年数を決める。
③想定利回り(保守的なら5%・強気なら7%)を仮置きする。
この3つを 無料シミュレーター に入力すると、必要な月額が出る。
計算はできた。
だが「信じて続ける」ために必要なのは計算式だけではない。
広告
「誰がこれを言っているのか」という人物への信頼もある。
馬渕磨理子とは、どんな人物なのか。
馬渕磨理子がオルカンを語れる理由
「儲かる投資先を教えます」—— 馬渕磨理子 が公言する「 最も嫌いな言葉 」だ。
馬渕磨理子オフィシャルサイト によると、彼女は 同志社大学 法学部を経て 京都大学 公共政策大学院修士課程を修了。
トレーダーとして法人ファンドの運用を担った後にアナリストへ転身し、現在は 日本金融経済研究所 代表理事・ 大阪公立大学 客員准教授を務めている。
2024年 1 月、 乳がんの闘病を公表 した。
入院中もなりすまし詐欺アカウントが急増し、本人の写真を悪用した投資詐欺が多発した。
登壇イベントでは警備を厳戒態勢にせざるを得ない状況になったと本人がXで明かしている。
「 11 年間金融業界にいるが、『儲かる投資先を教えます』という言葉が最も嫌いな言葉だ」という発言は、なりすまし詐欺の被害を身をもって経験した者の言葉として重みが違う。
「儲かる投資先を教えます」を最も嫌うアナリストの名前が詐欺に使われるという皮肉は、彼女の発言の信頼性が逆用されるほど高く評価されていることの裏返しかもしれない。
「オルカンで本当に平気か」という問いへの答えは、一人のアナリストが出せるものではない。
広告
ただ「 正しく怖がりながら続ける 」という選択に、X上で約 15.8万人 のフォロワーが耳を傾けている事実はある。
まとめ
- オルカンは「全世界株式」と名乗っているが、米国株が63.9%を占める。S&P500と両方買っても分散にならず、実質的にアメリカ株の比率がさらに高まる
- 「円建て10年7倍」のリターンの一部は企業成長ではなく円安効果であり、ドル建てで見ると約4.5倍にとどまる。この差を「企業の実力」と混同すると、将来の見通しが大きくずれる
- 「月5000円で2000万円」は年率・積立年数・積立額の3条件が揃わないと成立しない。年率5%・30年の試算では月5000円の元本180万円は約417万円にしかならない
- 暴落時に売りたくなる衝動は意志の弱さではなく、損失回避バイアスと呼ばれる人間の認知構造によるものだ。これを知って積立を続けることが長期投資の最大の武器になる
- 馬渕磨理子はがん闘病中にもなりすまし詐欺の被害を受けながら「儲かる投資先を教えます」を最も嫌いな言葉として公言している人物だ
「全世界株式」という名前の安心感を一度疑うことが、自分の積立を本当に理解して続けるための最初の一歩になる。
よくある質問(FAQ)
Q1. オルカンの米国株比率はどのくらいですか?
2025年11月末時点で63.9%です。
「全世界株式」と名乗っていますが、3分の2近くが米国株で、日本株は約5%にすぎません。
Q2. オルカンとS&P500を両方買うと分散になりますか?
なりません。
S&P500は米国株100%のため、オルカンと組み合わせると実質的に米国株の比率がさらに高まります。
分散効果は生まれません。
Q3. オルカンのリスクはどのくらいですか?
オルカンは株式のみで構成されるため、債券を組み入れたバランスファンドより値動きは大きくなります。
1年で30〜50%程度の下落が起きた年もあります。
Q4. オルカンが「10年で7倍」になったのはなぜですか?
企業の成長に加え、円安(ドル高)による価格の水増し効果が含まれています。
同じ期間をドル建てで見ると約4.5倍にとどまり、差の多くは為替の影響です。
Q5. 新NISAで月5000円積み立てると2000万円になりますか?
年率5%・30年の試算では元本180万円が約417万円になる計算で、2000万円には届きません。
2000万円を達成するには積立額・運用期間・利回りの条件を揃える必要があります。
Q6. 馬渕磨理子さんの経歴は何ですか?
京都大学公共政策大学院修士課程を修了後、トレーダーを経て経済アナリストへ転身。
現在は日本金融経済研究所代表理事・大阪公立大学客員准教授を務めています。
Q7. 暴落したときオルカンは売った方がいいですか?
原則として売らない方が資産を守れます。
NISA口座では損失を他の利益と相殺(損益通算)できないため、含み損の状態で売ると損失が永遠に確定します。
📚 参考文献
- PRESIDENT Online「オルカンで本当に平気? 馬渕磨理子と新NISAの話をしよう」
- 馬渕磨理子オフィシャルサイト「馬渕 磨理子 プロフィール」
- ダイヤモンドZAiオンライン「NISAで大人気の「オルカン」の基本と投資初心者が勘違いしやすい"3つの罠"を解説!」
- 日経トレンディ「『オルカン全振り』投資に落とし穴 高配当株+金で"鉄壁"を築く」 (2026年4月6日)
- SBI証券「NISA 2026年 オルカン+α の一歩進んだ分散投資とは?」
- PRESIDENT Online「2026年になっても「S&P500・オルカン一択」は危ない…「3年目の新NISA」に組み込むべき"資産を守る"投資先」 (2026年1月6日)
- 三菱UFJアセットマネジメント「つみたて(積立)投資シミュレーション」
- 馬渕磨理子 公式X @marikomabuchi
- liberaluni.com
- x.com
リアルタイムニュースNAVI 編集部
reaitimenews.com
話題のニュースを「なぜ?」の視点で深掘りするニュースメディアです。法律・心理学・経済など専門分野の知識をもとに、報道だけではわからない背景や理由をわかりやすく解説しています。
広告