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ペルシャ湾に、日本の船が38隻、4か月閉じ込められている。
米国とイランが戦闘終結の覚書に合意したのは6月15日のことだった。
ニュースを見て「やっと終わった」と感じた人もいるかもしれない。
しかしその翌16日、国土交通大臣がひっそりと明かしたのは「3日前に船が損傷していた」という事実だ。
しかも、これは今回が初めてではない。
3月にも同じことが起きていた。
そして「60日間無料」という覚書の文言の裏に、見落としがちなリスクが潜んでいる。
この記事でわかること

3日前に起きていた、湾内の衝撃
「 船体の一部に損傷があることが確認された 」——大臣の発表は 3 日遅れだった。
金子恭之 国土交通大臣が閣議後の会見でこの事実を明かしたのは6月16日の朝だ。
しかし 時事通信 によると、実際に船体に「何らかの衝撃」があったのは現地時間 6月13日 の未明のことだった。
公表まで 3日のずれがある 。
損傷した船の乗組員にけがはなく、自力で航行できる状態だ。
日本人の乗組員は乗っていない 。
損傷の程度や原因は「 現在確認中 」だ。
情報の収集や外交的な判断が背景にある可能性があるだろうが、3日間のタイムラグの理由は公式には説明されていない。
TBS NEWS DIG によると、 国土交通省 はこの事案を受け、 日本船主協会 に対して船と乗組員の安全確保を徹底するよう注意を促した。
ペルシャ湾内に停泊している 38 隻のうち損傷したのは1隻で、残る 37 隻には問題がないとされる。
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なぜ今もこれほど多くの船が湾内にとどまっているのか。
そもそもの状況を確認しておく必要がある。
4か月で45隻→38隻、それでも出られない理由
約 900 人が乗った 38 隻が、 4 か月以上ペルシャ湾の外に出られないでいる。
大型旅客機を満席にした場合の乗客が約 300 人だ。
その 3 機分に相当する人数が、出口のない海域に閉じ込められた状態が続いている。
2026年 2月28日 、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始したのをきっかけに、イランが ホルムズ海峡 (ペルシャ湾と外の海をつなぐ幅約 33km の細い水道)を事実上封鎖した。
3月時点では 45 隻だった日本関係船が、6月には 38 隻まで減っている。
転換点となったのは 6月15日 だ。
外務省 によると、この日に米国とイランの双方が戦闘終結等に関する覚書に合意したと発表した。
覚書ではホルムズ海峡の航行が 60 日間無料と認められたという。
ただし、即座に全船が脱出できるわけではない。
機雷(海中に設置された爆発物で、船が近づくと爆発する)の除去が完了するまで、船舶の脱出は段階的にしか進まないだろう。
「 一刻も早い脱出へ各国政府などに協力を求めた 」と 日本経済新聞 が伝えるように、 日本船主協会 はなお強い危機感を持っている。
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実はこの「損傷」は今回が初めてではない。
同じことが3か月前にも起きていた。
3月にも「穴が開いた」——2隻目が示すパターン
「 何が当たったのか分からない 」—— 3 月も今回も、政府の答えは同じだ。
時事通信 によると、 3月11日 の未明、 商船三井 が保有・管理する日本船籍のコンテナ船がペルシャ湾内で損傷した。
衝撃があり、 船尾に穴が開いていることを確認した という。
ホルムズ海峡から約 100km 離れた地点だった。
浸水や火災はなく、全乗組員にけがはなかった。
ただし当時は 日本人も乗船していた 点が、今回との大きな違いだ。
- 日本船籍・ホルムズから約100km
- 船尾に穴・浸水なし
- 日本人乗船あり (全員無事)
- 原因:「調査中」のまま
- 船籍・位置は非公表
- 船体の一部に損傷
- 日本人乗船なし
- 原因:「確認中」のまま
2 つの事案を並べると、共通点が浮かぶ。
1件目でも今回でも、損傷の原因は「攻撃を受けたかどうかを含めて確認中」という表現で片付けられている。
1件目の3月事案で原因の公式な結論が出たという報道は確認されていない。
2 件とも「何らかの衝撃」という表現が使われており、 真因の特定や公表に構造的な困難があるのではないか 。
武力衝突が続く海域での事案だけに、原因の断定には外交的な影響がともなう可能性がある。
「でも、自分の生活には関係ないんじゃ?」——そう思っているなら、ちょっと待ってほしい。
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石油93%依存、でも停電リスクは意外と低い理由
日本の石油の 93% がホルムズ経由だ。
でも 停電はすぐには起きない 。
「ホルムズが封鎖されたら電気も止まる」と思う人は多い。
しかし 経済産業省の公式資料 が示す数字は、その思い込みを崩す。
- ガソリン・灯油・プラスチック原料
- 中東依存度は94%と突出
- 価格高騰→コスト直撃のルート
- 発電・都市ガスの主要燃料
- 豪州・マレーシアが主要輸入元
- 即座の停電リスクは限定的
コンビニで売っているペットボトルが 10 本あったとして、 9 本以上が中東産の石油に関係しているとイメージしてほしい。
その一方で、発電所で使うガス(LNG)については、 10 本のうち 1 本以下しかホルムズに頼っていない計算になる。
つまり最初に起きることは「電気が止まる」ではなく、 ガソリン代や電気料金が値上がりするというコスト経由の打撃 になるだろう。
備蓄があるために「燃料ゼロ」にはすぐにはならないが、価格の上昇は既に始まっている。
あなたの財布には、停電より先に影響が来る。
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では「コスト高騰で済む」のなら、この危機は解決したも同然なのか。
覚書の小さな文言に、見落とされがちなリスクが隠れている。
「60日無料」の次に来るもの——本当のリスクはここにある
60 日間、無料。
この一文の裏に、 61日目からの話がある 。
日本経済新聞 によると、覚書ではホルムズ海峡の航行が「 60 日間は無料」と認められた。
一見すると前進だ。
しかし「無料」という言葉を置いた時点で、ある前提が生まれている。
国連海洋法条約(UNCLOS)とは
世界の国々が海の使い方を決めた国際的な取り決め。
ホルムズ海峡は「通過通航権」が保障された国際海峡として定められており、本来はどの国も通航料を徴収する権限を持たない。
今回イランが「60日間は無料で通していい」という形式を取ったことで、「料金を決める側」としての立場を事実上主張したことになる。
この構造には、外交史で繰り返されてきた「先例主義」のリスクが重なる。
一度「例外的に認めた」行為が、時間を経て「慣習」として固定されていく現象だ。
「 60 日間無料」という合意が、 61日目以降の有料化を正当化する先例になりうるのではないか 。
日本船主協会 もこの点を懸念し、「 ホルムズ海峡の有料化が他の国際海峡の通航にも波及し、世界貿易の大きな阻害要因となる 」と声明で指摘している。
「60日無料って聞こえがいいけど、本来ただで通れる海峡を国が"今だけ無料"と言っている」——その時点で、もう 通行料を取られる側の立場に立たされている可能性がある 。
この危機が本当に終わるかどうかは、 60 日後に何が決まるかにかかっているだろう。
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「終わった」と思った瞬間に、次のリスクが動き始めていた。
それがこの危機の構造だ。
まとめ
- 今回の損傷は現地時間6月13日未明に発生したが、政府の公表は3日後の16日だった。損傷の原因は依然「確認中」のままだ
- 日本関係船の損傷は今回で2件目。3月の商船三井事案でも原因は「何が当たったのか不明」で終わっており、2件続けて真因が公表されていない
- 日本の原油のホルムズ依存度は93%だが、LNGは6.3%。最初の影響は停電ではなくガソリン代・電気代の値上がりというコスト経由の打撃として現れる
- 覚書の「60日間無料」という表現は、本来誰も徴収権限を持たないはずの海峡で、イランが料金を決める側として立場を主張したことを意味しうる
- 38隻・約900人の脱出は機雷除去の進捗次第で、覚書合意後も即座には完了しない
よくある質問(FAQ)
Q1. ペルシャ湾で損傷した日本の船の原因は何ですか?
国土交通省によると「何らかの衝撃」があったとされるが、損傷の原因は現在も確認中で公式な結論は出ていない。
Q2. なぜ今もペルシャ湾に日本の船が取り残されているのですか?
2026年2月のイラン攻撃を受けホルムズ海峡が事実上封鎖されたため。
米イラン覚書で通航再開の合意はあったが、機雷除去が完了するまで脱出は段階的にしか進まないだろう。
Q3. ペルシャ湾に取り残されている日本の船は今何隻ですか?
2026年6月16日時点で38隻。
3月時点の45隻から減少しているが、依然として多数が湾内にとどまっている。
Q4. ホルムズ海峡が封鎖されると日本の電気代やガソリン代はどうなりますか?
原油のホルムズ依存度は93%と高く、ガソリン代や電気料金の値上がりとして生活に影響が出るだろう。
ただしLNGのホルムズ依存度は6.3%のため、停電が即座に起きるわけではない。
Q5. 米国とイランの覚書でホルムズ海峡は通れるようになりますか?
覚書では60日間無料での通航が認められた。
ただし機雷除去の進捗次第で船の脱出は段階的に進む見通しで、即座に全船が通過できる状態にはならないだろう。
Q6. 「60日間無料」という合意の後、ホルムズ海峡は有料になる可能性はありますか?
日本船主協会は「ホルムズ海峡の有料化が他の国際海峡に波及しうる」と懸念を表明している。
本来は通航料を取れない国際海峡で「無料期間」を設けたこと自体が有料化の先例になりうるのではないか、との見方がある。
Q7. 3月の商船三井の船の損傷とは何ですか?
2026年3月11日未明、商船三井が保有する日本船籍のコンテナ船がペルシャ湾内で損傷し、船尾に穴が確認された。
けが人はなく自力航行は可能だったが、原因は「調査中」のままとされる。
Q8. ホルムズ海峡の通航が再開するのはいつごろですか?
機雷除去の完了時期は現時点では公表されていない。
覚書合意後も除去作業の進捗によって段階的に通航が回復していく見通しとされる。
📚 参考文献
- NHKニュース「金子国交相「ペルシャ湾内の日本関係船舶1隻に損傷確認」」 (2026年6月16日)
- 時事通信「ペルシャ湾で日本関係船1隻が損傷=人的被害なし、航行可能」 (2026年6月16日)
- TBS NEWS DIG(au Webポータル経由)「ペルシャ湾内に停泊中の日本関係船舶1隻に損傷確認 自力航行可能で船員に被害なし ほかの37隻の日本関係船舶は被害なし 金子国土交通大臣が明らかに」 (2026年6月16日)
- デイリースポーツ(共同通信配信)「日本関係船舶1隻に一部損傷」 (2026年6月16日)
- 時事通信「ペルシャ湾で商船三井の船舶損傷 日本人含めけが人なし、原因調査中」 (2026年3月12日)
- 経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」 (2026年3月24日)
- 外務省「イラン情勢について(米・イラン間の覚書の合意)(外務大臣談話)」 (2026年6月15日)
- 日本経済新聞「ペルシャ湾に日本関係船38隻 日本船主協会・長沢仁志会長「一刻も早い脱出に協力を」」 (2026年6月18日)
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リアルタイムニュースNAVI 編集部
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