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ラスタヌラ製油所ドローン攻撃で原油13%急騰、なぜ被害は小さいのに

ラスタヌラ製油所ドローン攻撃と原油急騰の関係を示すアイキャッチ画像

| 読了時間:約8分

サウジ最大の製油所がドローンで停止し、原油は13%急騰した。
ホルムズ海峡もほぼ航行できない状態で、日本のガソリン価格は200円を超えるとの試算も出ている。

被害の実態から原油急騰の真因、そして日本の家計への影響まで整理した。



ラスタヌラ製油所にドローン2機――攻撃の全容と被害状況

2026年3月2日、サウジアラムコはラスタヌラ製油所の操業を停止した。イランによるドローン攻撃を受けた予防措置だ。

SNSには「製油所が燃えている」という映像が広まった。
だがサウジ国防省の発表は、その印象とかなり違う。

📰 サウジ国防省の発表

ロイターによると、サウジ国防省報道官は「施設でドローン2機を迎撃し、落下した破片で小規模な火災が発生したが負傷者はいない」と明らかにした。

つまりドローン2機は迎撃に成功している。
火災も小規模で、けが人もいない。

操業停止はあくまで「予防措置」であり、施設が大きく壊れたわけではない。


なぜラスタヌラが重要なのか

ラスタヌラ製油所は、サウジアラビア東部のダンマーム近郊にある。
ペルシャ湾に面した立地だ。

処理能力は日量55万バレル
エネルギー専門メディアArgus Mediaによると、サウジ全体の精製能力340万バレルの約16%を占める。サウジ最大の製油所だ。

💡 見落とされがちなポイント

この施設は製油所であると同時に原油の輸出ターミナルを併設している。ロイターが「サウジ産原油の重要な輸出拠点」と報じるとおり、ここが止まると精製だけでなく輸出にも影響が出る。

Wikipediaのサウジアラムコの項目によれば、ラスタヌラは1949年に操業を始めた。
サウジの石油産業の原点ともいえる施設だ。



2019年の攻撃とは何が違うのか

サウジの石油施設がドローンで狙われたのは今回が初めてではない。

2019年アブカイク 2026年ラスタヌラ
攻撃主体 フーシ派(武装組織) イラン(国家)
被害 生産の半分以上が停止 迎撃成功、小規模火災
復旧 約2週間 損傷検証中(予防停止)
背景 イエメン内戦の延長 米・イスラエル vs イラン

被害の規模だけ見れば、2019年の方がはるかに深刻だった。
ロイターによると、当時はサウジの原油生産の半分以上が止まり、世界の市場が混乱した。

ところが今回は、攻撃の「主体」が根本的に異なる。
2019年はイエメンのフーシ派による攻撃だったが、今回はイラン自身が国家としてサウジの施設を直接狙った。

AP通信によると、イランは米国とイスラエルへの報復としてアブダビ、ドバイ、ドーハ、マナマ、オマーンなど湾岸全域をドローンで攻撃している。

クウェートのアハマディあはまでぃ製油所でも、迎撃したドローンの破片が落ちて作業員2人がけがをした
ラスタヌラだけの問題ではなく、湾岸のエネルギーインフラ全体が標的になっている。

被害自体は限定的だった。だが、原油市場はまったく別の反応を見せた。



被害は限定的、なのにブレント原油13%急騰――その真因

ラスタヌラの被害は小さい。なのに、なぜ原油がここまで上がったのか。

ブルームバーグによると、ブレント原油先物は一時82ドル台まで急騰し、上昇率は13%を超えた。
イラン攻撃前日の2月27日には73ドルだった。わずか数日で9ドル以上も跳ね上がった。

Argus Mediaの報道では、取引再開直後に82.17ドルをつけたあと75.90ドルまで下落し、その後80ドル前後に戻した。
乱高下の激しさが市場の動揺を物語る。

⚠️ 急騰の真因

原油急騰の主な原因は、ラスタヌラの被害そのものではない。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖による世界の石油流通の麻痺が本当の引き金だ。

ホルムズ海峡が止まると何が起きるか

ブルームバーグは「石油輸送の要衝であるホルムズ海峡を通過する海上交通はほぼ停止」と報じている。

中東調査会の分析によると、2024年にホルムズ海峡を通過した石油量は日量2020万バレル
世界の石油消費量の約20%にあたる。世界で使われる石油の5分の1がここを通っている。

紅海とホルムズの決定的な違い

紅海でフーシ派が商船を攻撃したときは、喜望峰を回る迂回ルートがあった。だがホルムズ海峡には迂回できる航路が存在しない。中東調査会も「代替の航路が存在しないことから、世界のエネルギー市場に深刻な影響を及ぼす」と指摘している。



代替パイプラインだけでは足りない

海が使えないなら陸はどうか。

中東調査会によると、サウジには東部の油田地帯から紅海沿いのヤンブーまでを結ぶ東西パイプラインがある。
輸送能力は日量500万バレルだ。

UAEにもフジャイラへの石油パイプラインがあり、日量150万〜180万バレルを運べる。

ホルムズ通過量

2020万バレル/日

代替パイプライン合計

約650万〜680万バレル/日

陸のパイプラインだけでは、海で運んでいた量をカバーできない。

つまり、たとえラスタヌラ製油所が明日復旧しても、ホルムズ海峡が開かなければ原油を世界に届けられない。
原油急騰の正体は「製油所の被害」ではなく「物流の停止」にある。

では、この原油高は日本の生活にどう跳ね返るのか。



日本のガソリン「200円超」の試算も――中東依存94%の脆弱ぜいじゃく

ガソリン代はこの先いくらになるのか。中東の戦争は、日本の家計に直結する。

中東調査会によると、日本の原油の中東依存度は2025年時点で約94%に達した。
輸入原油の10本のうち9本以上が中東から来ている計算だ。

そしてその大半がホルムズ海峡を通る。

📊 野村総研の試算

ロイターによると、野村総合研究所木内登英氏は「ガソリン価格は約3割上がり1リットル200円を超える」と試算した。ガソリン暫定税率の廃止で下がった分が帳消しになる計算だ。電気代やガス代も半年から1年で1割を超える上昇になるという。

なぜ電気代まで上がるのか。
中東調査会の分析によると、日本企業が結ぶLNGの売買契約の多くは原油価格に連動している。

原油が上がれば、ガスの輸入価格も押し上げられる。
結果として電気料金まで値上がりする。ガソリンだけの問題ではない。



備蓄254日分でも安心できない理由

ロイターによると、日本の石油備蓄は2025年12月末時点で254日分ある。
約8カ月半だ。すべての輸入が止まっても理論上は8カ月以上もつ。

だが問題は「量」ではなく「価格」だ。

同じロイターの記事で、政府関係者は「1バレル80ドルを超えると景気後退のリスクが出る」と語っている。
ブレント原油はすでに82ドル台をつけた。備蓄を使い切る前に、原油高が物価を押し上げ、生活を圧迫する。

🚢 ペルシャ湾のタンカー

ペルシャ湾内では少なくとも150隻のタンカーが錨を下ろしたまま動けない。川崎汽船など日本の海運大手の船舶も足止めされている。伊藤忠商事は石油輸送に一部影響が出ていると明らかにした。日本に向かうはずの原油が、海の上で止まっている。

高市早苗首相は3月2日の衆院予算委で「エネルギー供給や金融市場、物価の動向を注視し、必要な対応を機動的に講じる」と述べた。

事態の行方は、戦争がどう動くかにかかっている。



今後のシナリオ――製油所復旧から中東戦争拡大まで

ラスタヌラ製油所はいつ動き出すのか。答えは単純ではない。

被害が小さければ、製油所の技術的な復旧は早いだろう。
2019年のアブカイク攻撃では生産の半分以上が止まる大被害を受けたが、約2週間で復旧した。

今回は予防停止にとどまっており、ブルームバーグによると損傷の検証中だ。

⚡ 核心

製油所が復旧しても海峡が開かなければ原油は出荷できない。問題の核心はラスタヌラではなく、ホルムズ海峡にある。

今回の攻撃はフーシ派とは違う

2019年の攻撃はイエメンの武装組織フーシ派によるものだった。
今回は違う。

AP通信によると、イランは米国・イスラエルの攻撃への報復として、湾岸諸国のエネルギーインフラを直接標的にしている。

武装組織の散発攻撃ではなく、国家が戦略的意図をもって石油施設を狙ったということだ。

リスク情報会社ベリスク・メープルクロフトの中東首席アナリスト、トルビョルン・ソルトヴェット氏はロイターに対し「今回の攻撃でサウジや近隣湾岸諸国が対イラン軍事作戦に加わる可能性が高まる」との見方を示した。



3つのシナリオ

⚠️ ここからは推測です

シナリオ 条件 原油価格の目安
短期収束 停戦・ホルムズ再開 70ドル台に戻る
長期化 海峡封鎖が数週間続く 90ドル超もあり得る
エスカレーション サウジ参戦・攻撃拡大 100ドルに迫るだろう

ロイターが取材した経済官庁の関係者は「イランには周辺国に味方がいない。ロシアや中国が武器を送るとも思えない」と分析している。

ただ別の関係者は「米国内でテロが起こるリスクがある。大きな不確実性を抱えた」と語った。

戦況は時間単位で動いている。
ラスタヌラ製油所の攻撃は、この戦争が「エネルギーインフラを標的にする段階」に入ったことを示した。

中東の石油に9割を頼る日本にとって、それは対岸の火事ではない。



まとめ

  • ラスタヌラ製油所はドローン2機を迎撃し、被害は小規模な火災にとどまった。操業停止は予防措置
  • 原油13%急騰の真因はホルムズ海峡の事実上の封鎖。迂回ルートは存在しない
  • 日本は原油の94%を中東に依存し、ガソリン200円超・電気代1割上昇の試算が出ている
  • 石油備蓄は254日分あるが、問題は量ではなく価格。80ドル超で景気後退リスク
  • 製油所の復旧より、ホルムズ海峡がいつ開くかが本当のカギ

よくある質問(FAQ)

Q1. ラスタヌラ製油所はどこにある?

サウジアラビア東部州ダンマーム近郊のペルシャ湾岸に位置する、サウジ最大の製油所兼原油輸出ターミナル。

Q2. ラスタヌラ製油所の処理能力はどのくらい?

日量55万バレル。サウジ全体の精製能力340万バレルの約16%を占める。

Q3. なぜ被害が小さいのに原油が急騰した?

製油所の被害ではなく、ホルムズ海峡の事実上の封鎖で世界の石油流通が止まったことが主因。

Q4. ホルムズ海峡が封鎖されたらどうなる?

世界の石油消費量の約20%が通過する要衝で、迂回ルートがない。封鎖が続けば原油価格のさらなる高騰は避けられない。

Q5. 日本のガソリン価格はいくらまで上がる?

野村総研の試算ではレギュラー1リットル200円超。電気代やガス代も1割以上上がる見通し。

Q6. 日本の石油備蓄はどのくらいある?

2025年12月末時点で254日分(約8カ月半)。ただし問題は量より価格で、80ドル超で景気後退リスク。

Q7. 日本は中東にどのくらい依存している?

原油の中東依存度は約94%。輸入原油の大半がホルムズ海峡を経由して運ばれている。

Q8. 2019年のサウジ石油施設攻撃とどう違う?

2019年はフーシ派の攻撃で生産半減。今回はイランが国家として直接攻撃しており、背景が全面戦争。

Q9. ホルムズ海峡の代替ルートはある?

サウジの東西パイプライン(日量500万バレル)等があるが、通常の海上輸送量をカバーするには足りない。

Q10. サウジアラビアはイランとの戦争に参加する?

リスク分析会社のアナリストは「サウジが対イラン軍事作戦に加わる可能性が高まった」と指摘している。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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