リアルタイムニュースNAVI

話題の出来事をリアルタイムで深掘り

読了 0%
𝕏 新着ニュースを受け取る×

再生医療で死亡事故はなぜ2例目も?銀座クリニックの治療と構造的問題を解説

再生医療で死亡事故はなぜ2例目も?銀座クリニックの治療と構造的問題を解説

| 読了時間:約10分

再生医療で患者が死亡した。
厚労省が緊急命令を出すのは、7か月で2度目だ。

2026年3月13日、厚生労働省は東京・銀座のクリニックで再生医療を受けた60代女性の死亡を発表した。
自由診療の再生医療での死亡事故に対する緊急命令は、2025年8月に続き2例目となる。

何が起きたのか。
なぜ繰り返されたのか。
事件の全容と構造的な問題を整理する。

 

 

 

銀座クリニックで何が起きたのか——事件の全容

3月10日、60代の外国籍女性が治療中に死亡した。

KHBの報道によると、女性は慢性的な痛みの治療のため、自身の脂肪から採った細胞を培養し、静脈注射で体に戻す再生医療を受けていた。
投与中に容体が急変し、救急車内で心肺停止しんぱいていしとなった。
搬送先の病院で死亡が確認された。

厚労省の公式発表

厚労省の発表によれば、治療を行ったのは「医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック」(東京都中央区)。
治療内容は「自家脂肪由来間葉系幹細胞かんようけいかんさいぼうを用いた慢性疼痛まんせいとうつうの治療」。
患者自身の脂肪から採取した幹細胞を培養して投与する自由診療だった。

クリニックは3月11日に厚労省へ報告した。
厚労省は13日付で、再生医療安全性確保法に基づきクリニックに治療の一時停止を命じた。

細胞を作ったのは京都と韓国の2施設

厚労省の発表で注目すべき点がある。
女性に投与された細胞は、1か所ではなく京都と韓国ソウルの2施設で製造されていた。

施設名 所在地 措置
JASC京都幹細胞培養センター 京都市 製造の一時停止命令
RBio幹細胞培養センター 韓国・ソウル 出荷停止を要請

株式会社JASCの公式サイトによれば、同社は2010年設立で資本金は約13億円
代表取締役は羅廷燦氏だ。

「世界最大級規模の成体幹細胞生産センター」を掲げ、治療実績は4,190件を超える
提携医療機関の一覧には、今回の銀座クリニックも含まれている。

 

 

 

クリニックが手がけていた12の治療

もうひとつ、見落とせない事実がある。
銀座クリニックの公式サイトには、12項目の再生医療等提供計画が掲載されている。

慢性疼痛だけではない。
変形性膝関節症、腰痛、肩の腱板損傷といった整形外科領域から、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中後遺症、さらには鬱病や自閉症まで。
すべて「自家脂肪由来間葉系幹細胞」を使う治療だ。

1種類の幹細胞で12疾患に対応

1種類の幹細胞で12の異なる疾患に対応するという治療計画は、死因が不明なまま、すべて停止の対象となった。

日テレNEWSは、死亡事例で厚労省が緊急命令を出すのは今回が2例目だと報じた。
死因は現時点で判明していない。
厚労省は原因究明を進めるとしている。

では、1例目で何が分かっていたのか。

 

 

 

7か月前にも同じことが起きていた——前回事故との共通点

2025年8月にも、ほぼ同じ構図の死亡事故が起きている。

厚労省の発表(2025年8月29日付)によると、東京都中央区のティーエスクリニック(後に東京サイエンスクリニックへ名称変更)で、外国籍の50代女性が自己脂肪由来幹細胞の投与中に急変した。
心停止に至り、死亡が確認された。

治療は今回と同じ「慢性疼痛に対する自己脂肪由来間葉系幹細胞による治療」だった。

比較項目 1例目(2025年8月) 2例目(2026年3月)
クリニック 東京サイエンスクリニック 銀座クリニック
培養施設 コージンバイオ埼玉 JASC京都+RBio韓国
患者 外国籍・50代女性 外国籍・60代女性
治療内容 自己脂肪幹細胞・慢性疼痛 自己脂肪幹細胞・慢性疼痛
経過 投与中急変→心停止→死亡 投与中急変→心肺停止→死亡

クリニックも培養施設もまったく異なる。
にもかかわらず、治療内容・経過・患者属性が酷似している。

7か月で2例目という事実は、個別のクリニックの問題を超えた構造的なリスクを示している。


「自分の細胞だから安全」は本当か

「自分の脂肪から採った細胞なら、拒絶反応きょぜつはんのうは起きない」。
多くの人がそう思うだろう。
自由診療の幹細胞クリニックの多くも「自己細胞だから安全」と説明している。

ところが、前回の死亡事故ではこんな指摘がある。

前回事故で指摘された原因

ある医療機関の分析によれば、培養後に凍結保存した細胞が解凍時に損傷・死滅し、その塊が肺の毛細血管に詰まる肺塞栓はいそくせんを引き起こした——というのが有力な見方だ。

⚠️ 前回事故の原因について、厚労省は公式には「原因が明らかになっていない」としていた。「肺塞栓」は医療機関の分析に基づく指摘であり、公式に確定した結論ではない。

自分の細胞であっても、体から取り出して培養し、凍結して輸送し、解凍して投与する。
この過程で細胞は変質し得る。

自己細胞だから安全培養・凍結の過程で細胞は「別物」になり得る
これが前回の事故から見えた教訓だった。

 

 

 

さらに、前回の培養施設コージンバイオは2026年1月に厚労省から改善命令を受けている。
細胞を加工する区域で基準を超える菌が繰り返し検出されていたのに、対応を怠っていたことが判明した。


もうひとつ、前回の事故で見落とせない事実がある。

事故を起こしたクリニックは、事故直後に法人名を「一般社団法人TH」から「一般社団法人日本医療会」へ、医療機関名を「ティーエスクリニック」から「東京サイエンスクリニック」へ変更していた。
厚労省の発表資料にこの届出記録が残っている。

今回はクリニックも培養施設も前回とは別の組織だ。
それでも同じパターンの事故が起きた。
個別対応だけでは防げない、構造的な問題があるのではないか。

 

 

 

「厚労省認可」は安全の証明ではない——自由診療の再生医療が抱える構造

「厚労省の認可を受けた治療だから安全だ」——そう受け取った人もいるだろう。

銀座クリニックの公式サイトには、「厚生労働省より認可を受けた委員会を設置し、厳格な審査と倫理基準を遵守」と書かれていた。

しかし、自由診療の再生医療は「届出制」で運用されている。
治療計画を特定の委員会に提出し、届出が受理されただけで治療を始められる仕組みだ。

「届出の受理」と「安全の保証」は別もの

薬の承認のように、有効性や安全性を国が直接審査しているわけではない。
厚労省認可 = 安全を保証届出の受理にすぎない

急増する再生医療と追いつかない監視

自由診療の再生医療は急拡大している。
2025年時点で全国の再生医療等提供計画の届出は6,000件を超えたとされ、そのほとんどが自由診療だ。

拡大を後押ししているのが医療ツーリズムだ。
東洋経済の報道によれば、自由診療の再生医療を日本で受けたい外国人患者が増えており、培養施設の業績を押し上げていた。


この状況を受け、厚労省は監視を強めている。

週刊現代の報道によると、2026年1月にはコージンバイオへの改善命令に加え、都内の著名クリニックへ約20名体制で立ち入り検査を実施した。
「細胞取り違え投与」の内部通報も寄せられているという。

法改正の動き

再生医療安全性確保法の改正に向けた検討も始まっている。
ただ、法改正には時間がかかる。
その間にも、全国で数千件の自由診療の再生医療が行われ続けている。

 

 

 

この事件が問いかけるもの——「外国籍患者」が意味すること

⚠️ ここからは事実に基づく考察であり、確定情報ではありません。

報道では「60代の外国籍女性が死亡」「厚労省が緊急命令」という事実が伝えられている。
しかし、ひとつの事実が見過ごされていないだろうか。

2例とも外国籍の患者だということだ。


これは偶然だろうか。
あるいは、自由診療の再生医療が抱える構造と無関係ではないのかもしれない。

⚠️ 以下は筆者の考察です。

医療ツーリズムで来日する外国人患者は、日本語での十分な説明を受けにくい立場にある。
治療のリスクや、その治療が科学的にどこまで有効性を確認されているのかを、母国語で正確に理解する機会がどれほどあるだろうか。

クリニックの多言語対応

銀座クリニックの公式サイトには「英語、中国語、韓国語に対応したスタッフも在籍」と書かれている。
多言語対応と、治療リスクの正確な伝達は別の問題だ。

インフォームド・コンセント十分な説明に基づく同意が言語の壁を越えて成り立っていたのかは、今後の調査で明らかにされるべき論点だろう。

「再生医療で人が死んだ」というニュースは、個別のクリニックの責任追及だけで終わる話ではない。
自由診療の再生医療を取り巻く制度、市場の拡大、そして「誰のための医療か」という根本的な問いを、この事件は突きつけている。

 

 

 

まとめ

  • 2026年3月10日、銀座クリニックで自己脂肪由来幹細胞の投与中に60代外国籍女性が死亡。厚労省は緊急命令を発出した
  • 死亡事例での緊急命令は2025年8月に続き2例目。クリニック・培養施設は異なるが、治療内容・経過が酷似している
  • 自由診療の再生医療は「届出制」で、国が安全性を直接審査する仕組みではない
  • 再生医療を検討する場合、「自己細胞だから安全」「厚労省認可」という説明を鵜呑みにせず、治療計画の内容、培養施設の管理体制、リスクの説明を自分で確認する姿勢が求められる

よくある質問(FAQ)

Q1. 今回の死亡事故の死因は何ですか?

2026年3月13日時点で死因は判明していません。厚労省が原因究明を進めています。

Q2. ネオポリス診療所銀座クリニックとはどんなクリニックですか?

東京都中央区にある医療法人で、再生医療認定医の榎並壽男理事長が率いています。自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた12項目の治療計画を厚労省に届出しており、月間500人以上が来院していました。

Q3. 前回の死亡事故(2025年8月)の原因は何でしたか?

厚労省は公式に原因を断定していません。ただし、培養後に凍結保存した細胞が解凍時に損傷・死滅し、肺の血管を詰まらせる「肺塞栓」を引き起こしたのではないかとの指摘があります。

Q4. 自分の細胞を使う再生医療は安全ではないのですか?

自己細胞は拒絶反応のリスクが低いとされますが、培養・凍結・輸送の過程で細胞が損傷するリスクがあります。「自己細胞=安全」と断定はできません。治療を検討する場合は培養施設の管理体制やリスクの説明を十分に確認することが大切です。

Q5. 「厚労省認可」と書いてあれば安全ですか?

自由診療の再生医療は「届出制」で運用されており、治療計画が届出として受理されたことを指しています。薬の承認のように有効性・安全性を国が直接審査しているわけではありません。

Q6. iPS細胞の再生医療と今回の治療は何が違いますか?

iPS細胞を用いた再生医療は主に保険適用や治験の枠組みで進められており、厳格な審査を経ています。今回の治療は自由診療として提供されていた自己脂肪由来の幹細胞治療で、制度の枠組みが異なります。

Q7. 再生医療安全性確保法の「緊急命令」とは何ですか?

患者に重大な健康被害が出た場合に、厚労省がクリニックや細胞培養施設に対して治療の一時停止などを命じる行政処分です。今回は同法第22条(クリニック向け)と第47条(培養施設向け)が適用されました。

N

リアルタイムニュースNAVI 編集部

reaitimenews.com

話題のニュースを「なぜ?」の視点で深掘りするニュースメディアです。法律・心理学・経済など専門分野の知識をもとに、報道だけではわからない背景や理由をわかりやすく解説しています。

📚 参考文献